五味金融庁長官記者会見の概要

(平成16年11月1日(月)17時04分~17時20分)

【質疑応答】

問)

先週、三井住友フィナンシャルグループが決算を下方修正して、不良債権処理額を大幅に積み増すと発表したのですが、ほぼ9月中間期の主要行の決算も何となく目途がついてきたのかと思うのですけれども、最大の行政課題である主要行の不良債権処理について、9月末時点で山を越えたのか、その状況について長官のお考えを聞かせてください。

答)

三井住友フィナンシャルグループの業績予想修正では、今中間期末に不良債権問題を終了させるべく与信関係費用の積み増しを行うこととした結果であるというような御説明がなされていると思います。

主要行の不良債権問題、これはやはりこれまでの各行における不良債権処理に向けた様々な取組み、これが積極的に行われてきたということもあって不良債権比率というものが着実に低下してきています。こうした各行における取組みというものが行われてきたということ。それからもう一つ、当局側においてもやはり来年の3月期で不良債権問題を終結させるということのために、例えば今9月期においては従来の特別検査のフォローアップということではなくて、特別検査そのものを実施させていただいているということ。こういった当局側の取組みもあるということで、そのターゲットはいずれにしても来年の3月期において不良債権問題を確実に終結させるということにあるわけです。そして現状はその目標に向かって確実な歩みが続いていると、こう評価できると思います。これが大事なことであろうと思います。中間期の結果というものは中間期の決算がまとまってまいりますと自ずと明らかになると思いますが。当局が目指しますのはやはり世界に向けて来年の3月期、日本の主要行の不良債権問題が終結したということが発信できるようにすること、確実にそのターゲットを捉えること、そのために引き続き油断なく、怠りなく、銀行においても当局においても努力を続ける、これが大事な事だとこう考えています。

問)

先週、山形県の第二地銀2行が経営統合を発表し、本日も多摩の方で3つの信用金庫が合併するということを発表したのですが、来年3月のペイオフ解禁拡大に向けて地域金融機関の再編の流れについて長官のお考えをお聞かせください。

答)

地域金融機関の再編というのは、ここしばらく色々な形で各地で起こっております。一つそういう流れがあるように私には思えます。この合併というのはそれ自体が相当な経営努力を伴うものですから、経営改革としては前向きなものという位置付もできますし、複数の金融機関が一緒になるわけですから、お互いの良い所を取り合うという形で相互のチェックを働かせながら企業統治の向上にも役に立つ、こういう特徴を持っていると思います。こうした合併の特徴ということを踏まえますと、中長期に渡って安定した経営、金融機能を確保していくという観点からは合併というのは有力な選択肢になり得ると、こういう理解でいます。特に地域金融機関の場合には、その地域の発展の言わばキーパーソン、キーエンティティーであるわけです。この地域金融機関がうまく機能することで地域経済の発展というものが本当に確保される、それだけが要因ではありませんが、これが欠けた場合には地域経済の発展というのは非常に困難な状況に立ち至ることになる、こういうキーパーソンでありますからその役割を十全に果たすということのために合併も含めた将来の経営安定の選択肢というのを経営陣が真剣に模索するということは今後も続くであろうと思います。そうした努力によって地域経済を活性化させることがひいてはその地域金融機関自身の経営の安定や発展にもつながっていく、それがまた更に地域経済を安定させ、或いは発展させていくと、こういう良い循環につながるようなそういう金融機関を作っていこうという、こういう意思が是非各地域金融機関の経営陣の皆様にあってほしいと思っております。やはり、地域経済にも色々な金融機能が提供されてくると思いますけれども、やはり「長い付き合いの中で、一番その情報を持っている地域金融機関と、長い付き合いを続けていて良かった」と地域の人が思うような、そういう金融機関でなければならないわけでありまして、またそれが地域金融機関の強みになるわけです。新しい色々な金融サービスを地域金融機関以外の金融機関が提供したとしても、つまるところ、やはり一番自分達のことを良く知っていて、一番適切な情報発信をする、そういう金融機関がある、そこと付き合っていくことで地域の発展というのは確保されるというのは理想の姿だと思います。長くなりましたけれども合併も含めた経営の安定ということについての地域金融機関の動きというのはこれからも続くと思いますし、そうあってほしいと思っています。

問)

次にちょっと大きな話なのですが、先週、山一證券向けの日銀特融の最終的なあり方ということで一つの動きがあったのですが、97年当初、まだセーフティーネットが色々未整備だったこともあり、こういう最終的な国民負担という形になったと思うのですが、その後金融監督庁も設立され、今までのセーフティーネット、今のままで十分なのかというところについて長官に伺います。

答)

結論から申し上げますと、預金受け入れ金融機関、そして証券、或いは保険、こういった各分野における安全網というのは現時点では十分な整備が図られているというのが私の認識です。

今御質問の中に「その後どういうことが」というお話がありました。ちょっと長くなりますけれども、申し上げてみますと、今話題になさいました証券会社、この関係につきましてはまさに山一證券が自主廃業に向けて営業を休止したという時に、大蔵大臣談話が出されまして、それも踏まえて平成10年の12月に金融システム改革法が施行された中にその対策が盛り込まれたということであります。一つは分別管理を徹底するという観点から顧客資産の分別保管を証券取引法で義務付けたということがあります。これは破綻に伴う顧客資産の毀損のリスクというものを大幅に低減させるものであります。きちんと行われていれば、多分顧客資産の毀損のリスクはないということになるはずですが、これは検査、監督などでここはきちんと確認をする必要があります。更に投資者保護基金、これを証取法上の法人であると位置付けをしたと、そしてこの投資者保護基金に対する加入義務というのを証券会社に課したと、こういう形になっております。従前の寄託証券補償基金のような民法上の法人で任意加入というようなものではない形にしたということでございます。

それから預金取扱金融機関はこれはよく御承知のとおり、預金保険法でペイオフ制度、或いは資金援助の仕組み、更には破綻の際の金融整理管財人、或いはブリッジバンク、こういったような仕組みを作ったということでございます。また決済機能の安定確保というための施策も預金保険法の改正で取り入れられております。更に危機対応は預金保険法の102条とこういう仕組みがある。

保険の改正につきましては、各保険会社の負担金を財源として保険会社が破綻した際に保険契約の移転等に対して資金援助を行うということで、生・損保それぞれについて保険契約者保護機構の制度というのが整備されました。こういったような形ですので、この山一證券の一件は大変残念な事態ではありますが、現時点における安全網というのは整備されていると言ってよろしいと思います。

問)

カネボウの決算で告発ということになったのですが、それ以外に10月の下旬あたりに大分とか北陸の方でいわゆる上場公開企業の粉飾決算が疑われるような事案がかなり頻発したのですが、市場の信頼確保に向けて公認会計士のその辺を見抜けなかったのかという、資質が問われていると思うのですが、今後公認会計士の処分も含めて市場行政をどのように運営されていくのかをお聞かせください。

答)

市場行政については、以前も確かこの場で申し上げましたが、基本になるのは適正なディスクロージャーと公正取引の確保であるということです。投資家が適切なディスクロージャーに基づいて誰にでも見られる、ディスクロージャー資料、それは正しいものである、適切なものである、そういう資料を見ることで投資判断をしていく、そして市場で取引を行い、その取引については、当然そこで形成される価格というのは、言わば神の見えざる手によって形成されるものであって、これを不正な手段によって歪めるような不公正取引は許されないし、行われれば厳罰に処せられるということを確保する、そのことによって結果的に投資判断によって損をした人、得をした人が出ても、それは判断をしたご本人の責任であるということで、自己責任の貫徹ということができるわけです。やはり、ディスクロージャーが間違っている、あるいは、嘘であるとか、正当な価格の形成を妨げるような不公正な取引が行われる、これが放置されるといったようなことであるならば、投資家の自己責任ということも問うことはできないということでありますから、金融庁と致しましては、もちろん監視委員会と一緒にこうした正しいディスクロージャー、そして、不公正取引の徹底した摘発ということに全力を挙げていく、こういう方針で望みたいと思います。これまでもそうして参りました。

監査人の件ですが、個別の1つ1つの案件について予断を持って何かを申し上げることはできませんが、公認会計士法に基づきますれば、虚偽等のある財務諸表・財務書類を故意又は過失によって虚偽等のないものという証明をした監査人、こういう監査人に対しては、公認会計士法に基づきまして金融庁長官が必要に応じて調査を行う、懲戒処分もできるということになっています。一般論で申し上げれば、公認会計士法の規定に則って厳正な運用をしていくということを心掛けたいと思っています。

問)

今日から新札が市場に出まわっていますが、ATMとか窓口業務でトラブルがあるといった報告はございますか。

答)

現時点では、金融機関からそうした新紙幣発行のスタートに伴いトラブルが生じているというような報告は一切受けていません。今後とも注意深く監視していく必要があると思います。

問)

シティバンクのプライベートバンキング部門に勤めていた人が、他の外資に移ってまたやっている。このように違法取引に関与した方がまた日本の国内で営業を続けるという点について金融庁の対応・考え方をお聞かせください。

答)

一般論でいうと、仮に金融機関でお仕事について何らかの問題を役職員が引き起こしたことが明らかになっている、その時にその方に対してしかるべき社内処分ですとか、或いは必要な措置を取らないままに他の金融機関にその方の転職をさせている、許しているというような状況がもしあるとすれば、それは適切ではないと思います。もちろん職業選択の自由はありますから、どこに就職なさるかという問題は別途ありますが、まず第一に問題の発生した金融機関においてその方に対してしかるべき対応を行うことが必要であると思います。それでシティバンクと冒頭仰いましたが、このシティバンクについては、在日支店から業務改善計画が提出されておりますので、この内容を精査をしております。その実施状況等についてしっかりフォローアップしていくことになります。

(以上)

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