五味金融庁長官記者会見の概要

(平成16年11月15日(月)17時04分~17時22分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

先週末に特別検査の結果が公表されたのですけれども、格上げされた企業、格下げされた企業、それぞれあると思うのですけれども、この結果について長官のお考え、銀行の不良債権処理の取組みについて評価をお願いしたいのですが。

答)

今回の特別検査の結果、大口債務者について二つのことが見られたと思います。一つは企業実態の二極分化が進んでいること。もう一つは主要行の引当て水準、これが相当に高くなってきていること。これは一般的な傾向としてはこれまでもうかがえたのですけれども、この二つが今回の特別検査の結果では、一層明確に出ていると思います。

この二極分化に関して申しますと、要するに事業再生に向けた取組みが進捗をしているものと、それから逆に、企業実態の悪化が進んでいる。これが、過去策定した再建計画の進捗に伴ってより鮮明になってきたと、こういうことが言えると思います。数字は先般発表したものでございますけれども、債務者区分が遷移をした先というのが対象となった債務者全体に占める割合というのが、15年9月期では18.6%、16年3月期では36.8%、そして今回では42.9%ということで上昇してきています。企業実態の二極分化が更に明確化したという数字が出ています。またこの二極分化に対応するような話ですけれども、債務者の経営改善が再建計画の策定実施によって進んできているということで上位遷移をしたもの、これが19先あるのに対して、経営が悪化した債務者を銀行自ら早期処理をするということで下方に遷移をしたもの、これが11先あるということで、不良債権処理が進展しているといった傾向が見られるように思います。下方遷移先の3分の2というのは、再建計画の実現可能性等に問題があったということで、事業再生や経営実態の改善につながらなかったということで、これは更なる対応が必要と、このようなことが言えそうです。

それから引当金の水準に関しては、不良債権処理コストが低下をしているということに見られるように、貸倒引当金が手厚くなってきているということが言えそうでございます。相当数の下位遷移が今回もあったわけですけれども、不良債権処理コスト自体は低下しているということは、引当てにDCF法を使うといったものの定着ですとか、或いは、資産査定の厳格化といった諸施策、こういったものが効いてきているということであろうと思います。

以上を要すれば、一つは、各金融機関が再建計画を策定して金融支援を含めた真剣な企業再建への取組みをしたと、こういう先についてその成果が表れてきた。また他方で、清算の方向で処理する決定をするといったようなことの結果、下方遷移をした先もあるということで、金融機関が不良債権処理に向けて、明確な対応をするということを行った結果が見えるというふうに言えると思います。他方で、計画の実現可能性の見極めが不十分ということで、更なる取組みが必要な下位遷移先もなおあると。これは、金融機関において、更なる取組みをしていただくように期待をしたいということです。そして、引当てが相当程度手当てされているということで、不良債権処分コストが低下をしていると。これは不良債権問題、特に大口の債務者についての対応という点について、健全性確保の観点から、十全の対応を各金融機関が取るという対応をしてこられた、その成果であると感じております。

全体としての感想を申しますと、何度かにわたる特別検査の結果、やっとここまで来たかという感じがしております。一部に大口不良債務者の処理の遅れというのは見られますけれども、全体として金融再生プログラムの成果というのは、銀行の努力もあって、着実に表れたというふうに考えています。また、一部に見られる大口の不良債権処理の遅れということについては、今後銀行におかれて、不良債権問題の火種を確実に絶つという視点から、更なる御努力を是非お願いしたいと考えています。

なお全体として、大口の与信管理というのがきちんとできるようになったのかどうかということですが、数字から見る限り、確かに大口債務者の与信管理、或いは再建計画に関しては、大きな進歩があったように私は思います。しかしながら、これですべて、当局がこうした特異なウォッチをしないですむことになったのかどうかということについては、この結果と、今後この特別検査の結果に基づいて出てまいります銀行法24条に基づく報告のヒアリング、これを踏まえて大口与信管理態勢検査の必要性といったものを判断した上で、なお当局のウォッチがどの程度必要であるかということを判定していきたいと思います。

以上です。

問)

西武鉄道株の問題なのですけれども、東京証券取引所が上場廃止の方向で検討しているという報道もありますけれども、いわゆる金融庁としてこれらの問題にどのように関わっていくのか、監督する立場としてどのように関わっていくのかというのが一つと、それといわゆる投資家保護という立場とルールを破った企業を罰するという意味の両方の観点をどのようにうまくかみ合いを採っていかれるのかお考えがあれば一般論としてお願いしたい。

答)

西武鉄道株の扱いについて仰ったような報道があったことは承知していますが、他方で東京証券取引所、或いは西武鉄道もそのような事実はないといった発表をなさっています。ここでは、一般論でお答えするということにさせていただきたいと思います。

ディスクロージャーということが適正になされているということが、投資家に自己責任を問う大前提になるということは前にも申し上げましたし、また同時に、市場の取引においては、不公正な取引というものが取り締られ、取引の公正が確保されていることがもう一つの大事なことであります。これらが車の両輪になって初めて市場取引というものについて、投資家に自己責任を問うことができるようになるということだろうと考えています。そうした意味でディスクロージャーの内容の適正性については、当局としても重大な関心を持っていますし、その適正性が確保されるように適切な対応をとるようなことが基本になります。その意味では、東京証券取引所におかれても、上場に関する自主規制規則というものは持っておられるわけですし、法律にも根拠のあるこうした自主規制団体について、その自主規制規則に沿って様々な出来事については適切に対応していただきたいというのが当局としての考え方でございます。

市場規律の確保と投資者保護というお話ですが、仰っているのはおそらくある特定の銘柄に投資をなさった方が、その銘柄に市場規律を確保するという視点からある措置が取られることで、その投資家の方が不測の損害を被り得るのではないかという話ではないかと思いますが、それ以前の問題として私が先程申しましたように、マーケットの信認を確保しておくということが投資家保護の一番の基本になると思います。投資家の方に自己責任を問うということは、すなわち市場において不公正取引が摘発され、防止され、そして、開示は適切に行われていることだと思います。このことを確保しておかない限り、損をした投資家の方にも、得をした投資家の方にも自己責任を問うことはできないと思います。特定の銘柄がある扱いを受けることで損失を被るということ自体は、それが自らの投資判断に基づくものばかりではないケースもありますので、そういうことがあればお気の毒なことではあると思いますが、それは市場規律の維持を緩めていいとか、ないがしろにしていいということではなくて、そうした事態が起こった場合には、例えば発行体と損失を被った方との間での争いとして決着をさせていただく等、他の方法によって解決を図っていただかざるを得ないだろうと思います。

問)

郵政民営化準備室と金融庁との連絡会議というのが設置されたと思うのですが、具体的な法案作成に向けた狙いがございましたら教えてください。

答)

この郵政民営化準備室と金融庁との間の連絡協議会の設置の目的は、制度設計が進捗することを受けて、より一層緊密な連携を確保しようということで、郵政民営化準備室の呼びかけによって設けられたものであります。今日、第一回の会合が開催されました。これまでの金融庁と準備室の間では、適宜連絡調整を行ってきていますが、制度設計の進捗を受けて民営化準備室としては、これまで以上の連携を取りたいという趣旨であるということですので、こういった会合を設置することとしたわけでございます。

問)

今日、熊谷組と飛島建設が経営統合の白紙撤回という発表をされていると思いますが、先程特別検査のお話もありましたが、銀行が中心となってまとめられた話が統合コストが高い等の理由で振り出しに戻るということになっているのですが、一般論としてこれをどう評価されますか。

答)

特定の金融機関と特定の取引先に関するお話ですから、それとしてのコメントはできませんが、一般論として申し上げれば、大口貸出先に関する与信管理というのは、その債権者である銀行において適切に管理・対応していくことが大変に大事なことだと思います。取引先の再建とか、事業の再編ということについては、もちろん、動いている経済の中の話ですから、必ずしも当初描いた絵の通りそれが実現するとは限らないわけでして、実現しないことが悪いことなのかどうかもその時の状況によって判断は違ってくると思います。そうした判断を適切に行って当初描いていた姿と違う形になるということであるならば、その状況の中で銀行として与信管理上なすべきことは何なのかということを的確に判断して銀行が確実にそのリスクをコントロールできるように様々な策を検討し、実施していただくことが大切であろうと思います。当局としては、大口債務者についての与信管理という点については、従来通り注意深く検査・監督でフォローアップをしていくことになります。

問)

あおぞら銀行の見せ金融資で大阪府警が調査を行っているという報道がありますが、シティバンクの時もこういったことが問題になったと思うのですが、銀行の不正な融資が相次いでいることについて、金融庁としてはこれをどのように受け止め、今後どのように対処していくつもりなのか、現在の考え方をお聞かせください。

答)

あおぞら銀行と駿河屋の増資について報道は承知していますが、これは、特定の金融機関に関わる事柄ですので、今この段階でコメントできることはありません。

一般論で申し上げますが、相次いでいるかどうかはさて置き、銀行がその経営を行うについて法令遵守に問題があるという疑いがあれば、それは当然のことながら我々としては状況の調査をいたします。検査・監督といった場面を通じてその状況を把握した上で、もし法令遵守体制に問題がある、或いは法令違反そのものがあるということであれば、それは法令に則って適切にかつ厳正に対処してまいります。こと本件に関しては、今何もコメントできる状況にありません。

(以上)

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