五味金融庁長官記者会見の概要

(平成16年11月22日(月)16時04分~16時19分)

【質疑応答】

問)

地域金融機関の動向なのですけれども、先週、和歌山の二つの地域銀行が合併に向けた協議を始めるということを発表されまして、本日、茨城県の二つの金融機関が同様に合併に向けた検討に入るということで発表しましたが、この二つの動きに対する金融庁としての評価をお聞かせいただきたいのですが。

答)

来年の4月のペイオフ解禁拡大を控えまして、地域金融機関に限らずあらゆる金融機関は預金者から本格的に選別されるという時代を間近に控えている、また4月以降は現にそういう時代に入るということになるわけです。従ってどの金融機関も一層真剣に経営基盤の強化ということに取り組んで、預金者の信認を確保し続けるということが必要になるわけであります。そうした努力は様々なやり方で行われてきておりますし、これからも行われると思いますが、合併等の組織再編成という手段というのも勿論その一つとしてあるわけでございます。こうした組織再編成というのはあくまでも各金融機関の実質的な経営判断に基づくものでございますけれども、合併というものの持つメリットというのは何度も申し上げておりますように、規模の経済、或いは範囲の経済といったようなものが活きて経営効率が向上する。或いは合併それ自体が相当の経営努力と前向きな経営改革ということを必要とするわけで、当事者間の相互チェックが働くことで企業統治の向上にも資するといったようなことがございます。従ってこうした合併の特徴を踏まえれば、中長期に渡って安定した金融機能を確保するという観点からは合併というのも有力な選択肢になると考えております。非常に近接した時期に二つの合併に向けての動きが明らかになったわけでございますけれども、これは意図したものというのでは勿論ないのでしょうけれども、合併再編というものの持つ一つの効用というものを経営判断において選択なさったものであろうと考えております。

問)

大手の金融機関の方も今日から順次9月中間決算の発表が始まっているのですけれども、その中で大手銀行の不良債権処理と収益力という面でまだ発表は一つか二つぐらいのところですけれども、長官としての考え方があればということと、あと今日損害保険会社の集中の決算発表日なのですが、自然災害等でちょっと赤字の企業もあるようですけれども、基本的な損保の経営基盤はどうなのかということについてお伺いしたいのですが。

答)

一点目は御質問にもありましたようにまだごく一部の銀行から発表があっただけでございますので、これから各行順次御発表があると思いますから、すべての大手行からの発表が揃いましたらばその時点で計数の集計も分析もした上で必要なコメントはさせていただきたいと思います。現時点では個別行のコメントの様なお話になりますので控えさせていただいた方がいいと思っております。一般的には前から申し上げていますように不良債権処理ということでございますれば「金融再生プログラム」の目標達成に向けた順調な不良債権比率の低下というものがこの3月期まで見られておりますし、同時に先般の特別検査の結果の発表でもお示ししましたように不良債権に対する引当てというものも強化されてきているという様子がうかがえます。不良債権処理に向かっては各銀行とも正しい道筋に向かって今歩んでおられるように私共は思いますので、今後ともお互いに、当局も銀行も手綱を緩めることなく不良債権問題への取組みというものを続ける必要があると考えております。収益力につきましては非常に顧客のニーズが多様化する中で例えば、役務取引収益の増強に努めたり、色々なやり方で様々な取組みを各銀行なさっておられますので、まあそうした動きがこの中間決算でどんなふうに表れてくるか注目したいと考えております。

それから損害保険会社でございますが、経営基盤というようなお話もありましたのでちょっとその辺りまで含めてお話を申し上げたいと思います。現時点ではまだ発表が済んでいない会社が若干ございますけれども、これまで既に公表された損保上場各社の16年9月の中間期業績というものを見てみますと、全社において前年同期と比べて減益ということでございます。その大きな要因は自然災害に係ります保険金の支払い、これは正味支払保険金と支払備金の繰入、この増加というのが主な要因であるということが言えそうでございます。一方、健全性基準でありますソルベンシー・マージン比率はこれまで発表されました全ての会社は700%を超えておりますから、200%という基準値は十分に上回っているという状況であります。一般的なお話として申し上げますけれども、損害保険会社は先程、自然災害による保険金支払の増加ということを申しましたけれども、巨額の保険金支払に備えまして再保険によるカバーというものを一般的には損害保険会社は行っている。更に火災保険についてはその損害率、これは収入保険料に占める支払保険金等の割合、これが50%を越えるような支払があるという場合は異常危険準備金の取崩しを含めて対応をするというこういう仕組みを採っております。この異常危険準備金については現状でも十分な残高が保険会社において確保されておりまして、こうした災害に関する保険金支払につきましては損保各社で十分対応ができると考えております。なお今中間期について申しますと、大きな被害をもたらしました台風18号は9月に来ておりますので、それも含めまして保険金の支払が10月以降になるというものもあると見られます。その場合にはこの9月期において支払備金の繰入を増やしておくということになりますけれども、この支払備金の繰入部分は異常危険準備金取崩しの対象には入りませんので、従って今中間期ではこの支払備金繰入というものが減収要因になっていると考えられます。なおこの通期、17年3月期で見てみますとこれは先程述べましたように、異常危険準備金の取崩しということで対応をすることになりますので、従ってこのこと自体が通期の業績に与える影響というのは限定的なものになるだろうと、こういうふうに考えております。勿論他に大きな何か事柄が今後起こった場合のことはさておきまして、このこと自体が持つ影響は限定的だろうと考えております。

問)

金融庁として西武鉄道等の問題等に絡みまして、市場の信頼性確保策というものを発表したわけですが、これに対する市場の受け止め等今入ってきているお話があればお知らせください。また、その後訂正報告書等が出てきたかどうか等進捗状況について、もし事実がございましたら教えていただきたいのですが。

答)

市場の受け止めとして、具体的に私のところに入ってきている話は現状特にございませんが、明解な形でお示ししましたので、今後具体化が進んでいく過程で色々なご意見や評価がいただけるのではないかと思います。それから全公開企業への有価証券報告書自主点検という件でございますが、これは訂正の必要があれば必要な訂正報告書の提出等の手続きを取っていただきたい。そして必要のない場合には必要のない旨を12月17日までに文書で回答していただきたいという内容でございましたが、訂正の必要がないというご回答を既に数社から提出いただいております。それ以外の会社は引き続き点検中ということだと理解しております。

問)

地域金融機関なのですが、ペイオフ前にある程度ペイオフに備えた色々な施策というか、それぞれやっていかなくてはならない、その中には再編或いは合併というのも一つの手段だと思うのですが、現在、地域金融機関、特に地銀・第二地銀の現在の経営状況についてもうペイオフ解禁拡大になっても十分やっていけるという体力、もしくは収益力を持っているとお考えですか、それともまだ努力すべきことが残されているというお考えでしょうか。

答)

16年3月期の決算を見る限りは、足利銀行を除いてすべての地域金融機関は健全性の基準を満たしているという状況にございます。その意味で健全性基準という意味で問題を持っている金融機関はないわけです。それから、地銀・第二地銀ということですと、この中間期の業績というものがこれから発表されてまいりますから、そういったものもよく集計し分析して見ていきたいと思います。一つ一つの金融機関についてコメントすることは難しいと思いますが、全体でみるとリレーションシップバンキングへの取組みが進展を見せる中で不良債権比率というのも地域銀行全体で低下のトレンドに入ってきていると、もちろん水準は主要行に比べて若干高いわけですが、明らかに低下の傾向に入ってきている、ということは、何を意味するかというと、経営の判断の幅というものがより広く確保される状況になってきているということが言えると思います。今後はそうしたリレーションシップバンキングの手法に基づく不良債権の処理ですとか、或いは不良債権の新規発生の防止ということを徹底していく中で、他方、地域経済に貢献する経営というものを心掛けていただければ、十分な信認というものを地域金融機関全体として確保していくことができると考えています。もちろん、個々の金融機関に注目をいたしますれば、それは公表される計数等を見ていただければお分かりのように、健全性の基準についてもその水準がまちまちでございますし、不良債権比率についてもまちまちであるということで、それぞれに課題は抱えているということは言えると思いますが、その課題克服に向けての環境は十分に整ってきていると思います。なお、そうした課題を克服し、地域経済に十全の対応をしていく、地域経済の発展に十分貢献できるだけの十全のリスク対応力を身に付けたいという金融機関については、もし独自での資本調達に多少困難が感じられる、しかし公的な参加があれば地域にとって非常に有用な金融機関になることができるというご判断があれば金融機能強化法の枠組み等も用意されておりますので、経営判断でそうした制度を利用するかどうかも選択肢の中に加えて検討なさればなお万全の対応が可能ではないかと思います。

(以上)

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