五味金融庁長官記者会見の概要

(平成17年1月17日(月)17時04分~17時42分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

今年最初の会見ということで、今年の金融行政の抱負についてお願いします。

答)

2つあります。やはり金融再生プログラム関係と金融改革プログラム関係ということになると思います。金融再生プログラムの関係では、このプログラムの目標がきちんと達成されるように、最後の仕上げを行うことだろうと思います。

具体的には、主要行の不良債権問題について申しますれば、大口の債権先について、最終的にきちんとした処理の見通しが年度末までに立つように、各銀行において御努力をいただくと同時に、私共も、昨年9月の特別検査の結果等も十分踏まえて必要な検証を行うということであろうと思います。また、地域金融機関については、この2年間のアクションプログラムに基づく活動について、きちんとした総括を行い、その効果も検証した上で新しいアクションプログラムに繋げていくということで、地道なやり方ではありますが、確実に地域経済と地域金融機関の健全化・活性化が図られるように、こうした道筋をつけておくこと、こういうことであろうかと思います。

また、これらに関連をいたしましては、今年4月からのペイオフ解禁拡大に関して、無用の混乱が起こることがないよう、万全の体制を我々としても、また金融機関としても敷いておく必要があると考えています。具体的には、特に、このペイオフの解禁拡大ということについての広報、周知・徹底です。これを金融機関においても、我々においても、更に一層努力して行うこと、これによって知らなかった、誤解していたといったようなことで、無用の混乱に結びつくことなどないようにしておくこと、これが一つです。それから、金融機関における名寄せ、このデータの精度をできる限り上げておいていただく必要がありますので、そのための監督当局としての、検査・監督両面における、最終確認ということをきちんと行うことであろうかと思います。

金融改革プログラムに関しては、そうしたことを行いつつ、まず、具体的に、昨年末に発表いたしましたのは、基本的な構想といったようなものが発表されただけでありますので、これを具体化していくことについて、関係各方面とよく意見交換をして、この具体化に向けた道筋をつけていくということがまず必要であると思います。すなわち、工程表です。この工程表を関係各方面とよく議論をし、意見交換をしながら年度末までに固めること、これがとりあえず大事なことだろうと思います。そして、そうした工程表の作業をしながらも、早いものは法案化をする必要があるものもございますし、或いは機構・定員要求が、内閣で通って国会でこれが審議されるという段階に来ているものもございますから、こうしたステージに達しているものについては、関係する皆様の御理解を得ながら着々と準備を進めることが重要であると思います。

私としての抱負ということですと、それにもう一つ加わりまして、今申し上げましたような様々な課題について、金融庁の職員の皆さんが確実にその一人一人の任務を果たしていけるような職場環境を用意することが今後ますます重要となってくると考えています。大変に労働がきつい状況で、もう何年も皆さん仕事してきております。そうした中で、金融再生プログラムの仕上げあり、また新しい任務がありということで、ますますその負担は重くなりますので、どんなことが出来るか、もちろん、総点検プロジェクトにおいても様々な提案をいただいていますから、職員の皆さんが出来るだけ自分の任務については、これを確実に果たせるような環境を用意する、これが大事な任務だと思っています。

問)

今のお話の中で、ペイオフについては、4月1日の解禁ですが、これは予定通りできるのかどうか、現状の金融システムの認識も併せてお話しください。

答)

ペイオフの解禁が累次に渡り延期された大きな原因は、金融システム不安を醸成し易い環境にあるのではないかという現状認識、また、金融機関におけるディスクロージャーが十分に行われている状況にあるかどうか、この2つだったように思います。

まず、金融システム不安という点については、主要行の不良債権比率について、金融再生プログラムの設定した目標に向かって着実にその不良債権比率は低下をしていますし、地域金融機関においてもほぼそれを1年遅れで追うような格好で健全化に向けての動きが確実に見えてきております。こうした中で、金融システム不安が醸成され易いような環境というのは、現在はないというのが私の認識であります。

第二のディスクロージャーについては、協同組織金融機関まで含めて法令によるディスクロージャーの義務付けというものが、きちんと定められ、実行に移されておりますので、預金者に自己責任を問う環境は整ったと考えています。従いまして、もちろんまだまだやるべきことはございますけれども、基本的にペイオフ解禁を延期しなければいけないような、そうした重大な問題点といったものは、現在は解消されていると考えていますので予定通り解禁をいたします。

問)

次に、年明けにバーゼルで行われたG10の会合に出席されたようですが、その中の具体的な話と長官からどういう発言をされて、諸外国からどのような反応があったのかお願いします。

答)

このバーゼルの会合は、G10中央銀行総裁、監督当局の長官、これに民間からの代表者も加わった非公式な形での自由な意見交換というもので、毎年行われているものです。この会合では、世界経済の状況、或いは金融セクターの動向、こういったような点について議論が行われました。どなたがどのような御発言をなさったか、この議論が非公式なもので自由な意見交換を行うということで、対外的に引用しないという約束事がございますので、これを申し上げることは控える必要があります。ただ、私からの発言ということですと、私からは、この金融セクターの状況ということに関連して、わが国の金融の状況ということについて御説明をいたしました。日本の金融の現状が官民力を合わせての安定の追求といったフェーズから、民間を中心とした活力の追求といったフェーズに確実に移っていること、そして、そうした中で「金融改革プログラム」という新しいプログラムを策定し、こうした民間の動きをバックアップするという姿勢になっていること等を申し上げました。こうしたプログラムに基づく行政を行い、また、民間の金融機関もその活動を活発化することは、すなわち、日本の金融機関の外国における活動を活性化する、アクティブにする効果があるはずであるし、また、その逆に外国の金融機関の日本における活動もアクティブになる要素があるということを御説明をいたしました。したがって、各国の当局と日本の当局との間の協調・連携ということは、ますます重要になりますので、よろしくご対応・ご協力をお願いしたいということを申し上げました。

問)

各国からは、何かございましたか。

答)

この発言に対して、各国から具体的な反応はございませんでした。おおよそが皆さん自分の御意見を仰って、そして、それに反論・反駁というよりは、自分はその点についてはこう考えるというような、それぞれが意見表明をなさるという形のものでした。ただ、実際の発言中の皆様のご様子は熱心に興味深く聞いておられたというのが私の印象です。

問)

今朝方、伊藤大臣の会見で偽札の質問をさせていただいたのですが、その際に監督局等を通じて、金融機関に偽札のチェックを徹底するようにという要請をするというお話だったのですが、長官は大臣から何か指示を受けておられますか、それとも、監督局として既に何か動いておられますか。

答)

この点については、監督局も、もちろん金融庁全体として、大臣の御発言を踏まえた対応を考える必要がございますが、監督局において、特に具体的にどういう対応をするのか、どういう御要請を関係の金融機関にするのかということについては早急に検討するということで、今検討中でございます。これは、金融機関と金融庁だけの問題ではもちろんございませんので、関係機関ともよく情報交換をした上で、金融庁として、その権限内で至急に対応すべきことは何かを今検討中でございます。

問)

通常国会での法案の提出なのですが、今のところどの程度の数になって、どういう法案を出す予定でしょうか。

答)

次期通常国会に金融庁として提出したいと考えております法案は三本ございます。具体的には銀行法、保険業法、証券取引法、三大法案で、それぞれの一部改正法案でございます。なお前払式証票等の規制に関する法律の改正案、これについては提出を検討しているということで、提出をするということで決定をしてはおりません。従って現在三本でございます。

簡単に内容を申し上げておきますと、銀行法の一部改正は、銀行等の代理店制度についての見直し等、所要の整備でございます。

保険業法については、根拠法のない共済の契約者保護ルールの導入と、それからもう一つ、自動車保険についての保険契約者保護制度の見直し等、所要の制度整備でございます。

証券取引法については、ディスクロージャー制度関係の所要の制度整備でございまして、一つは継続開示義務違反に対する課徴金制度の導入についてでございます。それから上場会社の親会社で継続開示会社でないもの、こういうものに対する情報開示の義務付け、それから外国会社等による英文開示制度の導入、こういったようなものを盛り込むという予定で三本提出したいと考えております。

問)

前払式証票等の規制に関する法律の改正案ですが、どういった検討をされているのかということと、未だ決定していない理由を仰っていただければと思います。

答)

具体的な改正を必要とする場面において、これはIT技術が非常に深く関連する話でございますので、こうしたIT技術の面でどのような改正を行えば万全なものとなり得るのか、或いは過剰規制とならないようにできるのか、といったようなこと等、まだちょっと十分な議論が詰めきれていないということがございます。

問)

日本振興銀行の件なのですが、今ちょっと色々な意味で話題になったり、社長が代わられるという内部的な混乱というのがあると思うのですが、これについて今現在、許認可を出された側からどういうふうに、許認可を出して、許認可から時間がそこまで経っていない銀行なのですが、この辺の混乱についてどういうふうに見ていらっしゃるのかちょっと御意見をお伺いしたいのですが。

答)

混乱と仰るのですが、特定の銀行の今仰ったのは人事のお話等だったと思いますが、人事のお話、或いは業績のお話ということになりますと監督当局としてこれを論評するということは控えなければなりません。この点は申し訳ございませんけれども、どの銀行であってもこれはそうでございますので、そういった点はコメントをいたしかねます。報道や何かに色々出ていることは承知しておりますから、そういった点について、これはまた別にこの特定の銀行に限ってということではなく一般論として様々な報道がなされるということであるならば、それによって取引先や預金者の皆様が不安をお持ちにならないように十分な説明をそれぞれにしていただくことが大事だろうと思っております。

問)

この件について、日本振興銀行が免許の申請から免許取得に至るまでの過程と言うか、期間が一般的に今までに免許を取得した銀行に比べれば少し短期間だったのではないかというような指摘があるのですけれども、これについて例えばなぜ短かったのかというような理由みたいなものというのはある程度あるのでしょうか。

答)

まず短かったかどうかという点、この点は行政の方の手続のお話しですから誤解があるといけませんのでちょっとお時間をいただいて御説明いたします。短かったという前提でのお話しでしたが、どの部分を取るとどう短かったのかというのが分かるように御説明したほうがいいと思います。

まず銀行が新規参入をするという時の免許審査の手続き、これはまず予備免許審査というのを普通は経るものです。そして本免許申請が行われるという順番になるわけです。免許の付与の方から遡って見ていきますと、本免許の申請が行われてから実際に免許を付与されるまで、この期間ですが日本振興銀行の場合は約一ヶ月でございました。この点については法令上は予備審査は別にして免許申請に対する処分については、銀行法の施行規則で標準処理期間は一ヶ月と定められております。従ってこの標準処理期間内ギリギリのところで免許が下りていたということでございます。そこでもう一つ他と比べてというお話しでございますが、これは他の銀行と言ってもそう度々新規参入があるわけではございませんので、最近のもので比べてみますと、新しい形態、所謂ネットバンキング等行う新しい形態の銀行というのが最近ではその例でございます。こうしたものの新規参入行の例を申し上げますと、免許申請をしてから免許が出るまでの本免許審査期間、今日本振興銀行で一ヶ月と申し上げていましたが、その期間は、ジャパンネット銀行の場合六日間、アイワイバンク銀行の場合五日間、ソニー銀行の場合六日間、イーバンク銀行は八日間、こうした期間になっております。他との比較という意味ではこれが本免許申請から免許が出るまで法令上の標準処理期間と他との比較ということではこういうことになっているということでございます。

それからまだそれだけではちょっと説明にならないですね。「いや、そんなことは聞いていない」と仰る方がいらっしゃると思うので、その前にさっき申しましたように、予備免許というのがあるのです。ここのところをちょっと御紹介しておかないといけないわけですが、これは予備免許審査を経た上で必要な準備をして本申請をすると、その方がお互いに事柄が効率的に行きますのでそういうやり方を普通は取ります。それで日本振興銀行の場合は予備免許の申請があってから予備免許が下りるまでの予備免許審査の期間というのが約二ヶ月強でございました。これを先程の同じ他の新規参入行で見てみますと、予備免許審査期間はジャパンネット銀行が三ヶ月強、アイワイバンク銀行は五ヶ月、ソニー銀行は二ヶ月弱、イーバンク銀行が三ヶ月強ということになっております。これが予備免許の申請に対する審査期間でございました。これは他との比較、ここは標準処理期間の定めの外でございますので、他との比較ではそうでしたというお話しを申し上げられると思います。

それからこれだけでも話しは終わらないのでして、お時間をいただいてちゃんと御説明した方が良いので更に申し上げますが、これは昔からこの関係を御担当なさっている方は御存知だと思うのですけれども、他の新規参入行というのはこの予備免許を申請する更に前から当局に対して色々な相談をなさっていた期間、約一年ぐらい皆様相談なさっていたということでございます。そういった相談の結果等も踏まえて予備審査の申請をして、そこから先の手順が進んでいったということでございますが「日本振興銀行はそういう手順を踏んでいたのか、踏んでいないとすれば短いではないか」というお話しがあり得るかもしれませんので、この点についてちょっと触れさせていただきますと、新規参入行は普通の銀行と異なりまして異業種の事業会社が銀行の経営方針に重大な影響を及ぼし得る、そういう主要株主という形で存在をしていると、こういう状況でございました。しかも当然のことでございますけれども御承知のように経営の内容も通常の銀行とちょっと違う、ITを活用した銀行ということでございました。これに対しまして日本振興銀行の場合は定期預金で資金を調達する。そして中小企業向け貸出しのみを行うということで、伝統的な銀行業の内の一部分を限定的に行うというこういうことだったのです。要するに主要株主が異業種、元々日本振興銀行には主要株主はいないわけですが、主要株主がいるのかいないのか、かつその主要株主が異業種の事業会社であるということであったのかどうかということ、この違い。それから伝統的な銀行業務の一部分を行うといったようなものであったのか、或いはインターネットとかATM等そういった取引を専門に行うという全く新しい形態の銀行の免許申請であったのか、こういった点の違いがあったということで事前の相談を念入りに皆様がなさったのはそういった特異な点があったからであろうというお話です。

長い短いの評価はさて置き、その申請と審査と実際に行政の処分が下された期間についてだけちょっと御紹介を申し上げておきます。私は評価をしたわけではなくて事実を御紹介申し上げました。

問)

事前の相談のところなのですが、これは日本振興銀行が行った期間というのはどれくらいのものなのですか。

答)

私の知る限り、予備免許申請の前に事前相談には見えていない。私の知る限りそうですが間違いないはずだと思います。

問)

一般的にはそれは一年ぐらいかけたりして色々とどういうものが必要なのかということを議論していくというイメージで良いでしょうか。

答)

新規の免許申請は、直前のこのIT関連のものしか直近ではないので、彼らはそういうことで一年ぐらい前から事前の色々なご相談に見えていたということです。

問)

もう一点、木村さんが会見の中で仰っていたなぜ短かったかという点なのですけれども、今長官が仰られたように非常にテクニカルというか、伝統的であるという点が非常にポイントとして大きかったということを仰った上でもう一つ、金融庁に対して万が一日本振興銀行が自己資本比率4%を割り込んだり、難しい局面になった場合は、金融庁の手を借りることなくガバナンスが早期是正措置命令を発するということを一つの条件としていくと、そういう特殊な銀行であるという言い方をされているのです。厳しいガバナンス体制を取るというのが条件として入っている。三つの条件があったから速かったと、先程仰ったITの部分、主要株主を作らなかった点、もう一つ厳しいガバナンスの体制を作っているということが速くなった条件の一つだというような仰り方をしているのです。

答)

今仰ったのは、どこからどこまでが早かった理由として仰ったのでしょうか、木村さんは。

問)

はっきりどこからどこまでとは言わないのですが、恐らく予備の申請から速かったところはそこなので、基本的にはそこの部分とか、事前相談があまりなかったということでその部分を指して言っておられるのだと思うのです。ガバナンスは普通どこの銀行も厳しくやるのではないかなというか・・・。

答)

相対で見ると別に今比較をいたしましたけれども、速かったというふうに木村さんが思われたかどうかはさておき、当方はこれが何か他と比べて異様なスピードで行われたという認識は別になく、必要な審査は全部行った。ただし、標準処理期間というものがありますから、それに間に合わせるように行っていったということでありますので、速かった理由がガバナンスがというのは、仰ったとすればちょっと私は理解できないです。ガバナンスはちゃんとしてなければ困ります。当たり前の話で、それで速い遅いという話ではないです。ただしもちろんこれがガバナンスが全くできてないと、これでは心配だということになれば、それはそう簡単に免許の申請を受けるというわけにはいかなくなる。そういう意味で簡単に免許が下りない要因にはなりますけれども、ガバナンスがきちんとしているというのは別に免許を速める要因ではなくて、当たり前のことですね。

問)

お伺いしたいのは、今何となく指摘されている面としてですね、一つは木村さんが金融庁顧問をされていてその影響力というのがこの許認可という部分で影響あったのではないかという点が一つあると思うのです。それともう一つは許認可を下す過程というのが、一般の人の関心がどこまであるか分かりませんが、もう少し改善の余地とか、許認可の仕組みというか手続き部分で、例えばもう少しなぜ1ヶ月ですよとか、なぜ2ヶ月ですよとかいったようなものとか、そういう透明性みたいなものの改善の余地があるのかないのかといった点が、金融行政的にはあるのかないのか分かりませんが、もし改善の余地があるのであれば、例えば透明性とかできるかどうか分かりませんが、そういう点だと思うのですが、この2点について長官はどのように。

答)

申請の過程で金融庁顧問を自ら辞しておられますけれども、これは元々金融庁顧問というのが別に許認可申請に関する権限を持っておられるわけでもありませんし、またそういった方がたまたま申請の当事者になったからといって特別な配慮を、法令外の場所で働かせるというようなことは私共はいたしませんし、するつもりもありません。そうしたことが働いたのではないかということの、むしろ根拠がはっきりしているのであればそれを教えていただければ、例えば今短かったのではないかというお話も、或いは配慮があった根拠の一つと報道では言われているケースもあったように思いますけれども、ご説明したのが実態でございます。私共として、金融庁と何らかの関係にある方が当事者になっているからといって、それで法令が曲げられるようなことは一切ないということを申し上げるしかありませんし、その点について疑念があると言われるのであれば、これはまだまだ信用されていないということかということで、ますます厳格に法令の適用を行っている有り様を皆さんに見ていただくしかないというふうに思います。少なくともどの件についても一般論で申し上げますが、当事者が当庁とどういう関係にあるかによって法令の運用・解釈が区別されることはないということは、はっきり申し上げておきたいと思います。

それから、そうであれば透明性をというお話かも知れませんが、特定の当事者がビジネスを行うについてコンフィデンシャルベースで当局に様々な届出や申請をなさることについてその内容の逐一や、その過程の逐一を公表することは守秘義務上これはできません。ただ今期間についてはご説明できる範囲でご説明をいたしました。これはもしかしたら例に引かれたそれぞれの銀行にとっては迷惑なことであったかもしれませんけれども、必ずしも守秘義務には触れないという判断の下に今ご説明をいたしました。こうした形で守秘義務に触れないと思われる範囲では必要なご説明は出来る限りいたします。それを具体的に何を説明して欲しいのかということを特定していただければ、それに応じて公表できる範囲のものでご説明はさせていただきます。

問)

カード犯罪についてお聞きしておきたいのですが、大臣が年明けの会見において被害の補償の制度が必要かどうか真剣に検討するというお話をされていたのですが、これに関連して的確な例えかどうか分かりませんが、例えば自宅の金庫が荒らされてお金が盗まれるという犯罪も最近急増しているのですけれども、こういった場合に金庫メーカーに補償を求める制度を作るという話はあまり出てこないけれども、銀行の預金からお金が引き出されると、銀行に一定の補償が必要なのではないかという議論がまさに今金融庁で検討されようとしていると。なぜ銀行預金については、預金者に対して何らかの補償をする必要性を検討する必要性が今あるのかと、基本的な考え方についてお聞きしたいのですが。

答)

これは損失の負担分担の問題でございます。今の金庫の例で言えば、それは金庫に明らかな欠陥があったという場合にその分担がどうなるか、或いはそうではない、例えば単に鍵をかけ忘れただけではないかという場合に誰が負担するべきかという負担の問題でございます。これはですから、金庫メーカーが金庫をあるものとしてその品質を表示し、それを信用して購入し、使用していた者がその金庫の使用に関連してある損害を被った時にどちらにどれだけ負担すべき責任が分担されるべきかというこういう問題です。銀行の場合もそれは同じだろうと思います。キャッシュカードなり、或いは印鑑のついた通帳なりといったような形をもとにしてその払い出しについての約束事が契約で決まっているわけですので、その中でどちらにどういう落ち度があればどちらがどれだけ負担をすべきかという負担ルールの問題ということであろうと思います。そう別に違った話ではないと思います。

問)

違いは制度化するかどうかだと思うのです。業界が自主ルールを作ることを求めるのか、大臣が仰ったように法制化を含めて検討をするのかは別として、一定の仕組みとして銀行業界に負担を求めていくということの必要性を、今真剣に始めなければならない理由、意義というのは何なのでしょうか。

答)

現在でもこの損失分担ルールというのは預金者と銀行の間の契約で定められているわけでございます。しかしながら、実際に生じているその偽造キャッシュカードによる損害というものの手法ですとか、或いはその原因ですとか、そういったものが当初こうした契約、或いは約款といったものが作られた当時、予定されていた程度のものであるのか、それを遥かに超えるものであるのかという現状認識があるはずでございます。また、それに伴って日本のような現金社会では非常に大きな損害が生じ得るという実態もまた明らかになってきているわけでございます。そして現実にその被害というものが急速度で拡大しているという現実があると。そういったものを考えた時に、現状のままの対応ということでよろしいのか、或いは事態が変わっておるわけであるし、何らかの見直しをする必要がないかということを検討すべきそういう段階に達しているということであろうと思います。その際に損失分担ルールというのを現在と同じように、或いは諸外国にも幾つか例はありますけれども、業界と言いますか自主ルール、或いはその業者と預金者の契約の内容の問題ということで分担ルールを考えるのか、それとも法律という形でそのルールを考えるのかということが論点になり得るということであろうというふうに思います。金融庁は現在別にこれを法律で律しなければいけないという見解に立っているわけではありませんけれども、現状のままで良いのかどうかという点については、これは見直しの必要がないかどうかは真剣に検討する必要があるという立場でございます。手法が自主的なルールによるものであるか、法律によるものであるかということを今決めているわけではございません。実効性のあるものでなければならないと思います。

(以上)

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