五味金融庁長官記者会見の概要

(平成17年1月31日(月)17時01分~17時28分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

今問題になっている偽造キャッシュカードについて伺いたいのですけれども、先週、全国銀行協会が申し合わせと言うか方針を発表しましたけれども、まずそのご評価を伺いたいのと、金融庁が2月に金融機関に対策を要請すると大臣も仰っているわけですけれども、その具体的な内容がどこまで詰まっているのか、また明日から2月ですけれども、どのような時期にどういう形で伝えられるのか、併せて伺いたい。

答)

金融機関に対しては、この偽造キャッシュカードの問題についてはその防止策、それから被害が発生してしまった場合の対応をこれまでも求めてまいりました。また「金融改革プログラム」にもこの点は触れさせていただきました。そうした中で各金融機関に置かれているATM利用限度額の引き下げですとか、或いはICカード化等、こういう動きが出てきておりますのに加えて、今お話がございましたように1月25日に全国銀行協会から「偽造キャッシュカード対策に関する申し合わせ」というのが公表されたということでございます。色々対応を考えていただいているという認識でおります。こうした全国銀行協会、或いは各金融機関における一層の取組みの強化といったことが着実にその成果を上げるということを期待したいというふうに思っております。

もう一つ、偽造キャッシュカードに関連した当方からの要請のお話ですが、この点については以前申し上げましたが、この不正行為についての実態調査を行って、その取りまとめをしております。この結果を踏まえてご要請を申し上げようと思います。その際には、問題の所在ですとか、或いは取組み上の課題ですとか、こういったようなこともお示ししながら、より実効性のある犯罪防止策を速やかにご検討いただこうということでご要請を申し上げようと思っています。要請の具体的な内容まで今ご紹介できる段階ではありません。

それから要請の時期は2月中を目途というのはまだ現状ではその程度の申し上げ方しかできません。明日から2月ですが、明日ということはないでしょうね。もうちょっと時間をいただきたいと思います。

問)

関連して伺いたいのですけれども、全国銀行協会の申し合わせと金融庁の要請というのはダブっているものなのでしょうか。そもそも性質が違うものなのでしょうか。

答)

全国銀行協会でご検討し申し合わせいただいたことというのは、これまでのもちろん私共から色々ご要請をしていることも踏まえておられると存じますが、それだけではなくて、実際に捜査当局による摘発が行われたことなども踏まえておられるでしょうし、各金融機関での経験も踏まえておられると思います。

私共がご要請する話というのは、実態調査に基づいて明らかになっている問題点等も整理をした上で行わさせていただきますが、この要請内容と全国銀行協会のおまとめになったものとは直接に関連するものではございませんが、恐らくは同じ事柄について同じ問題意識で分析をし、対応策を考えようという話ですから、この公表文の中に論じられておりますような事柄と重複するような問題意識というのもそれは示される可能性はあると思います。こちらは金融行政として利用者保護上検討していただきたいことをその時点において整理できる限り体系的にまとめて、ご要請をしたいと思っております。その要請に対する答えの一部分は既に公表された対応の中にあるというようなことも別にあっても構わないと思っております。

問)

これも「金融改革プログラム」に載っている話なのですが、評定制度についてなのですけれども、先週、評定制度研究会が発足しましたけれども、評定制度導入に向けた議論だと思うのですけれども、改めてこの時期に議論を開始された狙いと言うか目的を仰っていただきたいのですけれども。

答)

「金融改革プログラム」の中で金融行政のフェーズが、「活力」という方を追求するフェーズに転換をしたというようなことを踏まえながら、しかしその活力というのは、民間の力で実現するのだという考え方になっているわけです。こうした点を踏まえますと、やはりこのプログラムの中で示されている、色々なことが示されていますが、その中で質の良いプレーヤーが競争することでマーケットが活性化し、そしてより良いサービスが提供されるというのが大事だという視点、この視点から発してきているのがこのインセンティブ・ストラクチャーとしての評定制度だというふうに考えていただけたら良いと思います。つまり、我が国ですとか諸外国の実態を勘案して経営改善に向けた動機付けになるような、そういう評定制度というもののあり方を議論する必要があるだろうという考え方によるものでございます。評定制度の考え方、意義として申し上げるとすれば、やはり金融機関側としては、検査における評価というものが高い、即ち内部管理なりリスク管理なりの体制が非常に良好であるということになれば、それだけ検査、或いは監督の側からの要求というものは少なくなってきて、行政に対する対応に割かれる費用や時間というものが少なくて済むようなメリットがあるということが、即ち高度なリスク管理や内部管理を目指そうというインセンティブになるのではないか、こういう考え方が一つあるわけです。検査マニュアルの三つの原則でも「補強性の原則」というものです。本来金融機関が自分でやるものだけども、できていなかったら当局がそれを補強しましょうと、これをより徹底をする。

もう一つは、その際に客観的なその評定基準というものが予め示されますから、こういったそのインセンティブになるような事柄を活用しようとした場合、何をすれば良いのか予め分かる、行政の対応について予見可能性が高まるということがもう一つある。「透明性が高まる」ということです。この検査を受けられる金融機関から言えば、こういう形でより高度な内部管理を目指すインセンティブになるのではないだろうかということで、当局にとっては当然のことですが、こうした制度を入れることで濃淡のある検査を行うとか、或いは検査と監督の連携がより円滑にいくとかというメリットももちろんあるわけです。こういうようなことでありますので、プログラムではこういったものを検討しようということを述べさせていただきましたが、具体的にどういうものにするかということに到達するまでには、やはり専門的、技術的な観点からの議論というものを深めておく必要があります。なぜ今かということから言えば、そういった検討を始めるのが早ければ早いほど良いと私は思っております。いつ結論が得られるかということはさて置き、非常に専門的な検討が必要でありますから、またその評定を受ける業界の側にも色々なご意見が恐らくおありでしょうから、そういったことはできるだけ早く話を始めておく必要があるということで、今この評定の研究会を発足させたわけでございます。従って、実際結論はいつ出るのだということまで今決まっているわけでは別にないということではあります。でも、具体的な結論はそういつまでも議論ばかりしていても始まりませんから、本事務年度末、6月末ぐらい、この頃までには具体的な結論が得られればと思ってはいます。ただ今後の議論次第です。

問)

今事務年度中に研究会として結論を出すということになれば、実際に行政上の措置というか手段として実施されるのは、今年中と思ってよろしいですか。

答)

研究会での議論の過程とその内容によると思います。仮にそういう時期までに議論の結論が得られたとしても、それを制度としてどういうふうに仕組んでいつから実行するかということは、今度は行政の側の対応として考えなくてはいけませんし、或いは、研究会の結論自体の中に導入の時期とか手法について意見が示されるかもしれません。そういったものに従うということになります。ですから、これは仮にその時期に結論が得られたとして、ではいつから、ということまでは、今ちょっと予見出来ないと申し上げておきます。

問)

検査の話を伺いたいのですけれども、特別検査ですが、例年、過去の例によるとですね、今の時期を前後して通告と実際の立入検査が始まっている時期だと思うのですけれども、今05年3月期に関して、特別検査は実施するのでしょうか。

答)

お話のありましたように、昨年の3月期も15年3月期も特別検査は1月末には着手しておりますから、ぼつぼつ時期でしょうというのは、そのとおりのご指摘なのですけれども、17年3月期の特別検査を実施するかどうかは、現時点でも決定をしていません。実際に、「金融再生プログラム」の「不良債権比率を17年3月期で概ね14年3月期の半分程度に低下させる」という目標に沿って、極めて着実な不良債権比率の低下というのが見られる、そういう中で、昨年の9月には、通常はフォローアップ検査という形で行われる特別検査のフォローアップを、あえて本格的な特別検査という形にして、この不良債権比率半減目標の達成をより確実なものにしたいということで行ったわけでございます。現状では、この9月に実施した特別検査以降の動きというものをまず注目をする。それから、その時点における様々な客観情勢、金融、或いは経済を巡る客観情勢、或いは、色々な政策対応がその都度必要とされる中での優先順位、そういったものを各時点で入手可能なすべての情報の総合勘案という形で判定をしていこうということでございます。現時点では、決まっておりません。勿論仮に実施するのであれば、17年3月期の決算に間に合うタイミングでやる必要がありますから、どういう内容のものをやるかにもよりますけれども、いずれにしても、やるのであれば、そういつまでも決めないでいるわけにはいかないと、そういうタイミングにはなっています。17年3月期での不良債権問題の正常化ということに向けて、手綱を緩めずに、金融機関としても我々としても頑張らなくてはいけないと、こういう認識でおりますから、そうした中での政策優先順位というものをよく考えて決めていきたいと考えてます。

問)

実施しないと決めた場合は、公表されないのでしょうか。

答)

今ここで、中々申し上げにくいですね。従来やっているような特別検査という形での実施がない場合であっても、代わりに何かをやるのかやらないのかという選択もあるかもしれませんし、一切何もしないという選択もあるかもしれません。その政策の選び方によって、公表出来る場合と出来ない場合があると思います。

問)

今度作られる金融サービス利用者相談室なのですけれども、今日の金融トラブル連絡調整協議会の中で、相談だけでは実態もつかめなければ、きちんと消費者がどう困っているかということを中々把握出来ないのでないかと、国民生活センターなどの実際にやっていらっしゃる方々から出てきたのですね。そういう意味では、斡旋というのを、相談室の中にそういう機能を入れるべきではないかという議論があったのですが、この問題について、斡旋という機能を相談室の中に含めるというご検討をするお考えはないでしょうか。

答)

基本は、お取引自体のご相談なりトラブルの話ですから、それをご相談受けて、例えば相談すべき所を紹介するとか、関連する法令ですとか、もし契約内容をお持ちであるなら、その契約というのをどう理解したらいいのかとか、そういうことは説明出来るのでしょうが、斡旋という言葉、厳密に定義をすると、斡旋というのはただ「取り次ぐ」という意味ではなくて、「調整する」という意味が入ってきますから、そこに行政が踏み込むということには、私は非常に慎重です。そうした機能というのは、あくまで自主規制の中でやっていく話であって、そのために裁判外紛争の処理のための仕組みというのは、別途充実したものになるように、行政としても努力をしなくてはいけないと考えます。その旨は今度の「金融改革プログラム」にも述べております。そこの役割分担というのを、はっきりさせておいた方がよろしいと思います。行政はそこで斡旋をしたからといって、その取引の結果について行政庁は責任を取れるのかといっても、責任の取り様もないわけですし、厳密な意味での斡旋であればですよ。ただ勿論、金融機関にそういう話があったことを取り次いで、例えば説明ガイドラインの一環として、これはよく「債務者の方に、或いは預金者の方によくご説明してください」と、こういう要請をするということは、これはあります。これは、今でもやっている話です。そうした、金融行政上必要な金融機関に対する要請なり指導の範疇に入るものであれば行いますけれども、個々の取引の是非について、これを仲裁・斡旋して決着に導くという役割は、この相談室に行わせるのは適当でないと思います。

問)

そうすると考え方とすれば金融機関に対しては、例えばお客様からこういうクレームがあった場合には、これについて当該の銀行に連絡をした上で「これはきちんと当事者間で連絡をした上で、当事者間で話し合ってきちんと対応してください」というようなことは相談室の中でやることは考えられているのでしょうか。

答)

全ての案件をそのようにするということではないと思います。これは実際に運用を始めてからの話しになると存じますけれども、現実にこの相談室は今はないわけですけれども、各原課に相談に見える方、或いはお電話等でお問い合わせになる方のお話しを伺った中には、これについてはやはり銀行等も良くお話しをして、勿論その方が自分の名前とかそういうことを明らかにしていいということでなければ駄目なのですけれども、「これは良くお話し合いをなさった方がいいですよ」ということを銀行に取り次ぐということは、ある銀行に限りませんが金融機関に取り次ぐということは今でも行っていますし、この機能まで奪うということはかえって良くないと思います。ただ全てそうしてもらえると期待を持たれてもそうはいかない場合もあります。あらゆる苦情相談が全て消費者・利用者が100%正しいというわけではないわけですので。

問)

今日の金融トラブル連絡調整協議会の議論の中であったのは、例えば国民生活センターに苦情があったと、そうしたら「金融庁の金融サービス利用者相談室にまた取り次ぎます」と、そうするとその金融サービス利用者相談室は「いや、全国銀行協会の方によろず相談室があります」と、たらい回しになるのではないかと、何のためにあるのかよく分からなくなるという議論があったのです。そうすると何のために金融サービス利用者相談室というのができるのかという意味が分からなくなるのではないかと、そういう疑問があると思うのですが、うまく機能していく上では今の想定だけだとむしろたらい回しになるだけで、屋上屋を重ねるだけになってしまうのではないかという点があると思うのですけれども。

答)

国民生活センターの方がどう仰っていたのか私はチェックしていないので、前後関係も分からないのでコメントは控えますが、現状、金融庁において消費者からの相談というのを現実に、体系的ではないけれども否応なく入ってくるものはお相手をして受けているわけです。屋上屋と仰いましたが、この相談室ができることで今よりも状況が悪化することは決してありません。と言うのはどこに聞いたら良いのか分からない話しを、それこそ交換手に言って「どこの課で、こういう話なのだけれども」というのが一発で相談室に回るわけですから、そこには消費者相談ということのプロが金融の知見も身に備えた上で控えていて、「そういう話であれば法律はこうなっている」或いは「そういうトラブルであればここに相談すればいい」ということが整理されるということがありますので、屋上屋ということは少なくともないし、私が現場でやっている感じから言うと、今よりずっと効率的にそうした相談に対応することになると思います。

もう一つこの相談室の大きなメリットは、消費者からの、或いは利用者からの相談が一元的にそこに集約されて管理されますので、そこでその苦情のパターンですとか相談のパターンというものが整理できるわけです。それによって分析もできます。場合によるとそれは行政側に対応の欠陥があるためにそうした苦情が頻発しているのではないかということが、原課とは違う相談室という目で分析をすることができるというメリットがあります。これは当然原課にフィードバックされていかなければならないというものです。

なお、たらい回しという話との関係で言えば、一つこういうことがあり得るというのは申し上げておかないといけません。極めて技術的な専門的な法令解釈ですとか、そういうものが必要な問い合わせがあった場合というのは相談室では対応し切れなくて、そこからその法令を担当している専門の課長補佐なり係長なりという所に回ることはあります。それはたらい回しということではなくて、必ずしも責任ある回答をするに十分な能力を、そうあらゆる金融分野において持っている人がやるわけではありませんので、そのケースは有り得るということです。それ以外のケースではやはり自主規制機関で解決をしていただくというのが基本ということであれば、今でもそうしている話がより効率的に、一元的に行われるようになると、私はそれを期待しております。運用してみて「色々おかしいではないか」というお話があったらまた金融トラブル連絡調整協議会等で教えていただいて改善していきたいと思います。

問)

先週末発表されました三菱自動車の再建計画についてなのですけれども、不良債権の政府目標を掲げられる中、どう評価されているのか。今日はマーケットの評価は若干下がっているようですが如何でしょうか。

答)

同じ答えになってしまうのですけれども、特定の企業の再建計画であるということで、それが関係する金融機関の数は多いのですけれども、主としてある特定の金融機関の債務者であるというお話ですので、それについて具体的なコメントは控えなければいけないと考えています。それこそ仰るようにマーケットが評価するお話しであろうと思います。一般論で従来から申し上げているように、再建が必要になった債務者がいるということであるのならば、その再建計画というのは当該債務者において内容のしっかりした再建計画、市場から評価してもらえる再建計画、こういうものを作ってしかもそれを着実に実施していく。そういうことで事柄は解決されていくものであると考えています。

問)

偽造カード被害者補償制度の見直しについて二点お聞きしたいのですが、まず第一点は、全国銀行協会会長が記者会見で「手口の解明とか判例が不十分であるという理由から、結論を出すのは困難である」というふうに仰ったのですが、この全銀協の認識は金融庁の認識とかなりギャップがあると思われるのですが、この点について如何お考えかというのが第一点。それから補償制度の見直しについて2月中目途という金融庁からの要請の中に、それを盛り込み得るのかどうか、或いはその被害者補償制度の見直しについてはもう少し金融庁としても時間を置いて考え方を示すお考えなのか、これについて教えてください。

答)

第二点目について2月中に要請しようと考えておりますのは、より実効性のある犯罪防止策、これを速やかに検討して欲しいということです。補償の枠組み全体まで含めての要請ということを現状念頭に置いているわけではありませんし、実態調査というのもこうした犯罪防止策を検討する上での問題の所在ですとか、取組みの課題という意味でございます。

それから一点目でございますけれども、私共の考え方は従来から申し上げている通りでございまして、諸外国では自主ルールで対応している所もあるし、或いは法律で対応しているような所もある。要するにカード所持者の負担を制限するための方法というのはそのようなことで、どちらのやり方もあるようなのですけれども、別に現時点で法律改正が必要という認識を我々が有しているわけではありませんけれども、外国の例等も参考にしながら利用者保護の実効性を確保するということからして、現状の対応でよいのか、これは見直しをする必要があるのではないか、こういった点を真剣に点検するというのが今の考え方です。要するに犯罪が巧妙化しているという状況も踏まえてどう考えたらいいのか、見直しの要否を真剣に検討するというのが私共の考え方です。現時点において最終的な結論を出せるのか出せないかと言いますけれども、検討することはできるわけでございまして、検討した結果、最終的な結論が出せないということは何も見直さないでいいということを本当に意味しているのかどうか私は疑問なのですけれども、検討することは当然できるはずでありますので、我々は検討します。

(以上)

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