五味金融庁長官記者会見の概要

(平成17年2月21日(月) 17時03分~17時25分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

特別検査からお伺いしたいのですが、過日大臣が検査対象を縮小して今期末も継続するとのご表明がございましたけれども、主要行の不良債権比率が4.7%と着実に低下傾向を示す中、特別検査の役割は既に終えたかどうか、この辺りについて長官のご所見をまずお伺いしたいのですが。

答)

仰るように、16年9月期で主要行の不良債権比率は4.7%まで低下をしたということと、その後の第三四半期、12月末の状況を見ても、主要行全体の不良債権比率は引き続き低下の傾向にあるということですので、「金融再生プログラム」の目標達成というのは視野に入っている、これはそういう認識でおります。また自己査定と検査結果の格差、これを踏まえますと、自己査定の質的向上というのは、主要行で確実に図られてきています。厳格な資産査定が浸透していると言っていいと思います。こういう状況を勘案すると、現時点の判断として特別検査を主要行11行全部に対して実施する必要性は低いというのが認識です。ただ「金融再生プログラム」の最終段階ということでございますので、16年9月期の特別検査の対象債務者の一部に対してリアルタイムによるフォローアップをしておくと、そして17年3月期における債務者区分の正確性を確認するという必要性、これは認められると考えています。そうしたことから今お話がありました特別検査限定フォローアップというものを一部の大口債務者に絞って実施することにしております。

これまで実施してまいりました特別検査というのは、検査の原則であります事後検証、これの例外であるということですので、どうしてこういうことをやってきたかというと、「金融再生プログラム」の下で進めていた或いは進めている不良債権問題への緊急対応という施策として行なわれたものだということでございます。従って今後については、「金融改革プログラム」というもので新たなフェーズに入るということでございますから、原則としてすべての検査は事後検証方式で行なうことになります。要すれば今回予定をいたします限定フォローアップというのは、リアルタイムで債務者区分を検証するという検査の締めくくりになります。ただ17年3月期というのは、不良債権問題の正常化の目標の時期でございますから、その時期における自己査定の正確性というものを限定的に確認しておこうと、こういう考え方に立っております。

問)

偽造カードの業界への要請なのですけれども、いつ要請されるのか。これまでの検討状況、進捗状況をお伺いしたいというのが一点と、この問題に関連して監督局にスタディグループが出来るようですけれども、事後補償に関しましては、自民党・与党の中で立法化の動きがございます。それはそれとして別にという部分で意義なり狙いなりがございましたら、長官のご所見を賜りたいと思います。

答)

まず偽造キャッシュカードによる不正行為については、実態調査を行って、その調査結果の取りまとめを今行なっているという状態です。この結果に基づいて、実効性のある防止対策を金融機関に要請する、これを今月中と言っております。今月というのは、今週と来週の月曜日でございますので、その間には必ず要請をいたします。できるだけ、しかも可能な限り早いタイミングで、取りまとめを行なって要請をしたいと考えています。いずれにしても、まだ実態調査結果の取りまとめとそれを踏まえた取組みの課題を精査中という段階でございます。

それから今、研究会の話がございましたが、金融庁内に偽造キャッシュカード問題に関する研究会を作ろうという検討をしております。ただ最終的な調整を行なっている段階ですので、まだその日程なりメンバーなりということをお知らせできる段階ではないということでございます。この偽造キャッシュカード問題を検討します時には、予防策もそうですし、それから事後の補償の問題も含めてでございますけれども、色々な専門家からの御意見を伺っておく必要があると、特に法律、或いはコンピューターシステムの専門家の御意見というものをこれまでも伺っていますが、更にそこをよく伺って、今後補償のあり方なりについて真剣な検討をする必要があると考えています。そんな視点から与党で色々御議論も当然おありでしょうが、やはり行政の当然の責務として、被害者に対する補償のあり方を含めて、現在のままでいいのか或いは変える必要があるのか、それは銀行約款の問題として議論するのか或いは法律の問題として議論するのか、こういった点については、真剣な検討が必要だと思いますので、こうした専門家にお集まりをいただいて研究会という形で議論を進めたいと考えています。

問)

ライブドアの関連ですけれども、TOBの規制対象に時間外取引を含めるか否かという議論の是非について長官のお考えをお聞かせ願いたいというのが1点と、金融庁内の議論の結論を出す時期とも関連してくると思うのですが、予算非関連の法案の提出期限までに結論を出す必要性についても併せてお伺いできればと思います。

答)

取引所の立会外取引というのは、取引所有価証券市場における取引という位置付けですので、公開買付規制の適用対象にはなっていないわけです。ただし、立会外取引というのは使い方によっては相対取引と類似した形態になり得ると考えられますので、この公開買付規制の対象とすべきか否かについて、今後検討していく必要があるというふうに考えています。これは投資家保護の問題ですから、可能な限り早急に検討を行うことが望ましいというのが私の考えです。ただし、より具体的に今後の進め方、例えば今仰ったような法案の提出期限ですとか、そういったこととの関係となりますと、中々具体的なことを申し上げられる段階にないというふうに考えます。出来る限り早急にと言いますのは、この公開買付の規制というのは発行者の株券等を一定の割合を超えて保有することになるような、そういう買付けを行うという場合には、それを投資家の皆さんに平等にディスクロージャーという形で知らせて、そしてその当該対象になっている株主の皆さんに公平に売却の機会を与えると、こういう趣旨で行われるものですから、そういう趣旨の規制ですので、これは取引自体を規制しようということではなくて、そういう取引が行われるについては、皆に平等にチャンスを与えるようなそういうディスクロージャーをしましょうと、こういう投資家保護からの視点からの規制でございます。だとすれば、そこに法律上問題があるかもしれないという認識を持った以上、可能な限り早い検討が必要。ただ、結局これはそういった趣旨が実効性を持って活かされるような制度になっているかどうかという点は、出来るだけ早く確認をして、もし問題があるのなら、投資家保護が実効性を持つように変えなければいけないと。出来るだけ早くした方が良い。ただ、立会外取引というのは、取引所の大事な機能の一つですので、そうした市場の機能というものをよく睨んで、何か変える必要が仮にあるとしてもどういう変え方をしたら良いのかというのは、これはきちんと検討しないといけない。パッチワークのように何かポッと塞いでしまえば良いということにしますと、逆にそれが市場の機能を殺してしまうということも起りかねません。そういう意味では、ある程度検討をきちんとする時間も必要だというようなことで、ちょっと今具体的にこういう運びでいつまでにということが申し上げられる段階にはないということでございます。

問)

ライブドアに関連して、また一方で株式分割のあり方について、これでいいのかという問題点も指摘されているのですけれども、100倍に分割するとか、その辺りについて現状の制度に問題はないのかどうかお考えをお聞かせください。

答)

申しわけございません。ちょっと株式分割に関する問題意識というのを明確に持っていないものですから、ちょっと勉強させて下さい。

問)

ライブドアの関係なのですけれども、堀江社長が20日のTV番組で「時間外取引について事前に金融庁に相談した」と言っているのですけれども、そうした相談が実際にあったのでしょうか。もしあったとすれば、いつ、どこに、どのような内容の相談が具体的にどちらからされたのでしょうか。あと、金融庁としてこれにどう回答したのでしょうか。

答)

基本は個別事案のお話なので本当はコメントしないということが良いのだろうと思いますが、当の御本人が問合せをしたと仰っているということですから、その限りにおいてお答えをしておきますと、金融庁で調べてみましたけれども、金融庁では最近「ライブドアである」、或いはその「代理人である」というように名前を明かして、会社名を明かした上で相談を受けたという事実は確認されておりません。ただし、この公開買付制度に関する質問というのは、実は日常的に色々な方から寄せられているのです。その際に名前を名乗られる方もいるし、名乗られない方もいる。或いは名前はお名乗りになるけれども、所属は仰らない。ましてどこの会社の株を買おうとしているなんてことは絶対に仰らないわけで、だからそのお問合せというのがあったかどうかが確認できないのです。問合せをなさったということであれば、何かそういう一般的な形でなさったのかもしれません。

それから答えですけれども、公開買付制度に関する内容が「取引所の立会外取引は公開買付規制の対象になるかどうか」という、こういう御質問だった場合、実はこういう御質問が一番多いのですけれども、こういう御質問が来た場合には、従来から「立会外取引は公的買付規制の対象外である」という趣旨のお答えをしております。これは金融庁においてそういうお答えをしておりますので、場合によるとそういった一般的なやり取りをもって今のようなお話をなさったのかもしれません。それ以上はちょっとこちらで確認できません。

問)

確認なのですけれども、時間外取引の問題で、要はこうした形で3分の1超の保有を目指して、いわゆる経営権の取得を目指して、株式取得を大量にするというために時間外取引が使われるということについて、これはやはり制度的に欠陥というか、抜け穴みたいになってしまっているという御認識なのでしょうか。

答)

抜け穴というふうになっているかどうかを含めて検討する必要があるというのが今の正確な姿勢でございます。先程ちょっと申しましたことの繰り返しになりますが、公開買付制度というのは、今仰ったように少数の株主からの買付けだったら買付けの後の株券の所有割合が3分の1を超える場合、それから通常もっと多数の方から買い集める時はその買付け後の所有割合が5%を超えるような結果になるような、そういう買付けである場合。こういう場合というのは、買付けをする人は買付けの期間とか数量とか、或いは価格とか、いったようなものを予め開示をする義務があるということにして、株主の皆さんに公平に売却の機会を与える。結果、どなたが相手に選ばれるかはともかくとして、そういう仕組みなのです。だからこれは投資家の人が公平に売却の機会を間違いなく得られるようにという趣旨ですから、これが取引所における立会外取引という手法を使った時には、およそどういうケースであれ公開買付制度の対象にはならないというのが、こうした投資家保護のために設けられた制度の実効性というものを損なっているのかいないのかということを検討し、損なっていないならそれで良いのですけれども、損なっているということであれば、何か変える必要があるかどうか、今度はどう変えたら良いのかということを検討しなければならないと、今はそういう認識の段階におります。

問)

それに似た質問で恐縮なのですけれども、実際に経営権取得を目指して時間外取引が使われてしまったわけで、今現段階で規制がない中、こういうことがまた起こり得る可能性があると思うのですけれども、このように経営権取得を目指し、時間外取引を使うことについて長官御自身がどう思っていらっしゃるかをお聞かせいただけますか。

答)

繰り返しのような御質問に繰り返しのようなお答えで恐縮ですが、投資家保護のために設けられたこの制度がその実効性を発揮していないとすれば、できるだけ早くこれを改める必要がある。だけれども本当にそうなのかどうか、或いはそうだとしてどう改めたらいいのかということについては、この立会外取引といったものが市場において果たしている機能といったようなものも良く考えた上で結論を出す必要があると、こういうことでございます。

問)

明治安田生命ですけれども、金子社長が記者会見で彼等自身非のあるところを記者会見で認めたわけなのですけれども、契約者の立場からすると断じて許されないことであると思うのですが、それについての金融庁の対応をお願いします。それからもう一点は、あの問題については生命保険業界の構造的な問題ではないかという指摘もあります。その辺についての見解と二点お願いします。

答)

明治安田生命が死亡保険金の支払において不適切な取扱をしたということで記者会見をしておられますが、この件につきましては当局として明治安田生命から調査結果等の報告を受けております。この報告を見ました上でのことですが、保険金の支払というのは保険会社の基本的かつ最も重要な機能であるということでございますから、この報告にあるような不適切な取扱がなされたということは極めて遺憾なことであると考えております。御質問の趣旨は「で、どうするのか」ということも入っていると思いますが、現在この報告内容について事実関係、それからこうした問題が生じた原因等を報告に基づき精査しております。この精査の結果を踏まえて法令に基づいた厳正な対処をしていくということになります。

構造的な問題かどうかというお尋ねですけれども、金融庁では従来から当局に寄せられます苦情等の様々な情報に基づいて保険会社が問題となり得る行為をしていないかどうかを把握するよう努めておりますが、本件に関しましては他の大手生命保険会社の保険金等の支払状況についても調査いたしました。現在把握している限りにおいては他社、つまり明治安田生命以外の生命保険会社において、この会社と同様の問題が生じているということはないと承知しております。ただ引き続き適時適切な保険金の支払、これは保険会社の基本的な機能の一つですから、この適切な支払が行われるように十分注意は払っていく必要があると考えております。

問)

関連してもう一つ、違法募集と言うか告知義務違反の部分も内何件かあったという報告もありましたが、その点についてはどうでしょうか。

答)

同様でございます。その点についても調査して、同様の問題が生じているという認識はございません。

問)

繰り返しになりますけれども、TOBの見直しの検討をこれからなさるということなのですが、先程の質問にもありましたように、政府提出法案で予算に関連しない部分というのは3月中旬までに出すというのが一応の決まりごとになっていまして、いずれにしてもどういう検討結果を出すにしても今回の国会で、今走っている国会で3月中旬までに法案を出すというのは物理的に非常に困難のような印象があるので、何か対応する場合にしても次期国会で対応するということではないのでしょうか。今国会で何らかの対応はし得るのでしょうか。

答)

現時点では可能な限り早急に検討して、必要があれば可能な限り早急に対策を打つということまでしか申し上げられません。それが法律改正ということであるかどうか、まだ結論が出ているわけではありません、それが法律改正というものが必要であるということになった時に、それは内容次第だろうと思います。今国会に間に合うようにということもできるなら、できるだけ早急にということですからそうするべきでしょうし、無理であるとして他にどういう手があるかということも考えなければいけないと思います。まだ実際に何をどう変える必要があるかという点が確定しているわけではありませんので、ちょっとはっきりしたお答えが今日のところはできないと、申し訳ないと思うのですけれども。

(以上)

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