五味金融庁長官記者会見の概要

(平成17年2月28日(月) 17時02分~17時20分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

ペイオフ解禁拡大までいよいよあと一ヶ月と迫りました。現在の金融システムを見まして十分これを受け入れられる環境にあるのかどうか、そういった辺りにつきまして伺いたいと思います。

答)

現在の状況ということになりますと、金融庁がこれまで金融機関に対して不良債権問題の積極的な取組みということを促してまいりました。また日常の検査・監督を通じたモニタリングで健全性確保ということについての働きかけもずっと継続してきております。こうした取組みを通じまして、金融機関のリスク管理態勢、或いは資産査定の信頼性、これが全体として大幅に改善している情況にあると認識しております。またそれを反映する形で我が国の金融機関を全体として見ると不良債権比率の低下、或いは自己資本比率の向上といったようなことが見られるわけでございまして、総体として金融機関の安定性は改善しているという状況にあると考えています。ペイオフの解禁拡大を予定通り4月から実施することに支障のない状況になっていると認識をしております。

問)

予てから検討を続けています立会外取引についてですけれども、今日も大臣が国会で法制化を視野に検討を進めているというお話がありました。現在の検討状況につきまして改めて伺いたいと思います。

答)

立会外取引というのは使い方によっては相対取引と類似した形態になる。そしてこれを放置すると公開買付制度の形骸化を招く惧れがある。これが今回のライブドアの立会外取引における買付によって現実の惧れということになってきたわけでございます。従って現在、立会外取引を公開買付規制の適用対象に加えることができるようにすることを視野に入れた検討を進めているという状況でございます。今後与党等とも相談しながら更に検討を進める必要がございますが、現段階ではまだ具体的内容について確たることを申し上げることができない状況であることは御理解いただきたいと思います。

問)

先週末、明治安田生命に対して、生命保険業界に対しては過去最も厳しいとも言える処分が出されました。それを受けまして金融庁として生命保険協会に対して、改善策についてのガイドラインの策定を要請したとも伺っております。まず個社の明治安田生命に対して今回の措置を受けまして今後求めていくもの、それから業界全体に対して求めていくもの、その両点につきまして伺いたいと思います。

答)

今回は明治安田生命が保険金の支払において法令違反に当たる取り扱いをしていた、或いは内部管理態勢上問題が認められたということで行政処分を行いました。保険金の支払と言いますのは保険会社の基本的かつ最も重要な機能でございます。何かあったときに保険金の支払を受けるということを目的として皆様は保険契約をなさるわけですので、この部分がきちんとしていなければ保険会社としては失格であるということであろうと思います。従いまして今回の事態は極めて遺憾なことであると考えています。明治安田生命におきましては今般の処分を踏まえて、まずは徹底した原因究明を行っていただきたい。そしてこれに基づく業務改善策というものを今作っていただいていますけれども、徹底した改善策を策定し、そしてこれを適切に実施・実行していただくこと、これを期待したいと思います。当庁としてもこの点は注意深く見ていきたいと考えています。

それから業界全体についてのお話でございますが、先程も申しましたように保険契約者、或いは被保険者からの請求があった場合の適切な保険金の支払というのは非常に基本的な役割でございますから、この点について国民の皆様が今回の事案を基に業界に対する信用ということについて疑念を持つというようなことであったならば、これは大きな問題となり得る。従いまして今回の事案については生命保険業界全体に関わる問題として、これを認識した上で対応を考えるという必要があろうと考えます。今申し上げましたのは他の会社で同じことが起こっているということを申し上げたのではなく、こうした事案がきっかけになって業界全体の信認が揺らぐことがないように当局としてもきちんとした対応をしたいと、こういう意味でございます。

このために今月25日に生命保険協会に対しまして告知に関連をして外部の専門家等を含む体制で検討を行っていただきたい。その上で自主ガイドラインの策定等を図り、その結果を当局に報告していただきたいという要請を行いました。

具体的に検討していただく内容として申し上げましたのは、一つは保険契約者、或いは被保険者から正しい告知を受けるための保険募集時の説明等のあり方、このあり方にはモラルリスク対策の強化のための方策も含みます。モラルリスクと言いますのは所謂本当の保険詐欺です。

それから二番目は告知義務違反に詐欺を適用する類型というものはどういうものなのか、これを明確化して詐欺による保険金支払の拒否ということの運用に当たって留意すべき事項を整理するということ。

三番目に例えば病歴等現にあるということで正しい告知を行う保険契約者、或いは被保険者、こういった方達が不当に保険契約から排除されないような、そうした商品のあり方といったようなもの、こういった点について自主ガイドラインの策定をお願いしたいということを要請しました。

協会におかれては専門家等の意見も踏まえて十分御検討いただいて、実効性のある自主ガイドラインの策定を行っていただきたいと考えておりますし、またそういったものが作成されました折には、生命保険各社におかれてそのガイドラインに基づく適切な業務運営を行っていただけるよう期待したいと、こう考えています。

問)

先日大臣が会見で金融経済教育に関わる懇談会を設置するとの発表がありました。金融経済教育につきましては、その必要性について予てから言われてきたことだったのですけれども、今回の懇談会の設置を受けまして金融庁としまして具体的にどのような取組みを考えていらっしゃるのか、長官の考えを伺いたいと思います。

答)

今回の懇談会には様々な教育の専門家の方だけでなくて、実際に商品を扱う方もそうですし、それから金融教育ということに造詣の深い方にも入っていただくというようなことで、教育の現場から金融の現場まで含めた方達、しかもその方面に御関心の深い方達という方にお集まりいただきました。従いましてこの懇談会でお金との付き合い方とか、金融との関わりとかいうことを学ぶ機会というのを増やすにはどうしたら良いのか。どうしたら良いのかというより、まずは世の中というのはお金の動きということによって色々な発展の仕方をするものであるし、同時にお金の出し手である個人の方もそのお金をどう使い、どう運用するかで自分の人生設計なり、或いは世の中にどう貢献するかということにまで、色々な役目を果たすことができるということ、こういった基本的なことを学校に通っている時代から社会人になった後の時代まで、色々なライフステージに応じてどういうふうに認識してもらったら良いのかということをこの懇談会で幅広く御議論いただきたいと考えているわけです。

金融庁として何ができるのかというお話ですが、まさに金融庁として何ができるのかも含めて、或いは何をしなければならないのかも含めてこの懇談会で幅広い御議論をいただきたいと思います。今から「金融庁の方が偉いのだ」というような形で「役所はここまでしかしない」とか「役所はこれはやるから黙っておれ」とかというような姿勢ではなくて、非常に基本的な人生におけるお金とか金融とかいうものの意味、或いは社会が運営されるということの中でのお金なり、金融というものの意味というところからスタートして、行政がそうしたことについての国民の皆様の認識というものを育てていくための役割というのはどの辺にあるかも含めて、この懇談会で御議論いただこうと思います。でしゃばり過ぎてはいけませんし、かといって「自分で考えればよろしい」と言って引っ込んでいって良い話でもないと思っています。その辺、懇談会の御議論を良く伺いながら考えたいと思います。

問)

先週末に自民党の会合で内閣法制局が課徴金制度の導入について、憲法上の問題等を指摘されて、金融庁との認識の違いも改めて浮き彫りになったわけですが、今国会に提出予定の証券取引法改正案に盛り込むことが可能かどうか、足下の検討状況をお聞きしたいのですが。

答)

継続開示書類の虚偽記載についての課徴金制度の導入が今課題になっているわけですが、現行の証券取引法の体系の下で、継続開示義務違反に対する課徴金制度を導入するというためには、この義務違反により会社に生ずる経済的利得を定量化する必要があります。しかしながら、この点に関しては、継続開示義務違反による利得は、抽象的・間接的であって、利得があるとは言えないのではないか等の指摘がある、つまり、そういう形での法制化には無理があるのではないかとの指摘もございます。金融庁では、この点についての法制化に向けて最後まで努力していきたい、つまり、今国会の証券取引法の改正の中にこれを盛り込みたいということで、最後まで努力していきたいと考えておりますけれども、現段階では、法制化の見通しが立っているとは言えないという実情にございます。まだ、しかし、これは、議論を続けさせていただきたいと考えております。

問)

今の件に関連してなのですが、次期国会に議論を延ばすということなのでしょうか、それとも、今国会に出せる可能性も少しばかり残っているというお考えでしょうか。

答)

私は、今国会への提出について、もちろん最後まで努力する意味で、法制化に向けてということを申し上げました。法制化に向けて更に別の視点から検討を進めれば、時間はかかるけれども法制化は可能だという結論になるのかどうか、この辺はまだ議論をしているところでございまして、少なくとも、今国会に当初私共が考えていたような形で提出をするということについての努力については、現状もそれを続けているということです。

問)

保険の銀行窓販についてなのですが、いつか忘れましたが、このような会見の場で早急に結論を得たいというお話があって、明日から3月なので、当初のお話だと4月から部分解禁だと思うのですが、現状のスケジュールについてお聞かせください。

答)

関係業界と審議会報告を踏まえた上で調整をしているのですが、論点はずいぶん絞られてきているのですが、未だ調整が終わらないという現状です。従って、例えば、一年後からということで、先行解禁をするというこの報告書との関係で言いますと、この先行解禁の実施時期は、銀行等における準備等を考えますと、4月というのは困難になっているということは認識をしています。ではいつからということではなくて、できる限り早期にということで引き続き調整を急いでいるというのが現状です。

問)

遅くとも3年後に全面解禁という方針に変更はないのでしょうか。

答)

先行解禁が当初目指していた、4月というのが困難になるということがあったからといって、全面解禁が平成19年4月からの実施ということについて、困難な状況になるといった認識ではございません。

問)

三井住友フィナンシャルグループがこの後、業績予想の修正の記者会見を実施するというアナウンスがあって、不良債権処理の抜本的な実行に伴う業績の下方修正と言われているのですが、一般的な評価でもかまいませんので、何らかのコメントをいただければと思います。

答)

お尋ねが一般的評価でもというお話でしたので、一般論で、業績下方修正ということについてお答えします。個社のお話ではなくということでございます。不良債権の処理であるとか、或いは経済環境なり、利用者のニーズに伴う経営戦略の変更に伴って、臨機応変に財務的な状況の変化を察知してこれをディスクローズしていく、或いはそうした状況の変化に対応する財務上の手立てを講ずることで、もし業績の見通しに変化が生じるのであれば、それは必要な手続きを取った上でディスクローズをしていくことは、当然のことながら大変大事なことだと思います。ディスクローズすることも大事ですが、その前に経営を安定させる、或いは経営を強化する、それによって利用者の期待に応える、或いは株主の期待に応えるという視点から、不断に経営の見直しを行われ、その結果、必要であれば財務上の措置も取られるということは、健全経営をしていただくべき銀行にとっては、ある意味では当然のことだろうと考えています。これは一般論です。

問)

保険の銀行窓販について、論点はずいぶん絞られてきているということだったのですが、それはどういった点でしょうか。

答)

現状では、販売チャネルです。既存の販売チャネル、例えば、代理店とか、こうした既存の販売チャネルへの影響をどのように配慮するのかといったような点等に大体絞り込まれてきております。先行解禁に関してですね。

問)

今のお話は損保について仰ったのですか。

答)

一般的に販売チャネルへの影響ということです。損保の場合は代理店であるし、生命保険であれば営業職員の皆さんということもおありだと思います。具体的にどれがというところまでについては、調整中のことなので申し上げにくいことを御理解いただきたいと思います。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る