五味金融庁長官記者会見の概要

(平成17年4月11日(月)17時03分~17時13分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

不良債権の集中処理期間というのが今年の3月末で終わったわけですけれども、これを受けて大手銀行の間で不良債権処理のための専門会社、これを解散するような動きが相次いでおります。更に、このところ抑えてきた新規採用、これも増やすような方向で検討しているとのことです。緊急時から平時ということで、金融システムが移行期にあるこの時期に、大手銀行に対してどのような経営を期待されるのか、また当面の課題としてどのようなことが考えられるのかについてお聞かせいただければと思います。

答)

大手銀行というお尋ねですので端的に申し上げますと、まず第一に期待することは、収益力と競争力を付ける経営というものに注力していただけたら良いと、それは即ち、日本の金融機関を利用する立場の、これは消費者に限らず企業も含めた金融機関を利用する立場の人達にとって、こうした環境の下では是非とも必要なものであろうと思います。これまで負の遺産の処理にその資源の大半を投入してきたことから、当然銀行にとっても辛い時代でありましたが、利用者にとっても大変辛い時代であったと。これが日本の経済の発展などに対する様々な悪影響を持ったということは間違いのないところですので、ここをしっかりやっていただけたらということです。どうやって収益を上げるかということを当局は言いませんが、少なくとも利用者側の求めるもの、利用者のニーズというものを的確に掴んでもらって、それと自らの特色、金融機関としての特色、或いは目指すものを上手くマッチさせることで収益力・競争力というものを付けて行っていただけたらと、これが第一点です。

第二点目は、それに伴って必要となるリスク管理の高度化、これを是非やっていただきたい。これまでとは異なる経営の方向に当然なるわけです。将来を向いて競争力を付ける、或いは収益性を高めるということになりますから、リスクプロファイルは当然大きな変化をするはずです。或いはしない銀行もあるかもしれませんが、多くのものはそういった変化が起こるはずですので、それに応じたリスク管理の高度化をしておいていただく必要がある、これが第二点目です。特に、手数料ビジネスとか証券化ビジネスとか、いわゆる預貸ビジネスとは違う分野に重点を置いて進出しようとなさる所は、ことのほかこの点は重要になるということ。また、預貸ビジネスにおいても当然ですが、バーゼルIIといったものへの対応はこれまでなかった話ですが必要となってきます。こうした点に抜かりなきを期していただきたい。

第三点目は、ご質問の中に出てきました不良債権処理のための専門会社の解散などにも関連する話ですが、これはこれで経営の御判断だと思いますが、「金融改革プログラム」にも書いてありますけれども、折角ここまで不良債権問題を克服してきたその努力と、その努力の成果としての信用リスク管理のレベル、これを落とさないで欲しいということでございます。なかんずく、大口の債務者に対する与信管理というもの、これについては念入りに考えていただいて、この点で再び不良債権問題の再燃といった間違いが起こらないように、是非しっかりした信用リスク管理を行っていただきたいということでございます。

課題や期待するものが混ざってしまったようですが、このような三点を私としては申し上げたいと思います。

問)

「金融改革プログラム」の中で、不良債権の転売市場のようなものの高度化・充実というものを打ち出されていたかと思うのですが、大口債務者の与信管理、この仕組というのは、依然まだ大口債務者が特定の銀行に集中している状況が改善されていないという見方もありますけれども、現状どのように認識されていますでしょうか。

答)

大口与信は、現状確かにメインバンク制と言いますか、特定の大口債務者が特定の金融機関と深いつながりを持つ状況が現状であるのは事実です。そのことの良し悪しは、私は論じません。ただそういう形での与信を持っている以上は、その管理というのは今後も極めて重要であると。経済が多少良くなったとか、或いは自らの銀行の足腰が強くなったということで手を抜いて良い話ではありません。

前から申し上げていますが、大口の与信をする場合は、そこで失敗をした場合、いわゆる統計的な大数の法則は働きませんから。中小企業にたくさん貸していて潰れた銀行はないわけです。大口の与信で失敗するから、非常に大きなリスクを被るわけです。この点を是非忘れないで欲しいということです。

問)

貸金業の規制を巡って金融庁内で懇談会が立ち上がり、検討作業が始まりました。一方で自民党の中でも同様の検討の場が設けられているようです。貸金業について、昨年大きな制度改正が行われたところだと思うのですけれども、この時期に庁内で検討の枠組みを設けた理由というのはどの辺りにあるのか、これをお聞かせいただきたいというのと、上限金利の問題ですが、これを更に引き下げるべきだという意見がある一方で、健全な業者については引き上げも容認すべきだと、こんな意見もあるようです。こうした論点も含めてどのような制度上の検討課題が今存在しているのか、この辺りをお聞かせいただけますでしょうか。

答)

庁内での検討の枠組みをこの時期に設けた理由という点を申し上げます。いわゆるヤミ金融対策法、これが仰いました昨年の大きな改正点で、施行されたのが昨年の1月です。この附則の中に二つ課題がございまして、一つは貸金業制度のあり方について、この法律の施行後3年を目途として検討を加え、必要な見直しを行うというのがございます。もう一つ、出資法の上限金利についてこの法律の施行後3年を目途として検討を加え、必要な見直しを行うと。施行が昨年の1月ですから、もう既に1年以上経っておりまして、3年後を目途としてと言っても今からカウントしますと2年を切っているような状況にきております。そんなタイミングになっていて、改正法の附則でも検討すべき事柄が示されているということでございますので、こうした検討状況の趣旨を踏まえて、貸金業制度などのあり方について幅広い観点から勉強をしていく必要があるということで、今般、貸金業制度に関する懇談会を総務企画局長の懇談会という形で開催をすることにしたわけです。

検討の項目ですけれども、貸金業者の上限金利の引き下げ、或いは引き上げといった点ですが、この点は今御紹介申し上げた施行後3年を目途として検討されるべきものの中にも上限金利ということが入っております。これは、検討項目ということに当然予定されているわけです。こうした制度上の検討課題というのはこの点に限らず、懇談会で幅広い視点から勉強を進めるということにしております。これは懇談会で話をしながら、論点自体もどういう点を検討していかないといけないか、見直しという視点から再検討が必要かという点自体もこれから議論をすると、今そういう段階でございます。

(以上)

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