五味金融庁長官記者会見の概要

(平成17年4月18日(月)17時02分~17時25分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

中国における反日デモの関連ですけれども、この週末にかけても上海で大規模なデモが行われるといったような出来事が起きていますけれども、日本の金融機関の被害状況等について何か報告が入っておりましたらお聞かせください。また、注意の呼びかけ等何らかの対応を金融庁としてしていましたらそれも併せて伺いたいと思います。

答)

まず日本の金融機関の被害状況について申し上げます。先週末に行われましたデモ活動において、新たな被害が発生したという報告はありません。その前の週末におきましては、4件の被害が出たという報告があります。被害の内容は、ガラスの破損や落書きということでございます。ちなみに中国に進出している日本の金融機関の支店・出張所・駐在員事務所、合わせまして136でございます。被害の状況はそういったところです。

それから金融庁としての対応でございますが、外交ルートでの話し合いは続いておりますので、それはその推移を私共は見守ることはいたしますが、金融庁独自の対応といたしましては、先々週から各金融機関の国際業務部門、在中国の日本大使館、これらとの連絡を密にとり合いまして、週末における被害の状況、或いは平日における営業に与える影響、こういったものを把握するように努めているところでございます。

なお、先程4件と申し上げましたが、この被害によって営業に支障が出たということはございませんでした。今後も、現地の状況を注目して情報収集に努めるというのが当然私共としての対応でございます。もし、営業に支障が出る等の問題が確認されるような事態になりますれば、必要に応じて現地の金融監督当局とも協力をしながら適切な対応を取りたいと思っております。現状そういったことは予想されていません。

問)

偽造キャッシュカードに関することです。金融庁内のスタディグループ、当初予定しておりました4月中の報告書のとりまとめを先延ばしすることを決めました。盗難カードへの対策について、より詳細な検討が必要という説明だったかと思いますが、盗難カードの問題では、西川全国銀行協会会長も国会でその対策の必要性について言及したかと思います。金融庁として、約款の見直しが盗難カードについても必要かどうかといったような点も含めて対策が必要とお考えなのかお聞かせください。

答)

盗難のキャッシュカードについては、仰ったように国会、或いは与党における御議論や世論の動向を踏まえてスタディグループの検討項目とすることにいたしたわけですが、どんな点をというのは、まさにこのスタディグループでよく御検討をいただいてということになるかと思います。ただ、盗難キャッシュカードの問題と偽造キャッシュカードの問題は、違う側面と似ている側面がございまして、容易に想定されますのは、被害が生じないような予防策、或いは被害が生じたとしても被害を極小化する予防策といったものには、同じような共通の項目もあるように思います。例えば、利用限度額を引き下げるとか、ある一定の異常取引が行われた場合にできるだけ早くそれを顧客に通知するとか、或いは生体認証を導入するということは、盗難キャッシュカード対策としても効果を有することは明らかでございます。中々そうした点だけではなくて、両者の持つ性格の違いといったものも含めてよく議論していただく必要がありますので、現状でこういう点が検討項目だと申し上げられる段階ではありません。

問)

「業務に支障が出る等の問題が確認されるような事態になりますれば、必要に応じて現地の金融監督当局とも協力をしながら適切な対応を取りたいと思う。」ということですが、もし、そうした事態が起きてしまった場合に金融監督当局同士でどのような対応策が取られるのでしょうか。

答)

営業に支障が出るということであれば、当然日本の金融機関の顧客に影響が出ることになりますから、どのような影響が出るのか、それについて現地の法令に基づいて何らかの特別な措置を取っていただく必要があるのかどうかを含め、或いは監督上何か必要があるのかどうか、こういったことは対象になり得ると思いますが、どのような態様に支障が生じるかによってそれは色々だと思います。裏返して見た場合には、そのくらいだと思います。日本における外国の金融機関の営業に何らかの事情で支障が生じた場合、監督上やはり当方がホストカントリーとして適切な措置を取る必要があると思います。

問)

消費者金融のアイフルに対して行政処分の申立てが関西であったようですが、今金融庁で把握されている現状とこれまで何か具体的な被害の情報なりがありましたら教えてください。

答)

特定企業についての申立て・苦情の内容というのは、中々コメントがしづらいものがあります。もちろん、特別な苦情なり、或いは行政処分が必要ではないかという申し入れなりがございますれば、それは監督上重要な情報としていただいた上でその後の検査なり監督なりに活用させていただくということ、またそれによって法令違反行為等が明らかになれば厳正な対応をするということになります。

問)

ライブドアとフジテレビが和解をするということになりましたが、2月以降この両社のニッポン放送を巡る取り合いというか、これがもたらしたものというものは金融行政とか資本市場制度を考える上でどういうインパクトというか、どういうものをもたらしたのか。この間に時間外取引にある程度法的規制をかけるとか、そういうことをやってきたと思うのですけれども、今後こういった事態を受けて、金融行政として資本市場の整備の中でどういう課題があると御認識をしていらっしゃるのでしょうか。

答)

この案件に直接関連する話としては今お話のあったTOBの考え方ですね。立会外取引とTOBの関係というものを整備して法律案にして国会に提出をしたということでございますが、市場における取引というのは色々な形で新しい工夫というのが投資家なり、或いは経営者なりによって行われるものでありますので、予めそれを全て予測をするということはいかに監督当局といえどもそこは難しいところがありますし、またそこにおいて過剰な予測に基づく過剰な規制ということを行えば、市場取引の活力というものを失わせてしまうということもあります。

従ってここは、実際にこの証券取引なり資本取引というものの基本にあります適正なディスクロージャーが行われるということ、そして公正な競争が行われるということ、この言わば投資家に自己責任を問うための最も基本となる考え方というものをいつも忘れずに一つ一つの事象を眺めていく、そして、もしそういった観点から問題があるような取引の手法なり、或いは金融商品といったものが出てきたということを認知した場合には、時間を置かずにその問題点を分析して、必要な範囲での規制を直ちに考えることが仕事であろうと思います。過剰な規制をしないように冷静な対応が必要であるけれども、同時に日々動いている資本市場でありますから迅速な対応が必要だと、この心構えみたいなお話しかできませんが、そういった心構えで日々の取引、或いは問題だといったような声がもし市場から上がるようであれば、そういった情報を直ちにキャッチできるようにしておくということであろうと思います。

これまでもこの件は非常に大きく扱われましたが、様々な制度改革の中では日々色々な不具合があるのではないかという疑問があっちこっちから呈せられ、或いは監督当局自身としてもそういった感覚を持って当たってきた結果として今の仕組みが出来てきています。これからも不断の努力が必要だと思います。その際取引所ですとか、或いは日本証券業協会ですとか、こういった自主規制機関との綿密な意見交換ですとか連携ですとかそういったものも大変重要だと思っています。

問)

日々キャッチするということなのですが、その現状、資本市場制度の整備にかかる人員が本当にそれで対応できるほどの人員がいるのかという点だとか、情報交換をきちんとやれるような体制が今整っているのかという点で、皆さん努力はされていると思うのですが、体制としては中々そこまで十分ではないのではないかというふうに見えるのですけれども、それについては今後十分なのかどうかという点と、今後それを改める点があればどう改革していくのかという点についてはどうお考えなのでしょうか。

答)

市場監督に関しましても、これまで証券取引等監視委員会の陣容の強化を始めとして年々その増強を担当当局に要求しているということがございますから、「これで十分です」という状況でないというのは見ていただければ分かる通りだと思います。同時に行政需要自身が、例えば課徴金制度の導入ですとか、そういった形で新たに発生してくるということもあります。ですから、今十分なら将来も十分かと言えばそうは言えないということがございます。十分かどうかという点についてはそんなお答えになります。

これまでもやってきましたが、これからも大事なことは、市場関連部局間の連携、先程ちょっと申しましたが、自主規制機関との連携という現場に非常に近いところで一定のルールの下に監視をしている人達、こういう人達との連携をこれまで以上に密接にしていくということがとても大事なことだと思います。もちろん定期的に情報交換、意見交換をする機会というのは持っておりますけれども、それを更に充実をする必要があります。

あと金融庁の中で取締りを行う部局、或いはいわゆる犯罪の取締り、犯罪の取締りを行う部局、或いは行為規制違反を一般的に検査をする部局、そしてそういった検査の結果に基づく行政的な処分なり、日頃の指導を担当する部局、更にはそうした事柄の大元になるルールを考える部局、こういったところがそれぞれの立場から得た情報を別の部局に円滑に伝える。そして伝えられた方は、十分な問題意識を持ってその情報を分析していくということは、これからぜひとも心掛けねばいけないことだと考えます。

また、今市場関連部局の話だけを申しましたけれども、例えば銀行を監督する当局が一定の情報を得た場合、その中に市場取引という面から見て大事な情報というのは入っている場合があるわけです。そうした時に、その情報を適切に担当の部局へ通報するというこういったこともとても大事だと思います。部内の意思疎通、部内の情報交換というものを十分な問題意識を持って徹底していくということはこれから大事な課題だと思っています。取引が複雑になってきていますから尚更のことだと思います。

問)

株についての話なのですけれども、今回の株安の要因で一つ対中国ということが要因として挙げられていますけれども、もちろん今日下げた分でどの程度がその要因によるのかという分析はなかなか難しいと思うのですけれども、さはさりながら、恐らく対反日の動きというのはそう簡単に鎮まらないというふうに思えますし、なかなか株にとって良い状況で進まないと思うのですけれども、まだ中間期までは時間がありますけれども、金融機関に及ぼす影響と言うか、逆に言えば金融機関の株への体力と言うのでしょうか、その辺を現段階どのように見ていらっしゃるか伺いたいのですけれども。

答)

まず株価の具体的な動きは当局者がコメントするのは適切でないと思います。ここは申しわけありませんがコメントを控えさせていただきます。

東京市場なり、或いは東京市場に限りません上海の市場でもそうかもしれませんが、海外の市場でも株価の動きというのがどれほど金融機関の経営に影響するかということについては、どれだけ動けばどれだけ影響するという、そういう簡単な分析ができるわけではないわけです。ポートフォリオは日々金融機関はそういったリスクを勘案していじっていますから、それが当り前のことですので、これまでの一般的な傾向から言いますと、株式の保有については銀行について申し上げますれば、中核的自己資本の範囲内にこれを収めるということで、これは法律の規制に沿って皆さん急速に縮小をなさいました。現状では中核的自己資本を下回る規模しか持っていないというようなところがほとんどだと思います。ですから、株価の下落に対する財務上の耐久力というのは数年前に比べると格段に強いものがあるというふうに考えています。これは一般的な傾向として言える話。ただし株と言ったってどの銘柄のものをどう持っているかというポートフォリオの問題がありますから、こうした点については株の場合、特にリスクコントロールが債権等に比べて特に難しい分野ではありますけれども、一般的には持ち高を減らすという手法は皆さんそれぞれとっておられるし、それからリスクの顕在化をコントロールするためのロスカットルール等も特に大手の金融機関では私共の検査等におけるチェックも経たやり方でやっておられますから、そういったことを適切に運用していただくことで株価の変動に備えてもらうということだろうと思います。

問)

大阪証券取引所に関することなのですけれども、証券取引所の内部留保のあり方について特に何か法制面で手当てする必要はないのでしょうか、というのが質問なのですが、実は村上ファンドが内部留保を配当に回すようにと言っていて、それに対して大証はセーフティネットとしてある程度内部留保が必要だからという説明をなさっているみたいなのですけれども、結局その株主の利益の追求と、それから公益がトレードオフになっているようなところがあるので、内部留保について何らかの法制面の根拠があればその辺の問題も整理されるかもしれなくて、その辺のお考えをお願いします。

答)

内部留保をどの程度持つかというのはやはり民間企業ですからその企業の経営の判断にならざるを得ないと思います。ただこの証券取引所の内部留保というお話で一般論で言えば、証券取引とかその決済というものを担っているわけですので、それを円滑にやるためには定期、不定期なシステム投資、或いは決済事故が起った時の資金の確保というのは必要になります。これは民間企業であっても株式会社として自らある機能を持った株式会社なわけですから、その機能を健全に果たすために当然必要な経営上の判断になるわけです。そこがきちんとできていなければ、マーケットの評価は下がっていくということになるわけですから、そこはきちんとせざるを得ないはずだと思います。

特に先物等にかかる清算業務を行っているようなところというのはこの清算業務ということに着目して、国際的にも監督者による勧告というのは出ているわけです。どういうものかと言いますと、国際決済銀行、BISですね。それから証券監督者の国際機構、IOSCO。ここから平成16年の11月に清算機関のための勧告というものが出されています。これによりますと、取引所等の清算機関というのはその財務資源として、最低限最大のエクスポージャーを有する清算参加者の破綻に耐え得るような十分な財務資源を維持するし、また複数の清算参加者が同時に破綻する可能性も評価されるべしということがこの勧告の中に、略して言ってますけれどもそういう趣旨のことは言われているわけです。そうするとおのずと国際的な一つのメルクマールになっているわけですから、ある取引所を眺めた時にその取引所がどういうエクスポージャーをどういう清算参加者に対して持っていて、それがここに言うような最大のものとか、或いは大きな方から順番に幾つかというようなことについて破綻が起った場合、どれだけの内部留保を崩さなければいけないかということはおのずとマーケットの人達が見れば分かるわけです。こういったような点を当然のことながら経営判断として行うはずが、市場規律の中でそれは求められてくるということでありますから、法制が必要かどうかということについては私あまり現時点で考えたことがなかったのですけれども、理屈から言うと基本はそちら、民間事業としての経営の中におのずと市場規律でそこは確保しなければいけない一定の内部留保というものがあるはずだろうと考えています。

(以上)

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