五味金融庁長官記者会見の概要

(平成17年4月25日(月)17時02分~17時16分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

UFJ銀行の検査忌避事件に関連してですけれども、本日、東京地裁の方で副頭取始め三人に有罪判決が出ましたが、これをどう受け止めておられるのか御所見をいただけますか。

答)

仰るように、今日UFJ銀行と同行の元役職員の検査忌避について、東京地裁で判決が言い渡されました。判決内容については、裁判所の厳正な審理の結果であると受け止めています。

一般論ですけれども、検査或いは監督もそうですが、特に検査というものは何なのかということはとても大事だと思います。金融機関というのは、民間の企業ですから、当然その自己責任として市場規律で経営していただくわけですけれども、同時に国民の大多数が預金者として、或いはその他様々な形で金融機関との取引を持っています。そして金融機関が日本経済のインフラストラクチャーとしてこの経済の流れを支えています。そういう観点から言いますと、行政としても当然この金融機関の健全経営ということには関心を持たざるを得ないわけでして、従って、補完的、或いは補強するために行政としても、その健全性や業務の適切性を検査するという位置付けになるわけでございます。従ってこの検査というものを妨害するという行為は、もちろん担当検査官に対する問題でもありますけれども、同時に国民全体に対する背信であると私は思います。

それだけではなくて、金融機関というものが拠って立つ基盤となっている金融システムに対する国民の信頼、これを台無しにしてしまうというものでもあるわけです。こうしたことを考えますと、検査妨害というのはあってはならない行為であるというふうに考えています。

なおUFJ銀行につきましては、既に新しい経営陣が就任をなさり経営も始めておられまして、業務改善計画も御提出になり、それに沿ってガバナンス体制の充実・強化というものに取り組んできておられます。私共としてはUFJ銀行においてこれらの取組が着実に推進されるということを期待したいと考えております。

問)

先週末ですけれども、みちのく銀行において130万件というかなり大規模な個人情報の紛失事故というものが起きましたけれども、これについて金融庁としてどのように考えておられるのか。また今後の対応等どのように進めていかれるつもりなのかお聞かせいただけますか。

答)

御承知のように4月1日から個人情報の保護に関する法律が全面施行されました。従って各金融機関におかれては、個人情報の漏洩や滅失、或いは毀損、こういったものの防止に向けて万全の対応が求められる状況になったわけでございます。そうした中で、みちのく銀行において、このような大量の個人情報の紛失事故というものが発生したというのは、大変遺憾なことであると考えています。金融庁としましては、今後事実関係を確認させていただいた上で、仮にこの銀行の個人情報保護、個人情報管理体制に問題があると認められました場合には、個人情報保護法等に基づいて厳正な監督上の対応を行ってまいりたいと考えています。

先程お尋ねの中に受け止めということがございましたが、それに関連して一つ申し上げておいたほうが良いと思いますのは、銀行の発表によりますと、行内での搬送の途上でこのCD-ROMの紛失が起った可能性が高いようでございまして、これは直ちに当庁におけるフロッピーディスクの紛失事件を連想させるものでもございます。私共その後再発防止策、直ちに手を打つべきものは、例えば収受体制の改善等、直ちにこれを実行しておりますし、職員一同も非常な緊張感を持って取組んでおります。また、コンピューターシステム等を改善する必要がある部分についてはその取組を進めているという状況にありますので、幾つも個人情報の紛失や漏洩というものが金融機関で起りましたが、こと本件を見ました時の受け止めということから言いますと、当庁における再発防止の取組も更なる緊張感を持って進めなければ行けないということを切実に感じたところでございます。

問)

有価証券報告書への虚偽記載、これに対する課徴金の制度導入に向けて自民党と民主党が今国会で証券取引法の改正、これを行うことで合意したようですけれども、これについて直近でどのような情報が入っているのかお聞かせいただきたいということと、この制度作りに当たっては、内閣法制局が法案提出に問題ありと、制度に問題ありということで難色を示したという経緯があるかと思うのですけれども、それを乗り越えての政治決着という形だと言えると思うのですけれども、これをどう評価されているのかその辺をお聞かせいただけますでしょうか。

答)

お話のありましたように、継続開示義務違反に対する課徴金制度について、国会における修正が行われるという報道があること、それは承知をしております。ただ法案の議員修正と言いますのは、立法府である国会において御判断になることでございますので、この点についてのコメントは控えたいと思います。

また政治決着というお話がございましたがこれも同じことでございまして、やはり立法府で御検討、御判断になることでございますから、コメントは控えたいと思います。私共はいかなる検討課題があるかということについては既に明らかにさせていただいておりますが、議員としてのお考えはそれとして進められるものだと思っております。

一つ申し上げておきたいのは、金融庁にとりまして証券市場の公正性や透明性を確保するというのは非常に重要な課題でございます。従いまして仮にでございますが、仮にこの修正により継続開示義務違反に対する課徴金制度というものが導入をされるということになりましたならば、その場合にはその適正な運用というものに精一杯努力をいたしまして、適正なディスクロージャーの実現ということに邁進したいと考えています。

問)

九州親和ホールディングスが200億円近い赤字を出したということですけれども、確か昨年も赤字で業務改善命令を受けていると思うのですが、二期連続になりますとまた三割ルールの問題があるかと思いますが、その辺について現状どのようにお考えなのかお聞かせください。

答)

九州親和ホールディングスにつきましては、17年3月期において子銀行である親和銀行が多額の不良債権処理を行って、当期利益が赤字となる見込みになったということを受けまして、ホールディングス保有の子銀行株式の減損処理が必要となった結果として単体で570億円の当期の赤字を計上し、優先株への期末配当を見送る見込みであるという御発表を本日なさっておられます。

同社につきましては公的資本増強の趣旨・目的を踏まえて、経営健全化計画に沿った経営が行われることによって、収益力の向上を図るということを期待しておりましたけれども、17年3月期において優先株配当を見送りという見込みになったということは遺憾な事態であると考えております。

こうした事態を踏まえまして、同社は今後経営の改善に向けた責任ある経営体制の確立を図るとともに、役職員が一丸となって業績回復及び復配に向けて、経営合理化を含む抜本的収益改善に向けた取組みを進めると仰っていまして、このための具体的施策は策定次第、公表するという御発表になっていると承知しています。

また同社は17年3月期の赤字決算後においても自己資本比率は5%台前半、これは同社連結・子銀行単体となる見込みでございまして、更に資本政策によって自己資本比率8%台への道筋をつけていくと発表しております。

そこで当局はどうするのかというお話でございますが、いわゆるガバナンス強化ガイドラインがございます。このガイドラインに則りまして、まずは17年3月期決算の内容、或いは同社において今後策定される抜本的な収益改善策、こういったようなもの等を十分に精査するということをまずいたします。その上で必要に応じて適切な監督上の対応を講じていくということになります。

問)

今の質問にちょっと関連するのですけれども、地方銀行はまだ不良債権処理に苦しんでいる所がかなり多いような印象を受けるのですけれども、長官の地方銀行における不良債権処理についての認識というのをお聞かせ願いたいのですが。

答)

地方銀行全体として眺めてみますと、いわゆるリレーションシップバンキングへの取組み、これが2年間を過ぎまして、2年目までの実績はこれからまとめるというところではございますけれども、1年半の実績を見ても担保保証に過度に依存しない融資ですとか、或いは新しい融資の手法、更には中小企業の再生に向けての取組み等、時間のかかるものもありますが、一つずつ着実な成果を上げつつあると思います。結果として地方銀行全体としての不良債権比率も低下の傾向を辿っております。昨年の9月期で6.3%だったと思いますが、そうした状況にあります。これはトレンドとしては変らないというのが私の印象でございまして、引続き低下するのであろうと思います。

そうした中で個々の地域金融機関ということになれば、そこは不良債権比率の高いところ低いところ、或いは不良債権の処理に十分な体力があるところと、様々な工夫をしないと中々急速な不良債権の処理が難しいところ、色々それはあるようでございますが、全体として見ると地域金融機関の経営というのは健全化に向けて着実な進歩を見せていると思います。あとは個々の金融機関が自分の弱点というものを良く認識なさってその部分を克服するためにどういう手を使うのか、漫然と融資を続けるということではなくて、自分の経営基盤である地域の実態とそこで最も効果的な地域経済の再生の手法というものを良く勉強なさり、或いは地方公共団体等とも良く連携を取られ、そして地域経済を活性化することで自らの健全化も図っていくというこういう手法に精一杯努力をしていただくことだろうと思います。

(以上)

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