五味金融庁長官記者会見の概要

(平成17年5月9日(月) 17時02分~17時15分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

EUの証券規制委員会が、日本の会計基準では不十分であるとして補完的な情報開示を求める方針を示しまして、日本企業にも影響が及びそうなのですが、これについて長官の御所見と金融庁としての対応をお聞きしたいと思います。

答)

欧州証券規制当局委員会、略称CESR(シーザー)が4月27日、現地時間ですが日本とアメリカとカナダの三カ国のそれぞれの会計基準の国際会計基準との同等性を評価する助言案というものを公表しております。パブリックコメントに付されました。助言案の内容は日本、アメリカ、カナダの各会計基準について一定の補完措置をそれぞれについて求めております。ただいずれも全体としてこの三カ国の会計基準は国際会計基準と同等であるという評価をしております。日本基準に対して求められております補完措置を申し上げておきますと、一つは特別目的会社の連結範囲に係る差異、これについて仮定計算ベースの財務諸表の作成、これはアメリカ、カナダも求められております。それから企業結合に係る差異、それから在外子会社の会計基準の統一に係る差異、これについての仮定計算ベースの財務諸表の作成、これは日本だけが求められております。ストック・オプションの費用化の2007年7月1日以前の実施、これはアメリカも求められております。その他特定の基準に係る差異について追加的開示ということでアメリカとカナダもこれを求められております。金融庁としてのこのパブリックコメント案に対する評価ですが、今回のCESRの助言案が日本の会計基準につきましてアメリカ基準、及びカナダ基準とともに全体として国際会計基準と同等であるとしていることは、日本の会計基準がこれまでの整備・改善を通じて国際的にも高品質なものになっていることが認められたということで評価できるものであると考えております。なお、補完措置が求められているということについての今後の対応でございますが、引続きこの点につきましては日本の企業会計基準委員会等の国内関係者と緊密に連携・協力いたしまして、今後行われます公聴会への参加、或いはパブリックコメントに対するレターの発出等を通じまして補完措置の解消、或いは縮小に向けて対応していく考えです。求められている補完措置につきましてはいずれも国際会計基準と真っ向から対立するようなやり方を日本が採っているということではございませんし、また中にはその方向で今検討が進んでいるという項目等もございますので十分な説明を尽くしてこの補完措置の解消、或いは縮小に向けて臨みたいと考えております。

問)

国内の証券取引所についての質問なのですが、金融庁が上場を予定している東京証券取引所に対して規制及び監視部門を分社化するよう要請する方針であるとの一部報道についてお尋ねしたいというのが第一点。それから既に上場している大阪証券取引所についてなのですが、既に大株主になっております通称村上ファンドが、金融庁に対して大阪証券取引所の内部留保の適正水準を明確にするよう求めているようですけれども、あわせて長官の御所見と金融庁の対応をお聞きしたいと思います。

答)

一点目の御質問の東京証券取引所に関する報道でございますが、現段階で東京証券取引所に対して規制監視部門を分社化することを要請するという方針を固めた事実はございません。こうした議論が行われる背景を少し申し上げておきますと、株式会社組織の証券取引所における自主規制機能のあり方、これについては国際的にも議論があるところでございます。例えばロンドン証券取引所においては上場審査機能を金融サービス機構に移管しております。これは2000年でございます。またアメリカにおいてはニューヨーク証券取引所の上場に関して、自主規制部門を独立性の高い非営利法人として切り離すという報道発表が今年4月に行われております。日本においても世界で有数の規模を誇ります東京証券取引所が年度内の上場というのを目指すという旨を表明しております中で、証券取引所の自主規制のあり方というものについては、これまで以上に議論を深める必要があると考えています。4月28日の金融審議会第一部会における投資サービス法を巡る議論におきましてもアメリカにおける動向も含め自主規制機能の強化についての議論が行われたというように承知しております。こうした背景の中で金融庁といたしましては現段階で報道のような方針をまとめたわけではございませんが、証券取引所の自主規制機能の今後のあり方というものについては証券取引所を巡る内外の環境変化、今申しましたような内外の環境変化、或いは金融審議会における議論、こういったものを踏まえながら検討を進めてまいりたいと考えております。

第二点の大阪証券取引所に関連するお話で内部留保の適正水準というお話ですが、一般論で申し上げますと証券取引所というのは証券取引、或いはその決済というのを円滑に行うために、定期・不定期なシステム投資、或いは決済事故のための資金、こういったものを確保しておく必要がございます。そのため一定額の資金を留保するように各取引所とも努めておりまして、必要な内部留保をそれぞれ確保しているものと私共は承知いたしております。大阪証券取引所につきましては4月26日に「清算機関を兼ねる上場取引所のキャッシュ・マネジメントのあり方に関する諮問委員会の設置について」というものを公表したと承知しております。金融庁といたしましてはこの諮問委員会において取引業務の健全かつ適切な運営の観点等も踏まえて活発な議論が行われることを期待しています。また御要請があれば行政としてもこの議論に参画をするということを考えております。

問)

メガバンクの中期経営計画が出揃いました。いずれも公的資金の返済や時価総額の増大等について野心的な計画を示しているように見えるのですが、その合理性や実現可能性について、長官の評価をいただきたいと思います。

答)

一般論で申し上げますと、日本の金融システムを巡る局面というのが不良債権問題の緊急対応から脱却して、将来の望ましい金融システムを目指す、そういう未来志向の局面に転換しているというのが私の認識でございます。各メガバンクが明らかになさった中期経営計画と言いますのも、こうした状況を踏まえての計画であろうと思います。従って、野心的な計画であることをもって合理性や実現可能性に疑問があるというわけでは多分必ずしもない、そういう時代にもうなっているのではないかと私は思っています。これまでと違う目でこれを評価していく必要があるのだろうと思います。もちろん金融庁、監督当局として個々の金融機関の計画の内容を論評するということは控えたほうがよろしいわけですが、大事なことは金融機関が、特にこのメガバンクの皆様がこうした金融システムを巡るフェーズの転換ということを踏まえて、利用者の皆様が何を求めているかということを的確に捉えて、そしてそれに応じて自らの目指す方向というものを得意技が何であるかということを考えながら計画に織り込んでいく。それによって激しい競争を利用者の信任を得るために繰り広げるということが何より大切なことであろうというふうに思います。私共金融庁、監督当局としてはこうした計画をもちろん見せていただきながら、しかしそれはそれぞれに新しいリスク分野に踏み込んで激しい競争をしようという意図表明でもあるわけですから、各銀行グループのガバナンス、或いはリスク管理、こういったものがそれに相応しい高度化を遂げるかどうか、この辺を注意深く見守っていきたいと考えています。もちろん、競争を阻害するような不要な規制があるようであれば、これはできるだけ撤廃して、利用者が出来るだけ高い満足を得られるようなそういった適正な競争が行われる環境というものも整えていきたいと考えています。

どう評価するかというお答えには必ずしもなっていないかもしれませんが、この中期計画を見せていただいた感想のようなものですが、そういったことでございます。

問)

CESRの報告書なのですけれども、幾つか追加的な財務諸表を求められる部分があったかと思うのですけれども、企業等は割と在外子会社の会計基準のところを重く受け止めているようですけれども、金融庁として現時点で報告書に言われているどの辺りが日本企業へ影響するのか、それからその上で働きかけ、どのようなところに焦点を絞っていかれるのかお聞かせください。

答)

すみません。先程冒頭の御質問で一つ答が漏れていました。日本企業にも影響が及びそうではないかというこの部分ですが、この補完措置が現時点で日本企業への負担がどうなるかということ、補完措置の日本企業への負担が現時点でどうなるかということを申し上げるというのがなかなか難しいと思います。この補完措置については先程申し上げたようにいずれにしてもこれから企業関係者の皆さんと密接に連携・協力して解消・縮小に向けて対応していきたいと思います。どれがということがございますが、先程ちょっと申しましたように既に補完措置と同じ方向で、例えばストック・オプションの費用化の問題等は、補完措置が求められているのと同じような方向での検討が既に進んでいるということがございます。こういったものについてはむしろその検討をどんどん促進していくことで解決できましょう。それ以外のものは、原則と例外というような形で我々運用しているもののその例外措置の部分がポイントになっているようでございますので、これは何故そういう例外措置があるのか、或いはその例外措置の合理性というものは何なのかということをよく説明していくということなのであろうと思いますが、総体としてはそういうことでありまして、項目的にもその他の措置というのはかなりの数がございますから、まだ少し時間がありますから、よく経団連の皆さんをもちろん始めとして、経済界の方、それからASBJは当然ですが、こういう人達とよく意見交換をしてその説明の仕方、重点の置き方というのを考えていきたいと思っています。現状で「ここだけは」とか、「ここを諦める」とかそういう方針は全くございません。できれば全て解消したいということでございます。

(以上)

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