五味金融庁長官記者会見の概要

(平成17年5月23日(月)17時01分~17時25分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

保険商品の銀行窓販についてですけれども、解禁拡大と全面解禁の見通しについて改めてお聞かせください。

答)

最近また報道が出ておりますけれども、本件につきましては昨年の3月に示されました金融審議会の提言、そのスケジュールを念頭において銀行等が販売可能な保険商品の範囲の拡大、それから適切な弊害防止措置、これらについて関係業界等との間で具体的な内容を調整しているところです。早急に検討の調整を進めて速やかに結論を得たい。現状申し上げられるのはそこまででございます。

問)

自民党が偽造・盗難カード預金者保護法案の要綱をまとめました。その中では、国は預金者保護の充実を図るため金融機関により適切な措置が講じられるよう必要な措置を講じなければならないとされています。法案が予定通り施行されるかどうかはともかくといたしまして、金融庁として今後どのような措置が必要とお考えか御所見をお願いいたします。

答)

自民党におかれては、5月19日の財務金融部会・金融調査会合同会議において、今お話のあった法律案の要綱が了承をされておりますが、この点については引続き与党内で協議が行われると承知をしております。この法案要綱については現時点においては、その議論の動向を注視してまいりたいという考えでございます。

この被害防止策等について金融庁としてどう考えるかということですが、現在御承知の偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループ、このスタディグループにおいて偽造・盗難キャッシュカード犯罪の事前防止策、これについて御議論いただいているところであります。今後このスタディグループの検討結果に基づいて必要な対策を講じていきたいと考えています。措置と言えば、我々は今そうした考えでおるということでございます。

一方、金融機関の皆様の側としては、これ一般論でございますけれども、仮に偽造・盗難キャッシュカード問題について何らかの立法がなされるのであれば、当然金融機関としてはその法令に則って的確に対応していただく必要があります。他方で本件に関する善意の預金者への補償のあり方ということについては、可能な限り速やかに実効性のある対策を講ずるということも重要でございます。そうした観点から金融機関におかれては、法案の成立・施行を待たずに約款による預金者保護を図るということも有力な選択肢の一つであると考えております。

問)

みちのく銀行に対する業務改善命令についてですが、その命令の中で経営責任の明確化というものを盛り込むこと自体異例とされているようです。この背景や意味についてお聞かせください。

答)

当局は行政処分の決定にあたりましては、法令違反等の内容、それからその背景となっている内部管理態勢等について十分な実態把握を行いまして、更にこれまでの他行に対する処分事例等も踏まえて、総合的な勘案の下で処分内容を決定しているところでございます。

今回のみちのく銀行の処分につきましても、こうした観点から総合的な判断を行いました。より具体的に申し上げますと、まず第一点として、過去二度に渡って法令遵守態勢の確立等に係る業務改善命令を受けている。そうでありながら、その命令に基づく業務改善計画を提出して、そのフォローアップを受けている期間内に法令違反行為が行われているという事実が一つあること。第二に代表取締役の指示等、もちろんその他に取締役の関与や黙認といったこともございましたが、そうしたことによって多岐に渡る法令違反行為が行われているという事実。第三に行政処分の原因となる事実が多岐に渡っており、かつ件数が非常に多いということ。こういった要素がございます。これらを踏まえまして、経営責任の明確化といった内容を含む業務改善命令ということになったわけでございます。言わば「見逃しで三球三振してしまった」というような状態です。

当局としては、みちのく銀行が今回の命令を真摯に受け止められて、こうした不適切な業務運営等が再び起こらないように法令遵守態勢、或いは内部管理態勢、こういったものを抜本的に見直されて、あらゆる努力を行って利用者から信頼される銀行になっていただきたい。そう考えております。

問)

小田急の件ですけれども、大臣にもこの間お伺いしましたが、金融庁の一斉点検の際はそういった事実について、故意かどうかははっきりしませんが、そういう報告をしないで半年以上経ってからこういったことが明らかになりました。しかもその過程では、当局からの再調査の要請を受けてという上場企業足り得るには非常に問題があるのではないかと思うのですが、大臣は場合によっては法令上の対応をする旨のお話を会見でなさいましたが、長官のお考えをお願いします。

答)

実際に点検をお願いして、そこでは訂正の必要なしという御回答の後でこうしたことが明らかになったということは、大変に遺憾な事実であると思います。この具体的な案件について、今後どういう措置をとるかということを申し上げるのは適切ではございませんが、私共は開示書類に関連しては、もちろん総点検のお願い以外にも、或いはそのお願いをしていく過程で様々な情報を収集しております。そうしたものを整理し分析していく過程で、必要があれば関係者の皆様に更に深度ある確認をさせていただき、その結果、もし法令違反行為があるというようなことが明らかになれば、それは厳正に対応させていただきます。

今回の報告徴求については、報告徴求命令ということでございますので、仮にこうした報告徴求命令に対して虚偽報告を行うということがあった場合には、証券取引法上罰則が適用されるという規定がございます。いずれにいたしましてもあってはならないことです。困ったことです。

問)

今回の報告徴求命令は、小田急に対しての徴求命令ということでよろしいのでしょうか。

答)

今回の命令は、小田急不動産他4社に対して求めたものでございます。一般的に訂正報告書の提出がありました場合は、必要に応じて所管の財務局において訂正内容等について確認を行う。この確認を行う手段として、今回は20日に小田急不動産他4社に対して証券取引法第26条に基づく報告徴求命令を発したということでございます。いわゆる再度の点検のお願いというものではなく、証券取引法に基づく命令を出したということでございます。

問)

小田急不動産他4社というお話がありましたけれども、名義貸ししたのが3社で、連結を含めて4社が関係しているという話だったと思うのですが、小田急不動産他4社と言いますとトータルで5社ということでよろしいのでしょうか。

答)

命令を出しました相手方は、小田急不動産株式会社、小田急建設株式会社、神奈川中央交通株式会社、そして小田急電鉄株式会社この4社でございます。合計4社でございます。

問)

提出期限はいつまででしょうか。一ヵ月後までにとかそういうのは…。

答)

命令の具体的内容に関わる話ですので、そこの所は申し訳ありませんが相応の期間でございます。

問)

色々な事実がこの中で明らかになった場合の金融庁として対応する処分なり、証券取引法に基づく処分ということになると思うのですが、金融庁として対応できるものというのはこの場合どういったものが考えられるのでしょうか。

答)

有価証券報告書の内容でございますので、訂正すべき内容がある場合には訂正命令というものを出すということが権限上ございます。通常はその命令を受ける前に訂正をなさいますので、こちらとしてはその訂正内容が、本当に正しいのかどうかをこの報告に基づいて確認をしていくということになります。もちろん報告内容が適正かどうかも確認いたしますけれども、行政としてはそれが権限として認められているものでございます。あとは上場企業の場合は、上場している取引所の規則でどのような決まりがあるかということによります。これは取引所の方で御検討になります。

問)

東京証券取引所の上場廃止基準と自主規制部門の分離の話ですけれども、報告徴求命令を出した後に、東京証券取引所の社長は記者会見その他でかなりネガティブな発言を繰り返しているのですが、それについて金融庁として東京証券取引所に対して求めたいことというのはどういうことなのでしょうか。

答)

これは前回も申し上げましたけれども、まず一義的に東京証券取引所がお考えになる話ですから、報告書の提出期限は一ヶ月ございますので、内外の市場環境の変化を踏まえて投資家保護という観点から、私共が報告を求めました色々な点についてどう考えるかということを十分検討していただくということでよろしいと思います。一つ一つの御発言を捉えてどうということではなく、私共は十分な検討が行われることと、期限までにその報告が出てくること、これを待っております。その後、その報告内容も踏まえ議論を深めさせていただきたいと思っております。

問)

小田急に対する報告徴求命令の件で、私の認識ですと通常は取引所の方が上場している企業に対して、何か問題がある場合は報告を求めるということが通常ではないかと思うのですが、やはり金融庁が証券取引法に基づいて敢えて報告を求めていくというのは金融庁としての強い姿勢を感じるのですけれども…。

答)

この点についてはもちろん取引所は取引所としてのお考えで、いわゆる市場開設者として確認しておくべき投資家保護上必要な情報をお取りになるのでしょうが、当局について当然のことでございますけれども、有価証券報告書の記載内容の適正性について確認していく権限というのは与えられていますので、今回の場合は一度御要請して、変更点は無いという御返事があったにも関わらず、実はその過程で私共が収集しております様々な情報から再調査ということをお願いしたところ、実は違っていたという話ですから、これは法律上の権限に基づいてきちんとした手続きの下に、なおかつ罰則に基づく間接強制があるという状況の下に、徹底した確認をさせていただく必要があるという考えでございます。

問)

カードの関係ですが、自民党の出しました法案の要綱の中には被害の補償について原則金融機関側に責任があって、重度でない過失を証明できた場合には50%以上の補償を金融機関側が行うことになっています。金融庁のルールでは標準形というのを定めて原則被害者側と金融機関側が50%づつ補償する形となっていますが、両者の違いをどう見ておられるのかお聞かせ願えますか。

答)

今お話がありましたように、スタディグループの第二次中間取りまとめとの関係で言うと、一つは預金者の無過失の立証に関する規定振りについて相違があるということ、それから割合については多少の違いがございます。あと補償の対象範囲、日数が違っているという点が違っています。与党内ではまだ引き続き協議が続けられるということですから、それを見守って行くことだと思いますけれども、今申し上げましたような点、補償の対象範囲や預金者の無過失立証に関する規定振りに係る一部の相違点はございますけれども、大元の基本的な枠組みとか考え方、つまり偽造とは異なる扱いであるということであって、その場合全面的にどちらかが責任を負うというのではなくて、一定の手順を踏んでその責任の分担を明らかにした上で補償を考えるといったような点、こうした基本的な枠組みや考え方は大きく異ならないし、また一部の相違点もそういった基本的考え方に重大な影響を及ぼすような非常に大きな違いがあるかと言うとそうではないように思います。実際に運用をしてみるとそんなに違う効果が出るとは思えないということです。いずれにしても、自民党の方も最終的なものにはなっていないわけですから、動向を良く見て行く必要もありますが、一部の相違点はあるものの基本的に大きな違いはないというのが私の認識です。

問)

関連ですけども、重度ではない過失についても立証責任を金融機関側に負わせるかどうかというのは、実務的に負担がずいぶん金融機関にとって違うのではないかという気がするのですけれども、これがもしそんなに変わらないのだとすれば、どのような手段を用いて金融機関側に過度の負担を負わせないようにできるのか、その辺についてはどのようにお考えですか。

答)

実際はケースによって違うので、運用をしてみないと分からない部分が多いと思います。現在でもこうしたケースにおいて色々なお話合いの中で解決されているケースもあるわけですから、実際やってみないと今からどのくらい大変かははっきりしないと思います。偽造の場合と違って盗難とか紛失みたいな話ですから、そこに所持している預金者の過失があったかなかったかというのは、そう分かり難いものではないと思います。むしろどういう場合には過失があったということになるのかということについて、もちろんスタディグループも色々なお考えをこれから更に詰めていかれますけれども、実際の法律の運用なり現場における解決の中から自ずとスタンダードみたいなものができてきて、そういうところから解決がされてくるように思います。非常に過失が分かり難いという性格のものではないだけにうまくいくのではないかと思いますが。

問)

日本振興銀行の情報開示の姿勢について御所見を伺いたいのですが。株主の構成について日本振興銀行は情報開示しておりません。ガバナンスを効かせるということが設立当初からの大きな理念であったと思うのですが、そのガバナンスがどのように効いているかということを一方で理念として打ち出しながら、現在株主がどのような構成になっているのか、どこに株主の存在がどういう形でガバナンスに影響しているのかを知る上でも、そうした主な株主の方々の構成なり、持ち株の比率なりをきちんと情報開示するのは、振興銀行の理念の下では必要なのではないかと思うのですが、今現在はそれについては全く公表していないというこういった状況について、個別企業ではありますが、社長が金融庁の顧問をされていた方でもあるし、中小企業金融という形で登場してきた銀行であるという点からどのように見られていますか。

答)

銀行監督上は主要株主にあたる方々がいるのであれば、予めその認可を取っていただく必要があるということに尽きますし、ガバナンス一般ということで言えば、法令上要求されているディスクロージャーであれば、当然市場の規律であることがガバナンスの一つの要素になりますので開示しなければなりませんが、それ以外は個々の企業の、それは銀行であれ一般事業会社であれ個々の企業の判断だろうと思います。ガバナンスをどのように確保するかというのは色々なやり方があるわけですから、株主構成を開示しないことがガバナンスについて大きな疑念を呼んでいるとお考えになるかどうか、そこは経営者の判断の問題だろうと思います。それ以外の社内の管理態勢で、十分なガバナンスが行き届いているということを説明できるという自信がおありになれば、それでなさればよろしい話だと思います。顧客なり市場の皆様からの信任を得るという範囲で、どこまでが必要かというのはそれぞれの企業の経営者が御自分で御判断になることだと思います。

(以上)

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