五味金融庁長官記者会見の概要
(平成17年7月4日(月) 17時03分~17時21分 場所:金融庁会見室)
【質疑応答】
- 問)
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金融機関の個人情報の紛失問題についてですが、金融庁の6月末までの一斉点検の要請を受けて、大手行を中心に過去の個人情報の紛失を公表するケースが先週相次ぎました。金融庁が現時点で把握している金融機関の数や、紛失の件数、更には今後の金融庁の対応をお聞かせください。
- 答)
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6月末までにということで要請を行った件の報告がまだ全て私共の所へ来ているわけではないので、全容がまだ把握できていない状況であります。今お尋ねの金融機関の数、これもまだ全容は把握できていません。ただ既に発表になっている金融機関があるというお話で、発表なさった分だけを数えますと、87の金融機関が今回の一斉点検で情報の紛失等があったということで御発表になっています。件数はそれぞれ御発表になっているのですが、これは金融機関がどのようなやり方で調べて、どのように件数をカウントしたかという点もよく私共で分析をした上で集計をしたほうが良いと思います。それをしないで何か発表されたものだけを集計して、今のところ何件みたいなことを言って誤解が起こったりするといけません。ですからここは全体の報告が金融庁に集まってきたところでよくその内容を精査して、整理した上で取りまとめをして発表させていただきたい。今日のところはちょっと御勘弁をいただきたいと思います。
それから今後の対応ということでございますけれども、金融機関というのは、或いは金融という分野は、国民から高いレベルで個人情報の保護が求められている分野です。従って特に適正な取扱いを厳格に実施するということが必要である分野だと思っております。そのようなことがありますので、今回特に金融機関の皆様には、一斉点検ということをお願いしたという趣旨のものでありますけれども、結果として多くの金融機関で紛失等の事実が判明しつつあるということは、大変残念なことだと思っています。冒頭申しましたように、金融機関における顧客情報の適切な管理というのは個人情報保護、或いは金融機関に対する利用者信任の確保、こうした観点から大変重要ですから、金融機関の皆様は顧客情報の適切な管理ということに引続き努めていただきたいと考えています。現状分かっている範囲では紛失等のほとんどが誤って廃棄をしたものということのようですので、この限りにおいては漏洩等の二次被害につながる可能性のあるものは少ないと考えております。いずれにいたしましても全容が分かりましてからのお話にさせていただきたいと思います。
- 問)
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金融庁の機構改革についてですが、7月1日の機構改革で「企業開示参事官室」が「企業開示課」になったり、「金融危機対応室」が「信用機構対応室」へと名称が変わったりしましたが、これらの名称変更や改革の狙いを中心に新しい事務年度を迎えた金融庁の方針をお聞かせください。
- 答)
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まず「企業開示課」と「信用機構対応室」というお話をちょっと御説明しておきますと、「企業開示課」これは平成17年度の機構定員要求に対する査定の結果認められたものでございます。当方から要求してあったことですが、これは「貯蓄から投資へ」という流れを加速していくために、必要な車の両輪、いつも申し上げておりますが、これがあります。それは取引の公正の確保と適正なディスクロージャー、この二つです。この二つが揃っていてはじめて投資家に自己責任というものを問う環境ができるということです。証券取引等監視委員会の機構等の強化充実というのは今年度も行っております。併せて今年度はディスクロージャーの信頼性の確保は極めて重要という視点から、もう一つの車輪でございますディスクロージャーの信頼性の確保ということに組織面で対応しようということから、これまで総務企画局市場課で行われておりましたディスクロージャー関連事務、これを部門として切り離して独立をさせて一つの課としたというものでございます。これが趣旨です。
もう一つ「信用機構対応室」のお話がございましたが、こちらは昨年から「金融庁総点検プロジェクト」を私共はやっておりまして、身近なところから職場環境をはじめとして、仕事の内容や進め方を幅広く点検しようじゃないかということで、職員それぞれに意見を求めてやってきた、その中から出てきたものでございます。監督局でこれまで「金融危機対応室」という名前で仕事をしておりましたけれども、この仕事というのは大きく分けて、破綻処理、そして資本増強関連、それから預金保険制度の運用、この三つの柱でなっているわけです。この三つの柱は現在でももちろん変わっていませんが、「金融危機対応室」と言うのは、当初は平成10年12月にできました金融再生委員会の事務局、これが担っていた任務でございます。大型の銀行破綻があった直後に設立された部局です。そしてこれが平成13年1月金融庁の設立と同時に、この事務局の持っていた機能が金融庁に「金融危機対応室」という形で移管されてきたと、そして現在を迎えているということです。この間やはり三本の柱は変わっていませんけれども、実際の仕事の具体的な内容というのを見てみますと、金融再生委員会事務局創設当初と比べればもちろんのことですが、金融庁に移管された平成13年1月の時点から比べても、随分と変容してきているという認識があります。そこで業務の実態というものをより適切に表す名称に変更しようではないかと、このような提案が「金融庁総点検プロジェクト」でも上がってまいりまして、その結果、今般「信用機構対応室」という名前に変更したと、こういう流れでございます。
これ以外にも、平成17年度の機構定員要求で認められたものとしては、例えば国際担当の総務企画局審議官というのがございます。或いは7月からではなくもうちょっと早くからスタートはしましたが、本格稼動はもうちょっとかかりますが、「金融サービス利用者相談室」というのもやはり機構改革でできているわけです。こうしたような機構面から着目をした時に、そこに何か今後の行政の方向ということで狙いはあるのかと言いますと、狙いと言うより行政の方向が変わっていくのに合わせて機構も変えていく必要がある、或いは呼び名も変えていく必要があるという認識です。それはすなわち「金融改革プログラム」で述べられました不良債権問題への緊急対応という局面から、将来の望ましい金融システムを目指す未来志向の局面に、金融システムを巡る局面というのが転換している。それに合わせて安定から活力へという方向を目指す金融行政を目指そうではないかと、そのために必要な機構の改革のようなものは行っていく必要があるという流れでございます。既に御承知のことですが、繰り返し言いますれば、利用者のニーズというものを重視する。そして同時に、利用者保護ルールというものを徹底していく。そして体質的に強い競争力のある金融機関が育ちやすい環境を準備し、また金融市場のインフラストラクチャー、先程のディスクロージャーもそうですが、そうしたものをしっかりしたものとして確立していく、こういうことを目指していく、そうした中で金融行政というものの国際化、或いは金融システム自体の国際化というものを目指し、同時に地域経済に貢献できるような金融システムができやすいような環境整備をしていく。こうした「金融改革プログラム」の考え方、これはもう既に取り掛かっているわけですが、今事務年度においてもこれを強力に押し進めていきたい。そのために必要な組織改正は、もちろん色々難しい条件はありますけれども、関係方面にお願いして実現していく。このような趣旨でございます。
- 問)
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個人情報紛失の件で細かいのですが、87とおっしゃった数字は、証券会社とか保険会社とか含んでいるのでしょうか。
- 答)
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御依頼をした金融機関は銀行に止まらず、証券会社、保険会社もございます。ですから、そうしたところもカバレッジとしては含まれて、87の中に幾つ入っているかというようなことで、またこれ途中経過で、しかも現時点まで公表したもので、私共も全容が分からないところで申し上げると誤解を生むといけませんので。お願いをした相手には証券会社や保険会社も入っております。
- 問)
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対応についてですが、要請自体は銀行法等の各業法に基づいたり、個人情報保護法に基づいている報告徴求ではないと聞いているのですけれども、そうしますとかなり杜撰なケースが明らかになった場合に、それは業務改善命令なり是正勧告なりを出す対象になるというふうに考えていてよろしいのでしょうか。
- 答)
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この一斉点検自体、おっしゃるように銀行等の監督法令に基づく報告徴求命令として出されたものではない、要請です。それでその点検の仕方はもちろん各行が個人情報保護上持っていることが要請されております態勢に従って点検をしていただくというようなやり方でございます。実際にこの点検の結果として明らかになった情報紛失等の内容は、私共が集計をした上でよく分析をいたしますが、各金融機関の対応について更に確認すべきことがあれば、そういった金融機関に関しては、更に詳しくお話を聞かせていただくことはあり得る話でございます。そうこうするうちに、もしその中に法令違反というような話でも出てくるようであれば、その原因なり程度に従った行政上の措置というのは検討されますが、これで何か御報告があって、そこに紛失の事実があったからそれが自動的に処分につながっていくというような性格のものではありません。先程も申し上げたように、金融機関というのは特に高いレベルの情報管理を求められるということで、一般の会社とは違う、こういう一斉点検みたいなものも敢えてお願いをしたというような性格のものでもございます。ですから、何か見つかったからすぐ直ちにということではございませんので、よく内容を見た上で、必要があればということになります。
- 問)
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細かいことですけれども、この87件というのはいつの時点でと解釈をすればよいですか。
- 答)
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すみません。今日の午後3時までに発表なさった金融機関、この一斉点検に応じてお調べになって、しかも紛失等があったといった発表をなさった金融機関、その合計数です。
- 問)
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締め切りが6月30日だったと思うのですけれども、その辺りから今日の午後3時までの間に発表されたというイメージでよろしいのでしょうか。
- 答)
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いやいや、6月末に至る以前に発表なさっているところもあります。
- 問)
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4月以降というイメージ。
- 答)
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そうです。皆さんそれぞれ金融庁からの点検要請を受けてということで発表なさっていますが、我々の認識でもこの今発表ということで適宜集計しましたのは、当方の一斉点検の御要請に応じてお調べになった、その結果として発表が行われたものということです。
- 問)
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87件で紛失件数は今のところどれくらいになるのでしょうか。
- 答)
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先程も申し上げましたように、それは御発表になったものを皆さんなりに集計なさるとある数が出てくると思うのですけれど、全容がまだ全部私共のところに報告として全部上がってきたわけではないことと、繰り返しになりますけれども、どのようなやり方で調べた結果であるのかということについての確認がまだ全てについて取れているわけではないし、また件数の数え方等についてどういうことをなさったかということも精査してみる必要がありますので、「発表されたものだから足せばいくらになるか分かるだろ」というお話かもしれませんが、当局がそれを言うことのインパクトってやはりありますので、ちゃんと内容を確認しないまま単純に集計してというのは、やはり誤解を生むといけませんから、これは全容が揃ってよく分析するまでちょっとお待ちいただきたいと思います。
- 問)
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対応の部分ですけれども、直ちに処分に結び付くものではなくて、その法令違反があった場合にはということだったのですけれども、つまり87の機関が、既に現時点で情報流出が確認をされて、例えば数十万、数百万というのが試算されるわけですけれども、それだけ大きな情報流出があると、消費者としては、国民としては、おっしゃったように「どうして銀行から出ちゃうんだろう」という不安と言うか、不信感があるかと思うのですが、そういうことに対して、多分法令違反ではなくても、金融庁として何らかのその意見を表明するとかというような考えは今のところないのでしょうか。
- 答)
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先程法令違反があればと申し上げたか、法令違反等があればと申し上げたかちょっと記憶が定かでないのですが、行政上の措置というのは、健全かつ適切な業務運営が行われていたかどうかということに着目をするわけです。もちろん法令違反というものも、それはそれでそういうことがありますと行政上の措置を検討するきっかけになるということであります。「法令違反さえなければ何でもいいんだ」ということを申し上げるつもりはございませんが、同時に、しかしどんな事情で、どういうことが起こったかという内容をよく見てみないと、ただたくさんの情報を紛失したからそれだけで直ちに行政処分かと言われると、そう簡単なものでももちろんないということはございます。
あと発表を見ていますと、個人情報保護の観点から言うと、ほとんどのところは個人情報保護法の施行前の古い情報のようです。この辺またどういう事情だったのかということは我々もよく調べないといけませんが、その調べるのもちょっとまだかかるかもしれません。
- 問)
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金融庁として、集計がまとまるのはいつぐらいだと。
- 答)
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急ぎますが、ちょっとここすぐにというのは難しいと思います。数が多いのと、考え方をよく、やり方や何かをよく確認しなければいけないという部分も多いと思うので、ちょっと時間をいただかないと、6月末締め切りだから今週中ぐらいには出るのか、とかこうおっしゃられてもなかなかそう簡単にはという事情だけ申し上げておきます。こういうのはやはり注意して扱わないといけませんので。
(以上)