五味金融庁長官記者会見の概要

(平成17年7月25日(月)17時02分~17時16分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

3割ルールの今後の適用方針についてお伺いしたいのですが、22日に三井住友フィナンシャルグループ等3金融機関に3割ルールに基づく業務改善命令が出されたのですが、大手行の不良債権問題は前期決算で終結したと思われるのですが、今後も3割ルールについては厳格に適用されていくのか、運用方針についてお聞かせください。

答)

17年3月期の当期利益実績が経営健全化計画を大幅に下回りました三井住友フィナンシャルグループ、もみじホールディングス及び九州親和ホールディングスにつきましては、いわゆる3割ルールなどのガイドラインに則りまして抜本的な収益改善策等を盛り込んだ新たな業務改善計画の策定・履行等を求める旨の業務改善命令を7月22日に発出をしたところでございます。この資本増強行の経営健全化計画の未達ということに関しましては、ガイドラインに沿って今後とも未達の原因と程度を精査したうえで必要に応じて適切な対応をしてまいります。

問)

大阪証券取引所の大株主の問題についてですが、村上ファンドが大阪証券取引所の大株主になるために金融庁に対して証券取引法に基づく認可申請を行ったと聞いておりますが、そもそもその個人が大阪証券取引所の大株主になることができるのかどうか、それと証券取引法の大株主の認可基準と方針をお聞かせください。

答)

認可申請についてのお話でございましたけれども、個別事案に係る事項でございますのでコメントは控えさせていただきます。御質問の後半の方に一般論でお答えできる部分がありますので、一般論として証券取引法上の制度についての御説明を申し上げます。証券取引法におきましては、取引所の業務運営に実質的な影響力を有する者、原則20%以上の議決権を取得保有しようとする者につきましては主要株主としての認可が必要とされております。この認可の申請が行われました場合には取引所の適正な運営を図る等の観点からその可否を法令に基づいて判断をしていくということになります。申請者が個人であるかどうかは特段要件にはなっておりません。

問)

TOB制度についてお伺いしたいと思います。最近の夢真ホールディングスと日本技術開発に対するTOBで、日本技術開発側があらかじめ株式分割を行うと宣言しているために夢真側はあらかじめ撤回条件をつけてTOBを始めることができたと思うのですが、今後買収防衛策として株式分割を活用した場合にTOBが始まってから実際に株式分割を行うというケースが出てくるとも思われるのですが、そうした場合に、あらかじめ買収する側がその分割を前提にした条件をつけてTOBを開始するということを、金融庁として認めていかれるのかどうかについてお伺いしたいのですが。

答)

今、個別企業についてお名前がでましたが、その件についての言及ということは控えさせていただきます。これも制度の御解説ができるところがありますので、一般論で制度の説明をいたします。公開買付の撤回の事由としては証券取引法上、株式交換、合併、破産などが法令上列挙をされておりますとともに、これらに準ずる事項で公開買付届出書において指定した事項が生じた場合には撤回が可能というこういう規定がございます。この点で、株式分割が行われることによって株式交換などに準じ、公開買付の目的の達成に重大な支障になるという場合には公開買付の撤回が可能であるというふうに解することが妥当であると考えられます。

それから、様々な防衛策に対する対抗策を盛り込んだ形で公開買付を行うということが考えられると思いますが、いずれにせよ防衛策というものは適正なものかどうかについては一義的には会社法制に照らして判断されるべきであると考えています。

問)

22日に発表した金融機関の個人情報の管理態勢の問題なのですが、678万先の紛失と言うのでしょうか、所在が分からなくなったものがあるということですが、これだけ調べてこれだけのものが出てきたということについて、どのように評価されているのかという点と、せっかくここまできっちりと調べてもらったわけですから、この出てきた数字、もしくはその時の理由等について今後分析した上で行政としてこれをどう活かして、どういうふうに金融機関の個人情報の管理のあり方について、今後金融機関の指導なり、話し合いなりをして改善していくのか等、どのように活かしていくのかという点について、現時点でどうのようにお考えなのでしょうか。

答)

今年の4月に金融庁から各金融機関等に対して、個人情報管理態勢に係る一斉点検の実施とその報告を求めました。その結果、今お話がありましたように合計で約678万先の個人情報の紛失等が判明いたしました。これは大変遺憾なことであると考えています。金融機関における顧客情報の適切な管理というのは、個人情報の保護、それから金融機関に対する利用者の信認の確保等の観点から大変重要なことであると考えております。行政といたしましては、各金融機関に対しまして、顧客情報の適切な管理に一層努めていただきたいと考えておりますし、そうした考え方に立って今後、検査・監督において十分な対応をしていきたいと考えています。

問)

これを受けて特別に何かするということではなくて、いわゆるルーティーンの検査と監督の中で、この件に関してきっちりガイドラインが守られているかというようなことをチェックしていくということでよろしいのでしょうか。

答)

今回発表いたしました検査の今年度の基本方針においても、個人情報の保護というのは重要なポイントになっているわけですので、ルーティーンと申しますか個人情報の保護というのは金融庁にとって今大切なチェックポイントになっているということで、そうした形で取り組んでいくということでございます。

なお、今の御質問ですとこの点検の結果を踏まえて何かするのかどうかという御質問のようでしたけれども、この点については今後、報告をそれぞれいただいておりますので、個々の報告内容等を精査した上で検討することにしたいと考えています。

問)

週末に首都圏で大きな地震がありました。それで交通網は随分と止まるというような事態になりました。金融機関は平日でなかったのですが混乱はなかったかどうかという点をお伺いしたいというのがまず一点。それと阪神淡路大震災の時に当時の兵庫銀行を中心にコンピューターがひっくり返ったりして、ATMが動かなくなったというような事態があって、その時に金融機関のシステムのあり方というのが問題になったと思うのですが、現時点で首都圏、都市部に大きな地震があった場合に金融機関のシステムの対応だとか、そういったATM等の確保については十分に体制が整っているのかどうか、金融庁としてはその辺について金融機関にどのような指導をしてきて、金融機関は現状どういう対応をとっているのかという点についてお伺いしたいのですが。

答)

まず金融機関の被害状況を申し上げますと、一部の店舗で建物の壁にひび割れが確認された等の軽微な被害に止まっております。そして全金融機関で支障なく営業が行われていると承知しております。また個々の金融機関を越えまして、金融市場の取引全般についても特段の問題は生じていないと理解しております。

それからこうした災害に係る対応の問題でございますけれども、各銀行においてはシステムリスク管理も含めまして災害時等の緊急時対応について十分な対応方針が定められ、またそのための体制がとられているものと私は理解しておりますし、その点については検査、或いは監督の場面でも確認をしているところでございます。もちろんそうした災害時には利用者に不便が及ぶような事態というのは避けられないケースは当然ございますが、そうした場合においては、過去の災害、これは風水害のケースであれ、地震のケースであれ、当局から各金融機関に対して融資の対応、或いは預金の引き下ろしへの便宜、更には手形交換等についての特段の配慮、こういったようなものも要請することといたしておりまして、これまでの経験ですとそうした要請というのは有効に機能していると考えています。

問)

イメージとしては、阪神淡路大震災の時はあまり危機対応というのが、システムに関して言うとそれほど堅牢ではなかったというイメージを持っておりまして、あれから10年以上経ちましたが、それは完全にあの時の反省や教訓は今の時点では相当活かされて、かなり堅牢になってきたと、そこの辺りの具体的なもの、例えばバックアップシステム等、そういったものに関しては堅牢になっているという認識でしょうか。つまり阪神淡路大震災と同じぐらいの大きさの地震があっても、あの時のような混乱というのは今は回避されるという考え方なのでしょうか。

答)

どのような規模の災害がどのような形態で起こるかによりますから、これが大丈夫、ここまでなら大丈夫というような保証を私が与えるということは無理ですけれども、特に大手銀行を中心にコンピューターシステムのバックアップということについては相当のリソースが投入されているということを理解しております。これはニューヨークの9月11日のテロ事件の際の教訓として、各金融機関のバックアップシステム、それがどのような実態にあるかということも監督の一環として調べてございますが、相応のバックアップシステムを皆様用意なさっているという認識でございます。

(以上)

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