五味金融庁長官記者会見の概要

(平成17年8月1日(月)17時02分~17時12分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

東京三菱銀行とUFJ銀行の10月の統合について、金融庁はシステム面の進捗状況の報告を両行に求めていると伺っています。一般論ですが、金融庁の銀行のシステム統合における着眼点について、どのようにお考えになっているのかお聞かせください。

答)

今、報告というお話がございましたが、個別事案についてのコメントは差し控えさせていただくということをお断りしましたうえで、一般論を申し上げます。銀行間の合併に当たっては、顧客に迷惑をかけないように円滑に実現されることが必要だと考えています。監督当局としては、顧客重視、利用者保護といった観点から、業務が適切かつ健全に行われるかどうかについて、しっかり検証していくことが求められていると考えています。そのためにも統合の当事者におかれましては、システムの問題であるならば、そのリスクの徹底した軽減による安全性・安定性を確保することが非常に重要なことになります。そういった面を含めて、十分な準備を整えていただくことが重要だと考えています。

問)

カネボウの旧経営陣が29日に巨額の粉飾決算の疑いで逮捕され、監査をしていた中央青山監査法人も東京地検の捜索を受けております。企業情報の開示制度に対する投資家の信頼が再び揺らぐ様な事態ですが、改めて、監査法人の果たすべき役割や信頼回復に向けた取組みについて、長官の御所見を伺いたいと思います。

答)

この点も個別企業或いは監査法人のお名前が出ていますが、個別事案に係るコメントは控える前提で、お話をさせていただきます。一般論でございますが、監査法人の果たすべき役割というお話ですが、日本の経済社会が複雑化、多様化、或いは国際化してきている今日の状況を踏まえますと、監査証明業務の信頼性を確保するために、監査法人による組織的監査の重要性が、これまで以上に高まってきていると考えています。監査法人においては、適正な監査実施に向け、不断の努力を行っていただきたいと考えております。

次に、信頼回復に向けた取組みという金融庁側のお話だと存じますが、この点については、会計監査を巡る昨年来の非違事例、或いは監査基準を巡る国際的な動向等を踏まえまして、企業会計審議会監査部会におきまして、監査法人等における監査の品質管理基準等の整備作業をお願いしていたところであります。その結果、去る7月20日、この部会から公開草案が公表されている状況に現在あります。また、公認会計士・監査審査会でも、金融庁が昨年12月に発表いたしましたディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応策等を踏まえまして、6月14日に審査基本方針等の改訂を行っておられます。日本公認会計士協会の品質管理レビューに対するモニタリング業務の着実な遂行に取り組む方針であると聞いております。いずれにしましても、金融庁では、引き続き公認会計士監査の充実・強化に努め、ディスクロージャー制度の信頼性の確保を図っていきたいと考えております。

問)

東京三菱銀行とUFJ銀行のシステムの問題なのですが、個別のことはお話されないとのことですが、現在、システムの問題について、もうちょっとしっかりとやらないといけない部分が残っていると思います。そうすると10月に予定している合併の期日に間に合わないのではないかと思うのですが、それについてはいかがでしょうか。

答)

まさに個別案件の見通しについてのお尋ねですので、これはお答えするわけにいきません。先程一般論で申し上げましたように、顧客重視、利用者保護の視点に立って、顧客に迷惑をかけないような円滑な実現、これに向けてどのような合併の場合であれ、努力をしていただく必要があるということであろうと思います。

問)

そのシステムに関連してですが、郵政公社の分社化というのが国会等でも議論があって、これは合併ではなくて逆に分社ですが、そのシステムについて郵政公社側は当初、金融庁の検査等で適切なリスク管理を求められた場合に、それが間に合わないというようなことを言っていました。ところがそれを07年4月に間に合わせるということで今決まっているわけです。つまり政府はこのシステム開発について、公社自らが中々厳しい状況だという認識を持っているにも関わらず、07年4月に間に合わせなさいと言っているわけです。一方で今度の合併については、金融庁はおそらく顧客保護の立場からしっかりとやりなさいと言っています。そうすると一般の人が感じるのは、政府の統一感が今ひとつ感じられないのですが、この点についてはどうお考えでしょうか。

答)

これも個別案件ですからコメントはいたしかねるのですが、法律に基づいて民営化を議論している場合と、現在純民間企業として活動している金融機関同士が統合していくという場合では自ずと手続が違うわけです。それから法律に基づいて色々な議論が行われているものについては、その議論の元になっている政府の基本方針なり、或いは民営化に向けてとられるであろう種々の手続の中で事柄が整理されていくべきものだと考えています。

問)

07年4月以降、郵貯銀行ができて、そこは金融庁も行政として関係してくると思うのです。そうすると既にそういう前提があるのであれば、金融庁としてもこのシステムについては何らかの関心なり、何らかの行政としての関わりを持っていくことが当然必要になってくると思うのですが、その点については如何なのでしょうか。

答)

政府全体として現在民営化の法律案を国会で御審議いただいているという段階ですから、この点について現在金融庁が何か権限を行使するという状況にはないわけでございます。今後の手続の問題として、この法律案が然るべき内容でもし成立するのであれば、そこに定められた手続に沿って必要な審査等が行われていくということであろうと考えます。いずれにいたしましてもまだ国会で御審議が続いている問題でございますから、ここで確たることを申し上げられるものではございません。

問)

私が言いたいのは郵政にしても、東京三菱、UFJの民間の合併にしても、行政の公平性という観点から同様の基準で、同様の行政の権限が行使されるべきだと思うのです。この点はどちらにしても基本的には同様の水準、基準でやっていくということでよろしいのでしょうか。

答)

民間金融機関として銀行法の規定に基づく監督を受けるということになるのであれば、それはその銀行法に定められている基準が唯一の基準であるわけです。それに尽きると思います。

問)

カネボウの粉飾決算に関する監査法人の責任についてお伺いしたいのですが、今回は経営陣が主導する粉飾ということで、地検が経営陣のみの刑事責任を問うています。財務諸表そのものは経営者が作りますが、やはり株主や投資家にとっては、それをチェックして証明する監査法人がこの粉飾決算にどう関わっていたのかというのが知りたいところだと思います。それに関して監査法人を監督する金融庁として今後何らかの責任を、もう一度レビューをする等、何らかのことを考えていらっしゃいますか。

答)

まさに個別事案の話ですからそのことについてのコメントは控えなければいけません。監査法人、或いは監査人には公認会計士法に定められた責務というものがございますから、それに沿って適切なお仕事をしていただく必要があるということに尽きると存じます。

(以上)

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