五味金融庁長官記者会見の概要

(平成17年9月12日(月)17時00分~17時11分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

2点お尋ねします。まずは、総選挙の結果が与党の圧勝だったということで話題になっているわけですけれども、この結果を受け止めて、今後の金融行政への影響ですとか、こういった結果を受けて今後の金融行政の取組み姿勢といったものにもしお考えがあればお聞かせいただきたいということと、銀行法改正案も国会提出が進まないという状況だったかと思うのですけれども、今後の見通し等についても触れていただければと思います。

答)

選挙の結果ですので、これは行政からコメントするというのは差し控えます。当庁としては、今後も引き続いて金融改革プログラムに盛り込まれました諸施策を着実に推進することで、望ましい金融システムの実現を目指していきたいと、引き続き金融行政を進めていきたいと考えております。

それから、銀行法改正との関係でございますけれども、銀行代理店制度というものを念頭において検討されているものですが、これは金融システム改革などの一環としてこれまで累次にわたる規制緩和を進めてきた中で、より多様な形態で幅広い人たちが銀行代理店になれるようにということで、制度を見直すことについて検討を行っているというものであります。具体的な国会への提出の見通しでございますと、国会日程にかかわるお話については、コメントを控えさせていただくのがよろしいかと思います。

問)

保険金不払いの問題ですけれど、明治安田生命の検査結果通知から1ヶ月超が経過して、検査に伴う報告徴求への回答がきていると認識しているわけですけれども、他の生保各社にも報告徴求している状況を踏まえまして、改めまして明治安田なり、業界への監督上の措置についての考え方をお伺いしたいということです。それから、同社については、代表権者が全員辞められるということも伝えられているところですけれども、こういった点も踏まえて契約者への信頼回復策としてどういった取組みが必要か、その点の御所見もあればお願いします。

答)

適切な保険金などの支払いを行うというのは、保険会社として生命保険事業を運営していく上で必要不可欠なことであります。今般、明治安田生命における不適切な保険金等支払いという生命保険事業の信頼を損なう事象が発生したということは、誠に遺憾だと考えております。明治安田生命に対しては、先般当庁が実施しました検査の結果通知が出されたことを受けて、保険業法に基づく報告徴求を行いました。これらの報告等に基づいて、現在金融庁において事実関係の究明、原因の分析等を行っているということでございます。現在、監督上はこういったステージにあるということでございます。

なお、こうした事態を踏まえまして、今お話がございましたが7月26日、全ての生命保険会社に対しまして、保険金等支払い管理態勢の再点検を行うこと、そして不払い事案に係る再検証を行うことを要請しまして、保険業法に基づいてその結果について報告を求めるということにしたところでございます。これはまだ報告期限まで間がございまして、現在はこの報告を待っているという状況であります。

信頼回復への取組みの問題として明治安田生命の役員人事に関するお話がございましたけれども、これについては色々な報道があるということは承知していますけれども、保険会社に関する経営判断事項でございます。コメントは控えさせていただきます。ご承知のとおり、明治安田生命においては報道にあったような事実はないというコメントを出しておられます。こうした中で、信頼回復のための取組みということになりますと、先程も申しましたが、保険金等の支払いというものは、保険会社の基本的でかつ最も重要な機能であって、保険会社におかれては、こうした保険金の支払い全般について、迅速にかつ適切にその支払い管理を行う態勢を確立していただく。非常に一般的でございますが、こういった取組みをしていただくことが、基本中の基本であると考えています。

問)

今の質問の関連で、生命保険各社から再点検・再検証の結果が全部上がってきた後の金融庁の対応というものはどういうものになりそうでしょうか。

答)

報告をいただきましたならば、その報告の内容についてよく精査をさせていただくということが基本になります。或いは御説明をうかがう機会もあるかと思います。とりあえずはそうした御報告の内容をよく確認していくということで、そこで何か問題がないかどうかということを点検するということになります。

問)

カネボウの粉飾決算の事件で、中央青山監査法人の会計士を立件するという報道が各社出ていますが、それについてはどうでしょうか。

答)

報道があったということは存じておりますが、個別事案の内容でございますからお答えは差し控えさせていただきます。

問)

個別の話で恐縮なのですが、住友信託が三菱とUFJの経営統合差止めを求めた民事訴訟で、東京地裁の方が和解の提案をしたという情報がニュースであったかと思うのですけれども、こうした和解に向けた動きが出てきたということについては、どういう効果を期待されているのでしょうか。

答)

個別銀行の係争に関わる事柄ですから、今の和解云々というお話も含めて、当局としてコメントすべきでないと考えております。もちろん当局としては経営統合差止訴訟の第6回の口頭弁論が本日12日にあったということは承知いたしておりますけれども、その係争の内容に関してのコメントは申し上げられません。

問)

金融機関の貸出残高が前年比プラスに転じていて、メガバンクはまだ前年比マイナスのようですけれども、貸出残高プラスということについて長官はどう評価されますか。

答)

日銀の9月8日の発表でございます。これで国内銀行の8月の貸出平均残高が特殊要因調整後で前年比プラス0.2%ということになっておりますけれども、これまでは資金需要の低迷ですとか、或いは企業のバランスシート改善努力のための借入金の圧縮、こういったような背景の下で民間金融機関の貸出残高が長期間継続して減少を続けてきたという事実があります。色々な要因を考えてみますと、依然として大企業等には有利子負債を圧縮するために返済を優先するという動きは見られます。他方で不良債権処理を進展させた民間金融機関の貸出態度の改善というのは、これは統計上もはっきりしてきたということ、それから景気回復を受けて企業の設備投資額、これが増加しているということ、それから民間金融機関からの住宅ローン等の個人向貸出が拡大している、これも事実でございまして、こういったようなことを背景に民間銀行の貸出残高が増加したというように考えられます。現時点ではこれはもう少し様子を注視するということだろうと思います。今後貸出の増加が継続するかどうかというのを現時点で判断するというのは中々難しいということであろうと思いますが、いずれにしても今回の統計で民間金融機関の貸出が増加に転じたということは、これまでの傾向的な数値から見ましても、金融システムを巡る局面が不良債権問題への緊急対応から脱却して新たな局面に転換しつつあるというようなことを示す一つの例であろうと私は考えています。

(以上)

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