日本IFIARネットワーク第8回総会議事次第・議事要旨
日時:令和6年5月27日(月曜)10時00分~12時00分
開催方法:対面会議(金融庁内会議室、一部オンライン会議)
1.開会
2.報告
- ・最近の企業開示・監査を巡る動向(金融庁)
- ・公認会計士試験や監査監督に関する内外の動向(公認会計士・監査審査会事務局)
- ・IFIARからの最近の活動報告(IFIAR事務局)
- ・ネットワーク会員からの報告
3.ディスカッション
4.閉会
議事要旨
3.ディスカッションに関し、今回取り上げた各共通テーマ((1)監査法人のガバナンス、(2)サステナビリティ開示・保証、(3)監査におけるテクノロジーの利用)に関する参加者の主な発言は以下のとおり。
テーマ(1)監査法人のガバナンス
- 監査法人のガバナンスコードは、上場会社等監査人登録制度が法定化されたことでより大きな役割を持つようになると考える。上場会社等監査人名簿が登録された監査人の監査品質を保証することになるため、登録された監査人に監査法人のガバナンスコードを適用するだけでなく、その適用状況に関してフォローできる枠組みを入れるべきであり、業務及び財産の状況に関する説明書、又は透明性報告書といった形で公表することを義務付けるべき。企業や投資家が監査品質を外部から確認できる仕組みが必要。
- 監査役には監査法人による開示を確認し、監査法人の状況をしっかり理解いただいた上で、会計監査人選任の判断をしていただきたい。
- 昨今株式市場の評価を意識し、情報開示を強化する企業が増えている。そうした企業は中小監査事務所を選任することもあるため、監査法人のガバナンスコードを中小監査事務所にも浸透させてほしい。
- 監査の担い手の質・量の確保のため、監査・保証の魅力を伝えつつ、アドバイザリー以外の監査サービス自体のビジネスモデルで十分に成り立つという議論が世界的になされていくことが重要。
- 企業の監査役が監査人の質や開示をしっかり確認することも重要。
テーマ(2)サステナビリティ開示・保証
- サステナビリティ情報に関する保証業務については、監査法人以外の保証業務提供者に対しても、財務諸表監査と同様の自主規制と監督機関のフレームワークが適用されることを期待する。
- 最近、例えば「再生可能エネルギー100%を達成した」といった企業のメッセージをよく見る。再生可能エネルギーはあまり潤沢に存在するものではなく、まとまった量を早い段階で確保するには企業のブランド力や価格支配力等様々な要因が働いていると考えられる。中にはクラウドアウトされている企業も存在する可能性もあり、こうした点も開示・保証の観点で確認していくことができればよい。
- 約10%から15%の有価証券報告書が訂正される状況を踏まえると、グリーンウォッシングを防ぐためにも、開示と保証は同時に開始されるべき。企業の負担が大きいのであれば、実施当初は会計士や保証業務提供者に対して保証導入支援業務を認め、3年等の一定期間経過後に正式に保証を導入することも考えられる。
- 様々な海外の動向を比較した上で厳し目の規制が日本の制度に導入される傾向があるが、サステナビリティ開示に関する方向性が国によって異なる中で日本がどのような方向性で進めるかというスタート時点の意思決定は重要。日本市場の魅力向上、及び日本企業の国際競争力強化を第一に考えて検討を進めてほしい。
- 開示基準の適用については、段階的に進めざるをえないと考える。最終的に全てのプライム上場企業にまで開示を求めるか、本当にできるのか、投資家が本当に求めているのかという点については、効果とコストをよく考えて検討すべき。
- 開示のスケジュールについて、有価証券報告書の2段階開示については、総会前の有価証券報告書の開示といった論点との関連性も含めて検討すべき。法務省等、他の省庁との連携も必要になると思うが、株主総会の時期も含め、国際的に見た際の日本の立ち位置にも目を向け検討を進めるべき。
- サステナビリティに関して具体的に検討が進む中、企業や監査法人における人材育成について日本全体として考える必要がある。試験制度をどうするかという観点も出てくると考える。
- 企業からはいつまでに何をやればよいのか分からないといった声もあり、サステナビリティ開示に関する工程表や記述情報の開示の好事例集を浸透させることが重要。好事例集について、2018年度から毎年作成されているが、毎回の特徴がより明確になるとメディアにも取り上げられ、より浸透するのではないか。
- 現実的に可能な範囲でという前提で、できるだけ早めの開示を実現することが重要。
- 保証については、監査法人以外の保証提供者も認めるのかといった点も含めて担い手をどうするかという議論が最も難しいと考える。国際的な議論も踏まえてフレームワークを検討していく必要がある。保証の内容については、過度に難しいことを求めるべきではない一方で、投資家が要求する水準に応えることも必要。十分な議論をしながら進めるべき。また、手戻りを防ぐためにも基準ややり方については早めに議論をするとよい。
- サステナビリティ情報は開示の内容が重要であり、戦略の財務への影響の記載、財務情報との整合性に注目している。
- バリューチェーンに関する開示の保証がIESBAの倫理規程の公開草案には入っている一方でIAASBの保証基準案には入っていないことが日本基準ではどのように取り扱われるのかや、監査法人以外の保証業務提供者について、利益相反の問題も生じうる中でしっかり管理ができるのかといった点に関心を持っている。
テーマ(3)監査におけるテクノロジーの活用
- 各監査法人において、生成AIを含む各種監査ツールの実用化を検討しているが、特に不正リスクシナリオや、不正の兆候の分野でAI利用が効果的と考える。生成AIの利用は一朝一夕に進むものではないものの、人が経験をベースに対応しているものを可能な限り機械化し、公認会計士は専門的判断を求められる領域にリソースを割いていくことで、監査の高品質化を実現していける。
- 現在主流のAIはディープラーニングを用いたもので、AIを利用した不正検出やシナリオ分析はあくまでも過去の経験に基づいたもの。
- 統計ソフトウェアを用いて分析したものの、なぜその分析結果になったか、(分析者自身に知識や経験がなく)仮説が立てられない例をよく目にする。AIに長けた専門家を育成し、生成AIによる不正の兆候の発見やシナリオ分析を進めたとしても、その人自身の知識と経験不足により、生成AIが検出した不正がなぜ起きたか、原因に結び付けられない事態となっては身もふたもない。AIの推進を強調する場合、生成AIによる分析結果に対して専門的な判断(professional judgment)を行える能力の向上も同時に強調していくべき。
以上
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