平成19年3月14日
金融庁

損害保険会社の第三分野商品に係る保険金の不払い事案の調査結果について

1. 報告徴求の概要

金融庁は、全ての損害保険会社(48社)に対し、以下の事項について平成18年7月14日付で保険業法第128条等に基づく報告徴求を実施した。これを受け、平成18年10月31日付で各社から報告書が提出された。

  • (1)保険金支払管理態勢

    「保険会社向けの総合的な監督指針」における保険金等支払管理態勢の改善・整備に関する着眼点を踏まえた、第三分野商品に係る保険金支払管理態勢の整備状況及び機能発揮の状況。

  • (2)保険金の不払事案に係る検証

    過去5年間(平成13年7月~平成18年6月)の第三分野商品に係る疾病又は介護を支払事由とする保険金の全ての不払事案について、真に適正であったか否かの検証。

  • (3)不適切な不払事案の概要及び対応状況

    保険金の不払事案について、不適切と判断した事案の概要及び対応状況。

  • 対象とする第三分野商品は、医療保険、がん保険、所得補償保険、医療費用保険及び介護費用保険等(海外旅行傷害保険を除く。)。また、これらの保険のほか、疾病又は介護を支払事由として保険金を支払う特約条項があるものについては、当該特約条項も含む。

2. 第三分野商品に係る不払事案の検証結果について

全ての損害保険会社48社から提出された第三分野商品に係る不払事案の調査結果の概要は以下のとおり。

  • (1)不適切な不払事案の件数及び金額

    全損害保険会社48社のうち21社から、計5,760件、約16億円が不適切な不払いとして報告された。

    • (注)全損害保険会社48社のうち27社から、第三分野商品の不適切な不払事案は無いとの報告があった。さらにそのうち22社は第三分野商品を取り扱っていない、またそれ以外の5社からは第三分野商品は扱っているが不適切な不払事案がないとの報告がそれぞれあった。

  • (2)不適切な不払事案の概要

    報告された不適切な不払事案は、他の損害保険商品とは異なる第三分野商品の特性である「保険責任開始以前の発病(以下「始期前発病」という。)」及び「告知義務違反解除」の取扱いにかかる事案が全体の約7割を占めている(図表参照。)。具体的な事例は以下のとおり。

    【 図表:第三分野商品の不適切な不払事案の事例別グラフ 】

    • 支払事由非該当(始期前発病等)に関する事例【2,478件、43%】

      始期前発病について、約款上は医師の診断により始期前発病が認定された場合に保険会社の免責が適用されることとなっている。この始期前発病の取扱いについて、社員が医師の診断に基づかずに判定を行う等、免責が不適切に適用された事例

    • 告知義務違反解除に関する事例【1,519件、26%】

      • 告知事項とは因果関係のない保険事故にもかかわらず、告知義務違反を適用し不払いとしていた事例等

      • 被保険者等の故意又は重過失の認定が不十分なまま、告知義務違反を適用し不払いとしていた事例等

      • 告知の重要性や正しい告知がなかった場合の取扱いについて、契約締結時の説明が不十分であり、会社側に過失があるにもかかわらず、告知義務違反を適用し不払いとしていた事例等

      • 保険会社が除斥期間経過後に解除を行う等、告知義務違反を理由とする不払いが不適切に行われた事例

    • 免責事由該当に関する事例【460件、8%】

      告知があった際に付すべき不担保特約等の付帯を保険会社が行っていないにもかかわらず、保険金請求が行われた際に、不担保特約が付帯されている事案として不払いとしていた事例等

    • その他の事例【1,303件、23%】

      • 約款に根拠のない任意解約、取消等の方法により保険契約を終了させており、支払事由の不存在について厳密な検証を踏まえているかどうか、必ずしも明確ではない事例等。

      • 被保険者等から保険金請求を放棄する旨意思表示があったとして不払いとした事案について、社員が被保険者の請求放棄の意思確認を行った経緯・理由等が記録に残されておらず、十分な検証ができない事例等。

3. 第三分野商品に係る不適切な不払いが発生した主な原因

  • (1)支払管理態勢の問題

    • 第三分野商品の特性として留意すべき要素(「始期前発病」の判断又は「健康状態告知」の認定等)を勘案しない不十分な支払査定マニュアル等が用いられていた。不払いとする際の認定基準や手続きも確立されておらず、支払判断が担当者の裁量に大きく委ねられていた。

    • 請求原因となっている疾病と契約上不担保としている疾病の病名が異なるにもかかわらず、同一の疾病と推測・誤認するなど、担当者の医療知識等が不足していた。

    • 第三分野商品の特性等に配慮した研修・教育・指導が不足していた。支払査定担当者等の人材育成も不十分であったため、担当者等の約款・マニュアル等に対する理解が不足したまま支払業務が行われていた。また、支払査定実務における調査・事実確認が徹底されていなかった。

    • 保険金支払管理部門等が行っている事後検証については、第三分野商品の特性を踏まえた検証が行われていなかった。苦情を通じた検証も有効に機能していなかった。したがって、事後検証の機能発揮は不十分なものとなっていた。

  • (2)商品開発管理態勢の問題

    • 他の損害保険商品とは異なる第三分野商品の特性を深く研究することなく商品開発を行っていた。運用面での取扱いの検討も不十分であった。

    • 第三分野商品の約款解釈・支払事由の明確化やマニュアル等の整備に際し、商品開発部門とシステム部門、支払管理部門等との相互連携が不十分であった。また、関連部門の相互連携が不十分なことにより、告知義務違反解除の事務手続き等において、約款に沿った実務が行われていなかった。

  • (3)内部監査の問題

    第三分野商品の特性を踏まえた内部監査が行われていなかった。したがって、多数の不適切な不払いが発生している事実を内部監査部門は把握していなかった。

4. 各社における改善策

各社においては、上記の発生原因分析を踏まえて、以下のような改善策を講じつつある(一部については、既に実施済みの社もある。)

  • (1)支払査定マニュアル・規程等の整備

    「始期前発病」又は「健康状態告知」等の第三分野商品の特性を踏まえ、適切な業務運営を行うための支払査定マニュアル等を整備し、支払査定実務の適正化を図る。

  • (2)第三分野商品の支払査定担当者等への研修・教育の強化

    第三分野商品に関する約款の正しい理解・解釈をはじめとして、支払査定担当者等の専門知識水準の向上と均質化等を図るための研修・教育を充実・強化する。

  • (3)不払事案の検証態勢の整備

    不払事案の適切性について、社内チェックを重層化する。また、高度な医的判断や法的判断を要する不払事案に対応するため、社外の専門家(医師、弁護士等)を加えた審査機関を設置する。

  • (4)苦情事案への対応

    苦情を一元的に管理し、個別事案への迅速な対応や苦情発生に至った原因分析等を行う。また、その結果を経営陣へ速やかに報告するとともに、経営陣の関与の下、問題解決や再発防止策の策定を行う態勢を整備する。

  • (5)支払査定業務の効率化

    第三分野商品の支払査定業務の集中化により、一元的な処理を行うとともに、支払査定部門に適切かつ十分な規模での人員配置を行う。

  • (6)内部監査態勢の強化

    内部監査部門の要員増強を行う。また、第三分野商品の特性を踏まえた適切な業務運営を行っているかどうかについて、重点的な監査を実施する。

お問い合わせ先

金融庁 Tel :03-3506-6000(代表)
監督局保険課(内線3375、3342、3772)

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