平成19年4月13日
金融庁
金融商品取引法制に関する政令案・内閣府令案等の公表について
金融庁では、金融商品取引法制に関する政令案・内閣府令案等を別紙のとおり取りまとめましたので、公表いたします。
本件全体の概要は[別紙1]を、本件で公表する政令案・内閣府令案等により改正・廃止する政令・内閣府令等の一覧は[別紙2]を、各政令案・内閣府令案等の概要は[別紙3-1~別紙26-1]を、それぞれご参照ください。(これら資料を一括してダウンロードされたい方はこちら(PDF:241KB)をご覧ください。また、本件全体のポイントは
こちら(PDF:649KB)をご覧ください。)
また、各政令案・内閣府令案等の具体的内容は、[別紙3-2~別紙26-2]をご参照ください。
本件についてご意見がありましたら、平成19年5月21日(月)17時00分(必着)までに、氏名又は名称、住所、所属及び理由を付記の上、郵便、ファックス又はインターネットにより下記にお寄せください。電話によるご意見はご遠慮願います。
なお、いただいたご意見につきましては、氏名又は名称を含めて公表させていただく場合があるほか、個別には回答いたしませんので、あらかじめご了承ください。
ご意見の募集は終了しました。ご協力ありがとうございました。
ご意見の送付先
金融庁総務企画局市場課金融商品取引法令準備室
郵便:〒100-8967 東京都千代田区霞が関3-1-1 中央合同庁舎第4号館
ファックス:03-3506-6251
ホームページ・アドレス:http://www.fsa.go.jp/
お問合せ先
金融庁総務企画局市場課金融商品取引法令準備室
電話:03-3506-6000(代表)
※本件に関する政府部内の担当部局は多岐にわたることから、ご意見・お問合せの内容に応じ、上記のご意見の送付先・お問合せ先のほか、各担当部局から対応することがあります。
本件全体の概要
I . 目的
証券取引法等の一部を改正する法律(平成18年法律65号)及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成18年法律66号)[並びに信託法(平成18年法律108号)及び信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成18年法律109号)]の施行に伴い、関係政令・内閣府令等について、所要の整備等を行う。
II. 施行時期
証券取引法等の一部を改正する法律(平成18年法律65号)の施行の日(同法の公布の日(平成18年6月14日)から起算して1年6月を超えない範囲において政令で定める日)から施行する。
具体的には、平成19年9月頃を予定。
III. 本件で公表する政令案
(注) 下記政令案により改正・廃止する政令の一覧は、[別紙2]を参照。
証券取引法等の一部を改正する法律及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令案(仮称)
(a)「証券取引法施行令」「投資信託及び投資法人に関する法律施行令」をはじめとする32本の関係政令の改正案。(あわせて、4本の政令を廃止。)
(b)概要は[
別紙3-1(PDF:40KB)]、具体的内容は[
別紙3-2(PDF:1,624KB)]を参照。
IV . 本件で公表する内閣府令案
(注) 下記内閣府令案により改正・廃止する内閣府令の一覧は、[別紙2]を参照。
1. 金融商品取引業等に関する内閣府令案(仮称)【新設】
(a)金融商品取引法3章(金融商品取引業者等)・3章の2(金融商品仲介業者)の規定等の委任を受けて所要の事項を定めるための内閣府令案。(あわせて、8本の内閣府令を廃止し、1本の内閣府令を改正。)
(b)概要は[
別紙4-1(PDF:44KB)]、具体的内容は[
別紙4-2(PDF:1,272KB)]を参照。
2. 金融商品取引業協会に関する内閣府令案(仮称)【新設】
(a)金融商品取引法4章(金融商品取引業協会)の規定等の委任を受けて所要の事項を定めるための内閣府令案。(あわせて、2本の内閣府令を廃止。)
(b)概要は[
別紙5-1(PDF:12KB)]、具体的内容は[
別紙5-2(PDF:75KB)]を参照。
3. 金融商品取引所等に関する内閣府令案(仮称)【新設】
(a)金融商品取引法5章(金融商品取引所)・5章の2(外国金融商品取引所)の規定等の委任を受けて所要の事項を定めるための内閣府令案。(あわせて、3本の内閣府令を廃止。)
(b)概要は[
別紙6-1(PDF:18KB)]、具体的内容は[
別紙6-2(PDF:426KB)]を参照。
4. 有価証券の取引等の規制に関する内閣府令案(仮称)【新設】
(a)金融商品取引法6章(有価証券の取引等に関する規制)の規定等の委任を受けて所要の事項を定めるための内閣府令案。(あわせて、7本の内閣府令を廃止。)
(b)概要は[
別紙7-1(PDF:19KB)]、具体的内容は[
別紙7-2(PDF:381KB)]を参照。
5. 証券取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令案(仮称)
(a)「証券取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令」をはじめとする、証券取引法(金融商品取引法)関係の6本の内閣府令の改正案。(あわせて、3本の内閣府令を廃止。)
(b)概要は[
別紙8-1(PDF:25KB)]、具体的内容は[
別紙8-2(PDF:349KB)]を参照。
6. 企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令案(仮称)
(a)「企業内容等の開示に関する内閣府令」をはじめとする、証券取引法(金融商品取引法)の開示制度関係の4本の内閣府令の改正案。(あわせて、1本の内閣府令を廃止。)
(b)概要は[
別紙9-1(PDF:20KB)]、具体的内容は[
別紙9-2(PDF:1,321KB)]を参照。
7. 投資信託及び投資法人に関する法律施行規則等の一部を改正する内閣府令案(仮称)
(a)「投資信託及び投資法人に関する法律施行規則」及び「資産の流動化に関する法律施行規則」をはじめとする、投資信託及び投資法人に関する法律及び資産の流動化に関する法律関係の10本の内閣府令の改正案。
(b)概要は[
別紙10-1(PDF:22KB)]、具体的内容は[
別紙10-2(PDF:1,191KB)]を参照。
8. 有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律施行規則等を廃止する内閣府令案(仮称)
(a)「有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律施行規則」をはじめとする5本の内閣府令の廃止案。
(b)概要は[
別紙11-1(PDF:15KB)]、具体的内容は[
別紙11-2(PDF:13KB)]を参照。
9. 銀行法施行規則等の一部を改正する内閣府令案(仮称)
(a)「銀行法施行規則」、「保険業法施行規則」及び「信託業法施行規則」をはじめとする14本の内閣府令の改正案。
(b)概要は[
別紙12-1(PDF:26KB)]、具体的内容は[
別紙12-2(PDF:1,615KB)]を参照。
V . 本件で公表する共管命令案
(注) 下記共管命令案により改正・廃止する共管命令の一覧は、[別紙2]を参照。
1. 金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律施行規則の一部を改正する命令案(仮称)
(a)1本の内閣府・総務省・法務省・財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省共管命令の改正案。
(b)概要は[
別紙13-1(PDF:15KB)]、具体的内容は[
別紙13-2(PDF:18KB)]を参照。
2. 金融商品取引業者営業保証金規則案(仮称)【新設】
(a)金融商品取引法31条の2(営業保証金)の規定の委任を受けて所要の事項を定めるための内閣府・法務省共管命令案。
(b)概要は[
別紙14-1(PDF:10KB)]、具体的内容は[
別紙14-2(PDF:42KB)]を参照。
3. 投資顧問業者営業保証金規則及び信託受益権販売業者営業保証金規則の廃止等に関する命令案(仮称)
(a)2本の内閣府・法務省共管命令を廃止するとともに、営業保証金の取戻しの手続に係る事項を定めるための命令案。(あわせて、1本の命令を廃止。)
(b)概要は[
別紙15-1(PDF:11KB)]、具体的内容は[
別紙15-2(PDF:24KB)]を参照。
4. 疑わしい取引の届出の方法等に関する命令等の一部を改正する命令案(仮称)
(a)3本の内閣府・法務省共管命令の改正案。
(b)概要は[
別紙16-1(PDF:11KB)]、具体的内容は[
別紙16-2(PDF:29KB)]を参照。
5. 特別振替機関の監督に関する命令の一部を改正する命令案(仮称)
(a)1本の内閣府・法務省・財務省共管命令の改正案。
(b)概要は[
別紙17-1(PDF:10KB)]、具体的内容は[
別紙17-2(PDF:13KB)]を参照。
6. 投資者保護基金に関する命令等の一部を改正する命令案(仮称)
(a)「投資者保護基金に関する命令」をはじめとする2本の内閣府・財務省共管命令の改正案。
(b)概要は[
別紙18-1(PDF:10KB)]、具体的内容は[
別紙18-2(PDF:25KB)]を参照。
7. 中小企業等協同組合法施行規則の一部を改正する命令案(仮称)
(a)1本の内閣府・財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省共管命令の改正案。
(b)概要は[
別紙19-1(PDF:10KB)]、具体的内容は[
別紙19-2(PDF:76KB)]を参照。
8. 労働金庫法施行規則等の一部を改正する命令案(仮称)
(a)3本の内閣府・厚生労働省共管命令の改正案。
(b)概要は[
別紙20-1(PDF:15KB)]、具体的内容は[
別紙20-2(PDF:169KB)]を参照。
9. 農業協同組合及び農業協同組合連合会の信用事業に関する命令等の一部を改正する命令案(仮称)
(a)5本の内閣府・農林水産省共管命令の改正案
(b)概要は[
別紙21-1(PDF:12KB)]、具体的内容は[
別紙21-2(PDF:414KB)]を参照。
10. 商品投資に係る事業の規制に関する法律第三十七条において準用する同法第三十条第一項の規定による立入検査をする職員の携帯する身分を示す証明書の様式を定める命令案(仮称)【新設】
(a)商品投資に関する事業の規制に関する法律第37条において準用する同法30条1項の規定に関する内閣府・農林水産省・経済産業省共管命令案。
(b)概要は[
別紙22-1(PDF:10KB)]、具体的内容は[
別紙22-2(PDF:23KB)]を参照。
11. 商品投資販売業者の許可及び監督に関する命令を廃止する命令案(仮称)
(a)1本の内閣府・農林水産省・経済産業省共管命令の廃止案。
(b)概要は[
別紙23-1(PDF:10KB)]、具体的内容は[
別紙23-2(PDF:12KB)]を参照。
12. 商品投資契約に基づいて出資された財産の分別管理に関する命令案(仮称)【新設】
(a)商品投資に係る事業の規制に関する法律第34条の規定の委任を受けて所要の事項を定めるための内閣府・経済産業省共管命令案。
(b)概要は[
別紙24-1(PDF:10KB)]、具体的内容は[
別紙24-2(PDF:13KB)]を参照。
13. 商品投資販売業者の業務に関する命令を廃止する命令案(仮称)
(a)1本の内閣府・経済産業省共管命令の廃止案。
(b)概要は[
別紙25-1(PDF:10KB)]、具体的内容は[
別紙25-2(PDF:11KB)]を参照。
14. 不動産特定共同事業法施行規則の一部を改正する命令案(仮称)
(a)1本の内閣府・国土交通省共管命令の改正案
(b)概要は[
別紙26-1(PDF:10KB)]、具体的内容は[
別紙26-2(PDF:37KB)]を参照。
VI . 本件で公表する政令・内閣府令案等のポイント
(注) 各事項の参照条文について、以下の略称を用いる。
- 上記 III の政令案による改正後の「金融商品取引法施行令」及び「金融商品の販売等に関する法律施行令」→「金商法施行令案」及び「金販法施行令案」
- 上記 IV 1の内閣府令案→「金商業等府令案」
- 上記 IV 2の内閣府令案→「協会府令案」
- 上記 IV 3の内閣府令案→「取引所府令案」
- 上記 IV 5の内閣府令案による改正後の「金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令」→「定義府令案」
- 上記 IV 9の内閣府令案による改正後の「銀行法施行規則」、「保険業法施行規則」及び「信託業法施行規則」→「銀行法施行規則案」、「保険業法施行規則案」及び「信託業法施行規則案」
1. 金融商品取引法の対象商品・取引の拡大
(1)いわゆる学校債の有価証券指定
学校法人に対する貸付債権であって、有利子かつ在校生の父母等以外の者が取得すること等の要件を満たすものを、対象商品(有価証券)に追加する(金商法施行令案1条・1条の3の2、定義府令案4条・8条)。
(2)集団投資スキーム持分の定義からの除外
保険・共済契約に基づく権利、各種法人(有限責任中間法人を除く。)への直接の出資・拠出に基づく権利及び弁護士等の業務を出資対象事業とする組合契約に基づく権利等は、形式的には金融商品取引法2条2項5号に掲げる権利(いわゆる集団投資スキーム持分)の定義に該当しうるが、他法令により行政の関与が確保されていること等により実質的に規制の必要がないことから、当該定義から除外する(金商法施行令案1条の3、定義府令案6条・7条)。
(3)デリバティブ取引の範囲
(a)保険・共済契約に基づく権利や債務保証契約等は、形式的には店頭デリバティブ取引の定義に該当しうるが、実質的に規制の必要がないことから、当該定義から除外する(金商法施行令案1条の15)。
(b)国民経済計算など各種統計の数値を「金融指標」として追加し、これに基づくデリバティブ取引を規制対象とする(金商法施行令案1条の18)。
(c)いわゆるクレジット・デリバティブ取引の支払事由として追加するものを定める(金商法施行令案1条の13・1条の14、定義府令案20条・21条)。
2. 対象業務の横断化・業務内容に応じた参入規制の柔軟化
(1)金融商品取引業の定義からの除外
国、地方公共団体及び日本銀行等が行う行為やプロ顧客のみを相手方とする店頭デリバティブ取引等は、形式的には金融商品取引業に該当しうるが、実質的には規制を及ぼさなくとも投資者保護に支障がないことから、金融商品取引業の定義から除外する(金商法施行令案1条の8の3、定義府令案16条)。
(2)登録拒否要件(人的構成要件)の審査基準
金融商品取引業の登録拒否要件(業務を適格に遂行するに足りる人的構成を有しない者)の審査基準として、役員・使用人の資質に係る要件を定めるほか、特定の業務について、当該審査基準を明確化する(金商業等府令案13条等)。
(3)最低資本金・営業保証金の要件
第一種金融商品取引業を行う者の最低資本金要件を原則5,000万円とするなど、業務の種別に応じた最低資本金要件や営業保証金供託義務等を整備する(金商法施行令案15条の7・15条の12)。
3. 集団投資スキームの自己募集・自己運用に関する規制の整備
(1)自己運用に係る運用権限の全部の外部委託
主として有価証券等への投資運用を行う集団投資スキーム(ファンド)の運営者は、自己運用(金融商品取引法2条8項15号)を行う者として金融商品取引法の規制対象となりうるが、運用権限の全部を金融商品取引業者等に委託する場合は、一定の要件の下で、当該運営者の行う業務を金融商品取引業の定義から除外する(定義府令案16条)。
(2)適格機関投資家等特例業務の特例
(a)集団投資スキーム持分の私募又は自己運用を行う者に適格機関投資家等特例業務の特例を適用する場合の要件は、当該集団投資スキームの出資者に1名以上の適格機関投資家がおり、適格機関投資家以外の者(一般投資家)が49名以下である場合とする(金商法施行令案17条の12)。
(b)ある集団投資スキーム(子ファンド)の出資者に一般投資家から出資を受けた他の集団投資スキーム(親ファンド)の運営者等がいる場合(ファンド・オブ・ファンズ)は、(a)の要件の潜脱が生じないよう、原則として子ファンドの運営者には適格機関投資家等特例業務の特例を適用しない。ただし、親ファンドが投資事業有限責任組合(LPS)又は有限責任事業組合(LLP)である等の場合は、親ファンド及び子ファンドの出資者を合計して(a)の人数要件が満たされれば、子ファンドの運営者に適格機関投資家等特例業務の特例の適用を認める(金商業等府令案242条)。
4. 業者が遵守すべき行為規則の整備
(1)広告等の規制
(a)広告のほか、郵便、信書便、ファクシミリ送信、電子メール送信又はビラ・パンフレットの配布等、多数の者に同様の内容で行う情報提供を規制対象とする(金商業等府令案75条)。
(b)広告等の表示方法として、明瞭・正確に表示し、特にリスク情報は最大の文字・数字と著しく異ならない大きさで表示する旨を定める(金商業等府令案76条)。
(c)広告等の表示事項として、手数料等の情報、リスク情報(リスクがある旨、原因となる指標及び理由)及び重要な事項について顧客の不利益となる事実等を追加する(金商法施行令案16条、金商業等府令案77条・79条)。
(2)契約締結前の書面交付義務
(a)書面の記載方法として、特に重要な事項を最初に平易に記載し、次にリスク情報等を12ポイント以上で明瞭・正確に枠内に記載し、他の事項も8ポイント以上で明瞭・正確に記載する旨を定める(金商業等府令案81条)。
(b)顧客が上場有価証券等に係る契約を締結する場合であって、1年以内に当該取引に係るリスク情報等を記載した上場有価証券等書面を交付している場合等には、契約締結前交付書面の交付を要しないこととする(金商業等府令案82条)。
(c)書面の記載事項について、取引類型ごとにきめ細かく追加する(金商業等府令案84条~98条)。
(3)契約締結時等の書面交付義務
(a)取引残高報告書等の作成・交付義務を定める(金商業等府令案100条)。
(b)書面の記載事項について、取引類型ごとにきめ細かく定める(金商業等府令案101条~116条)。
(c)契約締結時交付書面や取引残高報告書等の交付を要しない場合を定める(金商業等府令案117条~119条)。
(4)各種禁止行為
(a)不招請勧誘の禁止規定は店頭金融先物取引に、勧誘受諾意思不確認勧誘及び再勧誘の禁止規定は金融先物取引に、それぞれ適用することとする(金商法施行令案16条の4)。
(b)販売・勧誘局面の禁止行為として、契約締結前交付書面や上場有価証券等書面の交付に際して、リスク情報等について顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明をしないこと等を追加する(金商業等府令案124条)。
(5)損失補てん等の禁止
損失補てんの事故確認不要の場合として、新たに、認定投資者保護団体、弁護士会仲裁センター及び国民生活センター等のあっせんによる和解並びに一定の要件の下で弁護士が顧客を代理して行う和解(140万円以下のものに限る。)を定める(金商業等府令案126条)。
5. 顧客の属性に応じた行為規制の柔軟化
(1)「一般投資家へ移行可能な特定投資家」の範囲
「一般投資家へ移行可能な特定投資家」の範囲は、地方公共団体、政府系機関、上場会社、資本金の額が5億円以上の株式会社等とする(定義府令案23条)。
(2)「特定投資家へ移行可能な個人」の要件
(a)「特定投資家へ移行可能な個人」の要件は、当該個人が組合等の運営者である場合は、その出資総額が3億円以上であり、かつ、全構成員から移行について同意を得ていることとする(金商業等府令案64条)。
(b)(a)以外の場合における「特定投資家へ移行可能な個人」の要件は、取引の状況等から合理的に判断して純資産額及び投資性のある金融資産が3億円以上と見込まれ、かつ、最初の契約を締結してから1年を経過していることとする(金商業等府令案65条)。
(3)特定投資家と一般投資家との間の移行の手続
(a)移行の申出等の単位となる「契約の種類」は、有価証券関係、デリバティブ取引関係、投資顧問契約関係及び投資一任契約関係の4種類とする(金商業等府令案56条)。
(b)移行の有効期間は原則として1年であるが、特例として、金融商品取引業者等が定める一定の日を期限日とするための要件を定める(金商業等府令案57条等)。
6. 投資性の強い預金・保険・信託に対する規制の横断化
(1)「投資性の強い預金・保険・信託」の具体的範囲
(a)金融商品取引法と同等の販売・勧誘ルールが適用されることとなる「投資性の強い預金等(「特定預金等」等)」の範囲は、デリバティブ預金、外貨預金及び通貨オプション組入型預金とする(銀行法施行規則案14条の11の4)。
(b)金融商品取引法と同等の販売・勧誘ルールが適用されることとなる「投資性の強い保険等(「特定保険契約」等)」の範囲は、変額保険・年金、解約返戻金変動型保険・年金及び外貨建て保険・年金とする(保険業法施行規則案234条の2)。
(c)金融商品取引法と同等の販売・勧誘ルールが適用される「投資性の強い信託」(「特定信託契約」)の範囲は、一定の信託(公益信託、元本補てん型信託等、管理型信託及び物・権利の管理・処分信託)以外の信託に係る信託契約とする(信託業法施行規則案30条の2)。
(2)金融商品取引法と同等の販売・勧誘ルールの整備
(a)デリバティブ預金に関する広告等への表示事項及び契約締結前交付書面の記載事項として、「銀行が預入期間を延長する権利を行使した場合に、当該預金の金利が市場金利を下回ることにより、顧客に不利になるおそれがある旨」を追加する(銀行法施行規則案14条の11の20・14条の11の26)。
(b)特定保険契約に係る契約締結前の書面交付義務について、現行の監督指針で規定されている「契約概要」「注意喚起情報」等との関係を踏まえて記載事項等を整理する(保険業法施行規則案234条の23)。
7. 利用者保護のためのその他の制度整備関係
(1)認定投資者保護団体制度の整備
認定投資者保護団体の対象事業者として、業態を越えて、投資性の強い金融商品を取り扱う業者を幅広く指定する(金商法施行令案18条の4の3、協会府令案30条)。
(2)金融商品販売法の拡充
(a)金融商品の販売等に関する法律の対象取引に、海外商品デリバティブ取引を追加する(金販法施行令案5条)。
(b)金融商品販売業者等の説明義務の対象となる顧客から、特定投資家を除外する(金販法施行令案8条)。
8. 取引所の自主規制業務の適正な運営の確保関係
(1)自主規制業務の範囲
取引所の自主規制業務として、金融商品取引法で法定されている上場・上場廃止に関する業務及び会員等の法令等遵守状況の調査のほか、売買審査(リアルタイム監視を除く。)、会員等の資格審査、会員等の処分業務及び開示情報の審査・上場会社の処分業務並びにこれらの業務に関する業務規程等の規則(上場・上場廃止基準等を除く。)の作成・変更・廃止等を追加する(取引所府令案7条)。
(2)取引所の主要株主規制
認可を受けて株式会社金融商品取引所の議決権の20%以上50%以下を取得・保有できる者は、地方公共団体とする(金商法施行令案19条の3の3)。
9. 有価証券の性質・流動性に応じた開示規制の整備関係
(1)上場会社の開示規制の充実
(a)四半期報告制度、内部統制報告制度及び有価証券報告書の記載内容に係る確認書制度の対象は、株券の上場会社(優先出資証券を上場する協同組織金融機関を含む。)とする(金商法施行令案4条の2の5・4条の2の7・4条の2の10)。
(b)四半期報告書の提出期限は、各期間(第4四半期を除く。)経過後45日以内とする。ただし、銀行・保険会社の第2四半期報告書については、当該期間経過後60日以内とする(金商法施行令案4条の2の10)。
(注) 四半期報告書、内部統制報告書等に係る用語、様式、作成方法等については、別途、内閣府令案により定める予定です(内閣府令案は、後刻、パブリックコメントに付す予定です。)。
(2)集団投資スキーム持分等に係る開示規制
(a)有価証券とみなされる金融商品取引法2条2項各号の権利(信託受益権、持分会社の社員権、集団投資スキーム持分等)は原則として開示規制は適用されないが、出資総額の50%を超える額を有価証券に投資する事業を行う場合については、開示規制を適用する(金商法施行令案2条の9~2条の11)。
(b)みなし有価証券の取得の勧誘等により、500名以上の者が当該有価証券を取得することとなる場合は、有価証券の募集・売出しに該当するものとする(金商法施行令案1条の7の2・1条の8の2)。
10. 適格機関投資家の範囲拡大
(a)会社が適格機関投資家となるための要件について、有価証券報告書提出の要件を撤廃し、有価証券残高基準を100億円から10億円に引き下げる。その他の法人や個人についても、同様の要件の下で対象とする。また、運用型信託会社のうち当局に届出を行った者を対象に加える(定義府令案10条)。
(b)信用協同組合については、当局に届出を行ったものに限ることとする(定義府令案10条)。