平成22年5月27日
金融庁

日本振興銀行株式会社に対する行政処分について

金融庁は、本日、日本振興銀行株式会社に対し、下記のとおり行政処分を行いました。

I .命令の内容

銀行法第26条第1項及び第27条に基づく命令

  • 1.以下の業務について、平成22年6月7日から平成22年度上期末(9月30日)まで停止すること。

    • (1)大口融資(1億円超。ただし、既往顧客の借換えは除く)及び債権買取業務

    • (2)新規業務(新商品の販売・勧誘を含む)

    • (3)融資、預金に関する勧誘業務(広告・宣伝を含む)

  • 2.以下の態勢を確立・強化すること等により、資料及びデータの隠蔽等、検査にあたっての不適切な対応の再発防止を確保し、適切な受検態勢を確立すること。

    • (1)検査の効果的・効率的実施を確保するための検査対応業務の適正な管理

    • (2)取締役会等による検査対応業務に対する監視・監督の強化

  • 3.適切かつ健全な業務運営を確保するため、以下の観点から、法令等遵守態勢及び顧客保護等管理態勢とそれに関連する経営管理態勢の抜本的再構築を行うこと。

    • (1)法令等遵守、顧客保護に対する経営姿勢の明確化

    • (2)取締役会等による執行役の業務執行に対する監視・監督の強化、及び業務執行に関する文書保存・管理の指導強化と業務執行部門によるその着実な履行

    • (3)法令等遵守担当部門による業務執行部門に対する牽制機能強化のための態勢の抜本的再構築、及び関連する規程の見直しとその着実な履行

    • (4)業績向上偏重を改め法令等遵守を重視する経営風土を確立し、役職員における適切な法令等遵守意識の醸成を図るための施策(研修等)の実行

    • (5)内部監査部門による監査機能の強化

    • (6)法令等遵守、顧客保護が適切に実施されるための預金・融資の勧誘に関する営業話法や表彰制度の見直しとその着実な履行

    • (7)下記 II .の処分の理由にかかる問題の他に、類似の法令違反、またはそのおそれに該当する事案がないかどうかの洗出しとその是正

    • (8)下記 II .の処分の理由にかかる問題及び上記(7)により判明した事案については、顧客保護が適切に図られるよう万全を期すための対応の実施

  • 4.適切かつ健全な業務運営を確保するため、以下の観点から、信用リスク管理態勢及び資産査定管理態勢等とそれに関連する経営管理態勢の抜本的再構築を行うこと。

    • (1)信用リスク管理、資産査定管理等に対する経営姿勢の明確化

    • (2)取締役会等による執行役の業務執行に対する監視・監督の強化、及び業務執行に関する文書保存・管理の指導強化と業務執行部門によるその着実な履行

    • (3)融資審査・管理や自己査定を適切に実施し、大口融資・債権買取業務に対する牽制機能を強化するための態勢の抜本的再構築、及び関連する規程の見直しとその着実な履行

    • (4)内部監査部門による監査機能の強化

    • (5)今回の検査指摘を踏まえた適切なリスク管理の実行

    • (6)大口融資先の点検

  • 5.過去の検査指摘事項の改善状況の総点検(不十分な場合には迅速な改善の実施)

  • 6.下記 II .の処分の理由に関係する役職員の責任の所在の明確化、及びそれを踏まえた経営責任の明確化

  • 7.上記2.~6.にかかる業務の改善計画を平成22年6月28日までに提出し、直ちに実行すること。

  • 8.上記7.の実行後、当該業務の改善計画の実施完了までの間、平成22年7月末日を第一回目とし、以後、1ヶ月毎に計画等の進捗・実施及び改善状況をとりまとめ、翌月15日までに報告すること。その際、上記1.の停止期間経過後は、当該改善計画が完了するまでの間、大口融資・債権買取業務について、その信用リスク管理の状況を上記改善状況と併せて報告すること。

    また、顧客・利用者への周知を図る観点から、本処分に対する対応状況について公表を行うこと。

    なお、上記の命令の実施に当っては、事実上命令内容を潜脱することのないよう、適切な対応をとること。

II .処分の理由

当庁の立入検査(平成22年4月27日通知)及び銀行法第24条第1項の規定に基づく当行からの報告等によると、以下のとおり、重大な法令違反等が認められ、また、経営管理態勢、法令等遵守態勢、及び信用リスク管理態勢等に関して、業務の適切かつ健全な運営を実行するうえで重大な問題が認められたこと。

  • 1.重大な法令違反等

    • (1)当行の特定の役職員らは、検査資料として検査官に業務メールを提出するに当たって、事前にメール保管先サーバーに接続し、同サーバー内に保管されていた電子メール群から、特定の電子メールを意図的に削除したものと認められた。当該削除メールからは、貸金業者からの債権買取に関する出資法違反の強い疑い等の重要な検査指摘につながる事実や親密先企業の管理実態等が確認されるなど、メール削除は当行の業務の実態把握の深度に大きな影響を与えており、当行の特定の役職員らの当該メール削除行為は、銀行法第63条第3号及び第64条第1項第2号の検査忌避等に該当する法令違反行為であると認められること。

    • (2)特定企業への融資の実行に関して、取締役の過半数を自らの推薦する者とすることを条件とした上で、当該条件の不履行を理由として追加担保の差入れを要求しており、銀行法第13条の3第4号及び銀行法施行規則第14条の11の3第3号(優越的地位の濫用)に違反する行為があったこと。その他、同条に違反するおそれのある行為があったこと。

    • (3)貸金業者から債権を買い取るにあたり、事前に、一定期間経過後、当該債権を一括再譲渡する旨の合意を結び、これに基づき当該債権を貸金業者に再譲渡したが、当該取引は経済的には信用供与の実態を有することから、受領した買取手数料が実質金利とみなされ、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条第2項に違反する強い疑いがあると認められること。

    • (4)融資勧誘に際して、顧客に事実と異なる内容を告げており、銀行法第13条の3第1号(銀行の業務に係る禁止行為)に違反するおそれのある行為が複数あったこと。また、債務者からの定期預金の解約申出に対して不適切な説明により応じていない事案や、実行した融資からの定期預金預入(即時両建預金)が疑われる行為が複数あったこと。

    • (5)貸金業者から譲り受けた債権については、貸金業法が準用されるが、交付した受取証書の記載不備や督促行為を行った事実を交渉記録に記載していないなど、貸金業法第18、19、21、22条に違反する行為があったこと。

    • (6)業務委託先の一部社員が、当行の融資に係る勧誘・説明といった営業行為を行っており、当該委託先が無許可での銀行代理業にあたるおそれがあるが、当該営業行為が銀行代理業に該当するかを含め、当行ではリーガル・チェックを行っていないこと。

    • (7)当行が保有する顧客情報について、顧客からの同意を得ずに第三者提供を行っており、個人情報の保護に関する法律第23条第1項に違反するおそれのある行為があったこと。

  • 2.経営管理態勢、法令等遵守態勢、及び信用リスク管理態勢等に関する問題

    • (1)前回検査において、業務が法令及び定款に適合して執行されるための態勢や、職務執行に係る情報の保存・管理に関する態勢の整備が不十分である旨指摘されているにもかかわらず、取締役会等による業務執行部門に対する指導・監督が不十分であることから、今回検査においても、検査忌避等に該当する電子メールの削除や、大口与信先の融資審査資料、自己査定資料を管理していない等、職務執行に関する情報の保存・管理に不備が認められる。

      また、資産査定等に関し十分な資料を迅速に提出しないなど、検査の実効性や効率性を阻害するような不適切な対応も行っている。

      このように、当行の経営管理態勢には重大な問題があると認められる。

    • (2)上記1.の法令違反やそのおそれのある事案について、当行では、法令等遵守担当部門である経営管理室及び内部監査部門である経営監査室において、行内担当部署と親密先企業との関係や営業推進を重視するあまり、法令等遵守や顧客保護等管理の観点から問題がないか適切に検証されておらず、態勢上の重大な不備が認められる。

    • (3)大口融資先に対する融資に関しては、独立した審査部門による審査がなされておらず牽制機能が発揮されていない等、管理態勢上の重大な不備が認められる。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
監督局銀行第一課(内線3765、2786)

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