平成22年5月17日
金融庁

第1回コーポレート・ガバナンス連絡会議 議事要旨

1. 日時:

平成22年4月22日(木曜日)17時00分~19時05分

2. 場所:

中央合同庁舎第7号館12階 金融庁共用第二特別会議室

コーポレート・ガバナンスを巡る問題意識についての参加者の主な意見は以下のとおり。

ガバナンスについては、絶対的に正しい仕組みはない。各社の試行錯誤によって強化を図るべきものであり、制度上、自由度を広く認めておくことが必要。

内部統制、四半期開示などの開示制度の整備が短期間のうちに進展しており、企業は対応に大きな負担を強いられている状況。

業績予想開示などの困難かつ、企業に過剰な負担を強いるような開示を求めるのは止めて欲しい。

ガバナンスに係る制度としては、金商法、取引所規則、会社法など様々あるが、金商法の場合には、対象範囲として、継続開示をやっている株式会社、そのうち上場会社、株式に関する継続開示をやっている会社、社債について上場している会社、外国会社で東証上場している会社のうち、どこまで含めるのかについて、当初の想定と実際の制度との間にズレがあるのではないか。

制度整備の手続について、近年、パブコメ後、即施行というケースが増えてきている。迅速な対応が必要な場合は別として、ルールによってはもう少しじっくり考えても良いものもあるのではないか。

法的インフラの議論をしていく上では、どこで規律をおいていくかということをいろいろ整理すべき。

法律は、ガバナンスに係る枠組みやメニューの提示を中心とし、具体的対応は、取引所規則や委員会や連絡会議などの議論を通じ、まず、ソフトな形で規律していくことが望ましい。

ガバナンスについて、新たな会社の機関構成のメニューを検討することは議論に値する。監査役会設置会社でも、社外取締役を設置すべきとの声が国内外の機関投資家から強い。海外からは、監査役制度が分かりにくいという声もあり、監査役と独立取締役の双方の設置に余剰感があるのなら、監査役を置かないガバナンス体制もあり得ると思う。なお、現行の委員会設置会社には、指名委員会の位置づけなど、実務上疑問を呈されているところもある。

第三者割当増資、MBOについて特別委員会を設置するケースがあるが、これらについて、会社法上の法的根拠を与えることを検討すべき。

取締役に係る制度整備に加えて、取締役の行為規範が日本の中に生まれていくことが望ましく、そのために事前の差止制度等の事前の救済策を検討すべき。

上場会社の役員は責任感を持って経営に取り組んでおり、基本的にはこれを応援していきたい。他方、直近20年間、25年間、株価が上がってこなかった現実があり、企業には、長期的視点から資産形成を行う投資家にリターンを与えるための取り組みが求められる。

投資家側も発行体企業に要求するだけではなく、資本市場の強化に向けて自らの責任を果たしていく必要がある。

日本のコーポレート・ガバナンスの実態は、2004年のOECD原則から大きく乖離しており、これをどう縮めていくかが課題。3年前くらいからは、乖離が広がってきている。ICGN(International Corporate Governance Network)では世界のコーポレート・ガバナンスの実態について定点観測を行っているが、日本における比重は低下するばかり。

中長期的に資本市場の魅力を向上させるためのコーポレート・ガバナンスの議論が必要。ガバナンスについて日本はアジアのリーダーを目指すべき。既に韓国では積極的にガバナンス強化に取り組んでいる。

実効的なガバナンス改革が必要。2002年に委員会設置会社制度が導入されたが、これは、アドバイザリー・モデルからモニタリング・モデルへの移行途上の過渡的な制度。日本でも、モニタリングに純化したコーポレート・ガバナンス制度が必要。

会社法上、モニタリングと意思決定をすべて取締役会で行うとなると、矛盾が生じる。諸外国では監督機関と経営上の意思決定機関を分離しているが、そういった観点での配慮が必要。

金商法違反について、英独仏では、会社法上の議決権を凍結させる仕組みがある。我が国でも、金商法違反について、課徴金のみならず議決権の凍結による対応も考えられるのではないか。

金商法では、企業側の情報開示ルールの整備が進んでいるが、機関投資家も企業価値向上に向けた取り組みを行うべき。今般の金融危機再発防止という中で、機関投資家の果たすべき責任と権限というものを明確に規定する必要がある。我が国でも、米国のエリサ法や英国のスチュワードシップ・コードのように、機関投資家の責任原則といった方策を検討すべき。

経営者の立場からは、誰が実質株主かを把握できるような制度整備も必要。また、実質株主の議決権行使について、2007年のEU指令では、株主権についての明確化が図られている。総会への出席権、株主提案権等について、名義株主との同等の権利が担保されるべき。

経営者と投資家の対話について、萎縮要因となっている重要提案行為の規定の見直し、他の投資家との共同行動等についても、検討が必要。英国では、投資者が経営幹部を通じて問題解決が図れない場合、Senior Independent Directorが窓口となることとされており、これを参考にした制度も考えられる。

投資家と経営者の相互信頼関係という意味で、全部買付義務等の欧州型TOBルールによって、買収防衛策が不要となるような環境整備が必要。海外投資家の観点から、推奨モデルという形でのコーポレート・ガバナンス原則についても検討が必要。

ガバナンスについては、開示による規律に委ね、各社の創意工夫がなされるようにすることが大事との意見があったが、その割には企業が開示する内容は機械的な印象が否めず、例えば、監査役の活動状況の開示も十分になされているとは言えない。取締役の権限の一部をアウトソースしている任意的な委員会を設置している場合にも、開示が必要なのではないか。役員報酬の個別開示についても、これまでの努力で進展はしているが、比較法的にはまだまだ不十分。

資本市場におけるガバナンスを考える場合、会社支配権の変動を規律する公開買付規制についても検討していく必要がある。我が国の公開買付規制は、当初、米国型であったものがEU型に変質しつつある。

これに併せて大量保有報告制度も変容せざるを得ないと考えるが、例えば、公開買付規制と大量保有報告制度では、株式の持分割合のカウントの仕方が異なっている。

我が国でも義務的公開買付制度が導入されたことにより、会社法上の株式買取請求権との類似も見られるところ。市場/市場外の取引を通じた支配権移動の場面における、株主の退出権の在り方については、会社法上も少数株主保護の観点から検討を要する。

日本版ライツ・イシューの案件が出てくるようになったのを機に、会社法の新株予約権割当通知の在り方を再検討してはどうか。

金融機関の役員報酬については、会社法上株式報酬を利用すると毎年株主総会の決議が必要とされており、新株発行による希釈化の関係で決議が難しい。複数年にわたる新株発行の決議ができないか検討が必要。

情報開示については、投資家目線での制度整備が重要だが、役員報酬については、会社法上の事業報告書では連結報酬の考え方が採用されておらず、金商法上の開示制度との間でズレが生じている。上場会社については、できるだけ、金商法の開示制度に一本化した方が良いのではないか。

業績予測開示の在り方については、是非この場で議論したい。

連絡会議では、実務家の視点を重視し、法制審議会とは異なるアプローチから検討していくことが重要。また、法務省は国内的な視野なので、企業集団法制を考える場合でも、グローバルでの企業結合をどう組み込んでいくかという発想は出てこない。会社法制の見直しでは、過去の経緯を踏まえた対応が必要なことは理解するが、制度のコアは各国共通の部分があるはずであり、そうでないと海外の人に納得してもらえない。

ガバナンスについて、日本人の法解釈適用上、利益相反の発想が弱い。自らのガバナンス上の役割を純化せず、他の要素を勘案して判断するために問題が生じる。2007年の上場整備懇談会でも、利益相反について法律解釈の狭さ、硬直性が指摘されていた。独立委員会等の形式を整えても、おおもとの利益相反の理念が共有出来ていないところが問題の本質。

ルールを最終的に実効的なものとするためには、裁判所ルールを整備していくことが重要。

決算手続において、監査役、監査委員会がどのような役割を果たしているかが明かではないという問題もある。米国SOX法の考え方についても議論してはどうか。

独立取締役について、任期が1年だと地位の安定性が確保されず、実効性を担保できないのではないか。

株主利益を達成しやすい統治機構を整備する必要。モニタリング・モデルが世界的な潮流となる中、我が国の委員会設置会社は過渡的な形態であり不十分。モニタリング・モデルの本来の姿としては、取締役の過半数が独立取締役であるべきで、その上で取締役会の内部の委員会については柔軟な設計を認めて、その範囲でコーポレート・ガバナンスの競争が起こるというのが望ましい。

役員報酬開示は、コーポレート・ガバナンスの観点からは重要な論点ではないが、経営成績を評価する物差しである以上、金額制限を設けずに個別開示すべきと考える。

コーポレート・ガバナンスを実現するための方法として、米国では連邦会社法が存在しないことから、取引所規則で対応せざるを得ない面があり、自ずと限界があるが、日本では、取引所規則というツールにこだわる必要はなく、従来取引所の規則でやっていたことを法令に組み込むような形で実現すべき。

信託協会では議決権行使ガイドラインを策定しているが、それ自体が自己目的化することがあってはならず、投資家と発行体との対話が重要。ガイドライン等の公表と発行体との対話が相乗効果を発揮し株式利益の増大が図られることが重要。

従業員代表の経営参加制度について、ドイツを訪問して労組などから話を聞いたところ、従業員代表制度が従来の形から段々とかけ離れた形になっている。英国でも、30年以上前、導入を検討したが取りやめた経緯がある。また、ドイツでは、従業員代表だけでなく株主代表の組織もあるが、これについても問題があり、銀行の持株比率が1%未満まで低下しているにもかかわらず、銀行から多くの役員が送り込まれている。利益相反上問題ではないか。これらの議論は日本の参考になる。

我が国において、議決権行使の場面における受託者責任の考え方が浸透していないのは問題。

ベルリンの壁崩壊後、世界的に見てルールの一本化が進んでいるにもかかわらず、日本はガラパゴス化している。世界のルールを取り入れていくことが求められている。

利益相反について日本は非常に鈍感。利益相反の塊のような機関投資家が、自ら受託者責任を果たしたような顔をしている。我が国でも、エリサ法のようなものを検討していく必要がある。

利益相反のない監査役に選任権限、監査報酬の決定権を与える必要がある。重要な会計処理等に関する意見の相違が生じる局面で利益相反が顕在化する。経営者が自己に都合のよい意見の後任監査人を決定して、現任監査人との契約を解除するようなケースが散見される。

投資家の信頼を得るためには監査人の外観的独立性を担保するガバナンスの仕組みが大切。

監査を受ける側の経営者において、適切な監査時間の確保よりも同業他社の報酬や会社業績への配慮を優先する傾向にある。適切な監査実施のためには十分な監査時間の確保が必要。現在の同意権では限界がある。

監査報酬の決定プロセスに経営者から独立した監査役等が関与することにより、透明性が増し、市場の信頼を得ることができる。

会計監査人の監査の方法と結果の相当性の判断を行い、選任議案及び報酬の決定を行うには、監査役等の財務・会計の知見を持つ者が少なくとも1名必要。

日本は、グローバル金融危機、国内経済の危機などの複数の危機に直面。過去15年、日本の一人当たりGDPと生産性向上は低下している。その背景にはガバナンスの問題がある。この危機的現状の中で、今回の会社法制の見直しは、日本にとってラスト・チャンス。日本は国内共通の会社法制を有しているので、他の国の良いところを取り入れて会社法制を見直せば、一気に他の国より優れたガバナンス法制を整備することが出来る。逆に今、ガバナンスについて革新的な前進が図られないと、国内外から信頼を失うことになる。

ガバナンスについては、独立社外取締役について明確な定義を設け、1/2又は1/3以上の設置を義務付ける。また、取締役会が指定した事項(例:ポイズンピルの発動)についての意思決定権限を、一部の取締役により構成される委員会に公式に委任することを可能とするための法律改正が必要。受託者責任については、米国のSECが2003年に定めたルールと同じ原理を適用し、投資信託や生命保険会社等のような機関投資家に対して、議案ごとの議決権行使記録情報を一般に開示を義務付けるべきである。

コーポレート・ガバナンスは、企業の持続的な成長を促すものであるべき。日本経済の発展に資する観点から、企業活動における判断の安定性確保に資するものであるべきで、体制についての過度の制約は逆効果。

望ましいガバナンス形態は、規模・業種・業歴によって異なるものであり、特定のものが最適というものではない。ガバナンスは、市場の持つスクリーニング機能に委ねるという側面と、昨今の金融経済情勢の変化に弾力的・機動的に対応できるという側面から、アナリストの分析や市場によるスクリーニングにより規律していくべき。

独立した取締役による経営監視機能の強化は、国際的にも求められており、日本の金融市場の発展に必要。東証による独立取締役設置に向けた取組みには賛意を表したいが、独立取締役、独立監査役とも1名ではなく2名以上として欲しい。

東証ルールのようなソフトローの充実を前提として、会社法ではミニマム・スタンダードの要請に止めるべき。ガバナンス機構については、独立取締役が特定のステークホルダーの代表的性格を有しないことが重要。

生命保険協会では、株式価値向上に向けた取組みとして、毎年度、企業の取り組みおよび投資家の評価についてアンケート調査を行い、公表している。上場企業や機関投資家に対して行った直近の調査結果(3/19公表)では、コーポレート・ガバナンスについて、株主・投資家との対話の充実が一番望まれている。株主総会の議題は限られている中、株主として企業に伝えたいことは多様かつ詳細であることから、企業と投資家との対話の充実が重要と考えている。

関係者の合意や明示的、黙示的な合意に基づいたルールの実施とソフトローの良さを活かしたガバナンスの充実に努めてまいりたい。

昨今、第三者割当増資や買収防衛策を巡り、株主と経営者との間で利害対立するケースが増えてきており、監査役への期待も高まっているところ。監査役が、積極的に役割を果たしていくためにも、適法性監査という呪縛から解放される必要がある。

150万人の株主を抱える大企業と、株主150名の上場廃止基準に抵触するような企業とでは1万倍の乖離がある。このように大きな開きのある上場企業、そのほかバリエーションに富んだ上場企業をどのように規律していくのかは悩ましい問題。このような中、ソフトローのあるべき姿について検討が必要。

ガバナンスについては制度整備は進んできている。仏は出来たので魂を入れていく必要。独立役員の導入については、まだまだ不十分との報道もある。

新たな制度の下、議決権行使結果については、その結果を発行体企業がどのように判断するかが問題。特に取締役の選任決議についてはメンツの問題もあり、個別の開示が進んでいないが、個別開示が進んだ場合にはその数字の捉え方が課題と思われる。株式持合の開示制度も整備されており、国際会計基準の導入により、持合解消が進むものと考えられる。

我が国資本市場に投資家を招き入れるための広い意味でのインフラ整備、教育が重要。

親子上場などの利益相反の問題について検討が必要。

日本企業の収益性が低いために株式のパフォーマンスは世界の主要国の中で最低であり、年金運用等も大きなダメージを受けている。企業と株式市場のパフォーマンスを向上させることになるような企業と市場のガバナンス改革が不可欠。

取締役会の監督機能の向上のため社外取締役の採用や独立性基準の強化が必要。委員会設置会社の普及が進まない理由を探り修正すべき。

持合い株式の開示について相手方の当該社株式保有状況もあわせた開示が必要。役員報酬の個別開示については、上位5名程度の開示とすることが望ましい。

持株会社については子会社を一体としたガバナンス・ルールが必要。

年金基金の議決権行使に係る責任について明確化する必要がある。

連絡会議と法制審議会との関係を明確化して欲しい。法制審議会会社法制部会に対して何か意見を発信することはあり得るのか。

経済界は何も開示に消極的であるとか、後退させようなどとしている訳ではない。正直、開示して意味のある情報がある一方で、開示により却って混乱を惹起するものがあるという点も認識して欲しい。

法制審議会への意見発信も重要だが、金融庁独自で検討を進めなければいけない課題もあるのではないか。日本の生保・損保については、自らのビジネスと受託者としての立場との間で利害相反が起きている。生保は保険商品のセールスを重視するし、メインバンクは貸し手との関係を重視する。子会社の投資運用会社が親会社の邪魔になるような議決権行使はしないのが実態。投資顧問会社がガバナンスを熱心に議論することはない。このような構造に対して金融庁が適切に対応していく必要がある。

利益相反があるという前提で、これにどう対処すべきかを議論していくべき。機関投資家の受託者責任について、エリサ法などの議論も出来れば良いと思う。

米国では、投資信託会社の年金資産運用部と投資信託部門との間の利益相反問題が話題になり、これに対処するため、投資アドバイザーに対して、議決権行使に関する開示の義務付けをした。

生保会社は実質上の受託者責任を負っているはず。

受託者責任について、エリサ法の必要性を否定するものではないが、実態としては、議決権行使ガイドラインを設定し、それに基づいて実務が行われていることをご理解頂きたい。また、銀行として取引のある会社の議案に反対することもある。

自社の利益相反を考えて防止する義務があることが出発点。その上で、利益相反をどのように認識・認定しているかは監査・監督を通じてチェックすることになる。

投資顧問会社は、議決権行使について受託者責任を果たしていないとのコメントがあったが、事実とは異なる。仮にそのような会社があれば、金融庁から業務改善命令を受けることになるだろう。

受託者責任について、英国でも、当初は米国のエリサ法を導入すべきとの議論があったが、最終的には、スチュワードシップ・コードという規範で対応することになった。信託法改正という議論にすると、金融庁では結論が出ないと思う。

企業が熱心に情報開示を行っている中、機関投資家の情報開示が十分に行われていないとの認識。企業側が議決権行使結果を開示することに伴い、機関投資家側も議決権行使について開示すべき。

日本の機関投資家は、投資に失敗すれば罰を受けるが、成功しても恩恵を受けないため、インセンティブがなさ過ぎる。海外では、自らのパフォーマンスが報酬に連動しており、生活を掛けて仕事をしているので、議決権行使の判断を真剣に行っている。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課、企画課調査室(内線3814、3510)


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