平成21年7月7日
金融庁
平成21年3月決算会社に係る内部統制報告書の提出状況について
平成20年4月1日以後開始する事業年度から上場会社を対象に適用されている内部統制報告制度について、最初に適用になった3月決算の会社に係る内部統制報告書の提出状況(平成21年6月1日~30日提出分)等を各財務局を通じて集計しましたので、公表します。
なお、制度の概要などについては、参考を参照してください。
1.内部統制報告書の提出状況
(1) 内部統制報告書提出義務のある会社数 (2) (1)のうち内部統制報告書提出会社数 (3) 任意で内部統制報告書を提出した会社数【注2】 (金融商品取引法第24条の4の4第2項該当) |
(社) 2,656 2,653 17 |
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内部統制報告書提出会社数((2)+(3)) | 2,670 |
(注1)平成21年3月決算会社の数字です。
(注2)有価証券報告書を提出しなければならない会社は、上場会社以外であっても内部統制報告書を提出することができることになっています。
2.内部統制報告書の「評価結果」の記載状況
(1) 内部統制は有効である。 (2) 重要な欠陥があり、内部統制は有効でない。 (3) 内部統制の評価結果を表明できない。 |
(社) 2,605 56 9 |
(%) 97.6 2.1 0.3 |
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合 計 | 2,670 | 100.0 |
(注3)内部統制報告書の「評価結果」には、事業年度の末日(3月決算の会社は概ね3月末日)を基準日として、財務報告に係る内部統制について評価した結果を記載することになっています。
【「重要な欠陥があり、内部統制は有効でない。」と評価結果に記載した会社(56社)について】
(1)「重要な欠陥」と判断した理由として、内部統制報告書に記載された例
(注)一部要約しており、内部統制報告書の記載そのものではないことに注意してください。また、開示例であり、当該内容が「重要な欠陥」に該当するかどうかは、会社の規模、事業の状況や取り巻く環境等により異なることに留意が必要です。
○全社的な内部統制
- 当社は、財務報告に関するリスクの評価と対応を実施していない。
- 前代表取締役が社内規定による職務分掌や承認手続を無視し、独断で約束手形の振り出しを行った。
- 前取締役が、定められた取締役会の承認を得ずに債務保証を行った。
- 内部統制の基本的要素である「統制環境」「情報と伝達」「モニタリング」に不備がある。
○決算・財務報告プロセス
- 子会社の繰延税金資産の回収可能性の判断の適用を誤り、さらに、それに対する牽制が十分機能しなかった。
- 在外統括会社の「傘下会社に対するモニタリング」が適切に実施されなかったため、海外子会社による不適切な会計処理が行われた。
- 当期の決算作業についての決算手順書等が整備、運用されていない。連結決算のために必要となる情報の収集に不足がみられる。開示資料の作成に際し、責任者による査閲等が実施されていない。
- 連結決算及び開示に係るマニュアル・チェックリストが適切に作成されておらず、グループ会社への情報伝達、役割分担、数値検証等一連の処理手続にて、適正な査閲、分析及び監視する内部統制手続が不十分。
- 決算処理手続における処理内容及び会計基準の適用の検討とその承認手続の運用が不十分であったため、たな卸資産への諸掛り経費の配賦計算、連結決算における未実現利益消去に伴う繰延税金資産の計上等について誤りがあった。
○重要な業務プロセス
- 営業部門において、適正な売上計上に必要な契約内容の確認及び承認手続の運用が不十分であったため、当期の売上高について重要な修正を行うことになった。
- 輸入原材料仕入プロセス及び在庫管理プロセスの一部において、適正な仕入計上及び在庫計上に必要な承認手続の運用が不十分であったため、当期の買掛金及び棚卸資産について重要な修正を行うことになった。
- 新規の非定型取引に係る業務プロセス並びに固定資産の減損会計及び税効果会計に係る業務プロセスにおいて、能力のある経理担当者によって適切に査閲、分析及び監視する内部統制が有効でない。
- 連結子会社の売上プロセスにおいて、商慣習上顧客との間に契約書が一部未締結であったり、売上の基礎となる納品の事実を証する書類等を取り交わすことなく業務を遂行していたことが発見された。
- システムの保守及び運用の管理を適正に行うため、「運用・保守管理規程」を定めて遵守することが義務づけられているが、コンピュータデータの保全手続において、当該規程の運用が不十分であったため、同データの一部が消失し、会計データの修復作業を行った。ただし、バックアップデータ復元作業のテスト実施が十分でなく、バックアップデータ消失のリスクを予見できなかった。
(2)評価結果に「重要な欠陥があり、内部統制が有効でない。」と記載した56社のうち、事業年度の末日後に重要な欠陥を是正するために実施した措置を記載し、かつ、内部統制報告書提出日までに、重要な欠陥が是正されたと記載した会社が11社ありました。
(注)事業年度の末日後内部統制報告書の提出日までに、記載した「重要な欠陥」を是正するために実施された措置がある場合には、その内容を付記事項に記載することができることになっています(内部統制府令第1号様式記載上の注意)。
(3)56社の内部統制報告書に対する内部統制監査報告書における監査人の意見は、55社が無限定適正意見、1社が意見不表明でした。
(注)監査人は、会社の内部統制の評価結果等を監査し意見を述べることになっています。例えば、「重要な欠陥があり、内部統制が有効でない。」と評価した会社の評価結果を適正であると判断した場合には、「適正意見」を表明することになります。
(4)評価結果に「重要な欠陥があり、内部統制が有効でない。」と記載した56社の財務諸表に対する監査報告書の監査意見は、54社が無限定適正意見、1社が限定付適正意見、1社が意見不表明でした。
(注)財務諸表監査と内部統制監査は同一の監査人により実施されることになっています。
お問い合わせ先
金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3672、3656)
参 考
○内部統制報告制度について
上場会社は、事業年度ごと(年1回)に、財務報告に係る内部統制(会社における財務報告が法令等に従って適正に作成されるための体制)を会社自らが評価し、評価結果を内部統制報告書として開示しなければならないことになっている。また、内部統制報告書には公認会計士等の監査証明を受けなければならない。内部統制報告制度は、投資者等に適正な企業情報が開示されることを確保することを目的として、平成20年4月1日以後開始する事業年度から導入。
○「重要な欠陥」について
内部統制報告書に記載される内部統制の評価結果は、大別すると、(1)内部統制は有効である、(2)重要な欠陥があり、内部統制は有効でない旨並びにその重要な欠陥の内容及びそれが事業年度の末日までに是正できなかった理由、(3)重要な評価手続が実施できなかったため、内部統制の評価結果を表明できない旨並びに実施できなかった評価手続及びその理由、のいずれかを記載することになっている。
「重要な欠陥」の意義
「重要な欠陥」とは、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高い内部統制の不備をいうこととされており、内部統制に重要な欠陥が存在する場合に、直ちに当該企業の有価証券報告書に記載された財務報告が適正でないことを意味するわけではないことに留意する必要がある。「重要な欠陥」は、有価証券報告書に記載された財務報告の内容を利用する際に留意すべき事項として、財務報告に係る内部統制に「今後改善を要する重要な課題」があることを開示することに意義がある。
なお、内部統制報告書には、重要な欠陥の是正に向けての方針、当該方針を実行するための計画等がある場合には、その内容を記載できることになっている。
(内部統制報告制度に関するQ&A問49)「重要な欠陥」があると開示しても上場廃止や罰則の対象になったりしない。
内部統制に重要な欠陥が存在する場合に、直ちに当該企業の有価証券報告書に記載された財務報告が適正でないことを意味するわけではないことから、内部統制に「重要な欠陥」=「今後改善を要する重要な課題」があると適切に開示したことをもって、上場廃止や金融商品取引法違反(罰則)の対象にはならない(内部統制報告制度に関する11の誤解:5.)。