金融・資本市場に係る制度整備に関する意見交換会(第二部)

日時:平成21年12月25日 9時31分~10時13分

場所:中央合同庁舎第7号館13階共用第1特別会議室

○岳野審議官

おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから金融・資本市場に係る制度整備に関する意見交換会を始めさせて頂きます。

本日は、ファンドと保険の関係の皆様にお集まり頂いております。年末のお忙しい中、大変急なお願いをいたしましたにもかかわらず、ご参集頂きまして、ありがとうございました。

本日の会は、金融担当の副大臣の大塚副大臣、それから金融担当大臣政務官の田村政務官の主催によりまして、皆様方からご意見を頂く会でございます。

会は副大臣と政務官のリードのもとに運営させて頂きますが、便宜、会議の進行の補佐役を金融庁の事務方が務めさせて頂きたいと存じます。具体的には、私、総務企画局審議官市場担当の岳野でございますが、私のほうで進行の補佐をさせて頂きます。皆様方のご協力を頂きまして、有意義な意見交換ができますよう心がけてまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

それでは、冒頭に大塚副大臣と田村大臣政務官よりごあいさつを頂きます。

大塚副大臣は、この前に官邸で会議がございまして、今こちらに向かっておられる最中でございます。間もなく入室されると存じますが、まず始めに田村大臣政務官からごあいさつを頂きます。

○田村大臣政務官

おはようございます。

本日は、まさに年末の大変お忙しい中、この意見交換会にご出席頂きまして、誠にありがとうございます。金融担当大臣政務官の田村謙治でございます。

ご案内のように、従来、昨年までは、法改正に向けて金融審議会の審議をしながら報告書を出して、そして法改正に向かっていくという、大体そういう手続を踏んでいたわけでありますけれども、政権が変わりまして、そもそも金融審議会をどうするかと、どのように見直しをしていくのかということは、今考えているところでございまして、今回来年の法改正に向けては、先日金融・資本市場に係る制度整備についての骨子案というものを発表させて頂いて、パブリックコメントを求めるとともに、関係団体の皆様からこういった場を設けてご意見を伺うというやり方に変えさせて頂きました。

金融審議会が変わり、まだまだ試行錯誤の段階でございますけれども、限られた時間ではありますが、皆様のご意見をしっかりと踏まえて制度整備の案を固めてまいりたいと思っておりますので、今日もどうぞよろしくお願いいたします。

○岳野審議官

それでは、大塚副大臣からもごあいさつをお願い申し上げます。

○大塚副大臣

どうもおはようございます。遅参をいたしまして、申しわけございませんでした。

ただいま田村政務官のほうから経緯はご説明申し上げたと思いますが、市場整備に関する来年の通常国会に向けての検討作業を進めておりますので、今日は昨日に続いてのこの会合の開催になりますが、限られた時間ではございますが、皆様方のご意見を拝聴いたしたいと。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○岳野審議官

それでは、冒頭、机の上に資料が多数置いてございますので、配布資料につきまして、寺田市場課長から簡単にご説明、ご確認をお願いいたします。

○寺田市場課長

配布資料の一覧でございます。配布資料1-1は制度骨子案のポイントというものでございます。資料1-2が本日議題にして頂きます制度整備についての骨子案でございます。1-3は、その骨子案に関して図解したものでございます。1-4は、ただいま副大臣、政務官からお話のありました11月13日のご指示事項の紙でございまして、本日はまさにこの紙の4のところで、市場関係者等からの再度の意見聴取の段階に至っているわけでございます。なお、この1-4の紙にも「金融審議会・基本問題懇談会の審議等の内容を参考にしつつ」ということでございますので、その下に資料1-5として、金融審議会金融分科会基本問題懇談会報告を添付しております。資料2及び3は、本日のご出席の方々からご提出頂きました資料でございます。資料2は、生命保険協会様提出資料でございます。資料3は、日本損害保険協会様提出資料でございます。

もし資料の落丁がございましたら、ご挙手頂ければと思いますが、ございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。ありがとうございました。

○岳野審議官

それでは、ご参加の皆様からご意見を頂きたいと存じます。

ご説明の順でございますが、まず日本証券投資顧問業協会の辻会長、その次にAIMA JAPANの白木副会長、それから生命保険協会の橋本一般委員長、日本損害保険協会の數間一般委員長、そして山下東京大学教授の順でお願いをしたいと存じます。

なお、誠に恐縮でございますが、本日この会は10時15分までということで、この後すぐそれぞれ予定が入ってございます。限られた時間の中でしっかりと意見交換ができますよう、誠に恐縮でございますが、ご説明は3分以内でおさめて頂きたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。

○辻雅夫氏

日本証券投資顧問業協会会長の辻でございます。本日は意見表明の機会を賜り、ありがとうございます。

私どもの協会は、金融商品取引法第78条に規定される認定金融商品取引業協会でございまして、協会の会員は、投資運用業のうち主に年金顧客から投資一任契約に基づき運用を委託される業者を初め、不動産証券化関係の業者、ベンチャーキャピタル関係の業者と投資助言・代理業を行う業者で構成されておりまして、現在の会員数は346社、契約資産残高は155兆円ということになっております。

ご承知のような2008年の世界的な金融危機、金融システミック・リスクの顕在化は、連鎖反応として世界中の株式市場も暴落する、実体経済が非常に悪くなるということになりまして、当協会の会員の多くは内外株式、内外債券など、いわゆる伝統的資産を中心に極めて保守的に年金資産の運用を行ってまいりましたが、今回の金融危機で当協会及びその顧客においても運用上非常に大きな打撃を受けた、ある意味で被害者の立場にあるということでございます。

現在、G20を初め、欧米で新たな規制の議論が導入されていることは承知しておりますし、我が国においてもヘッジ・ファンド等における市場の流動性、価格の効率性など、プラスの貢献を殺してしまうような過剰な規制は避けながら、グローバルな規制に平仄を合わせたシステミック・リスクへの一定の対応が必要であるというふうに考えております。

今回の金融・資本市場に係る制度整備についての骨子案につきまして、当協会として関係のあるところは、ヘッジ・ファンド規制の項目にありますファンドのリスク管理状況に係る報告事項等の拡充、空売り報告制度の整備の項目にあります空売りポジションの報告・公表制度の恒久化への検討のところでございます。

今後、具体的な内容の検討を進めるに当たりましては、グローバルな規制に平仄を合わせた議論を行うとともに、必要以上の報告を求めない等の実務に沿った規制となるよう、引き続き業界との円滑なコミュニケーションをお願いしたいと考えております。

以上でございます。

○岳野審議官

ありがとうございました。

続きまして、AIMA JAPANの白木副会長、お願いします。

○白木信一郎氏

おはようございます。AIMA JAPANの白木と申します。本日はよろしくお願いいたします。

AIMA JAPANというのは、正式名称をAlternative Investment Management Associationという、もともとはイギリスで発足した団体でございまして、こちらの日本支部になります。ヘッジ・ファンドなどの新しい投資手法などについて、広く投資家の方々の知識を引き上げていきたいというので、元々発足した経緯がございますが、最近ではイギリスのFSAのほうとイギリスの本部のほうで、かなり細かい打ち合わせをしながら、業界の発展にどのように貢献していくかということを考えて活動しております。

いわゆるヘッジ・ファンドというものが、言葉ばかりが先行する嫌いがありまして、なかなかわかりにくいところもございますが、基本的には一般的な投資顧問業の一形態というふうにとらえて頂いていいと思います。

個人投資家が投資信託の形で目にするいわゆる投資商品とは構造的にはほとんど差異がありませんが、一般的な投資信託とは違いまして、私募の形態をとっておりまして、やはり機関投資家を含めたプロの投資家の方々中心の投資対象となっているという側面がございます。

また、投資手法という意味でも、従来の株式、債券の買い持ちという手法以外に、いろいろと借り株をした上での空売りであるとか、あるいはレバレッジをかけた上での投資手法ということがあって、そこが若干一般の方々にはわかりづらいという側面もあります。

今般の金融危機で、特に欧州の一部でヘッジ・ファンドがこの危機の要因になったという批判も強くございましたけれども、これはややスケープゴートという形になった部分もございまして、グローバルに見ましても、投資手法の多様化という投資家のニーズはますますこれからも増えてくると、実際に増えていると。特に日本の年金基金等を通じて、ヘッジ・ファンドに対してこれからも資金流入が増えていくことは、どうしても避けられないという状況になっております。

こういった投資家のニーズを満たしながら、投資家の皆様が安心できるような法整備、あるいは知識の向上というのが私どもの期待でございまして、こういったことに貢献できるようにこれからも頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○岳野審議官

ありがとうございました。

それでは、生命保険協会、橋本一般委員長、お願いします。

○橋本雅博氏

生保協会の橋本でございます。

本日は、特に骨子案の中では生保会社に影響の大きい保険会社の連結財務基準に関しまして意見を述べさせて頂きます。

まず導入に当たりましては、各社が有するリスクが適切に反映された、より実効性の高い監督規制によって、信頼性の向上につながることが肝要かと考えております。この観点から、保険会社、または保険持株会社を頂点とするグループに対しまして、基準を導入する際にさまざまな事業形態の金融グループについての監督上の手当てがなされることで、現行の単体基準ではとらえ切れないリスク状況が把握されるような導入が期待できるものと思います。

その中で、課題の1つといたしましては、負債の大宗を占めます責任準備金につきまして、契約者保護の前提となる単体ベースの水準を維持することが必要じゃないかというふうに思っております。

また、国際的な観点からは、現在IAISのほうにおいて連結ベースの健全性基準の議論を進めている段階でございますので、そういった状況の中で3点ほど申し上げたいと思います。

まず1点は、保険グループが有する多様なリスクの計量化、リスク分散及び資本要件の反映のあり方でございます。これは保険グループの中にはさまざまな事業を営む子会社が存在してございますので、この子会社が有する多種多様なリスクをどのように評価し、分散効果をどのように考えるかといった課題でございます。

2点目が、資本移転・資本要件の是非でございます。これは今回の金融危機のような有事の際に、グループ会社内、例えば親会社と子会社、子会社同士といった会社間での資本移転が行われることをあらかじめ前提として、単体ベースの健全性基準を引き下げることの是非をどう考えるかという課題でございます。

3点目が、規制の異なる海外グループ会社などのリスクの取扱いでございます。これは国内生保会社におけます海外子会社、あるいは国内の外資系子会社におけます本国の親会社や海外のグループ子会社といったような、海外にある会社のリスクをどうとらえるかということでございまして、これをどのように反映していくか、あるいは反映することが困難な場合にはどういった対応をとるかということが3点目の課題かと思われます。

さらに1点だけ申し上げますと、保険会社あるいは保険持株会社の子会社・関連会社政策及び連結決算実務に直接大きな影響を及ぼすものでございますので、それに当たりましては実務に配慮した規制、あるいは適切な準備・移行期間の確保といった視点をぜひお願いしたいなと思っております。

以上でございます。

○岳野審議官

ありがとうございました。

続きまして、日本損害保険協会、數間一般委員長、お願いいたします。

○數間浩喜氏

日本損害保険協会の一般委員長の數間でございます。よろしくお願いします。本日はこのような機会を頂き、ありがとうございました。

お手元の資料3にポイントを記載してございますので、ご覧ください。

今回の金融危機では、保険会社のグループ内の関連会社ビジネスが、保険会社グループ全体に悪影響を及ぼす事例もあったというふうに認識をしております。保険会社グループの連結ベースによるソルベンシー・マージン基準は、グループベースでビジネスを展開しいている保険会社のリスク実態を適切に反映することによって、保険会社の健全性維持や契約者保護に資するものと考えております。また、欧州でのソルベンシー・マージン II におけます第三国のソルベンシー規制の同等性評価の検討や、IAISにおける保険会社グループの共通の評価枠組みの検討など、連結ベースでのソルベンシー・マージン基準を検討することが国際的な潮流でありまして、本邦保険会社の国際社会における健全性評価に対する信頼性の向上に有益であるというふうに考えております。

以上のことから、保険規制に連結ベースのソルベンシー・マージン基準を導入することの必要性については認識をしております。

一方、IAIS等におけます連結ベースのソルベンシー・マージン基準の実際の検討におきましては、難しい課題も多くあると聞いております。例えば、非規制事業会社におけるリスク評価や自然災害を含む海外の保険リスクの評価の検討が必要ですし、国際基準との整合性のない内容の規制が本邦で行われた場合に、本邦保険会社の国際競争力の低下など、悪影響を及ぼす可能性がございます。こうした各種課題につきまして、保険会社の自由なビジネス展開の阻害や追加的負荷発生につながらないように、日本の状況を踏まえた十分な検討が必要であると考えております。

つきましては、まず検討に当たりましては、保険会社を始めとする市場関係者との議論や調査、確認を行うなど、本邦保険業界の実態を十分踏まえたものにして頂くとともに、国際基準との平仄を合わせた内容となるように、制度設計をして頂くようにお願い申し上げます。

また、本邦のソルベンシー・マージン基準につきましては、高度化に向けての取組みを継続中でございますが、単体ベース、連結ベース、双方についての見直しに向けてロードマップをご提示頂ければと考えております。

最後に、規制導入に当たりまして、保険会社側に事務・システム手当てが発生することも予想されますので、十分なリードタイムの確保をお願いいたします。

以上でございます。

○岳野審議官

ありがとうございました。

続きまして、東京大学大学院、山下先生、お願いします。

○山下友信氏

東京大学の山下でございます。

保険関係の研究をしておりますが、今回の公表された骨子案において保険関係で出てくるのは、連結財務健全性規制の導入ということでございます。これには全く異論はございませんで、大変結構な方向かと思っております。と申しますか、本来これはたまたま今回の金融危機を受けまして問題をさらったところ、保険会社について浮かび上がってきたという問題でございまして、もともとはこういう問題は本来もっと早く保険業法の中で整備されていくべき問題ではなかったかなと思います。

今から見ますと、具体的な手法については問題がないというわけではないかと思いますが、最初に保険会社グループの連結監督制度というのをEUで導入したのは既に98年のことでございまして、我が国ではそれに対してあまりこういうことが考えられてこなかったということがあります。平成19年にソルベンシー・マージン基準についての見直しの検討会が設けられまして、ここでかなりの検討が行われているわけでございますが、その中でも連結ソルベンシー・マージン規制については、いろいろ技術的に問題が多いというので、中期的な課題ということで先送りされていたわけでございますが、今回こういう機会がございましたので、ぜひこの連結規制を導入するとともに、保険会社についてもグループ化が著しく進展したり、また海外活動というのはこれから我が国の保険会社にとって非常に重要な活動になってまいりますので、そのあたりを視野に入れて健全性を確保する監督体制を全般的に見直す必要があると考えているところでございます。

以上でございます。

○岳野審議官

ありがとうございました。大変簡にして要を得たご意見の開陳でございまして、ありがとうございます。

これから残された時間、十分に意見交換を進めてまいりたいと存じます。

まずいかがいたしましょうか。副大臣、政務官からお願いいたします。

○大塚副大臣

どうもありがとうございました。

昨日は相当大勢の方にお集まり頂いて、長時間聞かせて頂いたんですが、今日の皆様方のご意見、ご指摘もしっかり検討に加えて、年明けに作業を進めさせて頂きたいと思います。

とりあえず私からは損保協会さんに一つお伺いをしたいんですが、要望事項として規制を導入する際には十分なリードタイムを確保するようにというご要望を頂いているんですけれども、これは例えば今BIS規制の絡みでグランドファザリングなんていうことも言い始めているんですけれども、割と皆さんにとってはタイトな規制であっても、そういうリードタイムを確保すればいいということなのか、それとも結論に至る前に十分なリードタイムを確保したほうがいいということなのか、これはどちらを意味していらっしゃるのでしょうか。

○數間浩喜氏

欲張りでございますが、両方でございまして、今回の意見陳述におきましては、今現在ソルベンシー基準の具体的な内容が不明でございますので、どのぐらい必要かという判断がまだ私どももできかねる状況にありますので、こういった意見を述べさせて頂いた次第でございます。

○大塚副大臣

そういたしますと、これは生保さんとも共通するんですけれども、他国の損保業界、あるいは生損保の企業に対するこういった規制がどうなっているかというのは、これはもちろん行政当局、あるいは政治が調べる課題ではあるんですけれども、業界自身としてそういう国際比較をして、例えば今の状態でイギリスのような、あるいはアメリカのような、同じようなルールが導入されたら、どのぐらいのインパクトがあるかとかという、そういう検討というのは業界としては行っておられるんでしょうか。両方に、もしよろしければ。

○數間浩喜氏

当業界としては、その検討は行っておりません。

○橋本雅博氏

同じく、そういった検討はまだ行っておりません。

○大塚副大臣

とりあえず私からは結構です。

○岳野審議官

それでは、ただいまの参加者の皆様からのご意見の中で、要望といった項目がございました。保険会社の皆様からは、ペーパーである程度絞られた要望というものが出されております。これに対して、現時点で当局、事務方としてご説明できる内容について、小原保険企画室長からお願いします。

○小原保険企画室長

保険企画室長の小原でございます。

生命保険協会、日本損害保険協会から共通にご要望を頂いていることで、導入する際に十分な準備期間、あるいは意見を反映し市場関係者との議論をして頂きたいということでございますが、もとより実効性のある規制を導入する観点から過大な負担とならないように、あるいは意味のある規制となるようにすることが必要でございますので、業界を含めまして、関係者の方々とは十分議論を行いながら、あるいは国際的な議論との整合性にも十分留意しながら、規制を設けていく予定にしております。

それから、ちょっと質問をさせて頂ければと思うんですけれども、生命保険協会からお話のございました点で、グループサポートについてお申し述べがございまして、これはグループ会社間でどこかの会社の資本が不足するようなときに、サポートが行われることを前提に、単体ベースの健全性の基準を引き下げることの是非ということですが、生命保険協会としてはこのことに対してどのようなご意見をお持ちなのかお聞かせ願えればと思います。

○橋本雅博氏

生保協会として率直に申し上げて、やはりこの議論はご存知のようにEUで同じような議論が行われて、どちらかというと小国のほうのこのグループサポートを認めるべきでないという主張と、あるいはイギリスとかフランスとか先進国のほうでは認めるべきであるという、要するに国際的に展開している会社がある国とない国とでかなり対立があったというふうに側聞しているんですけれども、生保協会としては、この点について協会ベースで枠組みをつくって議論したということではございません。ただ、やはり同じような観点から、会社によって多分主張はかなり違うのではないかなと。そういう国際的な事業を展開しているグループの会社と、それから国内だけで対応している会社との間で、やはり意見の相違があるのではないかという想定はできますので、一応こういう形で問題提起をさせて頂いたということでございます。

○大塚副大臣

せっかくおいで頂いていますので、それでは白木さんと辻さんにちょっとお伺いしたいんですが、ヘッジ・ファンドに係るところについては、お手元の資料に大体考え方、骨子の案が記載してございますが、今の我々の認識としては、国際合意の登録に相当する規制実態はあるということなんですが、それに加えて、今後の方向はご覧のとおりの内容になっているんですけれども、そうするとおおむねこの考え方で問題ないということでいいかどうかというのを改めて確認をさせてください。

○辻雅夫氏

私どもの協会の会員の中には、もちろんヘッジ・ファンドというのは非常に定義が広くて、どこまでがヘッジ・ファンドというかという問題はございますが、いわゆるオルタナティブをやっているところは非常に多いわけでございます。これは株のロング・ショートを中心にやっている。これはレバレッジもありませんし、あまりシステミック・リスクを起こすようなものではないわけで、こういうところに対してヘッジ・ファンドと同様に報告を求める必要はあまりないんじゃないかと思うわけであります。

白木さんのほうがご専門だと思いますが、いわゆる日本に拠点を持っているヘッジ・ファンド業者があるかというと、この報告ではほとんどないということになっておりますし、実際のところわからない、外国から来て日本に拠点を置いてやっているようなところはあるかもしれませんが、その辺のところを当局としてはもう少し実態を把握されてやることが必要かなと。非常にわかりにくいんですが、外国からヘッジ・ファンドの業者が来て、日本で営業していると、これは何だろうと。これはどういう法的な根拠に基づいて商売をしているのかわかりにくいところがあるわけですね。そういう問題があると思います。今の欧米のヘッジ・ファンドの規制は、国にある業者を規制するという方向で、商品の規制ではなくて業者規制という方向でありますが、日本に拠点がないけれども、外国から来て営業していくというのは、なかなかとらえにくいところあるわけで、考え方としては欧米の今やっている規制、規制は何らかの形で必要だと私は考えておりますが、その方向でいいんですが、先ほど言いましたような私の危機感はあると。要するに、海外のヘッジ・ファンドという感じでございます。

○白木信一郎氏

ご指摘のとおりで、日本ではヘッジ・ファンド的ないわゆる多様な運用手法というのが育ちにくい、そういった独立系の投資顧問会社が育ちにくいという実情がこれまでございまして、これは税率の問題もかなり大きく影響はしているんですけれども、機関投資家を中心としたプロの資金運用ニーズというのが満たされないで、海外のほうの運用会社に流れやすいというのが背景としてございます。

これが今辻会長がおっしゃられたように、海外の運用会社が日本に来て、そういった商品を提供することによって日本の投資家がそこに入っていくということの背景だと思っているんですが、マドフのような金融不祥事が起こり得るというのは、海外では十分可能性としてはあるわけです。こういったものを避ける、あるいは軽症で済ませるためには、こういった国内の投資家の方々の知識レベルを引き上げること、あるいは海外のそういった商品を持ち込む際の法整備をしっかりしていくというところが必要になってくるというふうに感じておりまして、前回の金融商品取引法でそこの部分はかなり整備はされているなというのが私どもの印象でございまして、これは海外からの持込みを行う運用会社あるいは業者に聞いても、ここの部分というのは強く認識しているというふうに感じてはおります。

ただ、これを実効性のあるものにするためには、繰り返しになりますが、日本の投資家側、機関投資家側の知識レベル、あるいはガバナンスを引き上げる必要というのは十分にあるのかなというふうに感じております。

○大塚副大臣

私たちとしては、適切なルールや市場や制度が整備されることで、その中には規制も伴うわけでありますが、そのことによって結果としてむしろ信頼性の高い、安全な金融市場をつくるということが目標なわけですので、バランスをとってやっていきたいとは思っているんですが、マネーフロー全体をちょっと大きな目で見ますと、なぜこのヘッジ・ファンドというものが90年代から出てきて、今日こうやって規制の対象になりつつあるかというと、非常にアバウトな言い方をすれば、過剰流動性が徐々に世界経済の中に蓄積されていて、実需取引に向かわない資金がこういう形で新たな投資ビークルを生んでいるというふうに思っているんです。

そこで山下先生にお伺いをしたいんですけれども、この状況は個人的にはまだ続くと思っておりまして、つまり実需に向かわない資金というものをどのようにマネジメントしていって、経済にとってマイナスにならないようにしていかなくてはならないかと。これは運用するほうも、何に運用すればいいんだということを気にしなくてはいけないですし、監督行政当局側は、あまりがちがちに規制するとせっかくの、せっかくのと言うと変ですが、過剰流動性が経済にプラスに使われない、ないしはよその市場に逃げていってしまう、かといって野放図にすると潜在的なリスクを高めると。こういうことだと個人的には認識しているんです。

そうすると今ヘッジ・ファンドはどこに運用対象を求めているかというのは、現状いろいろさまざま報道されているとおりなんですが、保険会社の皆さん、損保も含めて今日いらっしゃっていて、それから運用ビークルそのものであるヘッジ・ファンドの関係の皆さんがいらっしゃって、今後どういう運用資産に向かっていく可能性があるか。これは株とか債券とかそういう狭い意味ではなくて、例えばCDSなんていうのも、数年前にはだれも想像もしなかった商品なわけですよね。

だから、私たちに対するアドバイスを頂きたいんですが、どういう運用対象資産が今後新たに発生し、過大なリスクを抱える可能性があるかどうか。何かお感じになっているところが、つまり私なんかは排出権取引というのは大変留意をしておいたほうがいいんじゃないかというふうに、着任以来職員の皆さんにも問題提起をしているんですが、そのあたりについて少し先生のご見解を聞かせて頂ければと思うんですが。

○山下友信氏

私は一介の法律学者でございますので、経済の実態については全く一般の市民並みのものなのですけれども、例えば保険の分野なんかを研究しておりましても、先ほどのCDSなんて保険と同じかどうかという、こういうよくわからないものが次々に出て、既存の保険・証券・銀行といった監督の枠組みとの間でミスマッチが起きているというんですか、そういう実態があって、これは今回の金融危機は一応おさまっているのかもしれませんけれども、今後またどんな方向へ出るか、これは全く想像がつかないような世界もあるかと思うので、そこはこの縦割りの監督制度がいいのかという問題もあるんですけれども、それとともに何が起きているかというのをタイムリーに把握していくというシステムがまず重要なのか、それが縦割りの世界でうまくいっているのかどうか、あるいは国内と国外で行われていることについてきちんとフォローできているのかと、そういう体制を整備するというのが出発点としては必要かなと感じているところでございます。その程度です。

○大塚副大臣

最後にさせて頂きますが、そうすると、そういう何が起きているのかをアーリー・ウォーニングできる体制を整備するという、ヘッジ・ファンドに対するさまざまなレジスターの話もそういうことだと思うんですが、今の保険業法やさまざまな関連法制の法目的と、生損保さんの経営の実態、あるいは経営形態の実態も含めてからすると、どのようなリスク、資産までは運用対象としていいけれども、どのようなものは対象とするべきではないというような問い掛けに対して、先生のご専門のお立場で、何かベンチマークとして我々が少し頭に置いておいたほうがいいようなものがございましたら、少しご示唆を頂きたいと思うんですが。

○山下友信氏

特段今これといった意見を持っているわけではございませんけれども、やっぱり広い意味での金融機関といってもいろいろなタイプのものがあろうかと思います。そういう意味では、いろいろなファンドと保険会社で同じかどうかといえば、そこはおのずと違いがあるだろうと思います。保険会社も規制緩和との関係では、株式投資の保有割合の規制を緩めてくれというようなことが前から出てきているのですけれども、そのあたりの初歩的な話からまだ課題が残っているところでございまして、この先の先端的なところまでいくとどうなるかというのは、私もあまりまだ特段の意見はないという状況です。

○岳野審議官

白木さん、どうぞ。

○白木信一郎氏

今ほどのところで、AIMAというのがもともとイギリスでは商品投資顧問の団体を代表するようなところで業界団体として成立したことがあったものですから、国内においても商品に対する投資の需要、あるいは投資家からの運用ニーズというのは、ますます大きくなってきているはずではあるんですね。ただ、一方で、海外と違いまして、国内の市場が統合的ではないということであったり、流動性が非常に欠けているということがあって、どうしても限られた市場の規模しかないと。こういったところに、これは海外と連動しているので問題は少ないとは思いながらも、過剰に資金が入ってくる場合に、商品市場のバブルというものが容易に形成されてしまう可能性があるというふうに考えておりまして、これは市場の整備というのが非常に重要かなというふうには感じております。

○岳野審議官

それでは、これまでの議論を踏まえて、金融庁の事務方のほうから何か質問なり指摘事項があればお願いします。

○寺田市場課長

先ほど来、今後ファンドの報告状況について、グローバルな状況を踏まえて、必要以上に過剰な報告を求めないようにお願いしたいというお話がございました。

私どもも今後いわゆるファンドの報告事項につきましては、国際的な場でその頻度・内容について話し合いが持たれることになっております。私どもといたしましては、国内の業者に過剰な負担にならないように、かつ、そうした国際的な議論と平仄のとれた内容をご相談しながら導入したいと思っております。その内容につきましては、法律レベルというよりは、その下の内閣府令レベルに落ちますので、時間をかけて国際的な議論と平仄を合わせて対応してまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

それから、海外から持ち込まれている業者も含めて、きちんとした把握が必要じゃないかということでございましたが、ヒアリングのときにも申し上げましたが、業者様からヒアリングをさせて頂くに当たりましては、届出業者も含めまして、恐縮でございますが、報告徴取をさせて頂きまして、その結果に基づきまして、私どもとしては一応本案をまとめさせたいところであります。

以上でございます。

○小原保険企画室長

では、先ほど申し上げたことに追加させて頂きますが、具体的な基準の中身についてはしっかりと議論させて頂いて、施行時期を含めてよく検討していきたいと思うんですけれども、法律上の根拠を設けることにつきましては、ご承知のとおり、保険業法の規定は内閣総理大臣は経営の健全性の基準を定めることができるという規定を設けるものでございますので、現状、先ほど山下先生からもお話がございましたように、日本の保険業界のグループ展開が進展しているということ、その他諸々の事情もあわせ考えますと、速やかに法律上の根拠は設けるべきであるというふうに考えております。

○岳野審議官

ほかにご参加の皆様、あるいは当局側でご発言ございますか。ありがとうございました。

それでは、本日は貴重なご意見を頂きまして、ありがとうございました。現在金融庁のホームページを通じまして、先日お示ししました骨子案に関する意見募集を行っております。本日、皆様方からは十分ご意見を頂戴したとは存じますが、また今日のご議論などを踏まえまして、さらにご意見がございます場合には、こちらにご提出頂きますようお願い申し上げます。

今後、金融資本市場に関する制度整備につきまして、次期通常国会に向けて詰めの作業を進めていきますが、本日頂きましたご意見も参考とさせて頂き、早期に結論を取りまとめたいと思います。

本日は、お忙しいところお集まり頂きまして、ありがとうございました。

(参考)

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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3618、3562)

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