銀行等による保険募集に関する関係者等からのヒアリング議事要旨

1.日時:

平成23年5月27日(金)16時00分~17時30分

平成23年5月30日(月)16時30分~18時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館(金融庁)13階 共用第1特別会議室

3.議事内容:

(1日目)

  • 開催にあたり、東副大臣、和田大臣政務官より挨拶。

    【全国銀行協会の説明】

    • ・ 弊害防止措置は、独占禁止法等と二重の規制となっており、また、外形基準による事前規制であり、全面撤廃すべき。

    • ・ 特に、

      非公開情報保護措置により、保険募集の都度、顧客の同意取得が必要とされていることと、

      融資先募集規制の対象に、融資先中小企業の従業員や、一時払終身保険・融資先の事業に関する第二分野保険等が含まれていること
      は、問題が大きいと考える。

    • ・ 保険の銀行窓販に関する苦情の状況は、販売件数の増加に比べ、苦情の比率は概ね横ばいで推移している。

    【信託協会の説明】

    • ・ 独占禁止法等により、優越的な地位を不当に利用した保険募集は禁止されており、弊害防止措置は全面撤廃すべき。

    【全国信用金庫協会の説明】

    • ・ 融資先中小企業の従業員等に対する融資先募集規制の撤廃、事業性融資先に対する保険金額制限の撤廃・見直しが必要。

    【リース事業協会の説明】

    • ・ リース会社は、業務の必要上、動産総合保険等に加入しているが、グループ内の銀行から融資を受けている場合、同じ銀行グループであることから、自社又は子会社を保険代理店として保険に加入できない。このような規制を改めるべき。

    【水口啓子 日本格付研究所チーフアナリスト兼格付企画部長の説明】

    • ・ 十分なリスク・収益管理に基づいた健全な競争が展開されれば、銀行窓販の拡大は、銀行・保険会社にとっても事業基盤の強化につながりうる。

    • ・ 事業資金の融資先企業及び代表者に対する保険募集制限は維持することが妥当と考える。融資先中小企業の従業員に対する規制の緩和は、消費者にとって利便性の向上につながるという考え方もあろうが、バランスを考察するため、弊害防止の観点からも、銀行による営業体制の実態等を十分に掌握し、判断材料とすることが必要である。

    • ・ 非公開情報保護措置は基本的に維持することが妥当と考えるが、その実効性を確保する前提で、保険募集毎に同意取得する等、重複した事務負荷を軽減することが考えられるのではないか。

    【生命保険協会の説明】

    • ・ 再加入困難性、長期性といった生命保険契約の特徴と、銀行が融資先に与える影響力を踏まえ、非公開情報保護措置や融資先中小企業・従業員に対する保険募集制限等の弊害防止措置が整備されていると認識。

    • ・ 生命保険協会に寄せられる銀行窓販に関する苦情・紛争は近年増加傾向にあり、紛争件数は全体の20%超を占めている。

    • ・ 銀行窓販に関する苦情の状況や利用者の声等を踏まえると、弊害防止措置の必要性は現在も変わりはない。

    【全国生命保険労働組合連合会の説明】

    • ・ 各種の実態調査を実施した結果、銀行窓販に関する圧力販売を始めとした多数の問題事例が日常的に発生していることが明らかとなった。

    • ・ 消費者保護を図るため、弊害防止措置の存置・強化、実効性確保が必要。

    • ・ 消費者利便は、消費者保護があって初めて成り立つものである。

    【日本保険仲立人協会の説明】

    • ・ 消費者に対し、ニーズに適合した商品を販売することを制度的に担保するため、銀行に対して、消費者に対するベストアドバイス義務が課されている保険仲立人制度の活用を推奨したい。弊害防止措置を全面撤廃するのであればそうした法的な枠組みを利用すべき。

    【江澤雅彦 早稲田大学教授の説明】

    • ・ 非公開金融情報の利用に関する同意取得は、銀行側による丁寧な説明によって、顧客が十分理解した上で、署名・捺印して行う必要がある。

    • ・ 融資先中小企業の従業員が、融資先企業と独立の関係を保てる保証はなく、わずかでも圧力販売の危険性がある以上、規制緩和を進める積極的根拠は見当たらない。

    • ・ 借入金を原資として変額個人年金を購入させるという実務は原則禁止すべき。

    【質疑応答】

  • 弊害防止措置の緩和に係る意見に対する質問だが、銀行窓販に関する苦情は引き続き発生しており、今後、規制を撤廃しても問題が起きない合理的な根拠はあるか。

    (答:全国銀行協会)

    • ・ 圧力販売や顧客情報の流用といった問題は、独占禁止法や個人情報保護法により規制されている。さらに、弊害防止措置は、外形基準による事前規制で、明らかに国民のサービス享受の機会を奪っており、お客様の利便性にとってマイナス面が大きい。

    • ・ また、保険の銀行窓販に関する苦情内容は、投資信託とほぼ同じ傾向であり、規制があることにより、有意な差があるとは思っていない。

    (答:全国信用金庫協会)

    • ・ 信用金庫に圧力販売を行えるほどの力はない。また、取引先との長期的な信頼関係を損なうような圧力販売をすることは、地域で自らの居場所を失うことになるため、考えられない。

    (答:信託協会)

    • ・ 適正な販売を確保するためのモニタリング体制を構築している。苦情の内容も、説明不足といったものはあるが、圧力販売に関するものはない。

  • 弊害防止措置の維持・強化に係る意見に対する質問だが、

    • ・ 事前の規制によってしか解消できない問題があるのか。

    • ・ 現在の規制対象商品のうち、比較的弊害が小さいものはないか。

    • ・ 保険会社の営業職員による勧誘でも、顧客が圧力を感じる場合があるとの指摘もある。また保険会社も多額の融資を行っている。銀行の場合だけ、事前の規制を続けるべき理由は何か。

    (答:生命保険協会)

    • ・ 生命保険商品は、年齢や健康状態により、保険料が変わり、元に戻ってやりなおすことができないという特性があり、事後でなく事前の規制が必要。

    • ・ 保険商品にも相対的に弊害が小さいものがあるのはおっしゃる通りであり、まさにそれを踏まえて、現在の規制が成り立っているものと考えている。

    • ・ 保険会社は、日常的な資金繰りの管理をしておらず、融資を受ける側にとっての感覚は、銀行による融資とは根本的に異なる。

    (答:全国生命保険労働組合連合会)

    • ・ 実態調査では、問題事例が多数報告されており、事後的な対応では不可能であることから、消費者保護をはかるには事前規制が必要不可欠である。

    • ・ 規制対象を限定し、例えば小口に限り規制を外した場合、より簡単に圧力がかかるおそれがある。

    • ・ 営業職員については、顧客と対等な立場でコンサルティングを行う一方、銀行は融資関係や預金情報等で優位な立場にあり、営業職員とは全く異なる。

    (答:日本保険仲立人協会)

    • ・ 銀行も保険仲立人制度に乗ることが、本来望ましく、保険仲立人として保険販売を行うのであれば、弊害防止措置は不要だが、保険代理店として行うのであれば、適正な保険販売の実効性を確保するための措置が必要。

    (答:江澤教授)

    • ・ 事前規制の対象が緩和されると、緩和された部分に大量に販売が行われるおそれがある。

    • ・ 生命保険会社は企業金融のメインではなく、銀行と同列には扱えない。

  • 銀行に対し、仲立人同様の制度で保険販売を行うべきという日本仲立人協会の意見について、どう考えるか。また、借入金を原資として変額年金を販売することを禁止すべきとの江澤教授の意見について、どう考えるか。

    (答:全国銀行協会)

    • ・ 銀行の保険募集において、誠実義務が法定されていないからと言って、仲立人制度と比べて、利用者保護が劣後するとは考えていない。 

    • ・ 借入金を原資とした変額年金の販売は、一般的に、各行の内規で禁止している。

  • 窓販の販売件数の伸びを考慮しても、苦情は多いといえるのか。他の販売チャネルと比較してどのような特徴があるか。また、資料にある裁定審査会での紛争事例について、裁定結果を教えていただきたい。

    (答:生命保険協会)

    • ・ シェアが伸びているからといって苦情が高止まりしていいというものではなく、全面解禁後3年間の経験を踏まえた対策を実施することにより減ってしかるべきと考える。営業職員などのチャネルはそうした努力により苦情が減少傾向にあり、事情が異なる。

    • ・ 裁定結果は、言った言わないの水掛け論に陥りやすい傾向があることから、消費者側の申し立てに沿った解決が図られてはいない。

  • 素朴な質問だが、親が子に圧力をかけて何かさせることも最近は困難ではないかと思うが、人々はどのようなきっかけで、保険を購入するとお考えか。

    (答:江澤教授)

    • ・ 生命保険は買われるものではなく売られるものであるという言葉があるが、ニーズが潜在的なのが生命保険の特徴。

    • ・ 消費者が将来の計画に基づいて保険を購入するのではなく、目先の事情で購入を迫られるのは好ましくない。

    (答:水口部長)

    • ・ 自動車保険をインターネットで直接購入するなど、自らの意思で保険に入る人も、着実に増えている一方で、一般論化は難しい。例えば、他に行き場のない零細企業の従業員が雇い主に保険に入ってやれと言われたら自由意志が貫き通せるかどうか疑問。

    • ・ 銀行窓販に関し、圧力販売があるかどうかは、実態をよく見る必要。

  • 閉会にあたり、東副大臣より挨拶。

(2日目)

  • 開催にあたり、東副大臣、和田大臣政務官より挨拶。

    【全国地方銀行協会の説明】

    • ・ 弊害防止措置は、独占禁止法等と二重の規制となっており、全面撤廃すべき。

    • ・ 特に、融資先中小企業の従業員等に対する保険募集の禁止や、特例地域金融機関の保険募集に係る保険金額の制限は、顧客利便を損ねている。

    【第二地方銀行協会の説明】

    • ・ 現行の弊害防止措置(特に、貯蓄性が強い「一時払終身保険」や、「事業性関連の損害保険」に係る規制)は、利用者利便を阻害している。

    • ・ 弊害防止措置を撤廃しても利用者保護は十分確保できる。

    • ・ 万一、全面撤廃が難しい場合は、事業性資金の融資先である小規模事業者に係る従業員数の撤廃又は引下げや、特例地域金融機関の保険募集に係る保険金額の制限の撤廃又は引上げ等が必要。

    【全国信用組合中央協会の説明】

    • ・ 協同組織金融機関である信用組合と融資先の組合員との実態的な関係を考慮し、融資先中小企業の従業員に対する保険募集制限の撤廃や、特例地域金融機関の保険募集に係る保険金額の制限の撤廃又は引上げ、職域信用組合の組合員に対する募集の構成員規制の適用除外を要望。

    【在日米国商工会議所、欧州ビジネス協会の説明】

    • ・ 融資先中小企業の従業員に対する保険募集制限を撤廃すべき。

    • ・ 仮に銀行に対する規制を今後も維持するのであれば、同等の規制を保険会社を含む他の金融機関にも課すべき。

    【日本損害保険協会の説明】

    • ・ 全面解禁後のモニタリング結果を踏まえて規制の見直しの可否を判断すべき。

    • ・ 弊害防止措置が有効に機能しているかを検証し、例えば銀行グループ内の企業が代理店で、自身が契約者となる場合、融資先規制がかかる等、想定外に規制が適用されている等の問題があれば、修正を検討すべき。

    【外国損害保険協会の説明】

    • ・ 融資先販売規制を撤廃すべき。少なくとも、従業員数50人超の融資先企業又はその代表者に対する保険募集の制限を撤廃すべき。

    【損害保険労働組合連合会の説明】

    • ・ 弊害防止措置の見直しに当たっては、金融機関の従業員の業務負荷の観点を踏まえるべき。

    • ・ 顧客が保険加入の意思を表明しているにも関わらず、規制対象であることが判明し加入を断念せざるを得ないケースがあると聞いており、顧客利便向上の観点から、こうした点を見直し、金融機関の専門性を生かせる領域に特化した保険商品を提案できる環境を整備することは、一考の余地があると考えられる。

    【日本損害保険代理業協会の説明】

    • ・ 弊害防止措置は消費者保護のために必要不可欠であり、維持すべき。 

    • ・ 弊害防止措置の実効性を高めるため、消費者への周知徹底が必要。

    • ・ 金融審議会の中間論点整理に関する論議を先行すべき。

    【生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会の説明】

    • ・ 実態調査を実施した結果、銀行窓販に関する多数の問題事例が明らかとなった。

    • ・ 消費者保護を図るため、弊害防止措置の継続・強化が必要。

    • ・ 利便性は保険に入って頂く入口でなく、保険をお届けする出口の方が重要でありそれに対応できなければならない。

    【丹野美絵子 全国消費生活相談員協会理事長の説明】

    • ・ 消費者相談窓口に寄せられる銀行窓販に関する消費者トラブルは、特に変額個人年金保険、外貨建年金保険を中心に増加しており、現在も減少していない。

    • ・ トラブルを防止するため、募集人の資質向上のための募集人教育制度の見直しや、銀行の販売責任の明確化等が必要。

    【質疑応答】

  • 弊害防止措置の維持・強化に関する意見を踏まえた上で、なおコメントしたい点はあるか。

    (答:全国地方銀行協会)

    • ・ 丹野理事長の指摘は重く受け止めたい。銀行窓販が利用者利便に資することは間違いないと思っているが、利用者保護についても、これまで以上に取り組んでいきたい。

  • 銀行窓販に関する苦情は引き続き発生しており、今後、規制を撤廃しても問題が起きないことを国民に説明できるような根拠はあるか。

    (答:全国地方銀行協会)

    • ・ 確かに苦情の件数自体は減少していないが、一方で保有契約の件数は増加している。苦情の中身をみても、圧力販売があったというものはなく、説明不足に起因するもの等が多い。

    (答:第二地方銀行協会)

    • ・ 銀行窓販に関する苦情・相談のうち、35%が説明不足、56%が問い合わせ、8%が事務ミスとなっており、圧力販売に関する苦情はない。コンプライアンスに関する研修も9種類実施し、募集人のレベルは着実に上がっている。

  • 日本は欧米に比べてあらかじめ規制をする傾向があるようにも思う。規制はあくまで有権者を守るためのものであり、その必要がなければいらないとの指摘もあるが、どう考えるか。

    (答:在日米国商工会議所)

    • ・ 利用者利便と利用者保護の適正なバランスが重要で、ベターレギュレーションの考え方からは、事前規制でなく事後チェックとすべきと考える。

    • ・ 特に、融資先中小企業の従業員に対する規制は、関連する苦情が殆どもしくは全くないので、撤廃すべき。

    (答:日本損害保険代理業協会)

    • ・ 銀行が優越的地位を利用した販売を行ったという苦情は、実態よりも少ない。なぜなら融資元である銀行との関係の悪化を恐れるからである。

    • ・ 中小企業では、経営者の意向が従業員に影響を与えることが多い。

  • 従業員の気質も変わってきているのではないか。

    (答:日本損害保険代理業協会)

    • ・ そのような実態は我々には伝わってきていない。

    (答:生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会)

    • ・ 銀行が受け付けた苦情の話があったが、融資される側は、銀行に対する不満を言えない。また生命保険は長期的な責任を持つことをご理解いただきたい。

  • 利用者保護と利便性向上についてもう少し説明いただきたい。

    (答:丹野理事長)

    • ・ 銀行の保険販売が増えることは推測されるので、利用者保護と利便性のバランスを考えた上で、どうしたら消費者が安心できるかを考える必要がある。

    • ・ 保険の圧力販売に関するトラブルを扱ったことはないが、デリバティブ商品については銀行からの圧力販売によって購入し、損失を蒙ったという事例が多数ある。

  • 閉会にあたり、東副大臣より挨拶。

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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課保険企画室(内線3571)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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