平成22年9月8日
金融庁

第4回コーポレート・ガバナンス連絡会議 議事要旨

1.日時:

平成22年7月30日(金曜日)15時30分~17時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

<コーポレート・ガバナンスに対する考え方について>

会社法以外の法的な枠組みで保護されている取引先、従業員、顧客といった債権者と会社法の枠組みで保護されるべき株主とでは、ステーク・ホルダーとしての質が違う。株式の売却しか保護手段がない株主にとってはガバナンスが必要。また、株式の持合いという日本特有の状況のもと、機関投資家の受託者責任は重要な論点。

ステーク・ホルダーというものは、会社法の言葉ではない。会社法は、株主が会社を所有しているという発想を基礎にしており、株主保護が重視される。他方で、株主以外の利害関係者は会社法以外で保護されているはずである。会社法制の議論をするに当たり、株主以外の利害関係者は他法で保護されるべきということをしっかり認識した上で議論をしないと、コーポレート・ガバナンスに関する議論はまとまらない。

一般株主に対する考え方は、上場会社とそれ以外の会社とでは異なる。上場会社では、一般株主の利益(株主共同利益)と上場会社の利益が一致するのが通常。一般株主の利益に配慮して企業経営を行うことが、上場会社の事業目的の遂行と事業価値の向上において重要。

企業のパフォーマンスや企業が外部から高い評価を受けていることと、良いガバナンス構造を持っていることに関係性はない。多くの投資を呼び込む会社を見ると、そこにはその会社特有の事情があって、ガバナンスの良し悪しとは関係はない。

株価の低迷、企業の収益が欧米に比べて低いという問題とガバナンスの議論は、関係がない。今のところその因果関係を証明する証拠がない。

企業の収益向上との間の因果関係が証明されないからといって、コーポレート・ガバナンスが不要ということにはならない。

経営者に対して株主によるプレッシャーがかかっておらず、経営者の株主に対する意識が弱いという事実と、株価が上がらないという事実が同時に日本において起こっていることから、世間では、経営者の意識が低いことが日本株の低パフォーマンスに結びついているという見方がなされている。

経営者の意識は強まっているが、株主目線で経営を行うということと利益を上げるということはまだ結びついていない。

収益をあげるために特定のガバナンスの在り方が望ましいということはなかなかいえない。

パフォーマンスの要因はいくらでもある。その中からコーポレート・ガバナンスだけが強い要因であることを立証しようとするのはナンセンスである。ガバナンスについては、少なくともよいガバナンスがネガティブに働かないのは立証済みなのであり、結論は市場に委ねつつ、企業にはその選択肢を見せる方法がよいのではないか。

企業のパフォーマンスやROEが上がらないことに関して、(1)上場企業の経営者に資本コストを上回るパフォーマンスを上げようという意識が欠如していること、(2)本来経営陣に対する何らかのプレッシャーが必要だが、日本では構造的に株式市場による規律が働きにくいこと、が気になる。例えば、株価が下がれば、企業買収や株主のイニシアティブにより経営陣の交代が起き、利益の上昇につながるといった構造・メカニズムが欠けている。社外取締役の導入についても、こうしたメカニズムに着目する考え方がスタートになっている。

ガバナンスと効率性の向上との関係が1対1対応ではない、というのは議論の論点として違う。企業は、本来システムとして自浄能力・自己改革能力を持つべきである。システムとしてチェック機能が働くこと、株主から言われるだけでなく、取締役会の構造によって、取締役会に対して経営の説明が行われ、失敗をすれば交代をさせられる、そういうシステムを持つことが、投資家による投資に結びついていく。こういうシステムを持つことが健全性・効率性につながるのだが、日本はまだそれには至っていない。法令違反についても、取締役会の中に社会の目を入れ、自浄能力を高める、隠蔽をなくすというシステムが日本には必要ではないか。そういうシステムが不十分。

ガバナンスを考える上では、監視チェック機能等の問題も忘れてはいけない。

ROEのような効率性と、経営者の監視体制の向上の両立が大切。ROEが低いというのは、単に投資家からの要望という観点から問題というのだけではなく、ROEの低さは、全体としての経営の効率性や収益性が低くなっていることの一つの表れ。投資家の利益のためだけでなく、結果的にROEも出てくるくらいの高い収益性を出してもらうことが望ましい。日本企業のいいところを収益性にも結びつけていくことが大事。ガバナンスが目指すものは、長期的に良い経営成績を出せるような体制を構築すること。

世界に通用するコーポレート・ガバナンスが重要と言われる背景には、海外の投資家により株式を購入してもらいたいということがある。海外の投資家が日本の上場企業を購入するという観点からすれば、企業経営の品質管理がしっかりされているべきであるが、日本の上場企業は、不十分。この点では、日本は、(高成長を記録する新興国の)中国やインドといったような国と違うのであり、冷静な議論が必要である。

グローバル株式(を組み込むファンド)から日本企業が選ばれなくなってきている。コーポレート・ガバナンスが投資判断の最低基準となっており重要。

委員会設置会社において執行役からすると、社外取締役によるプレッシャーが大きい。株主代表としての社外取締役に対しては、客観的に合理的な説明でないと説得は難しいし、緊張が生じる。そういう意味で株主の目線を意識した経営が行われている。

社外取締役については、監視・チェックの役割が重視されるが、他企業の経営者であった経験から、執行に関する意見や収益に対する意見が多く出されており、アドバイザリー機能も重要。

独立役員については、上場会社の意思決定プロセスにおいて、一般株主の利益に配慮する観点から、発言の機会を求めることや説明責任を果たすといったモニタリング機能が期待される。モニタリングというと、企業経営に歯止めをかけるというニュアンスがあるが、社外取締役による、過度なリスク回避をしている会社をプッシュし、企業価値の向上に向けた役割についても求められる。

日本の経営者等を対象に意識調査を行ったところ、「独立な社外取締役の数が増えない限り、ガバナンスの質は改善されないだろう」と回答しているのが、取締役・執行役員で約40%、部長・課長の50%近くに上っている。一般社員はもっと高い比率。学生や主婦だとより高く、7割から8割。海外の投資家の目から見るだけでなく、日本市民の目から見ても、独立取締役が求められている。

<内部監査について>

独立取締役が実質的に機能するためにも、監査役監査の実効性を確保するためにも、組織内に他部門から独立した内部監査部門を設置し、日常的な業務部門のモニタリングにあたることが必要。

取引所は、上場維持基準として内部監査体制の適切な整備、運用を義務づけるべき。また、上場会社に対し、上場の際だけではなく、上場後も継続的に内部監査体制を適切に整備、運用するよう義務づけるべき。

有価証券報告書において、内部監査の有効性を確保するためにその取り組み状況等について、より詳細な記載を義務づけるべき。

<監査役の任期について>

会社の監督機能を担う機関として、監査役だけが4年もの長期間株主からの評価を受けないというのは不均衡であり、緊張感が損なわれる等のデメリットがある。少なくとも2年に1回程度は株主の審判を受けるべき。

監査役の任期は4年であるのに、実際には経営者によって退任時期を指定され「辞任」という形で監査役が交代する例は多く、任期は形骸化しているとの指摘がある。しかし、実態は、4年の任期を全うできる人選を行う傾向が強くなっている。

任期については、4年が悪くて、例えば、2年ならばいいというものでもない。株主による審査を受けていないという意見があるが、監査役は少なくとも定時株主総会で監査報告を出して、ある意味株主の審判を受けている。

企業の不祥事に対して、取締役の責任の取り方は色々とあるが、企業不祥事に対する責任について監査役が意見を述べたり、監査役の報酬カットなどのケースは稀。株主の立場から見て、今までの監査役の在り方でよいのかは疑問。

そもそも監査役と取締役とで法律上求められている役割・責任が異なる。実態として、企業不祥事があり取締役の報酬がカットされた場合に、監査役の報酬はカットされないということは通常考えられない。

独立性の高い監査役が企業の内容を理解するには、5年から10年は必要。任期が短いと監査役選任が会社の人事の一環となってしまうので、現状4年は必要最小限。

監査役の責任明確化のため監査役に議決権を認めるという観点があってもよい。

独立取締役を設けた場合、そのチェック機能を重視するために、普通の兼任取締役よりも任期を長くするという議論があってもよいのではないか。

<株主総会の開催時期等について>

株主総会の分散化は投資家からみて多くのメリットがあり、投資家の要望も強いが、決算期から3ヶ月以内の中での分散は企業にとっても実務的に限界。総会開催の期限(決算期後3ヶ月以内)を延長できるようにすべき。

年度末に基準日を設けるために6月に株主総会開催が集中するのであり、基準日と総会の間の期間を短くしてしまえば、3月末に基準日を設けること自体が難しくなるので、結果的に分散につながる。

期末から株主総会開催までの期間を短くするのは困難。連結の対象が複雑化、IFRSの導入等対応すべきことが多い。

年度末から株主総会までの時間を短くすべきということではなく、基準日と株主総会開催までの期間を短くすべき。現状、企業の決算の準備作業と総会の準備作業は、時期的に切り離される。

株主総会の開催時期がこれほど集中しているのは日本くらいである。日本の会社法上、株主の権限が強く、総会開催までの期間が長くなることは問題。4~5ヶ月に延長すると経営陣が怠けるおそれもあるので、現行の3ヶ月という期間でよいのではないか。

税務上、株主総会で確定しないと手続が進まないという問題もある。確定事項にこだわると、問題が出てくるものと考えられる。会社法で、株主総会の時期を長くすると、確定事項にこだわる領域では問題が出てくるかもしれない。

基準日と配当確定日が一致しており、これがずれると配当の確定日がわからなくなる。アメリカは取締役会で配当が決まるので問題がないが、基準日と配当確定日を一緒にするのかそうでないのか、いつまでも配当確定日決まらないと配当を留保し続けてしまうという問題が生じる。

配当と議決権は切り離して考えてよいのではないか。現在でも、委員会設置会社等において定款で定めれば取締役会で決められるようになっており、あまり障害もない。現状、3月末の株主に期末配当を払うと同時に総会の議決権を与えているが、ファンドによる大幅増配提案などを考えると問題があり、むしろ切り離して考えるべき。

企業側の負担を考慮して、詳細な開示を行っている有価証券報告書等を利用して、企業側の事務負担を削減するよう、金商法と会社法の調整を行って欲しい。投資家としても企業としてもメリットは大きい。

開示書類については、会社法開示と金商法開示で重複があるので整理して欲しい。投資家の多くは決算短信に注目しており、そちらに集中するような方法はないか。

有価証券報告書と事業報告書の調整をすべき。企業は四半期開示も行っているので、経営者としては、総会の時期には、既に次の期の状況が分かっており、年度末の事業報告と次の時期の四半期の状況がずれているという状況がある。

株主総会の開催日が集中している一方で議案を吟味するための時間が短いため、招集通知から総会が開かれるまでの期間を長くすべきである。

招集通知の送付日と総会開催日を4週間以上とすべき。海外投資家には重要なテーマ。通知を受けて2週間以内の準備期間で議決権行使を行うというのは難しい。

総会時点では株主ではない基準日株主が総会に関心を持たないようになっている。実際の株主に総会で議決権を行使させる制度にしないと、関心のない株主に議決権を行使させることにつながる。

<監査委員会設置会社>

監査委員会のみを置き、指名委員会及び報酬委員会を置かない委員会設置会社(監査委員会設置会社)を新たな企業統治形態として創設すべき。この際、監査委員の少なくとも過半数(又は2/3以上)は「独立取締役」であることを要件とすべき。

監査役会設置会社及び監査委員会設置会社については、指名委員会の代わりに、その構成員の半数以上が独立取締役から成る独立取締役候補推薦委員会の設置を義務付け、独立取締役は、その推薦を受けた者の中からの選任を義務付けることを検討すべき。

<その他>

法制審議会における経産省提言においては、株主が、株主総会閉会後の一定期間内に限って、書面又は電磁的方法による投票を行うことのできる制度の創設が提唱されている。株主総会会日において一旦有効に生じた議案の可決・成立の効果が事後的に覆ることにもなりかねず、会社を巡る法律関係をいたずらに混乱させる虞があるため、このような制度を創設することは望ましくない。

反対株主の株式買取請求権が過剰に認められすぎており見直しが必要。

以上

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