平成23年12月26日
金融庁

インスペック株式会社株式に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の決定について

金融庁は、証券取引等監視委員会から、インスペック(株)株式に係る相場操縦の検査結果に基づく課徴金納付命令の勧告新しいウィンドウで開きますを受け、平成22年12月21日に審判手続開始の決定(平成22年度(判)第40号金融商品取引法違反審判事件)を行い、以後、審判官3名により審判手続が行われてきましたが、今般、審判官から金融商品取引法(以下「法」といいます。)185条の6の規定に基づき、課徴金の納付を命ずる旨の決定案が提出されたことから、本日、下記のとおり決定(PDF:184KB)を行いました。

決定の内容

  • (1)納付すべき課徴金の額金1864万円

  • (2)納付期限平成24年2月27日

事実及び理由の概要

別紙のとおり


(別紙)

  • (課徴金に係る法178条1項各号に掲げる事実(違反事実))

    被審人は、平成21年7月23日午後2時13分ころから同月29日午後2時53分ころまでの間、5取引日にわたり、(株)東京証券取引所(東証)において、東証マザーズに上場されているインスペック(株)(インスペック)の株式(本件株式)の売買を誘引する目的をもって、B証券(株)(B証券)又はC証券(株)(C証券)を介し、直前の約定値段より高値で又は成行で大量の買い注文を発注して約定させたり、直前の約定値段より高値の売り注文と成行の買い注文を同時期に発注して対当させたりするなどの方法により、合計161株の本件株式の買付け及び合計137株の本件株式の売付けを行い、もって、自己の計算において、取引所金融商品市場における上場株式の相場を変動させるべき一連の株式の売買をした。

  • (違反事実認定の補足説明)

    • 第1本件の争点は、被審人が、一連の本件株式の売買(本件取引)をするに当た り、本件株式の売買を誘引する目的(誘引目的)を有していたかである(なお、違反事実に係るその余の点は、被審人が争わず、そのとおり認められる。)。

    • 第2判断

      • 基礎となる事実

        • (1)被審人の属性、取引経験等

          被審人は、昭和25年生まれの男性の開業医であり、平成17年11月、B証券に証券取引口座を開設して株式取引を始め、平成20年4月には、C証券にも証券取引口座を開設し、以後、両口座で株式取引を行っていた。

        • (2)本件取引前の本件株式の取引状況等

          被審人は、本件株式の売買を、平成18年8月、B証券の証券取引口座で開始し、平成20年4月からは、C証券の証券取引口座でも行ったもので、これらの売買の内訳は、買付けが売付けを大きく上回っていた。

          被審人は、遅くとも平成21年4月には、1042株の本件株式を保有するインスペックの筆頭株主となり、その後の買付けにより、本件取引を開始した時点では、1573株の本件株式を保有していた。この過程で、被審人は、5月12日、C証券の担当者から、高値による本件株式の買付けについて、不公正取引ととらえられないようにとの注意を受けていた。

        • (3)本件株式の上場廃止をめぐる動き

          本件株式は、平成20年8月の時価総額が、マザーズの上場内国株券の上場廃止基準に該当し、同年9月1日、平成21年5月末日までの上場廃止の猶予期間に入った。

          その後、東証では、平成20年10月30日、既に上場廃止の猶予期間に入っている株式につき、その猶予期間を3か月延長する措置が採られた。

        • (4)インスペックの従業員とのやり取り等

          被審人は、本件株式が上場廃止の猶予期間に入ったと知り、平成20年12月ころから、インスペックの従業員に対し、本件株式の上場維持に向けた対策を問い合わせるなどし、平成21年6月26日には「金、月、火と終値28200円を下回らなければ上場維持は計算上大丈夫じゃないですか。」と、7月1日には「毎日の株価を28200以上にキープし、月末はS安でも上場基準をクリアーするよう作戦を立てましょう。…私も7月維持決定を目指してもうひと頑張りします。」と、電子メールで連絡していた。

        • (5)本件取引に係る具体的状況等

          • 対当売買

            被審人は、同時期に自らの売り注文と自らの買い注文とを対当させて約定させる対当売買を、17回、行った。これらの売り注文はC証券を、これらの買い注文はB証券を、それぞれ介して発注されていた。

            また、これらの対当売買の中には、売り注文の発注後10分以内に発注した買い注文と約定したもの等があった。

          • 買い上がり買付け

            被審人は、成行で又は直前の約定値段よりも高値の買い注文を複数発注し、当時出されていた売り注文と順次約定させ、約定値段を高値に更新させる買い上がり買付けを、9回、行った。これらのうち7回には、いずれも対当売買が含まれていた。

          • 買いさらい

            被審人は、平成21年7月29日の午後1時56分から午後2時07分までの間、買い注文を連続して発注し、第三者が発注していたが約定されないまま残っていた指値3万5000円以下の合計40株の売り注文すべてと約定させ、買いさらった。

          • 寄り付き前の売り注文

            被審人は、本件取引期間のうち、1取引日を除くいずれの取引日にも、寄り付き前に、2ないし10株を1口とし、100ないし400円刻みで指値を異にする売り注文を、各取引日当たり12ないし21口、発注した。これらのうち、前日の終値を超える指値のものは、各取引日当たり9ないし20口であり、それらの中には、第三者からの買い注文と約定したものや、被審人が発注した成行の買い注文と対当して約定したものがあった。

          • 立会時間終了間際の取引

            被審人は、平成21年7月23日午後2時48分、売り気配が表示される直前の約定値段を維持するために最低限必要な2株の買い注文を成行で発注した。この買い注文と第三者の売り注文が約定したことにより、同日の終値は、上記売り気配が表示される直前の約定値段となった。

            また、同月24日及び29日の各立会時間が終了する約15分前には、それぞれ買い上がり買付けが行われており、これにより、上記各日の終値は、各買い上がり買付けが終了した時点の約定値段以上の値段となった。

          • 本件取引に関連する第三者との取引

            本件取引に関連する第三者の取引には、買い上がり買付けの直後に被審人以外の第三者が発注した買い注文が、その買い上がり買付けによる更新前の約定値段より高く、かつ、その更新後の約定値段以上で約定したものがあり、中には、被審人の寄り付き前の売り注文と約定したものもあった。

        • (6)本件取引に係る株価の推移及び本件株式の出来高に対する被審人の買付けの割合(総買付関与率:本件取引の期間を通じたこの割合、買付関与率:各取引日におけるこの割合)

          本件株式の株価は、本件取引の開始直前の2万8000円からおおむね上昇し、本件取引の終了時点で3万6800円となっていた。また、本件取引の総買付関与率は24.8%で、本件取引期間中の買付関与率も、3取引日で20%を超え、取引日によっては40%ないし60%を超えていた。

        • (7)本件株式の上場廃止の回避

          本件株式は、平成21年7月末、時価総額が上場廃止基準に該当しないこととなった。

      • 被審人が誘引目的を有していたか

        • (1)被審人の売買には、自らが注文した指値で約定させることのできる対当売買が数多く含まれている上、この対当売買と買い上がり買付けとの組合せにより、本件株式の約定値段は、何度も直前のそれよりも高値に引き上げられ、中には、被審人が寄り付き前に出していた、前日の終値を超え、数百円刻みで指値を異にする売り注文と対当し、約定値段が引き上げられたものが相当数存在する。また、第三者の発注に係る直前の約定値段以下の売り注文すべてと約定する、被審人の買いさらいは、直後に買い付けようとする者に、より高い値段での買い注文の発注を余儀なくさせるものである。さらに、本件取引期間中の過半の取引日では、立会時間の終了間際に、約定値段を下支えするような買い注文ないし買い上がり買付けがなされ、買いさらいの直後にも、買い上がり買付けがなされており、これらの取引日の終値は、これらの買い注文ないし買い上がり買付けがなかったときと比べて高くなっている。

          このように、被審人の取引手法は、約定値段及び終値を引き上げることができるもので、結果、本件株式の値段が上昇傾向にあると投資者に認識させることができるものである。実際、買い上がり買付けの直後には、第三者の買い注文が相当数発注され、その買い上がり買付けによる更新前の約定値段より高く、かつその更新後の約定値段以上で約定しており、また、本件株式の株価は、本件取引の前後で、足掛け5取引日の短い期間に、2万8000円から3万6800円まで上昇している。

          被審人は、この短期間のうちに、上記取引手法を繰り返し、高い買付関与率ないし総買付関与率となる、大量の本件株式の売買を頻繁に行っていた。

          そうすると、本件取引については、その数量、頻度、態様等から、投資者に本件株式の相場が自然の需給関係により形成されるものであると誤認させて本件株式の売買取引に誘い込むため、人為的な操作を加えて本件株式の相場を変動させていたことをうかがわせる、異常な状況が認められる。

        • (2)被審人は、その年齢、職業等から、判断能力に問題がない上、それ相応の株式取引の経験もあり、本件株式の相場の状況、本件取引に係る自己の取引手法がこの相場に与える影響等を理解できたはずである。まして、被審人は、本件取引の約2か月前に、証券会社の担当者から、高値での買付けにつき、不公正取引ととられないようにとの注意を受けていた以上、上記理解を前提として不公正取引に当たらないよう注意するのが通常である。

          そうであるのに、被審人は、異常な状況が認められる本件取引を行っていた以上、本件取引につき、投資者にその相場が自然の需給関係により形成されるものであると誤認させる旨を認識していたと推認される。

        • (3)本件株式は、その時価総額が平成21年8月末までに上場廃止基準を超えなければ、上場廃止となる状況にあった。このような中、大量の本件株式を保有していた被審人は、本件取引の開始前から、インスペックの従業員に対し、本件株式の株価に関心を寄せる電子メールを送り、7月末の上場維持に向け、同月末に制限値幅下限の安値となっても、上場維持できるようにとの具体的方針を示し、協力する意向を伝えている。そして、本件取引では、この方針どおり、本件株式の値段を引き上げるような取引手法が頻繁に繰り返され、その結果、本件株式の上場廃止は、回避されている。

          そうすると、被審人には、本件取引の当時、上場維持に向けて本件株式の時価総額を引き上げるべく、人為的な操作を加えて本件株式の相場を変動させる動機があったと推認される。

        • (4)被審人は、証券取引等監視委員会の調査に対し、本件取引について、本件株式の株価を引き上げ、本件株式の上場廃止を回避しようとしていた、自己の売買注文により、他の投資家にたくさんの買い注文が出ていると思わせ、他の投資家からも注文が出ることで株価が上昇することを期待していたなど、誘引目的を有していたことを認める旨の供述もしている

        • (5)以上のとおり、本件取引については、投資者を本件株式の売買取引に誘い込むため、人為的な操作を加えて本件株式の相場を変動させていたとうかがわせる、異常な状況が認められる上、被審人も、投資者に本件株式の相場が自然の需給関係により形成されるものであると誤認させる旨を認識し、人為的な操作を加えて本件株式の相場を変動させる動機があった。そうすると、被審人が本件取引をするに当たり、誘引目的を有していたことが優に認められ、この認定は、被審人の調査段階の供述からも裏付けられる

  • (課徴金の計算の基礎)

    被審人の違反行為(本件違反行為)に係る課徴金の額は、下記1及び2の合計額(1864万1730円)につき、1万円未満を切り捨てた1864万円となる。

    なお、被審人が本件違反行為の開始時に所有している本件株式(1573株)については、被審人が、その開始時にその時における価格(2万8190円)で買付けを自己の計算においてしたものとみなす(本件みなし買付け)。

    • 下記(1)の額から下記(2)の額を控除した額

      46万9370円

      • (1)本件違反行為に係る売買対当数量(137株)に係る、本件株式の売付けの価額(被審人の売付けの価格の合計額)

        433万1400円

      • (2)本件違反行為に係る売買対当数量(137株)に係る、本件株式の買付けの価額(本件みなし買付け及び被審人の買付けのうち、最も早い時期に行われたものから順次売買対当数量に達するまで割り当てたもの(本件みなし買付けに係る137株)の価格の合計額)

        386万2030円

    • 下記(1)の額から下記(2)の額を控除した額(本件違反行為に係る本件株式の買付けの数量(本件みなし買付けの数量を含む1734株)が本件違反行為に係る本件株式の売付けの数量(137株)を1597株超えるため)

      1817万2360円

      • (1)本件違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における本件株式の売付けについての法130条に規定する最高の価格のうち最も高い価格(4万円)に前記超える数量(1597株)を乗じて得た額

        6388万円

      • (2)前記超える数量(1597株)に係る本件株式の買付け(137株を差し引いた1436株の本件みなし買付け及び被審人の買付け)の価額

        4570万7640円

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局総務課審判手続室(内線2398、2404)

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