平成24年10月23日
金融庁

クラウドゲート株式会社に係る有価証券報告書等の虚偽記載に対する課徴金納付命令の決定について

金融庁は、証券取引等監視委員会から、クラウドゲート(株)に係る有価証券報告書等の虚偽記載に係る検査結果に基づく課徴金納付命令の勧告新しいウィンドウで開きますを受け、平成24年1月27日に審判手続開始の決定(平成23年度(判)第25号金融商品取引法違反審判事件)を行い、以後、審判官3名により審判手続が行われてきましたが、今般、審判官から金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)185条の6の規定に基づき、課徴金の納付を命ずる旨の決定案が提出されたことから、下記のとおり決定(PDF:248KB)を行いました。

決定の内容

被審人に対し、次のとおり課徴金を国庫に納付することを命ずる。

  • (1)納付すべき課徴金の額金1871万円

  • (2)納付期限平成24年12月25日

事実及び理由の概要

別紙のとおり


(別紙)

  • (課徴金に係る金商法178条1項各号に掲げる事実(違反事実))

    被審人は、その発行する株式が札幌証券取引所アンビシャス市場に上場されていた株式会社であるが、

    • 第1平成21年3月10日、関東財務局長に対し、虚偽の記載がある第8期事業年度会計期間に係る有価証券報告書及び第9期事業年度中間連結会計期間に係る半期報告書を組込情報とする、有価証券届出書を提出し、これに基づく募集により、同月26日、1万9300株の株式を1億1580万円で取得させ、

    • 第2平成21年11月2日、関東財務局長に対し、虚偽の記載がある第9期事業年度連結会計期間に係る有価証券報告書及び第10期事業年度第2四半期会計期間に係る四半期報告書を組込情報とする、有価証券届出書を提出し、これに基づく募集により、同月19日、6667株の株式を1億0000万5000円で取得させ、

    • 第3平成22年12月1日、関東財務局長に対し、虚偽の記載がある第10期事業年度会計期間に係る有価証券報告書及び第11期事業年度第3四半期会計期間に係る四半期報告書を組込情報とする、有価証券届出書を提出し、これに基づく募集により、同月20日、3万0770株の株式を2億0000万5000円で取得させ、

    もってそれぞれ、重要な事項につき虚偽の記載がある発行開示書類に基づく募集により有価証券を取得させたものである。

  • (違反事実認定の補足説明)

    • 第1争点

      本件の争点は、次のアないしオのとおりである。

      • 金商法172条の2第1項は、発行開示書類に虚偽の記載があることでそれがなかったときより多くの出資を得られるような場合以外の場合にも適用されるか。

      • 金商法172条の2第1項に基づいて課徴金を課すための要件として、発行者に具体的な経済的利得のあることが必要か。必要であるとして、発行者である被審人に具体的な経済的利得があるか。

      • 前記各違反事実に係る各有価証券届出書(本件各発行開示書類)に、「重要な事項」につき虚偽の記載があるか。

      • 金商法172条の2第1項に基づいて課徴金を課すための要件として、発行開示書類の虚偽の記載と有価証券を取得させることとの間に因果関係のあることが必要か。

      • 金商法172条の2第1項に基づいて課徴金を課すための要件として、発行者に虚偽の記載についての故意又はそれに類する責任要素(故意過失等の責任要素)のあることが必要か。必要であるとして、違反事実第3に係る有価証券届出書の虚偽の記載につき、発行者である被審人に故意過失等の責任要素があるか。

    • 第2争点に対する判断

      • 金商法172条の2第1項の適用範囲(争点ア)について

        • (1)課徴金制度は、金商法に係る違反行為を抑止し、規制の実効性を確保するという行政目的を達成するため、金商法の一定の規定に違反した者に対し、金銭的負担を課す行政上の措置である。

          このような課徴金制度の趣旨・目的からすると、課徴金の水準については、本来的には、違反者の経済的利得にはとらわれず、抑止効果との兼ね合いで決定されるべきものである。ただ、課徴金制度が金商法に新たに導入される制度であることから、違反行為による経済的利得に相当する額が、違反行為を抑止し得る必要最小限の水準として採用された。

          そして、課徴金制度は行政上の措置であるため、算定基準は明確なものであることが望ましく、また、課徴金制度の積極的かつ効率的な運営により、抑止効果を確保するためには算定が容易であることが必要であるから、課徴金の額については、先に述べたところを前提として、違反類型ごとに、その違反行為により違反者の得ることが一般的・抽象的に想定し得る経済的利得に相当する額に基づいて機械的に算定する方式が採用されている。

        • (2)このことを前提として、金商法172条の2第1項は、虚偽記載のある発行開示書類の提出につき、実際よりも有利な記載を行うことで有価証券の募集価格が虚偽記載のなかった場合の価格より上乗せされたものとなり、発行者に帰属する資金調達額が増額する、あるいは、より有利な条件で発行することができると考えられることに着目し、違反行為により違反者の得ることが一般的・抽象的に想定し得る経済的利得に相当する額に基づいて機械的に算定した額として、経済的利得の有無とは無関係に、発行価額の総額に一定の率を乗じた額の課徴金を課すことを定めている。

          このことは、開示制度の実効性の確保が、正確な情報に基づき投資できる等の利益を投資者全体が享受できる市場の前提であり、その確保のためには、経済的利得の有無と無関係に、開示制度に違反する行為そのものが抑止されるべきことからしても、合理的なものである。

        • (3)このように、課徴金制度の下では、その趣旨・目的のため、違反者が現に経済的利得を得たか否かという個別的事情とは無関係に、所定の方式により機械的に算定される額の課徴金を課すこととされており、金商法172条の2第1項も、このことを前提としている。

          したがって、金商法172条の2第1項は、発行開示書類の虚偽の記載があることでそれがなかったときより多くの出資を得られるような場合以外の場合にも適用されるものである。

      • 具体的な経済的利得の要否等(争点イ)について

        金商法172条の2第1項は、その文言上、課徴金の納付を命ずる要件として、虚偽記載のある発行開示書類を提出した発行者が実際に経済的利得を得たことを要求していない。これは、前記1で述べたとおり、課徴金制度が、違反者が現に経済的利得を得たか否かという個別的事情とは無関係に、所定の方式により機械的に算定される額の課徴金を課すものであり、金商法172条の2第1項も、このことを前提としているからである。

        そうすると、金商法172条の2第1項に基づいて課徴金を課すための要件として、発行者に具体的な経済的利得のあることは必要でない。

      • 「重要な事項」に係る虚偽の記載の有無(争点ウ)について

        • (1)開示制度の実効性の確保は、現に投資している者だけでなく、これから投資することを検討している者を含めた投資者全体が正確な情報に基づき投資できる等の利益を享受できる市場の前提である。金商法172条の2第1項は、このような開示制度の実効性を確保するため、虚偽記載のある発行開示書類の提出そのものを抑止すべく、虚偽記載のある発行開示書類を提出した発行者に対し、課徴金を課すこととしたものである。

          そうすると、金商法172条の2第1項の「重要な事項」とは、投資者一般を基準として、投資者の投資判断に影響を与えるような基本的事項、すなわち、その事実について真実の記載がなされれば投資判断が変わるような事項をいうものと解するのが相当である。

        • (2)本件各発行開示書類の虚偽の記載は、それぞれ、組込情報である各継続開示書類に係る虚偽の記載であり、単体又は連結の経常損益、純損益又は純資産額という、投資判断において一般的に重要な指標となる財務状況に係る項目のものである上、虚偽の額と真正な額との乖離の程度も、金額にして、約6000万円ないし約4億円という多額に上り、また、差異率(記載された虚偽の額から真正な額を差し引いた額を当該虚偽の額で除して得た割合の絶対値)にして、小さくても20%を、大きいものでは400%を、超える。

          そうすると、本件各発行開示書類の虚偽の記載は、いずれも、投資者一般を基準として、真実の記載がなされれば投資判断が変わるような事項についてのものといえるから、本件各発行開示書類には「重要な事項」につき虚偽の記載がある。

      • 因果関係の要否等(争点エ)について

        金商法172条の2第1項は、開示制度の実効性を確保するため、虚偽記載のある発行開示書類の提出そのものを抑止すべく、その提出を違反行為としたものである(前記3(1))。そうであるにもかかわらず、同項が、発行開示書類に基づく募集により有価証券を取得させたことを、課徴金を課すための要件として加えたのは、違反行為により違反者の得ることが一般的・抽象的に想定し得る経済的利得に相当する額に基づいて課徴金の額を機械的に算定する前提として、一般的・抽象的に想定し得る経済的利得を基礎付ける事象を定めたものにすぎない。同項が、「重要な事項につき虚偽の記載があ…る発行開示書類を提出した発行者が、当該発行開示書類に基づく募集…により有価証券を取得させ…た」と規定して、発行開示書類に基づく募集と有価証券の取得との対応を要求する一方、虚偽の記載と有価証券の取得との対応を要求していないのは、そのためである。

        したがって、金商法172条の2第1項に基づいて課徴金を課すための要件として、発行開示書類の虚偽の記載と有価証券を取得させることとの間に因果関係のあることは、文理上も実質的にも、必要でない。

      • 故意過失等の責任要素の要否等(争点オ)について

        課徴金制度は、違反行為の反社会性ないし反道徳性に着目し、これに対する責任非難を基礎とした制裁として課される刑事罰とは異なり、違反行為を抑止し、規制の実効性を確保するという行政目的を達成するための行政上の措置であって、責任非難を基礎とするものではない。これに対し、課徴金を課すための要件として主観的要素を要求すべき違反類型については、金商法上、主観的要件が個別に定められている。

        これらの課徴金制度の性質ないし金商法の規定ぶりにかんがみると、課徴金を課すための要件として、明文の定めもなしに、故意過失等の責任要素が一般的に要求されているとは解されず、金商法172条の2第1項に基づいて課徴金を課すための要件としても、明文の定めがない以上、発行者に虚偽の記載についての故意過失等の責任要素のあることは、必要でない。

  • (課徴金の計算の基礎)

    重要な事項につき虚偽の記載がある発行開示書類に基づく募集により取得させた株券等の発行価額の総額の100分の4.5に相当する額が課徴金の額となることから(金商法172条の2第1項1号)、

    • 第1違反事実第1に係る課徴金の額は、1億1580万円に100分の4.5を乗じた額(521万1000円)につき、1万円未満を切り捨てて521万円(金商法176条2項)

    • 第2違反事実第2に係る課徴金の額は、1億0000万5000円に100分の4.5を乗じた額(450万0225円)につき、1万円未満を切り捨てて450万円(金商法176条2項)

    • 第3違反事実第3に係る課徴金の額は、2億0000万5000円に100分の4.5を乗じた額(900万0225円)につき、1万円未満を切り捨てて900万円(金商法176条2項)

    となる。

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総務企画局総務課審判手続室(内線2398、2404)

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