平成25年4月17日
金融庁

株式会社岐阜銀行株式に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の決定について

金融庁は、証券取引等監視委員会から、(株)岐阜銀行株式に係る相場操縦に係る検査結果に基づく課徴金納付命令の勧告新しいウィンドウで開きますを受け、平成24年11月16日に審判手続開始の決定(平成24年度(判)第31号金融商品取引法違反審判事件)を行い、以後審判官3名により審判手続が行われてきましたが、今般、審判官から金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)185条の6の規定に基づき、課徴金の納付を命ずる旨の決定案が提出されたことから、下記のとおりPDF決定を行いました。

  • 決定の内容

    被審人に対し、次のとおり課徴金を国庫に納付することを命ずる。

    • (1)納付すべき課徴金の額 金153万円

    • (2)納付期限 平成25年6月17日

  • 事実及び理由の概要

    別紙のとおり


(別紙)

  • (課徴金に係る金商法178条1項各号に掲げる事実(違反事実))

    被審人(A)は、平成22年9月29日午後3時30分ころから同年12月16日午後零時30分ころまでの間、36回にわたり、名古屋証券取引所市場第一部に上場されていた、株式会社岐阜銀行(岐阜銀行。平成24年9月18日に株式会社十六銀行(十六銀行)との合併により消滅。)の株式(本件株式。平成22年12月17日上場廃止。)の売買が繁盛に行われていると他人に誤解させる目的をもって、B証券株式会社ほか6社の証券会社を介し、本件株式合計123万8000株につき、自己の売り注文と自己の買い注文とを対当させて約定させ、もって、自己の計算において、本件株式の取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって、権利の移転を目的としない仮装の有価証券の売買をした。

  • (違反事実認定の補足説明)
    • 本件の争点等

      被審人は、違反事実に掲げる本件株式の売買(本件取引)を行うに当たり、本件株式の売買が繁盛に行われていると他人に誤解させる等その取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的がなかった旨主張するので、この点について、以下、補足して説明する(なお、違反事実のうち、この主張に係る部分以外は、被審人が争わないからそのとおり認められる。)。

    • 基礎となる事実

      • (1)被審人の属性、取引経験等

        被審人は、昭和45年生まれの男性で、昭和62年ころから、日常的に、株式の取引を行っていた。

        このような中、被審人は、平成20年2月5日、証券会社の担当者から、現物株式に係る被審人名義の売り注文と被審人の母名義の買い注文とが対当して約定していた取引について、相場操縦につながりかねない旨の注意喚起を受けていた。また、被審人は、別の証券会社の担当者から、平成21年5月12日、現物クロス取引について、仮装売買であるとの疑義が生じる旨の注意喚起を受け、同年10月26日にも、クロス取引について、注意喚起を受けていた。

      • (2)岐阜銀行と十六銀行の株式交換等

        岐阜銀行は、平成22年9月28日(以下、平成22年の出来事については、年の記載を省略する。)、十六銀行と連名で、(ア)十六銀行を完全親会社、岐阜銀行を完全子会社とする株式交換を行うこと、(イ)十六銀行は、この株式交換に際し、本件株式1株につき、0.089株の十六銀行の普通株式を割り当てること、(ウ)この株式交換の効力発生日は12月22日とし、同月16日を本件株式の最終売買日、翌17日を本件株式の上場廃止日とする予定であること、(エ)この株式交換の後、十六銀行を吸収合併存続会社とし、岐阜銀行を吸収合併消滅会社とする吸収合併を行う予定であること、等を公表した。

        被審人は、この公表日の翌日である9月29日から上記(ウ)の本件株式の最終売買日である12月16日までの間、本件株式の価格を上記(イ)の株式交換比率に基づいて換算した額と十六銀行株の価格との売買価格の差額に相当する収益を得ることを目指す裁定取引を繰り返していた。

      • (3)本件取引に係る具体的状況

        • 本件取引の概要

          被審人は、前記(2)の裁定取引と並行し、別表記載のとおり、9月29日から12月16日までの54営業日の間(本件取引期間)、うち29営業日において、36回にわたり、自己の売り注文と自己の買い注文とを対当させて約定させるクロス取引を行った。このうち双方の注文が現物株式に係るものである現物クロス取引は、20回であった。

        • 本件取引の市場占有率及び本件株式の出来高

          本件株式の出来高に占める本件取引による出来高の割合(市場占有率)は、本件取引が行われた29営業日全体では16.88%であり、うち8営業日では30%を超え、その中には50%や60%を超える日もあった。

          また、本件株式の出来高は、本件取引期間の直前である8月2日から9月28日までの間は、1営業日平均で約8万9500株であったが、本件取引期間中は、1営業日平均で約18万3000株となっていた。

    • 被審人が取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的を有していたか

      • (1)取引の状況に関し誤解を生じさせる目的の意義

        「有価証券の売買…が繁盛に行われていると他人に誤解させる等…取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的」(金商法159条1項)とは、取引が頻繁かつ広範に行われているとの外観を呈する等、その取引の出来高、売買の回数、価格等の変動及び参加者等の状況に関し、他の投資者に、自然の需給関係によりそのような取引の状況になっているものと誤解されることを認識することをいうと解される。

      • (2)本件取引の態様

        本件取引は、いずれも、同一の者が同一銘柄の売り注文と買い注文とを発注し、同一時刻に対当して約定させるクロス取引である。

        クロス取引は、実質的な権利帰属主体の変更を伴わず、通常は経済的合理性のない取引である一方、自然の需給関係によらない取引であるのに、他の投資者に対し、自然の需給関係によって対象銘柄の出来高が増加したと誤認させる性質を有するものである。

        本件取引は、本件取引期間中の営業日の半分を超える29営業日において、他の投資者が取引の状況に着目する立会時間中に、36回もの多数回にわたり、先に述べた弊害のあるクロス取引を繰り返す態様のものであり、その市場占有率も低くはない以上、他の投資者に対し、自然の需給関係によって本件株式の出来高が増加したと誤認させるものというべきである。本件取引期間における本件株式の出来高が、本件取引期間の直前期間におけるそれの2倍を超えていることは、その証左である。

        このように、本件取引は、本件株式の取引の出来高に関し、実際には自然の需給関係によるものではないのに、他の投資者に、自然の需給関係によりそのような取引の出来高になっているものと誤解させるものというべきである。

      • (3)被審人の判断能力、取引経験等

        被審人は、その年齢に加え、20年以上もの間、日常的に株式の取引を継続し、相場の動向に応じた発注が要求される裁定取引までも行っていたことからすると、その判断能力に問題がないことはもとより、本件株式の相場、出来高等や、本件取引に係る自己の取引手法が本件株式の相場、出来高等に与える影響等を十二分に理解できたはずである。まして、被審人は、複数回にわたり、証券会社の担当者から、クロス取引等につき、注意喚起を受けていた上、現物クロス取引については、仮装売買であるとの疑義が生じる旨の指摘を受けていたのであるから、そのような理解を前提に、不用意なクロス取引を行わないよう注意してしかるべきである。

        そうであるのに、被審人は、前記(2)のような本件取引を繰り返していたもので、その過半に現物クロス取引が含まれていたというのであるから、本件取引につき、その意味合いを十分認識し、本件株式の取引の出来高に関し、自然の需給関係によるものではないのに、他の投資者に、自然の需給関係によりそのような取引の出来高になっているものと誤解させることを認識していたものと優に推認することができる。

      • (4)まとめ

        以上のとおり、被審人は、本件取引に当たり、「有価証券の売買…が繁盛に行われていると他人に誤解させる等…取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的」があったと認められる。

  • (課徴金の計算の基礎)

    被審人の違反行為(本件違反行為)に係る納付すべき課徴金の額は、金商法174条1項2号の規定による下記1の額から下記2の額を控除した額(153万8000円)につき、金商法176条2項の規定により、1万円未満を切り捨てた153万円となる。

    なお、下記1及び2の額の計算においては、金商法174条7項、金融商品取引法施行令33条の9の5第1号の規定により、被審人が本件違反行為の開始時に所有している本件株式(31万8000株)につき、被審人が、その開始時にその時における価格で買付けを自己の計算においてしたものとみなす。結果、本件違反行為に係る本件株式の買付けの数量(このみなされた数量を含む302万9000株)は、本件違反行為に係る本件株式の売付けの数量(188万2000株)を114万7000株超えることとなる。

    • 本件違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における本件株式の売付けについての金商法130条に規定する最高の価格のうち最も高い価格(24円)に前記超える数量(114万7000株)を乗じて得た額

      2752万8000円

    • 前記超える数量(114万7000株)に係る本件株式の買付けの価額

      2599万0000円

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総総務企画局総務課審判手続室(内線2398、2404)

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