平成26年1月24日
金融庁

株式会社フルキャストテクノロジー株式に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の決定について

金融庁は、証券取引等監視委員会から、(株)フルキャストテクノロジー株式に係る相場操縦の検査結果に基づく課徴金納付命令の勧告新しいウィンドウで開きますを受け、平成25年6月27日に審判手続開始の決定(平成25年度(判)第12号金融商品取引法違反審判事件)を行い、以後審判官3名により審判手続が行われてきましたが、今般、審判官から金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)第185条の6の規定に基づき、課徴金の納付を命ずる旨の決定案が提出されたことから、下記のとおりPDF決定(PDF:244KB)を行いました。

決定の内容

被審人に対し、次のとおり課徴金を国庫に納付することを命ずる。

  • (1)納付すべき課徴金の額金108万円

  • (2)納付期限平成26年3月24日

事実及び理由の概要

別紙のとおり


(別紙)

  • (課徴金に係る金商法第178条第1項各号に掲げる事実(以下「違反事実」という。))

    被審人は、大阪証券取引所JASDAQ市場(現在の東京証券取引所JASDAQ市場)に上場されている株式会社フルキャストテクノロジー(現在の株式会社夢テクノロジー)の株式(以下「本件株式」という。)につき、本件株式の売買を誘引する目的をもって、別表記載のとおり、平成22年11月22日(以下、月日のみを示すときは、いずれも平成22年である。)午後1時47分頃から12月3日午前9時35分頃までの間(以下「本件取引期間」という。)、9取引日にわたり、株式会社大阪証券取引所において、B証券株式会社及びC証券株式会社を介し、同人の長男であるD名義を用いて、買い注文と売り注文を対当させたり、直前約定値より高指値の買い注文を連続して出して株価を引き上げたりするなどの方法により、本件株式合計63株を買い付ける一方、本件株式合計86株を売り付け、もって、自己の計算により、本件株式の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、同市場における本件株式の相場を変動させるべき一連の売買をした。

  • (違反事実認定の補足説明)

    • 被審人は、違反事実に掲げる売買(以下「本件取引」という。)を行った事実は認めており、本件取引が、売買が繁盛であると誤解させ、かつ、株式の相場を変動させるべき売買に該当するものであることは争っていないものの、(a)本件取引により他の投資者の売買を誘引する目的はなく、また、(b)本件取引は自己の計算により行ったものではない旨主張するから、これらの点につき、以下、補足して説明する(なお、違反事実のうち、これらの主張に係る部分以外は、被審人が争わず、そのとおり認められる。)。

    • 基礎となる事実

      • (1)被審人の身上等

        • 被審人(昭和42年生まれ。男性)は、平成4年から、証券会社において外務員として勤務していたが、平成7年に同社を退社し、平成8年には、中華人民共和国における日系企業向けのITサポート事業を開始し、平成12年には、事業を法人化してE社を設立し、同年以降、同社の代表取締役を務めている。

        • 被審人は、平成11年頃から株式取引を始め、平成14年には、長男であるD名義の証券口座を開設して株式取引を行っていた。

          そして、被審人は、平成20年頃、本件株式の取引を行うようになり、以後、現物取引のほか、信用取引により、本件株式の取引を繰り返していた。

      • (2)本件取引の内容等

        被審人は、本件株式につき、本件取引期間の9取引日にわたり、いずれもD名義のB証券株式会社口座(平成14年頃開設。以下「本件B証券株式会社口座」という。)及びC証券株式会社口座(以下「本件C証券株式会社口座」という。)を用いて、本件取引を行った。

        なお、被審人は、本件取引期間後においては、主に売付けを行っており、12月7日までに、保有していた本件株式全てを売り抜けた。

      • (3)本件取引に係る出来高等

        本件取引期間中の本件株式の出来高は、1日当たり3株ないし79株であった。

        本件取引期間の各取引日における出来高に占める被審人の買付けの割合(以下「買付関与率」という。)は、9取引日中8取引日において20%以上であり、そのうち3取引日において50%を超えていた。

      • (4)証券会社による注意喚起等

        B証券株式会社は、3月23日から11月16日までの間に6回、被審人に対し、2日連続して同一銘柄の株式の終値に関与していることを指摘し、連続して終値に関与した場合、相場操縦行為等の疑念をもたれるおそれがあるから、午後2時45分以降の買い注文を控えるよう注意喚起を行った。そのうち3回は本件株式の取引に関する注意喚起であった。また、B証券株式会社は、10月15日の一日、3日間連続して終値に関与したとして本件B証券株式会社口座による取引を停止した。

    • 争点(a)(被審人が本件株式の売買を誘引する目的を有していたか(誘引目的))について

      • (1)取引の態様

        被審人は、本件取引期間を通じて、対当売買や、成行又は直前約定値よりも高指値による買い注文で場にさらされていた売り注文と約定させる取引を繰り返し行っていた。

        被審人は、対当売買(始値となったものも含む。)を22回、合計26株につき行っており、そのうち20回、24株が直前約定値よりも高値によるもの、更にそのうち8回、9株が、約定値を更新値幅上限値にまで引き上げるものであった。また、被審人は、本件取引期間中、63株を買い付けた(対当売買を含む。)ところ、その大半に及ぶ49株は、成行又は直前約定値よりも高指値により買い付けたものであった(対当売買を含む。)上、更新値幅上限値による買い注文を約定させていたことも多くあり、株価が下落基調にあるときに、このような買い注文を出すこともあった。

        さらに、被審人は、大引け間際に直前約定値よりも高値による対当売買を行うこともあった。そして、本件取引期間の各取引日における被審人の買付関与率は、9取引日中8取引日において20%以上に及び、そのうち3取引日において50%を超えていた。

      • (2)取引経験等

        被審人は、本件取引までに10年以上もの間、信用取引を含む株式取引を継続的に行っていた。また、被審人は、本件取引以前に、連続して終値に関与した場合、相場操縦行為等の疑念をもたれるおそれがあるとのB証券株式会社からの注意喚起を複数回受けていた。

      • (3)被審人の供述状況

        被審人は、質問調書において、信用返済売り注文と現物買い注文、現物売り注文と信用新規買い注文を繰り返して株価を引き上げることで、信用取引に係る委託保証金の維持率を上げ、取引を継続できるようにしながら、本件株式の株価が上昇し、損失を出さずに売り抜ける機会を待っていたこと、本件株式は出来高が少なく、少数の取引で株価が大きく動く銘柄であるから、売り注文と買い注文を同時に出して高値で対当させ出来高をふくらませる対当売買を繰り返せば、他の投資者がこれに誘われて高指値の買い注文を出し、更に株価が上がり、本件株式を高値で売り抜けて儲けることができるのではないかと考えるようになったことを供述しており、高値の形成を図り、他の投資者の取引を誘い込む意図があったことについて、自認する供述をしていた。

      • (4)まとめ

        以上によれば、被審人は、本件株式の売買を誘引する目的を有していたと認められる。

    • 争点(b)(被審人が自己の計算により本件取引を行っていたか)について

      • (1)関係各口座の入出金状況

        • 本件取引は、1回、2株の売り注文を除き、D名義の本件B証券株式会社口座が用いられたところ、7月1日から12月31日までの本件B証券株式会社口座への入金は、いずれもD名義のF銀行口座(以下「本件F銀行口座」という。)又はG銀行口座(以下「本件G銀行口座」という。)から行われており、本件B証券株式会社口座からの出金は、本件F銀行口座宛てのみである。

        • この点、本件G銀行口座には、7月1日から8月27日までの間においては(なお、同月28日から12月末まで、銀行による利息等の入金のほかは、取引はない。)、被審人名義の口座から合計34万7,541円が、被審人が代表取締役を務めるE社名義の口座から合計13万6,395円がそれぞれ入金されており、このほかには、銀行ATMからのカード入金があるのみである。そして、同期間においては、合計46万7,175円が本件B証券株式会社口座宛てに、合計41万3,013円が本件C証券株式会社口座宛てに、それぞれ出金されている。

          なお、本件G銀行口座には、2月9日、被審人の妻名義の銀行口座から2万5,000円が入金されているところ(平成22年における同口座から本件G銀行口座への入金は、この入金のみである。)、同日、同入金前に被審人名義の口座から上記妻名義の口座に3万8,000円が入金されている。

        • また、本件F銀行口座に係る入金元及び出金先は、10月8日から12月29日までの間において、いずれも本件B証券株式会社口座及び被審人名義の口座のみであり、これらの口座のいずれかから入金がされると、当日中に他方の口座に全額が出金されるとの取引のみがされている(振込手数料を除く。)。

        • 以上によれば、本件取引に係る資金の原資は、その大半が、被審人又は被審人が代表取締役を務めるE社名義の各口座から入金された資金であり、本件B証券株式会社口座の出金先は、全て被審人であると認められる。

      • (2)被審人等の供述状況

        • 被審人は、質問調書において、D名義の証券口座を開設してD名義で取引を行ったのは、当時債務を抱えており強制執行を受けるおそれもあったことから、自己資金を隠すためであり、口座内の資金は全て被審人の自己資金であると供述している。

          また、被審人は、本件B証券株式会社口座の資金は、妻からDの学資金として預かった200万円の残高を保持しながら、会社の資金需要や生活資金、家族旅行の立替え等様々な使途に用いている旨主張するほか、被審人審問において、平成20年頃、Dの学資金として200万円を妻から預託されたところ、学資金が必要になるまでそれを運用することを考えて本件取引を行ったが、Dの学資金は妻と被審人が共同して負担するものであり、本件取引に係る損失は自己にも帰属する旨述べている。

        • Dは、質問調書において、本件B証券株式会社口座、本件C証券株式会社口座、本件F銀行口座及び本件G銀行口座は全て被審人が開設したもので、これらの口座内の資金は被審人のものである旨供述している。

      • (3)まとめ

        以上によれば、被審人は、自己の計算により本件取引を行ったと認められる。

  • (課徴金の計算の基礎)

    課徴金の計算の基礎となる事実については、被審人が争わず、そのとおり認められる。

    金商法第174条の2第1項の規定により、当該違反行為に係る課徴金の額は、

    • (1)当該違反行為に係る有価証券の売買対当数量に係るものについて、自己の計算による当該有価証券の売付け等の価額から、自己の計算による当該有価証券の買付け等の価額を控除した額

      及び

    • (2)当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等又は買付け等の数量が、当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等又は売付け等の数量を超える場合、当該超える数量に係る有価証券の売付け等の価額から当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該違反行為に係る有価証券の買付け等についての金商法第130条に規定する最低の価格のうち最も低い価格に当該超える数量を乗じて得た額を控除した額、又は当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該違反行為に係る有価証券の売付け等についての金商法第130条に規定する最高の価格のうち最も高い価格に当該超える数量を乗じて得た額から当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額

      の合計額として算定。

      別表に掲げる事実につき

    • (1)当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等の数量は、86株であり、当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等の数量は、実際の買付け等の数量63株に、金商法第174条の2第8項及び金融商品取引法施行令第33条の13第1号の規定により、違反行為の開始時にその時における価格(25,380円)で買付け等を自己の計算においてしたものとみなされる当該違反行為の開始時に所有している当該有価証券の数量74株を加えた137株であることから、

      • 当該違反行為に係る有価証券の売買対当数量(86株)に係るものについて、自己の計算による当該有価証券の売付け等の価額から、自己の計算による当該有価証券の買付け等の価額を控除した額
        (24,500円×1株+24,600円×1株+24,900円×2株+24,960円×1株
        +25,000円×2株+25,200円×2株+25,370円×1株+25,380円×2株
        +25,400円×4株+25,480円×2株+25,500円×22株+25,800円×9株
        +25,900円×5株+26,000円×1株+26,100円×3株+26,300円×2株
        +26,400円×1株+26,500円×12株+26,800円×2株+27,000円×2株
        +27,100円×2株+27,200円×5株+28,200円×2株)
        -(24,870円×6株+25,020円×1株+25,370円×1株+25,380円×76株
        +25,400円×2株)
        = 51,860円

        及び

      • 当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等の数量(137株)が、当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等の数量(86株)を超えていることから、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該違反行為に係る有価証券の売付け等についての金商法第130条に規定する最高の価格のうち最も高い価格(46,100円)に当該超える数量51株(137株-86株)を乗じて得た額から、当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額
        (46,100円×51株)
        -(24,400円×1株+24,480円×1株+24,500円×1株+24,600円×1株
        +24,900円×2株+24,960円×1株+24,970円×2株+24,980円×1株
        +24,990円×2株+25,000円×4株+25,100円×1株+25,400円×1株
        +25,480円×2株+25,500円×1株+25,670円×1株+25,800円×1株
        +25,960円×1株+26,000円×2株+26,100円×8株+26,200円×1株
        +26,300円×2株+26,400円×1株+26,500円×1株+26,800円×2株
        +26,900円×2株+27,000円×3株+27,100円×2株+27,500円×1株
        +27,990円×1株+28,200円×1株)
        = 1,030,280円

        の合計額1,082,140円となる。

    • (2)金商法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切捨て1,080,000円となる。

(別表)

(単位:株)
取引年月日 証券会社 口座名義 買付株数 売付株数
平成22年11月22日 B証券 10 3
平成22年11月24日 B証券 2 7
平成22年11月25日 B証券 16 4
平成22年11月26日 B証券 2 1
平成22年11月29日 B証券 5 2
平成22年11月30日 B証券 1 18
平成22年12月1日 B証券 7 15
平成22年12月2日 B証券 16 31
C証券 0 2
平成22年12月3日 B証券 4 3
合計 63 86

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局総務課審判手続室
(内線2398、2404)

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