平成27年12月11日
金融庁

監査法人の処分について

金融庁は、平成27年6月19日、公認会計士・監査審査会から、仁智監査法人に対して行った検査の結果、当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、当監査法人に対する行政処分その他の措置を講ずるようPDF勧告新しいウィンドウで開きますを受けました。

同勧告を踏まえ、金融庁は本日、下記のとおり、当監査法人に対して公認会計士法第34条の21第2項第3号に基づき、以下の処分を行いました。

1.処分の概要

  • (1)処分の対象

    仁智監査法人(事務所所在地:東京都中央区)

  • (2)処分の内容

    業務改善命令(業務管理体制の改善)

  • (3)処分理由

    別紙のとおり、運営が著しく不当と認められるため。

2.業務改善命令の内容

  • (1)監査法人として、組織的監査の態勢を構築すること。

  • (2)品質管理のシステムが有効に機能するよう態勢を整備すること(監査上のリスクに応じた能力を有する人的資源の確保、監査調書の査閲の充実、実効性のある定期的な検証の実施を含む。)。

  • (3)監査の基準に準拠した監査手続を実施するための態勢を強化すること(被監査会社から提出された資料の批判的な観点からの検討、被監査会社の誤った会計処理の見落としの防止、継続企業の前提に関する監査手続における売上見込の実現可能性の検証、内部統制監査における経営者評価に対する適切な評価の実施など、検査において指摘された事項の改善を含む。)。

  • (4)監査の基準で要求される水準に関する理解・知識を高めるとともに審査担当者としての役割を十分に理解することにより、実効性のある審査を実施し、監査実施上の重要な問題点を指摘できる態勢を整備すること。

  • (5)日本公認会計士協会の品質管理レビューによる指摘事項に関し、形式的な対応にとどまることなく、指摘内容の趣旨等を監査法人全体に周知し、実効性のある改善措置を講ずる態勢を整備すること。

  • (6)上記(1)から(5)に関する業務の改善計画について、平成28年1月31日までに提出し、直ちに実行すること。

  • (7)上記(6)の報告後、当該計画の実施完了までの間、平成28年5月末日を第1回目とし、以後、6箇月ごとに計画の進捗・実施及び改善状況を取りまとめ、翌月15日までに報告すること。

お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)

総務企画局企業開示課(内線3861、3806)

(別紙)

仁智監査法人の運営は、下記のとおり著しく不当なものと認められる。

  • 当監査法人においては、経営理念・経営方針を定めておらず、法人運営に関する明確な方向性がない中、法人代表者は、他の社員が自分よりも公認会計士としての経験や監査経験が長く、法人の業務運営については、自分がリーダーシップを発揮しなくても、他の社員が適切に業務を遂行するだろうと考えていたことから、法人の業務運営に係る社員間の相互牽制を働かせるための態勢を構築していない。一方、法人代表者を除く社員は、自身の個人事務所の運営等を行う中、法人の業務運営の多くを法人代表者に任せており、法人の業務運営に対する社員としての自覚を有していない。このため、当監査法人においては、社員同士が互いに牽制を行う風土が醸成されておらず、組織的監査を実施できる態勢となっていない。

    また、当監査法人の社員は、法人設立以前において、監査法人の品質管理業務や上場会社の監査意見の形成を行った経験が乏しく、さらに、監査法人の品質管理業務や上場会社の監査業務については、これまでの経験で十分に対応できるものと思い込んでいるため、監査の品質及び専門的能力を向上させる姿勢が欠如している。

    さらに、法人代表者は、このような状況にあるにもかかわらず、法人設立後の財務基盤を早期に安定させたいと考え、品質管理体制を整備することなく新規の監査契約を受嘱している。

  • 法人代表者は、品質管理のシステムに関する最終的な責任を負うものであるにもかかわらず、自らの職責を自覚しておらず、品質管理のシステムを有効に機能させる態勢を構築していない。また、当監査法人の社員は、被監査会社の実態に即したリスク評価ができておらず、さらに、業務執行社員は、監査調書の査閲を重要な手続と考えておらず、十分な時間をかけて実施していない。

    このため、当監査法人においては、監査契約の新規締結・更新及び監査チームの選任において、被監査会社の監査上のリスクに応じた能力を有する人的資源を確保できているかを十分に考慮しておらず、また、複数の監査業務において監査調書の査閲を実施していないほか、定期的な検証において、監査チームが実施した監査手続の十分性について実効性のある検証を実施していないなど、品質管理のシステムに広範に不備が認められる。

    このように、当監査法人においては、品質管理のシステムが機能しておらず、品質管理態勢は著しく不十分である。

  • 個別監査業務の実施について、業務執行社員は、監査の基準で要求される水準に関する理解・知識が不足し、自身の専門的能力を向上させる姿勢が欠如している状況において、被監査会社との関係維持に重きを置き、被監査会社から提出された資料について批判的な観点からの検討を行っていないなど、監査の基本である投資者及び債権者のために監査を行う意識が希薄である。また、業務執行社員は、前任監査人等の他の者が行った検証結果等に過度に依拠し、自らが入手した監査証拠に基づいて意見表明を行うという意識が欠如しているなど、監査リスクを把握するために被監査会社及びその環境を理解しようとする姿勢も保持していない。

    このため、被監査会社が子会社同士の合併に係る会計処理を誤っていることを見落としているほか、継続企業の前提に関する監査手続において被監査会社が作成した資金繰表の実現可能性を検証しておらず、また、内部統制監査において評価対象の統制の実施者が内部統制の評価を実施しているため経営者評価を利用することができない状況にあることを見逃しているなど、監査の基準に準拠していない監査手続が広範に認められる。

  • 監査業務に係る審査について、審査担当者は、監査の基準で要求される水準に関する理解・知識が不足しているとともに、審査担当者としての役割を理解していないことから、監査チームが作成した監査調書において、自身が疑問に感じた項目を業務執行社員に質問するのみで、重要な項目に係る監査チームの判断に対して、十分かつ適切な監査証拠が入手されているか客観的な立場から批判的に検討していないなど、実効性のある審査を実施していない。

    このため、監査実施上の重要な問題点を発見できておらず、当監査法人の審査態勢は、著しく不十分である。

  • 日本公認会計士協会の品質管理レビューの指摘事項について、法人代表者及び品質管理担当責任者は、指摘内容及びその改善措置をチェックリストに転記するのみで、指摘内容の趣旨等を法人内に周知していない。また、個別監査業務における改善措置の検証は、チェックリストが埋まっていることを点検するのみで、チェックリストに記載された監査手続が実際には実施されていないことを見逃しているなど、実効性のある改善措置を講じていない。

    このため、財務諸表監査における不正、リスク評価及び評価したリスクへの対応において同一の不備が、また、監査証拠に係る監査手続、監査調書の査閲への対応において同様の不備が生じているなど、改善に向けた取組状況は、著しく不十分である。

以上

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