平成28年9月
金融庁
金融仲介機能のベンチマークについて
~ 自己点検・評価、開示、対話のツールとして ~
1.ベンチマーク策定の趣旨
多くの金融機関は、その経営理念や事業戦略等において、金融仲介機能を発揮し、取引先企業のニーズや課題に応じた融資やソリューション(解決策)の提供等を行うことにより、取引先企業の成長や地域経済の活性化等に貢献していく方針を掲げている。
他方、企業からは、「金融機関は、相変わらず担保・保証に依存しているなど対応は変わっていない」といった声が依然として聞かれる。昨事務年度に実施した企業ヒアリングでは、多くの企業が、金融機関に対して、事業の理解に基づく融資や経営改善等に向けた支援を求めていることが明らかとなった。
また、監督・検査を通じて、金融機関によって金融仲介の取組みの内容や成果に相当の差があること、また、企業から評価される金融機関は、取引先企業のニーズ・課題の把握や経営改善等の支援を組織的・継続的に実施することにより、自身の経営の安定にもつなげていることなどが確認された。
金融機関が、自身の経営理念や事業戦略等にも掲げている金融仲介の質を一層高めていくためには、自身の取組みの進捗状況や課題等について客観的に自己評価することが重要である。
こうした考え方の下、有識者会議(「金融仲介の改善に向けた検討会議」)での議論等も踏まえ、金融機関における金融仲介機能の発揮状況を客観的に評価できる多様な指標(「金融仲介機能のベンチマーク」(別紙))を策定・公表する。
2.ベンチマークの活用
(1)自己点検・評価
ベンチマークの具体的項目については、全ての金融機関が金融仲介の取組みの進捗状況や課題等を客観的に評価するために活用可能な「共通ベンチマーク」と、各金融機関が自身の事業戦略やビジネスモデル等を踏まえて選択できる「選択ベンチマーク」を提示している。これらに加え、金融機関において金融仲介の取組みを自己評価する上でより相応しい独自の指標がある場合には、その指標を活用することも歓迎したい。
今後、金融機関との対話等を通じて見直しを行いながら、ベンチマークを関係者にとって納得感のある、より良いものにしていきたい。
(2)自主的開示
企業にとっては、自らのニーズや課題解決に応えてくれる金融機関を主体的に選択できるための十分な情報が提供されることが重要であり、金融機関においては、ベンチマークを用い、自身の金融仲介の取組みを積極的かつ具体的に開示し、企業との間の情報の非対称性の解消に努めていただきたい。
(3)対話の実施
金融機関における金融仲介の取組みについては、単一のベストプラクティスがあるわけではなく、それぞれの金融機関が自主的に創意工夫を発揮して、企業の価値向上に資するような取組みを検討・実施していくべきものである。
監督当局としては、各金融機関における取組みの進捗状況や課題等について、他の金融機関との比較を含め、出来る限り具体的に把握し、それに基づき、各金融機関が金融仲介の質を高めていけるような、効果的な対話を行っていきたい。
3.金融仲介機能の改善に向けて
金融機関が、取引先企業の事業の実態をよく理解し、融資やコンサルティングに取り組むことによりそのニーズや課題に適切に応えていくことは、企業の価値向上や生産性向上を通じて我が国経済の持続的成長につながるとともに、金融機関自身の経営の安定にも寄与するものである。
金融機関においては、ベンチマークの趣旨や目的をよく理解し、企業の価値向上等に資する金融仲介の取組みの実績を着実に上げていくことを期待している。