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平成29年10月25日

株式会社商工組合中央金庫に対する行政処分について

 

金融庁、財務省及び経済産業省は、本日、株式会社商工組合中央金庫(以下「商工中金」という。)に対し、下記のとおり行政処分を行いました。

第1.命令の内容

株式会社商工組合中央金庫法(平成19年法律第74号)第59条に基づく命令

 

1.不正行為の発生や不適切な業務運営を防止するため、以下の観点も含め、法令等遵守態勢、経営管理態勢及び内部管理態勢等を抜本的に見直すこと。

(1)問題発生時以降現在に至るまでの役職員の責任の所在の明確化

(2)監査機能の強化及び組織運営の適正化を含む抜本的な再発防止策の策定・実行

(3)いわゆる民業補完の趣旨を踏まえた持続可能なビジネスモデルの策定・実行

(4)取締役会の強化や外部人材の登用を含む新たな経営管理態勢の構築

2.危機対応業務の要件に該当しない案件について、他の貸付への振替等により取引先に不利益を及ぼさないよう適切かつ速やかに手続を行うとともに、株式会社日本政策金融公庫との損害担保契約の解除や既に支払いのあった利子補給金等の株式会社日本政策金融公庫への速やかな返還等の適切な対応を行い、対応完了後、速やかに報告すること。

3.上記1.(1)及び(2)に係る業務の改善計画を策定し、速やかに提出するとともに、上記1.(3)及び(4)に係る業務の改善計画については、経済産業大臣の指示に基づき設置される「商工中金の在り方検討会」の結果を踏まえて策定し、提出すること。

4.上記1.(1)及び(2)に係る業務の改善計画については、平成29年12月末を初回として、計画完了までの間、3ヶ月毎の進捗・実施状況を翌月15日までに報告すること。また、上記1.(3)及び(4)に係る業務の改善計画については、提出した月を含む決算期末を初回として、計画完了までの間、半年毎の進捗・実施状況を翌々月末までに報告すること。


 

第2.処分の理由

 1.株式会社商工組合中央金庫法(以下「法」という。)第59条の規定に基づく命令(平成29年5月9日)に基づき、当金庫が実施した全件調査によれば、危機対応融資の審査に当たって必要となる試算表等を改ざん・自作する不正行為が、全100営業店中97営業店で、444名が関与して4,609件(融資実行額で2,646億円相当)行われていたことが判明した。

 2.法第58条の規定に基づき実施した主務省合同検査によれば、以下のような不適切な業務運営が認められた。

(1)危機対応融資は、民間金融機関が通常の条件により貸出を行うことが困難な場合に実行すべきものであるにもかかわらず、以下のような制度趣旨を逸脱した運用事例が広範にわたって認められたこと。

ア.業況良好で財務内容に特段の問題のない企業に対して融資実行している事例

イ.民間金融機関が融資提案している企業であることを知りながら利子補給を用いて営業攻勢をかけている事例

(2)過去に池袋支店で改ざんが疑われる事案が発覚したにもかかわらず、監査部及びコンプライアンス統括室は、調査範囲を限定するなど、問題のある調査方法により、不正行為なしと結論付けており、その事案の処理過程に経営陣も深く関与していたこと

(3)危機対応業務以外でも、関係書類の改ざん・自作等の不正行為が行われていたこと

3.主務省合同検査や全件調査の結果を踏まえれば、上記1.及び2.のような不適切な業務運営の問題の所在やその発生の根本原因は以下のとおりであると認められる。

(1)経営陣及び本部は、危機対応業務を商工中金の主要な業務と位置づけ、危機対応融資の計画値等を支店毎に割り当てたうえで、過度な業績プレッシャーをかけて計画値の達成を推進していること。また、危機対応融資に係るニーズが減退した時期にも事業規模を維持することを企図していること。

(2)政府系金融機関の役割はいわゆる民業補完であるにもかかわらず、経営陣及び本部は、危機対応融資を他の金融機関との競争上優位性のある「武器」として認識し、収益及び営業基盤の維持・拡大のために利用していること。

(3)経営陣及び本部は、制度趣旨を逸脱した案件であっても、形式的又は表面的に危機要件へ当てはめる運用を慫慂し、又は過度なプレッシャーをかけつつ黙認していること。こうした姿勢が、職員の不正行為に対する心理的ハードルを引き下げ、コンプライアンス意識の低下に影響したものと認められること。

(4)不適切な運用を防止するための内部統制及びガバナンスが欠如していること。特に、経営上の重要事項は、副社長以下のプロパーによる関係役員会で決定していることから、取締役会は、形式的な報告や儀礼的な追認の場となっており、社外役員によるけん制機能が発揮されていないこと。

4.主務省の監督の下、当金庫において法令等遵守態勢、経営管理態勢及び内部管理態勢等の抜本的な見直しを早急に図る必要がある。

 


1 株式会社商工組合中央金庫法附則において「政府出資がある当分の間は、他の事業者との間の適正な競争環境を阻害することのないよう特に配慮しなければならない」と規定。
2 例えば、上場会社傘下の子会社で業況が良好な先や、借入金以上の現預金を保有する実質無借金企業に対して危機対応融資を実行している事例が認められた。
3 例えば、民間金融機関が1.2%の貸付金利で融資提案している業績好調な実質無借金企業に対し、同率1.2%で危機対応融資を提案し、利子補給0.2%の結果、実質1.0%で融資実行している事例が認められた。
4 平成26年12月に池袋支店で発覚した不正行為に対する特別調査では、経営陣が、連日、調査方法の相談や進捗状況の報告を受ける中で、問題のある調査方法により検証を行い、「不正はない」と結論付けた。
5 例えば、中小企業等経営強化法に基づく認定経営革新等支援機関としての業務にあたって、内部の業績目標達成のために、関係書類を担当者が改ざん・自作している事例が認められた。

お問い合わせ先

金融庁監督局総務課協同組織金融室

Tel 03-3506-6000(代表) (内線3361、3386)

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