「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第4回)議事録
平成30年6月15日(金)
※一部発言は英語により行われたため、仮訳を付しております。
【神田座長】
おはようございます。それでは定刻でございますので始めさせていただきます。仮想通貨交換業等に関する研究会の第4回目の会合を開催させていただきます。
皆様方にはいつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
前回の研究会ですが、仮想通貨、仮想通貨というのは、最近のグローバルな議論では直訳すると「暗号資産」という表現がよく使われていますが、そういったものや、その取引をめぐりましてはグローバルに様々なプレーヤーが関与していること、仮想通貨あるいはその暗号資産と、それに関する取引や技術については各国当局者等から、その可能性というか将来を指摘する声もあれば、留意点というのでしょうか、問題点というのでしょうか、を指摘する声もあると。そして日本においても、新しいデジタル通貨の開発に向けた取組みやブロックチェーン技術の利活用に向けた取組みが進められていることなどにつきましてご説明をいただき、メンバーの皆様方から、この仮想通貨あるいは暗号資産やそれに関する取引技術の可能性や留意点などについて、幅広い観点からご意見をお出しいただいたところでございます。
本日ですが、ビデオ通話を通じ、この仮想通貨・暗号資産やそれに関する取引や技術の分野でグローバルに活動しておられる方々から、それぞれの取組みや可能性、留意点などについてのご見解を伺いたいと思います。その後、メンバーの皆様との間で質疑応答を多少させていただきたいと思います。
今日、参加をしていただけることになっている方々ですが、ご説明順に、まず第1にマサチューセッツ工科大学メディアラボ所長の伊藤穰一様と、シニアアドバイザーのGary Gensler様でございます。それから2番目として、アメリカのリップル社のアジア太平洋・中東地域規制関連業務責任者をしておられるSagar Sarbhai様でございます。
時間割ですが、ご説明いただく方々のご都合、時差等もございますので、それぞれ25分程度の説明をしていただいた後に、20分程度の質疑応答の時間を設け、そして次へ移るというやり方でやらせていただきたいと思います。
なお本日は、元々はもう1人ご説明をいただく予定で、それを念頭に12時までというふうに皆様方にご通知させていただいたかもしれませんが、その方がちょっと急な、やむを得ないご事情でご参加いただけないことになりました。このため2時間として、11時30分に終わるということとさせていただきたいと思います。
また本日、3名の方々からご説明いただく内容を踏まえて、メンバーの皆様方からご発言、ご意見等がありましたら、質疑を終えた後に、会議の最後の時間帯のところでご発言をいただければと思います。
なお、ご説明やメンバーの皆様方からのご質問へのご回答は英語で行われることになります。本日は同時通訳を用意しておりますので、必要に応じてお手元のレシーバーをご利用ください。ちょっと分かりにくいかもしれませんが、スイッチが右下にあって、それを押さないとオンになりません。日本語はチャンネル1になりますので、必要に応じて適宜ご利用いただければと思います。
なお、メンバーの皆様方から向かって右側に設置しておりますカメラは、ビデオ通話用の機材でありまして、この研究会では動画や静止画の撮影や録音はご遠慮いただいておりますので、大変恐縮ですがご理解いただければと思います。
それでは、つながっているかと思いますが、最初に伊藤穰一さんとGary Genslerさんにお話を伺いたいと思います。
今日はお忙しいところ、大変ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
【伊藤様】[仮訳]
ありがとうございます。残念ながらそちらに行けなかったことをお詫び申し上げます。このようなチャンスを頂戴いたしましてお話しできることを感謝いたします。私は、MIT Media Labのディレクターを務めております。
私たちは、もう数年前にデジタルカレンシー・イニシアティブという構想を立ち上げました。このデジタルカレンシー・イニシアティブにはユニークな点があります。
第1に、デジタルカレンシー・イニシアティブは、最も学際的なグループの一つであるということです。メンバーのうち、Gary Gensler氏は商品先物取引委員会の議長でしたし、Simon Johnson氏はかつてIMFのチーフエコノミストでした。その他に、コア・デベロッパー、ビットコインのリード・デベロッパー、MITにいる世界で最も優秀な暗号学者たち、主要分野の技術者・研究者が参加しています。
第2に、デジタルカレンシー・イニシアティブのメンバーは、暗号通貨を所有していませんし、投資したり、(投資の)助言をしたりもしていません。ですから、私達からあなた方へ何かを売りつけようとすることはございません。そんな存在も最近では珍しくなりました。
私達は、中央銀行、官公庁、企業に対して、経済・技術分野からの中立的かつ正確な考えをお伝えしようと努力しています。また学生や研究者を養成すると同時に多くの研究を行い、ブロックチェーンに関する長期的な展望を探っているところです。
今日は、特に(暗号資産の)市場と交換所に関してお話しする予定です。Garyさんは、1月に(デジタルカレンシー・イニシアティブに)参加して以来、世界中で規制上の問題に関する議論を精力的に行い、アメリカの規制環境について研究してきました。ですから、Garyさんより、最近の考えや発見について説明をしてもらい、私がその後Q&Aのときに参加をすることが望ましいと思います。まずはGaryさんにバトンを渡します。ちなみに、こちらはお手元にありますか。それとも画面だけでしょうか。どうやら紙でお持ちのようですね。それではGaryさん、ページごとにご説明ください。
【Gensler様】[仮訳]
穰一さん、ご紹介いただき、ありがとうございます。皆さん、ありがとうございます。また、私もそちらに行けなかったことをお詫び申し上げます。3月の会合では皆様のうち何人かの方とお会いできて光栄でした。私自身は、3月の会合以降3か月間、伊藤さんほど出張していたわけではありませんが、それでも多くの経済学者、技術者、ブロックチェーン企業を立ち上げようとしている方々とお話をしてまいりました。そのうち今日の議論に際して一番重要であろうと考えられるのは、60カ国近い国の代表者の方々とお話をしてきた経験です。それでは、暗号(資産の)交換所とInitial Coin Offering(ICO)に関して、公共政策の場で何が起こっているのかをお伝えしたいと思います。
プレゼンテーションの題名は“Crypto Finance”です。まず、プレゼンテーションの2ページ目、“Crypto Finance”と書いてあります。ほんの数日前にあがった数字ですが、時価総額が3,400億ドルとなっています。約3,000億ドルまで落ちているのは、ちょうど数日前、韓国の交換所で暗号資産が消失してしまったからです。日本のコインチェック事件のようなものですが、それよりも小さな交換所が約30パーセントの資産を失ってしまい、そのことが週末に発表され、価格が下がったのです。
3,000億ドルというのは大きな金額のように思われますが、世界の資本市場はおよそ200兆ドルです。株式市場は80兆から90兆ドル、債券市場は100兆ドル以上あります。それに比べれば、このような暗号金融というのは700分の1、800分の1ぐらい。資本市場全体はこの暗号金融市場よりも800倍大きいということです。しかし、大衆や規制当局の(暗号資産に対する)関心の度合は800分の1よりもはるかに大きいです。
これまで3,000件以上のICOがございましたが、そのほとんどが失敗しています。この12か月での失敗率は大体50パーセントから60パーセントぐらいです。これは、詐欺・不正行為があったからというのもありますし、善意の人たちがたまたま失敗したということもあります。しかし、残念ながら、多いのは不正や詐欺行為です。
また、現在約200の交換所が存在しています。3月時点では、16社が(仮想通貨交換業者として)登録をしており、16社がみなし仮想通貨交換業者でした。しかし、その他に金融庁のドアをノックしていた業者の数は、恐らく100を超えていたのではないでしょうか。
3ページ目です。“Public Policy Framework”と書かれております。各国がどのようなことを行っているのかを説明するものです。大きく、不正行為に対する対応、金融の安定性、一般投資家の保護、の3つです。
不正行為に対する対応としては、基本的に、脱税、マネーロンダリング、テロリストへの資金提供、経済制裁の潜脱、といったものを止めることで、(その必要性については)各国当局者間でも意見の一致が得られるところなのですが、大きな挑戦でもあります。アメリカにおきましても、国務省、財務省などが、北朝鮮やイランに対する経済制裁の潜脱のような行為に使われないことを保証できるか懸念しています。しかし、こういった課題について今後検討が必要であるという点は意見の一致が見られますし、日本においてもこれら暗号(資産)交換所におけるマネーロンダリング対策に関するルールをどのように施行していくか検討しているところだと思います。
金融安定性については、市場規模が3,000億ドルですので、今はさほど大きな懸念はないようにも思えます。しかし、世界中の中央銀行、特にG20などがプロジェクトを立ち上げるなど、少し懸念を抱いているようです。今のところは、何らかの大きなアクションをとるというよりは、モニタリングという姿勢ですが、金融安定性に関しての懸念も存在しているということです。
3つ目が一般投資家の保護です。“investor protection”と“customer protection”の2つがあると思います。多くの国においては、消費者の(暗号)資産を、ハッキングや大きな損失、盗難などから守ろうとしていますが、必要とされる“investor protection”の程度については、地域によって差があります。“investor protection”は、先進国で、“customer protection”に加えて、ここ70年から100年ぐらいの間にできたものです。(株式等の)発行者が利益を上げること、経済成長の促進、投資家の保護、に資するものです。しかし地域によってこの程度に大きな差が存在しています。アメリカとカナダが、非常にこの(暗号資産という)分野において投資家保護をしようとしている国だと思います。しかし、そのアメリカ、カナダでも、イノベーションと投資家保護のバランスというものが存在します。アメリカでは証券取引委員会が、Etherは有価証券として規制されないということを表明しています。“investor protection”のルールを策定する前にまずは成長させてみよう、やらせてみよう、という姿勢の地域が多く存在すると思います。
(暗号資産の)市場についてもう少しご説明します。4ページには、スナップショットを載せています。かなりボラティリティの高い市場です。時価総額を示しておりますが、大体、全体の40パーセントぐらいがビットコインになります。ビットコイン以外の暗号通貨が多く存在していることが分かります。
次に5ページ目ですが、ICOとは何かということでお話をします。ここにいらっしゃる方は皆専門家でいらっしゃると思います。私は、規制当局あるいは元規制当局の人間としてではなく、インベストメントバンカーとしてゴールドマン・サックスに18年おりましたので、また、伊藤先生は世界で最も成功した起業家であると同時にベンチャーキャピタリストでありましたので、そうした投資家としての立場から、ここではお話しさせていただきます。我々にはICOが、投資のスキームのように見えます。投資と消費を組み合わせたものであると思います。投資なのか、あるいはユーティリティ(にすぎないもの)なのか、という誤った議論があるように思われますが、我々MITメディアラボの人間は、どちらか一方ではなく、両方だという見方をしています。(トークンの)購入者は値上がりからの利益を期待します。デベロッパーは、その購入金を使ってネットワークを構築します。こういったものが、古典的な投資契約にあたると思います。購入者がデベロッパーにお金を渡し、デベロッパーが実際に何かを作り上げ、購入者は値上がりによる利益を得ることになります。
全ての項目は読み上げませんが、目を通していただくと、起業家、デベロッパーが多くのデジタル資産を保有しているということがお分かりになると思います。値上がりによる利益を期待しているから保有しているわけです。この後、リップルの方がプレゼンされると思いますが、リップルは当初、自分たちで、トークン・XRPの80パーセントを保有していました。今は61パーセントのみを保有しているということです。起業家が10から20パーセントぐらいしか保有しない場合もありますが、10パーセントだろうと80パーセントだろうと、いずれにせよ、起業家はトークンを保有することで利益を得ようとしているわけです。これ自体はよい仕組みです。問題は、そうした仕組みは投資家保護法の下に置かれるべきではないかということです。
次のページですが、“investor protection”を保障している投資スキームに言及しています。私は、こういったものは投資家保護法の下に置かれるべきであると考えています。ほとんどのICOはこうした法律の適用外となっていますが、大体25パーセントぐらいが不正や詐欺のICOであると言われており、ウォールストリートジャーナルの調査では81パーセントのICOが不正であるとも言っております。
次の7ページ、カラーでプリントアウトしてあるでしょうか、カラーの表がございます。たくさんバブルがあります。約240億ドルが調達されています。こちらにあるように様々な色がありますが、ヨーロッパ、北米、アジアの3つが主要な資金調達地だということになります。現在、ベネズエラが50億ドルの資金を調達したと表明しておりまして、それが真ん中の円で示されているPetroです。多くの人が実際はこれほどの資金を調達できていないと考えております。左下のEOSは実際に資金調達を行い、最終的には40億ドルまで到達しております。そのほか、それぞれ5,000万ドル超の資金を調達した起業家・ベンチャーが少なくとも100はいます。大きな数字になりはじめています。
2017年、ベンチャーキャピタルが、世界で1,600億ドル調達しておりまして、それと比べればまだそれほど大きな数字ではないです。とはいえ、2018年には、ICOの調達額が200億ドルから300億ドルである一方、ベンチャーキャピタルの調達額が依然として約1,500億ドルということで(その差額がどんどん近くなっているということがいえま)す。全ての業界とまではいかずとも、多くの業界において、起業家の資金調達方法が大きく変わりはじめています。資産バブルが起きていることによって、起業家もICOを行うようになるでしょう。チープなお金ときちんとしたお金というものは、いつの時代も存在するものです。
伊藤先生がまだ23歳で、インターネットサービスプロバイダーの事業をはじめたばかりのときに、ICOによって低金利で資金調達ができるとすれば、したいと思いますか。
【伊藤様】[仮訳]
考えてみると思います。
【Gensler様】[仮訳]
伊藤先生は、今は学者ですので、「考える」と控え目ですね。次のページ、タイトルは“Published ICOs”です。ひと月に大体350から550ぐらいのICOが公開されているということです。これは世界全体での数字ですが、ヨーロッパ、アジア、アメリカがその大勢を占めています。もっともそれらよりも多く調達している(ベネズエラのような)国もあります。
次のページは、暗号通貨交換所です。東京にいらっしゃる皆さんはこの問題に取り組み続けてこられたということで、皆さんのほうが我々よりもこの問題に精通していらっしゃると思います。世界にある200近い交換所は、「集権化」されている傾向にあります。ここでいう「集権化」とは、多くの取引所-例えば東京証券取引所、香港証券取引所のような取引所-が持っている、コンピューターのアルゴリズムによって売り注文と買い注文を付け合わせることのできる、マッチングエンジンを有するような(管理者のいる)交換所であるということです。しかし、交換所は、ほとんどの従来の取引所が行わないことを2つ行っています。1つは資産のカストディアンになることです。これは特異なことです。ニューヨーク、東京、香港の証券取引所は、消費者のお金のカストディアンとしての役割を持ちません。普通、銀行、証券預託機関、クリアリングハウスがカストディアンだったりするわけです。このモデルでは、カストディアンが交換所そのものになっていったのです。
ビットコインの統計ですが、1日あたりの全てのビットコイン取引のうち、ブロックチェーン上で行われているのは5パーセントにすぎず、価値に換算して、残りの95パーセント、日によっては98パーセントや99パーセントになることもあります、については交換所で取引されています。実際、私と伊藤先生は、ビットコインをそれぞれ、ブロックチェーンと呼ばれる技術によらないで取引しています。自分のビットコインと相手のビットコインをコインチェックまたはその他世界にある交換所の帳簿において、交換しているにすぎないわけです。
それから、分散型ネットワークと呼ばれる新しい種類の交換所もあります。この交換所については、後ほどご説明します。これは不正行為対策という面から見ても、その他の理由からも、課題であると思います。何故ならば、分散型の交換所は、たとえばアジア居住者とヨーロッパ居住者がマッチングし、アルゴリズムによって自動的に取引が行わるという単純なものになりえて、中央管理者が存在しないからです。3,000万人を超える消費者がいます。ご存知の通り、システムへの不正アクセスによる大きな損失も生じており、世界中で“investor protection”はほとんどかかっていない状態です。
次のページに数字が幾つかありますが、ちょっと飛ばしまして、Global Daily Bitcoin Exchange Trading Volumeというタイトルのページに移ります。これは7年間のグラフですが、随分変わってまいりました。最初のうちはほとんどの取引がUSドルとビットコインの間で行われていました。2013年、2014年ぐらいに、中国人民元とビットコインの交換に変わってまいります。それから、より最近になると、ドルか円となってきています。
今の市場ですが、次のページ、BTC Volume by Currencyとついているものです。6月7日の数字ですが、ビットコインと日本円の交換が3分の2を占めており、約35パーセント、40パーセントぐらいがドル。その中にはTetherと呼ばれる他の通貨を通じて取引されているものもあり、多くの人がこれによって(ビットコインの)価格が操作されていると思っています。ドルが60パーセントで円が30パーセントの日も多いですが、この市場においては、円とビットコイン、あるいはビットコインとドルというあたりで、やりとりがされているようです。
Global Approachの話です。どういった取組みが行われ、どういったことが議論されているのでしょうか。公的セクターにおいては、不正行為対応を行い、金融の安定性のためにモニタリングを行うということについて概して意見の一致が見られます。しかし、多くの地域ではそれ(実際にそうした対応を行うこと)を難しい課題だと考えているようです。目標を達成するということに関して意見が一致していますが、その手法がはっきりとしないということです。一番難しいのは、誰かが暗号資産を売って別の暗号資産を買う、すなわち暗号資産対暗号資産の取引をした場合、そして法定通貨を取り扱う商業銀行が関与しない場合、公的セクターが(暗号資産の流れを)追跡することがより難しくなるということです。特に多くの課税当局は、(そういった取引が行われた場合、)課税申告がされるべきだと考えますが、暗号資産対暗号資産の取引においては、多くの人がその申告をしません。アメリカではそれが現実に問題となっています。私は日本の法律に詳しくはありませんが、恐らく日本でも同じように問題になっているのではないでしょうか。さらに、暗号資産対暗号資産の取引が行われる場合、あるいは新しい分散化されたP2Pの交換所で取引がなされる場合には、不正行為対策もより難しくなります。
私見ではありますが、私たちはこの拡大しつつある市場で、投資家保護のためにすべきことがあると思います。資本市場の200兆ドルと比べれば非常に小さい市場ではありますが、それでも3,000億ドルもあるのです。金融安定理事会(FSB)やIOSCOのような国際基準設定主体でも動きがあります。各国からステートメントも出ています。日本とアメリカでは交換所に対する規制が進んでいますし、アメリカとカナダにおいてもICOの議論が進んでいます。
アメリカについて述べさせてください。次のページは、アメリカの証券法に関してです。右上に写真がありますが、これはHowey-in-the-hillsの写真です。ここでアメリカの最高裁までいった、Howey Testと呼ばれる事件が起こりました。信じてもらえないかもしれませんが、フロリダで育てられている柑橘系果実の果樹園を巡る事件なのです。William Howeyという名前の不動産経営者がホテルを所有し、フロリダのオレンジ園の土地を売り始めました。アメリカの証券法の下、配当もなく、従来の投資に伴う権利を有さないものを投資契約といえるかどうかという話になったのです。最高裁は、4つの理由から、これは投資契約であると判断いたしました。資金の投資があったこと(土地を買っています)、共同事業への出資があったこと、収益への期待があること、他者の努力に依拠した利益であることです。アメリカ証券取引委員会のコーポレート・ファイナンス部門責任者は、このHowey Testをいまだに適用しています。(これによって、)彼らは、Etherという、イーサリアムネットワークの一部を、有価証券ではないと考えています。2014年に発行されて以来ずっとそうでした。彼らは(有価証券該当性について)明確な回答をしていないと述べていましたが、今は分散化が進み、発行体が曖昧になってしまったので、アメリカの証券法を適用することは道理にかなわなくなってしまいました。2014年時点では、イーサリアム財団が発行者だったのですが、今は分散化されすぎて(財団が発行者であり、利益を得る者であるというのは)道理にかなわなくなってしまいました。
アメリカにおいては、Duck Testというのがあります。次のページにあるのは素敵なアヒルの絵です。100年ほど前のアメリカの詩人が、「アヒルのように鳴いてアヒルのように歩くなら、それはアヒルだろう」と言ったのです。アメリカ財務省や証券取引委員会においても、このDuck Testという言葉を使います。私と伊藤穰一だけが使っている言葉ではないのです。19世紀後半にインディアナ州でつくられた言葉です。
イーサリアムに関してのページが次です。証券取引委員会は、これはトークンではないと判断したのですが、最後のポイントが有価証券には該当しないと判断した理由です。
リップルのページが次にございます。次のプレゼンターはリップルの方です。XRPは大体200億から300億ぐらいの市場価値を有する、3番目に規模の大きなトークンですが、アメリカの有価証券規制を潜脱するものではないかという強い主張が存在します。発行されてからというもの、基本的にはRipple Labと呼ばれる一企業のコントロール下にありました。その企業は今では、リップルと呼ばれています。購入者は収益を期待してお金を投資します。少なくとも16の交換所で上場され、取引されています。ほとんどの起業家がそうであるように、リップルもその価値を向上させています。いまだ61パーセントを保有し値上がりによって利益を得ています。
XRPは何年にもわたって使用可能であるという人がいるかもしれません。彼らは会社としてのリップルがなくなっても、トークンとしてのXRPは使用可能であるというでしょう。私は法律家ではありません。この件に関しては、アメリカの法律制度において判断されることになるでしょう。既にその件について訴訟が行われています。しかし、単なる“customer protection”を超え、さらに上のレベルの“investor protection”の価値があると判断されるのはどういう場合か、というのは、世界中の規制当局に関係のある話ですし、議論になります。アメリカの法律はヨーロッパの、MiFIDⅡとは異なりますし、アジアや日本のものとも異なりますが、この市場がこれからも成長し続ける場合、規制当局は、“investor protection”と呼ばれる高いレベルの保護を与えるべき場合について議論していくことになるだろうと思います。
次のページは40億ドル相当のトークン、EOSです。私たちはこちらも証券法を順守していない有価証券である可能性が高いと思っています。一方で、彼らは(このトークンを)アメリカ国民あるいはアメリカ在住者には売らないと明確に表明しているところです。
次のページです。大きな課題として8つか9つのポイントがあります。いくつかの国では、いかに法制度を更新していくかということが課題になると思います。私は、次の5年で、ほとんどの国において、法を改正するか、少なくとも権限がルールに起因するのであれば、法律の効果をもつルールが書き換えられることになると考えています。現在ほとんどの国はそういった事態を避けようとしていますが、ちょうどインターネットが始まったころ、同じように大体5年から10年かけて徐々に法律が変わりました。このあたりは、私より伊藤先生がお詳しいと思います。私たちも今後3年から5年にわたる変化の端緒を見ることになるでしょう。日本においては、“investor protection”に手厚くなるか、不正アクセスが生じたことを考慮に入れても、カストディアンの要件が必ずしも望ましいものでなくなるか、です。
現在の規制をそのまま受け入れるということは大きなポイントになるでしょう。どのように修正すべきでしょうか。あなた方は日本におけるこの分野の専門家でいらっしゃいます。2017年、日本、アメリカその他どこの場所においても既存の法の網目をかいくぐる暗号(資産)交換所ですが、それらを閉め出そうとはされていません。我々の国においても、閉め出そうとするのではなく、どのように修正していくべきか、どのようにコンプライアンスを担保するか、カストディアンとしての義務を強化していくべきかということを考えています。
5番目のポイントはとても難しく、しかし、不正取引対応として非常に重要なものです。どのように受益所有者をトラッキングするかということです。アンチマネーロンダリング法制、税制の要です。更には信じられないかもしれませんが証券法制の要になるのです。この問題に関しては、技術的な解決策があります。MITの同僚も幾つか思い当たる解決策があるようです。受益所有者のトラッキング法に関しては、国際機関がその基準を検討する価値があると考えています。(基準策定は)技術だけでなく、公共政策の目的も支援するものであると思います。(情報を)プライベートのままにしておくことを望み、そうしたトラッキングの網の目をすり抜けることを望み、(こうした試みは、ブロックチェーン)技術を損なうものであると考える人もいますが、私は、むしろ技術を改善させていくものであると考えています。
最後のページです。私たちは、ブロックチェーンの技術が金融セクターを変容させる可能性を持っていると思います。この先数十年であれば、銀行が存在するかと思いますが、その場合、ブロックチェーン技術はまさに変化のきっかけになっていくものと思います。ここアメリカにおいては、決済をするだけのために多額の手数料が請求されます。VISAネットワークやそれ以外のネットワークを使用しようとする場合、手数料として2.5パーセントから3パーセントが請求されます。これは決済システム、バックオフィス、セキュリティプロセシングの場面における変化をもたらすきっかけになります。ブロックチェーン技術は、現在のモデルを破壊し、最終的には新たなモデルとなるほどの大変革をもたらしうると思っています。既存のモデルの置き換えというよりも、変化の大きなきっかけになるでしょう。私のほうは以上です。伊藤先生にマイクを渡します。
【伊藤様】[仮訳]
Gary さん、ありがとうございました。ちょうど時間もいい感じなので、これからディスカッションパートに切り替えたほうがいいのではないかと思います。どうもありがとうございました。
【神田座長】
伊藤さん、Genslerさん、大変ありがとうございました。
それでは、メンバーの皆様方からご質問をお出しいただければありがたいと思います。ご発言は日本語で結構です。
なお、時間の都合上、質疑応答は10時20分頃を目途とさせていただきたいと思います。どなたからでも結構でございます。
それでは岩下メンバー、どうぞ。
【岩下メンバー】
岩下でございます。伊藤さん、Genslerさん、大変貴重なご発表をありがとうございました。私からは2点だけ、お願いも兼ねているのですが、先ほど、現在の仮想通貨の取引所がカストディアンを兼ねていることが問題であるというご指摘がありました。これについての解決策として、現在の仮想通貨交換業者の多くが、実際には本人がカストディアンを兼ねてしまい、かつディーラー、自分でポジションを持つものも含めて、様々な取引をやっていて、それを自分たちの中のオフチェーンの取引の中で維持しているという実態があるわけですが、これをどのように改めるべきだと考えますか。
例えば、全てをオンチェーンに書くということは1つの考え方ですし、もう1つは、別途信頼できるカストディアンを別のエンティティとして登場させて、そのカストディアンに資産を間違いなくキープしてもらうという考え方だと思います。どのような構造が望ましいと思われるか、特に規制上、あるいはビジネス上それが可能かということについて、お話をいただければと思います。
もう1つは、最近米国で多発しております大口のICO、先ほどEOSのお話がありました。EOSは、例えば米国国民に売らないという約束でICOが行われているわけでありますし、例えばテレグラムであるとか、その他の一部のICOについては、事実上米国の国内で売られているけれど、私募の形態で米国の証券のレギュレーションに即して行われているので、それ自体が現在の一般的な証券のパブリック・オファリングには当たらないのだという整理になっているかと思います。
ただ、一方で、私募で売ったはずの、しばらくは売却制限がかかるはずのそうした主要トークンが、さらに第三者に転売されているという話はインターネットでよく目にするところであります。そうした、私募でSECがコントロールするというスタイルと、しかし、果たしてそれがコントロールし切れるのか。同じように、例えばEOSは本当に米国の国内の投資家を対象に勧誘しないのか。そういったところの、サイバースペース上での公執行の能力に対する信頼についてのお考えをお聞きしたいと思います。
以上です。
【伊藤様】[仮訳]
Garyさん、技術面からのお考えをお願いします。
【Gensler様】[仮訳]
分かりました。まず1つ、世界中の何千万人という人が関心を持ち、3,000万から5,000万の人たちが、ある種の暗号資産に既に投資をしているほど、この(暗号資産)市場は発展してきたわけです。そういった人たちは、直接ブロックチェーン上で取引をする能力・願望がないわけです。暗号(資産)交換所というのはそこに商機を見出しました。そして、既にご説明しました通り、約95パーセントの取引がオフエクスチェンジ、カストディアンの中で行われているわけです。この市場発展に対する答えは、カストディアンに対し、交換所としての機能とカストディアンの機能を分離させるような程度の義務を課すことにあると思います。(分離自体を)要求したり、命じたりする必要があるとは思いません。しかし、非常に強力なカストディアンの義務を課せばよいのだと思います。カストディアンの義務から分離された方が、取引所が儲かるという現象が、他の市場においてもう1世紀以上にわたって見られます。
現在の問題は、主要な商業銀行(既存の金融機関)は現在自らがカストディアンになる許可がないのだと考えていることです(そのため、そういったカストディアン業務に手を出そうとはしません)。そのため、ほぼすべての国でカストディアン業務は、スタートアップや起業家によって支配されている状態です。アメリカの古いことわざで、“Do you beg for forgiveness or ask for permission?”というものがあります。既存の金融機関は(そうしたカストディアン業務を行うためには)許可をとる必要があると考えるものです。日本の主要銀行もカストディアン業務を行う前に金融庁のもとを訪れることでしょう。一方、スタートアップ企業は、大きなリスクをとって行動しますし、それが後に失敗であった場合、謝罪をすれば済むと考えているようです。
2点目の質問に関しては、仰る通り、多くのICOはアメリカ法の下で私募と呼ばれる方法を用い始めています。専門用語で恐縮ですが、それらは、レギュレーションDにおける“Exempt Security Offerings”にあたります。Telegramが17億円を調達した際もその手法で行われました。今後より多くのICOがその形態で行われるようになるでしょう。それらは、技術的には一応米国の証券法の下にあります。彼らは、証券取引委員会のもとへ出向き、適切な手続を踏んでおり、証券取引委員会の権限の下にあるといえるからです。規制の適用除外を受けるためには犠牲を伴います。起業家は多少のルールに従ってICOを行う必要が生じるのです。
【伊藤様】[仮訳]
つけ加えますと、暗号通貨の良いところは、技術的に行動を修正することができるというところです。多くのカストディアンに関する問題は、技術的に改善できると思います。例えば、これらの暗号通貨の基本的な機能は、マルチシグ、マルティプルシグネチャーと呼ばれるものに求めることができます。カストディアンが1つ鍵を持っておいて、交換所が1つ鍵を持っておく、その上でバックアップのプロバイダーを置いて、カストディアン業務にちょっとした独立性をもたせるサービスを想像することができます。
Garyさんが言ったように、事業(業務)の統廃合をすることもできます。テクノロジーがそれを支援しています。思い返しても、暗号通貨のテクニカルな領域というのは、サイバーセキュリティの領域とはそれほど近くありませんでした。丁度1年ほどで、この分野におけるサイバーセキュリティ、ネットワークセキュリティの取組みが進み、事業が立ち上がるようになりました。ですので、交換所を立ち上げる人たち、それからカストディアンサービスを提供すべき人たちは、能力・適性の度合いが大きく異なります。今後、直接または数四半期を通して台頭してくるサービスプロバイダーを通して、しっかりとしたカストディアン業務を目にすることができるようになるかもしれません。
【Gensler様】[仮訳]
サイバーセキュリティに関しては、大きな銀行から聞いたのですが、彼らがカストディアン業務をやりたくないのは、サイバーセキュリティの脅威があるからということでした。本当のところ、誰かがコンピューターに不正アクセスして、暗号通貨の秘密鍵をとっていくということがありえるわけです。マルチシグネチャーは(そういった問題に対する)解決策の1つになりうると思っています。
【神田座長】
ありがとうございました。
他にいかがでしょうか。楠さん、どうぞ。
【楠メンバー】
終わりのほうで、どのように規制というものをこういったクリプトファイナンスに対して適用していくのかという点についてご提案がありましたが、現状、クリプト・トゥー・クリプト、仮想通貨による取引というものをきちっと規律していくことには限界があると。ここの中で常にトレードオフとして禁止をすることによって、一方で禁止はするけれどとめることはできないという問題と、レギュレーションの中に組み込んでいくことによって、少なくとも取引所を介して行われる取引については、本人確認、アンチマネーロンダリングにカバーしていくということができるわけですが、そこの中でどういう、このトレードオフの中でどのような選択を規制当局がすべきだとお考えでしょうか。
もう1点、現実には仮想通貨自体の取引というもの、仮想通貨間の取引というものを、規制当局として介入することは非常に難しいわけですが、そうすると、それを運営していく、あるいは運営に関与していくということは、一方で法的な責任というのが多分発生してくると思うんです。例えばそこで犯罪の収益の移転が行われている場合ですとか。
そういったときに、運営者がいない、ディスセントラライズされている中における法的責任というのをどういうふうに考えていくべきか。例えばマイニングをしている採掘者の責任というのは、そこに法的責任は発生するのか。こういったことについてどのようにお考えでしょうか。
【Gensler様】[仮訳]
とても良いご質問をありがとうございます。主要国の、財務大臣、証券規制当局、中央銀行、にとって最も重要な判断は、この暗号対暗号、あるいは仮想通貨対仮想通貨の取引を、マネーロンダリング、脱税、その他不正行為を防止するとの理由、あるいは証券法上の理由で、法定通貨対法定通貨、法定通貨対暗号の交換と同じように扱うことだと思います。恐らく、この経済システムの中にいる多くの人たちが、今、私が言ったことをやるべきではないと仰るでしょう。違う、違う、それは税法では、同種交換と呼ばれるものであるからと。私は、アメリカの課税当局のように行動すべきだと思います。彼らは暗号対暗号の交換に関しても、課税対象であると言っています。何かを買って何かを売っている以上、課税対象となるということです。
金融庁に登録済みの、「集権化」された交換所は、暗号対暗号、暗号対法定通貨、両方の取引の報告義務を負うべきだと思います。アメリカの4つの取引所が、シカゴ・マーカンタイル取引所より、ビットコインの取引についての情報を求められた際には、我々は誤った考えを持っておりました。シカゴ・マーカンタイル取引所がそういった情報を収集するのは、彼らがビットコインの先物取引と呼ばれるものを行っているからです。4つの取引所から収集したデータをもとに取引価格を決定しているのです。4つの取引所は、シカゴ・マーカンタイル取引所に情報を与えたがりません。ですから、昔、私がおりました商品先物委員会は、取引の情報を得るために、法的拘束力のある召喚状を送っていました。アメリカ合衆国内国歳入庁は、コインベースに対して召喚状を出す必要がありました。彼らは、交渉し、最終的には示談ということになりました。しかし、コインベースは、2万件のファイリングに関する記録と情報を提出しましたが、1,300万人の取引参加者には通知していないということがあったのです。
それは適切ではないと思います。公共セクターは透明性を持つべきだと思います。(交換所における取引情報が)完全にプライベートになっているべきではないと思いますし、マネーロンダリング、脱税、証券規制、どの観点からしても、暗号対暗号であっても何らかの透明性を担保するためのものが必要だと思います。必要があれば、法律を変える必要もあります。ただ、分散・非中央集権型台帳においては、それがより困難になりますし、公共セクターで我々がそうした取組みを進めることで、マネーロンダリング、脱税などの不正行為がより分散化されていくことになるかもしれません。中央集権型の交換所を規制するべきでないといっているわけではありません。これらの交換所が公共政策の目標を達成するための主要なゲートキーパーとなり、窓口となるのです。
【伊藤様】[仮訳]
アメリカ中心の考え方になりますが、12月まで、アメリカではセクション1031と呼ばれる税の規定があって、これはある種の資産の交換においてはキャピタルゲイン税を繰り延べることができるというものでした。特定の不動産にだけ適用されるよう取締りがなされていました。資産対資産の取引は課税対象ではないという考えを(暗号通貨の取引に関しても)持ち出す暗号通貨取引所もありました。しかし、今となってはこうした取引は明確に、課税対象となります。ご存知の通り、アメリカでは暗号通貨は通貨ではなく、資産として扱われています。
また、税は常に難しい問題だと思っています。もし、暗号通貨を通貨として規制すれば、それ自体は意味を為しませんが、海外において含み益があった場合、アメリカでそれに対して税金を払わなくてはいけなくなるということで、困ったことになります。今の制度下においては、仮に有価証券として取り扱うほかに、税体系というのが存在しませんが、それも規制上の問題があります。現行制度では、税の扱いに関しても、報告体制に関しても望ましい制度が整っていないのです。
【Gensler様】[仮訳]
その通りです。公共セクターが現状を把握するための最善の方法は、登録済みの交換所に、取引記録帳を開示するように求めたり、課税当局へ報告を求めさせたりすることで、暗号対暗号の取引においても、例えば銀行秘密法その他法定通貨対法定通貨に係るような法律の適用がある場合と同じような扱いをすべきです。法定通貨を取り扱っている商業銀行は、法定通貨対暗号の送金が行われた場合、常に報告できるようにしなければなりません。とても賢いベンチャー企業や起業家が抜け道を見つけて、それに対して6カ月、12カ月かけて対応していくという、ある意味いたちごっこになるかもしれず、完璧なものとはいえないかもしれません。
【神田座長】
ありがとうございます。2点目のご質問についてはいかがでしょうか。ディスセントラライズされた仕組みになってくる中で、いろいろなことについて誰が責任を負うのか。マイニングする人が責任を負うということもありなのか。
【Gensler様】[仮訳]
とても良い質問です。マイナーは分散化された交換所にはそんなに関係ないと思います。例えば、EtherとBitcoinを交換するための分散化された交換所を立ち上げるにあたって、EtherのマイナーもBitcoinのマイナーも関係しないわけです。分散化された交換所とは、2つのブロックチェーン間の移転を促進する、コンピューターコードでしかないわけです。マイナーを規制する1つのやり方は、(マイナーの)所在地がどこなのかを特定するということになるだろうと思います。アメリカに所在するマイナーもいれば、日本に所在するマイナーもいて、それらは、法人格と実際にそれを運営している起業家です。もし、そこに生きている人間がいれば、例えば「伊藤穰一2018年バージョン」の人がいたとしたら、この人はこういう人だというふうに規制できると思います。問題は彼がマルタのような友好的な国に容易に移ってしまうかもしれないということです。しかし、家族がいて、子供が学校に行っていたら、彼らは移動したがらないかもしれません。マイナーの捕捉はいつも課題になると思います。いずれにしても、私と伊藤先生を6カ月後に日本に招いていただければ、今よりは、その質問に対する良いお答えができるかもしれません。管轄域内に(マイナーたる)人や法人格が存在しない場合、何が起こるのかということについて本日は適切な答えを持ち合わせておりません。難しいです。
【伊藤様】[仮訳]
多分、この問題は、かなりすぐに表面化するのではないかと思います。
【Gensler様】[仮訳]
そうですね。管轄内に人または法人格が存在するのであれば、それらを通じて規制をかけるということが、マイナー経由で規制をかけるということが、適切だと思いますし、商業銀行で例えば暗号通貨から法定通貨に交換するというところで、あるいは逆に暗号通貨を法定通貨に替えるときに規制すればいいのではないかと思います。大きな課題は、暗号から暗号への取引を行う場合です。法定通貨に変換する点が存在しないからです。
【伊藤様】[仮訳]
さて、インターネットの会話を見ていると興味深いことがあります。人々はイーサリアムを、法定通貨に変えるものとしてではなく、口座の単位と考えているようです。それこそ、真の意味での暗号通貨経済の始まりです。一旦、法定通貨に替えることなく、物を購入できるようになると、法定通貨へと変換される時点が消失し始めてしまいます。中央銀行はあまり大きな問題とは捉えていないようですが、もしも暗号通貨のマーケットが非常に大きくなると、もはや法定通貨を通して規制することができなくなるのではないかと思います。
【Gensler様】[仮訳]
私は今後も集権化された交換所が主流を占めるものと楽観しています。というのも、クラーケンやコインチェック、コインベースにしても、あれだけの不正アクセスによる流出事故があったにもかかわらず、依然として集権化された交換所が取引の大きなシェアを占めているからです。
それから、分散型の交換所といってもそれぞれの地域に実体のチームをおいているようです。今や、マルタ政府に彼らを規制するようにお願いするというのは難しいと思います(が、拠点によって違うと思います)。
【神田座長】
まだまだご議論はあると思うのですが、予定の時間となりましたので、時間の都合上、ここらあたりとさせていただきたいと思います。
伊藤さん、Genslerさん、大変貴重なお話をいただきまして、誠にありがとうございました。
それでは、続きましてSagar Sarbhaiさんからお話をいただきたいと思います。
Sarbhaiさん、お忙しいところをビデオ会議でご参加いただき、大変ありがとうございます。よろしくお願いします。
【Sarbhai様】[仮訳]
ありがとうございます。皆様、おはようございます。本日は素晴らしい皆様の前でプレゼンできることを光栄に思います。Sagar Sarbhaiと申します。リップルで、アジア太平洋地域及び中東での規制関連の業務を行っております。
本日は3つのテーマでお話をいたします。リップルと会社のビジョンのご紹介、私たちの主力製品の簡単なご説明、さらには仮想通貨の国際的な規制状況にも光を当てたいと思います。このうち多くは既に前のパネルで議論がされましたが、中東及びアジア太平洋における私の経験も踏まえてより深くお話しできればと思います。
それでは、スライドの2ページ目に参ります。リップルは、エンタープライズ・ペイメント・ソフトウェア・カンパニーです。DLTベースのソフトウェアを世界中の銀行及び金融機関に対して提供しております。サンフランシスコ、ニューヨーク、ロンドン、ルクセンブルク、ムンバイ、東京、シンガポール、シドニー、8の地域に大体235人の従業員がおります。彼らの多くは3つのうちいずれかの分野をバックグラウンドに持っています。金融サービス、テクノロジー、そして規制です。私自身リップルに転職する前は銀行に勤めておりました。
さて、この会社のビジョンについて簡単に申し上げますと、internet of valueを創造することです。今日のクロスボーダー決済のインフラは、我々の生きる時代にあわせて設計されてはいません。私が生まれる前の1973年に、テレックスに変わって、現在のSWIFTというインフラがつくられました。現在、私たちは、数秒のうちに、国境を越えて自由に話したり、情報を交換したりすることができるようになりました。宇宙ステーションと地球との間で瞬時にビデオ通話ができるこの時代に、クロスボーダー送金には依然として2、3日を要するのは不可解です。私たちは、グローバル決済についても、やはりリアルタイムで、需要に応じ好きなタイミングで、今のほんの一部のコストで実現されるべきだと考えます。そこで、リップルはinternet of valueを創造することによって、インターネットがコミュニケーションにもたらしたものと同じものをもたらそうとします。つまり、今日、Eメール、WhatsApp、WeChatなどによって瞬時に情報がやりとりできるのと同じように、価値やお金の国境を越えた移動も瞬時に、リアルタイムに、効率的に行えるようにしようとしています。これが会社のビジョンです。
リップルは2012年に創設されました。Andreessen Horowitzなど、伝統的なベンチャーキャピタルを通して、世界中から出資を受けました。2012年中に事業も開始しました。
internet of valueのビジョンを実現するために、クロスボーダー決済に関して2つの主要な目標を定めました。1つは接続性、もう1つは流動性です。クロスボーダー決済に関連するこれらの要素に取り組むため、われわれは2つの異なるソフトウェア製品を作りました。1つは今日すでに始動しており、もう1つのほうは今ベータ段階にあるのですが、これらを組み合わせることによって、internet of valueを創造しようとしております。この2つのソフトウェアにはオープンソースのプロトコルが使われております。
まず接続性についてお話をしたいと思います。その後で流動性の話に移ります。7ページ目にまいります。今日のクロスボーダー決済においては、プロセスが連続的になっています。連続したプロセスの間に仲介業者がいて、一度で1ステップずつ進みます。スライドでは、仕向銀行と被仕向銀行の間に2つの仲介業者が関係しており、全体で3ステップになっています。こうした連続性のあるプロセスは、決済における不確実性を生み出します。まず、第1に、仕向銀行は、自らが送金した決済のステータスを見ることができず、また(こうした)中継プロセスは(送金に)大きな遅れを生じさせうるものです。さらに相手側のリスクと不確実性もあります。不都合が生じれば、突合が極めて難しくなる、トラッキングも極めて難しくなります。最後に、連続したプロセスのうち初期の段階では、仕向銀行は、仲介銀行によって課されるコスト等を知ることができません。
現在、これは、クロスボーダーにおいてマクロ経済学的な意味を持っています。例えば、海外で仕事をしている人が自国に送金をしたいという場合、実際に自分の家にどのくらいの金額が届くのか分かりません。仮に、小さな企業のオーナーであって、別の国に所在するベンダーに送金するという場合であっても、ベンダーに実際どのくらいの金額が届くのかわかりません。こうした問題にはマクロ経済的な意味合いがあるので、テクノロジーを用いて、この問題の解決を図るべきだと考えたわけです。
8ページ目においては、リップルが会社として、どのように技術を用いてこの問題を解決しようとしているかを説明しています。
ここでは、先ほどの連続的なプロセスに代わるものとして、それと同等の、同期化されたプロセスを使おうとしています。xCurrentというソフトウェアを開発、銀行にそのライセンスを供与し、今日では世界で100行以上の銀行がこのソフトウェアを使っています。
このソフトウェアは、インターレジャープロトコルと呼ばれるプロトコルを使います。デビット、クレジット、両方の銀行で即時にリアルタイムで同期をとっています。2方向のメッセージングエレメントを組み合わせます。先ほどのSWIFTの世界のようにメッセージが1方向に交換されるのではなく、2方向でメッセージがやりとりされます。2拠点から編集できるグーグルドキュメントのようなものを想像してください。ソフトウェアでも同じことが起こっています。
それから、私たちはリアルタイムのセトルメントサービスも提供しています。私達が開発したインターレジャープロトコルには、クレジット、デビットを、仕向銀行と被仕向銀行の両方で同期するという能力があります。これによって銀行2行の間でリアルタイムのセトルメントが行えます。それに際して、ILPと呼ばれるインターレジャープロトコルは、DLTの要素を使っています。これは、古典的なブロックチェーン技術ではありません。共有台帳も、プライベートブロックチェーンやパブリックブロックチェーンの概念は存在しないのです。これは、クレジット、デビットを同期させる、中立のプロトコルです。
ブロックチェーンあるいはDLTという概念を使うに際しては、ちょっとした混乱が存在します。明確化させる必要があるのは、これは、従来のブロックチェーンではないということです。最初は、実際にパブリックブロックチェーンを使うことから始めたのですが、世界中の銀行や中央銀行とやりとりすること2年、不変性などのブロックチェーンの特性と、暗号化技術は非常に有益であるものの、プライバシーや拡張性の限界があるということに気付きました。そこでILPと呼ばれる、新しいプロトコルをつくったのです。これが、今日銀行で使われているxCurrentというソフトウェアの核となっています。
この取引、あるいはこのソフトウェアにおいては、デジタル資産が使われることはございません。法定通貨間の送金のみが行われるということです。これには多くの利点があります。スピード、透明性、確実性がこのソフトウェアにおける主要な利点であり、世界の銀行もこうした利点に気付き始めています。そして、既に100行以上の銀行が実際にネットワーク上で取引を行っているのです。
9ページに移ります。この表でわかるように、我々が作り上げたのは、本質的には、全ての銀行がお互いに繋がっており、取引を行っている2行だけが、何が起きているのかを見ることができる、銀行間のP2Pネットワークです。他の銀行は、2行間で行われている取引を見ることができません。また技術面のみならず、新しいガバナンスの枠組みをもつくり出しました。世界の6行と一緒に、全てのメンバーが拘束されるルールブックをつくりました。ここには、基本的には、調整、紛争解決、メッセージフォーマットなどについて定められています。全てのメンバー銀行に受け入れてもらっています。いわゆる分散化された世界には、ガバナンスの枠組みという概念がないので、新しいルールブックを作成するに至りました。分散型の世界で機能するということで非常に独特です。
以上が、接続性に関し我々が取り組んできたことです。ここでの重要なポイントは、これは、DLTに基づいたソフトウェアであり、(リップルは、)世界中の銀行にライセンスを与えているものの、デジタル資産は全く取り扱っていないということです。法定通貨のみを取り扱っています。このモデルとソフトウェアは、銀行間で資金の事前積立がなされているということが前提になっています。ですから、銀行は、お互いにノストロ・アカウント、ボストロ・アカウントという形で、もしくはコルレス銀行を通じて、資金を保有していることになります。これが、このソフトウェアを動かすにあたっての前提になります。
続きまして、我々のビジョンの2つ目の側面である、流動性の部分についてお話をさせていただきます。先ほど申し上げたように、銀行が相互に口座を保有しています。これは少しばかりコストが高くなります。口座を開設し維持するコスト、コンプライアンスのコスト、そして流動性が低いことによるコストといった、口座保有に付随するコストが発生するからです。
12ページをご覧ください。国際的に、5兆ドルぐらいの、流動性が低いことによるコストが存在します。これは基本的に、ノストロ・アカウント、ボストロ・アカウント、それぞれにおいて保有されています。この問題をより重大にしているのは、現在バーゼル3の環境下では、資本コストがそれほど大きくないため、大きな銀行、特にヨーロッパの大銀行において、こういったコルレス銀行の業務を続けるのが難しくなっているということです。価値が低く、流動性の低いコリドーは、オペレーティング費用がより高額になります。ですから、特に流動性の低いコリドーにおいては、デジタル資産が、ノストロ・アカウント、ボストロ・アカウントに代わって用いられているわけです。ロンドンからニューヨークにお金を送るのであれば、流動性の高いコリドーですので、あまり問題になりません。しかし、カンボジアからベネズエラに送るとなると問題になります。多くのホップ数や資金関係が必要とされるからです。ここに、デジタル資産が、リアルタイムで、非常に安価に、より効率的に、流動性を供給するために使うことができると考えております。以上が、XRPを使って実現しようとしていることです。私たちは、XRPが、流動性の問題に役立つ、最も早く効率的なデジタル資産だと信じています。
15ページに移ります。簡単に製品化への経緯をお話ししたいと思います。2016年にこのコンセプトを思い付きまして、世界中の、それぞれノストロ/ボストロ・アカウント保有の関係にない12の銀行同士で試験を実施しました。この試験は、大成功したものの、参加した銀行からはいくつかの懸念点が挙げられ、それらは基本的には3つの主要問題に集約できるものでした。1つ目は、ヘッジングのメカニズムが欠如していること。2つ目は、前のパネルでも議論がありましたが、カストディ、それから、規制の明瞭性の問題。しかし、銀行が挙げた最も重要な問題は、3つ目、ボラティリティに関する問題でした。銀行としては、ボラティリティが高すぎるので、デジタル資産を帳簿に載せたくないわけです。
なので、我々はもう一回プロダクトをつくり直して、現在xRapidと呼ばれている新しい製品の発案をしました。xRapidを使うにあたって、銀行や金融機関は、帳簿上、XRPやデジタル資産を保有する必要はなく、現地の交換所を利用して、リアルタイムで流動性が供給できるわけです。これが、我々がこれまでに取り組んできたことであり、2018年には、世界中の6か7の決済プロバイダーと一緒に、実験を行っています。その中には、MoneyGram、Mercury FX、Western Unionを含みます。
このモデルがどう機能するかについて簡単に説明します。メキシコからフィリピンにお金を送る例を挙げさせてください。メキシコからフィリピンに送金したいというときは、まずメキシコの銀行に行き、1,000メキシコペソをフィリピンに送るよう依頼します。メキシコの銀行は、メキシコの交換所に口座があって、その交換所でメキシコペソをXRPに替えます。これは非常に迅速に、リアルタイムで行われます。そして、そのXRPが、XRPの台帳上でメキシコの交換所からフィリピンの交換所に同時に送られます。その後、別の台帳上でXRPをフィリピンのペソに交換します。全てのプロセスが2、3秒から2分で終えられます。非常に速く、非常に安価なわけです。なぜならば、全ての取引が高速で行われる上、価格が動いたとしても反映までに2秒あるいは1分ほどしかかからないわけですから、インパクトが抑えられることになり、ボラティリティリスクが低いといえるからです。今後マーケットが安定していってほしいと望んでいますが、それには数年はかかると思います。ですから、まずは非常に少額の、個人の送金のようなもので始めて、市場が成熟し、価格が安定してきたら、例えば法人のユースケースも考えようかと思っています。以上が、私たちが今、xRapidという新しい製品を使って実現しようとしていることです。私たちは、XRPはこういった国際送金に非常に向いているデジタル資産であると信じています。
次に18ページです。何故XRPを使うのか、他のデジタル資産を使えばいいではないかと聞かれるのですが、答えはシンプルです。XRPは、特に流動性を提供する道具として使うとき、クロスボーダー決済にとって固有の3つの特徴を持っています。1つはコストです。2つ目が処理能力、3つ目がスピードです。現在世に出ているデジタル資産の中で、XRPに勝るものはありません。それはXRPの台帳に使用されているメカニズムのおかげです。XRPの台帳は、ビットコインと異なり、プルーフ・オブ・ワークの概念を使用せず、コンセンサスメカニズムと呼ばれるメカニズムを使っているので、(送金に関して)極めて速く、極めて効率的で、さらに重要なことにエネルギー効率が非常に良くなっています。それ故に、XRPはクロスボーダー決済にとって、最良のデジタル資産だと考えています。xRapidは、流動性の問題を解決するために、XRPを使っています。
以上が基本的に、弊社のビジョンとなります。要約しますと、2つの基本的要素、接続性と流動性があります。接続性においては、xCurrentとよばれるソフトウェアを使用しております。それは、インターレジャープロトコルと呼ばれる中立的なプロトコルを通じてDLTの要素を使ったものです。メッセージングと、支払いソフトウェアという形で銀行に使っていただいています。リップルは銀行に対してライセンスを供与しておりまして、今日では世界中の銀行がこのソフトウェアを使っています。もう1つの製品がxRapidで、これはXRPの台帳にネイティブな、XRPとよばれるデジタル資産を使用して流動性の問題を解決しようとするものです。
世界中で進展している規制の問題について話をします。いくつかの点については前のプレゼンテーションで詳細にカバーされましたので、私はアジア太平洋・中東での経験に基づいてニュアンスだけお話ししたいと思います。しかしその前に、XRPと、証券とされている(XRP以外の)デジタル資産に関する議論についてお話しさせていただきたいと思います。
まず明確にさせていただきたいのは、アメリカの証券取引委員会はこの点を既に調査しているところであり、最終的に判断を下すことができるのはアメリカの証券取引委員会だけであるということです。昨日もそうでしたが、イーサリアムあるいはそれ以外のデジタル資産が有価証券として分類されるのかという議論がありましたが、結局イーサは有価証券ではないという発表がありました。ですので、この件についてあれこれ推測するのは止めて、証券取引委員会からのガイダンスが出て来るのを待ち、ガイダンスが言っていることを受け入れるという姿勢でいたいと思います。
また、なぜ私たちが、XRPが有価証券ではないと考えているのかその理由をお話ししいと思います。第1に、XRPを保有してもリップルに対する所有権は生まれません。これは非常に明確です。リップルはXRPを保有しているものに何らの配当金を支払いません。それから、Garyさんがおっしゃったように、XRPの台帳はリップルとは独立して存在しています。オープンソースの分散化技術です。リップルは会社として特定のクロスボーダーの問題のためにXRPを使用している一方で、他のベンチャーキャピタルが自由に、彼らのユースケースに応じて使えるようなオープンソースのテクノロジーであるということです。オープンソースですから、リップルは会社としてコントロールできません。XRPはそういう意味では、どのような交換所にも上場することができ、起業家の望むものに基づいて使用することができます。
リップルはXRPを法人の決済向けデジタル資産としてのみ用いています。XRPは、その内在的な特徴ゆえに、クロスボーダー決済の分野に特化した実用性があります。また、私たちは、伝統的なベンチャーキャピタルを通じて、資金を調達したということを明確に述べさせていただきます。ICOという言葉は、XRPあるいはリップルが登場したときには存在すらしていなかったので、ICOという資金調達手法に頼っていません。XRPは2、3人の開発者が発明したもので、彼らはそれをリップルに譲渡してくれました。プルーフ・オブ・ワークというメカニズムを通じて報酬を与えるよりも、XRPを企業に提供して、その企業がそれをデジタル資産として問題解決に活かしてくれると思ったからです。
ほとんどの人が気付いていませんが、リップルは、実は規制の適用を受け、それを遵守して、運営しております。ビットライセンスを保有していますし、アメリカのFinCENの登録も受けた数少ない企業です。ですから、規制を遵守してきましたし、これからも遵守し続けます。だからこそ、私のような規制当局で仕事をしたことのある人間を雇っているのです。世界中の中央銀行、あるいは規制当局とコンタクトをとって、現状を把握し続けるとともに、リップル内だけではなく、産業界全体、あるいはこの市場において、事実を示し、啓蒙活動をしています。
さて、仮想通貨やデジタル資産に関する規制の話に移ります。グローバルにおいて、何が起きており、私達が何を見ているかについてお話ししたいと思います。まず、私達は、世界的にも、日本の金融庁が仮想通貨に関する規制に関する議論をリードしていることを賞賛したいと思います。最近では、多くのアジア太平洋地域が日本の後を追っていて、ライセンス制の交換所という考え方が出てきています。最近タイは新たな法律を策定しましたし、フィリピンも昨年仮想通貨交換所のライセンス制を発案しました。そしてより最近、先月には、アブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)も仮想通貨交換所を規制する枠組みを策定しました。
枠組みをより厳しく、より強健なものとする余地は残っていますし、そうした試みは進行中であると信じています。先ほどのお話の中でもありましたが、今、グローバルに注目されているのは、テロ活動や不正活動への資金調達対策ですが、議論の中心が、テクノロジーのガバナンス、ウォレットの管理、カストディアンの問題にシフトしてきているというのは朗報だと思うのです。グローバルに見て、規制当局の多くが本人確認、マネーロンダリング対策だけではなく他の論点に注意を向け始めているのです。
G20レベルでは、FSB、IMF、IOSCOといった国際機関が、イノベーションを締め付けないようにしつつも、これらの市場をどのように規制するのかということについて議論をしています。私達は、今年末までに、G20が、暗号対暗号、暗号対法定通貨の交換所に関するグローバルな枠組みあるいはガイドラインを考え出すのではないかと推測しています。そうすると、テクノロジーに対するガバナンス、ウォレットの管理、カストディアンの管理をどうしていくか、考えていく必要があると思います。暗号通貨に関しては、その性質故に、グローバルな枠組みを考え出すことが重要ですので、私自身は、今年のG20のサミットが終わるまでには、何らかの合意に達するだろう、FSB、IOSCOのようなグローバルな組織の協力の下で、彼らが何らかの枠組みを考え出すだろうと考えています。私の経験から申しあげますと、それは、2009年のピッツバーグサミット後、OTCデリバティブにおけるCCPクリアリングに係るグローバルな枠組みが出たことと非常に似通っていると思います。全ての国がG20レベルで協力し、それから各国においてそれぞれのCCPクリアリングを規制する法律が施行されたという流れがありましたので、同じようなことが起こるのではないかと思っております。これと同じことが起こるのであれば、業界にとっては素晴らしいことだと思います。しかし、既に議論しました通り、税制の問題、分散型の取引所の問題などが存在しているためより複雑なことになっています。重要なのは、世界中の規制当局や中央銀行が、まず第一歩を踏み出すことです。もちろん、先を行く日本を追うかたちです。日本はそうした枠組みを考え出した最初の地域のうちの一つでした。しかし現在では、多くの規制当局・中央銀行が、日本を追って、同じような枠組みを考え出すようになっています。
最後になりますが、規制関係の明確化が、金融業界からの(暗号資産市場への)参入を増やすことにつながると思いますし、それによって市場のボラティリティが減少し、より多くの企業がXRPのようなデジタル資産を使用するようになり、デジタル資産の魅力を感じられるようになると思います。規制がさらに明確化されることになれば、より多くの企業によるユースケースが生まれてくるだろうと思いますし、それがデジタル資産の進化における転換になると考えます。
イギリスのFCAやIMFなどが最近言ったことを引用しておりますが、先ほどのプレゼンテーションであったことと同じようなことを言っております。以上です。ありがとうございました。
【神田座長】
Sarbhai様、どうも大変ありがとうございました。
それではメンバーの皆様方からご質問をお出しいただければありがたく存じます。ご発言は日本語で結構です。時間の都合上、Sarbhaiさんとのディスカッションは11時5分を目途とさせていただきたいと思います。
いかがでしょうか。岩下さん、どうぞ。
【岩下メンバー】
すみません、クイックにご質問させていただきます。既に様々な金融機関がリップルのネットワークを利用した国際的な通信を可能にしているということは、いろいろな報道でも目にしております。事実なのだと思います。
かたがた、XRPを中に置いた決済のシステムを本当につくる必要があるのだろうかということについては、いろいろな議論があると思います。例えばXRP自身を、もはやリップル社はコントロールできないというお話がありましたが、一方で、例えばXRPを毎月、何XRPずつ市場に出していくかということについては、既に議決があって、XRP社のほうでコントロールして発行していくことができると報じられています。
そうなっていくと、XRPの唯一の供給者として、XRPの相場を見ながら様々なコントロールができてしまうという意味で、XRPという資産が完全な、SDRのような公共財に当たるようなものとは必ずしも思えないわけです。
そうだとすると、中央にXRPを据えて国際的な決済をするということに、他の各国のエンティティはそれを賛成するのでしょうか。あるいは、XRP自体が大変大きな値動きをするわけですから、それがむしろ国際的な決済のノイズあるいはリスクを起こしてしまうということの可能性もあるかと思います。
例えば、こうした技術を使いながら、中央に例えばフィアットなカレンシーを置いて、それをベースに取引をしていくという方法も当然あり得るのだと思いますが、XRPを中心に置くということを推進されている理由を教えてください。
【Sarbhai様】[仮訳]
承知しました。まず最初の質問についてですが、リップルネットを使っている銀行は、xCurrentという、通信に加えて、ILPを通じたセトルメントをも提供するコネクティビティソフトウェアを使っているわけです。これは何らのデジタル資産も利用しません。このことは非常に明白です。全ての、100を超える銀行が使っており、ますます牽引力が増しています。ネットワークの効果を目の当たりにし、ほぼ毎週新しい銀行がネットワークに参加いただいています。
既に申し上げたように、このモデルは、仕向銀行・被仕向銀行間の事前積立の関係が前提になっています。非常に流動性の高いコリドー、例えばロンドンなどはいいのですが、流動性の低い、カンボジアとベネズエラ、タイとミャンマーのようなコリドーに関しては、クロスボーダー決済の目的に特化して作られたXRPのようなデジタル資産を使って問題を解決します。私たちはXRPを流動性のツールとして使おうとしているのであって、XRPを世界基準の通貨にしようとは思っていません。私たちはXRPを世界中の法定通貨を繋ぐためのデジタル資産と考えているのであり、法定通貨の座を奪おうとは思っていません。法定通貨間を結ぶメカニズムを提供しているだけなのです。私たちは、流動性の低いコリドーにおいて、デジタル通貨が、国境を越えて法定通貨を結ぶにあたり、早くて、効率的で安いと思っているのです。
付け加えますと、SDRになろうなんて全く思っていません。私たちは流動性の低いところで、でも銀行や金融機関から需要があるというところから始めようと思っています。彼らは、流動性が低いところですと、フロートコストや、ノストロ・アカウント、ボストロ・アカウントを維持するコストが高く、時間もかかるため、そうしたところでの送金については問題があると認識しています。このモデルにおいては、ベネズエラからカンボジアにお金を送る際の全ての取引を2秒から1分ほどで終える可能性があるわけです。銀行と決済プロバイダーはそこにメリットを見出していて、決済プロバイダーが、まず最初にこれをユースケースとして使い始めました。そして、規制関係がもっと明確になれば、銀行も流動性の低いルートにおいてのみ、そのモデルを使い始めるでしょう。
【神田座長】
よろしゅうございますでしょうか。どうもありがとうございました。
それでは他にいかがでしょうか。
【井上メンバー】
どうもありがとうございました。私自身、ご説明がどこまで分かっているのか自信がないのですが、XRPの使われ方として、通貨同士で交換するのだというお話でしたが、事実の問題として、XRPが他の仮想通貨と交換されたり、あるいは投資のような意味で、ポジションとして持たれたりという使われ方は、どのぐらいしているものなのでしょうか。
【Sarbhai様】[仮訳]
分かりました。1つ明確にしておく必要があるのは、リップルは、アメリカのFinCENにおいて、MSBとして登録されており、XRPを個人投資家に売ることはできないということになっております。機関投資家にしかお売りすることはできず、そのほとんどがマーケットメイカーです。ほとんどのデジタル資産に関して、投機的な部分がございます。しかし、市場が進化するにつれて、投機の比率が下がり、機関投資家や起業家が特定の利用目的で使うことが増えてくるだろうと思っています。
お手元のプリントアウトされた16枚目のスライドに戻りますが、このモデルがどのように機能するかということを再度申し上げます、基本的にはメキシコとフィリピンにそれぞれ規制を受けた交換所が存在すると考えてください。こうした交換所は規制されるものと仮定します。私たちはこうした交換所に何らかの枠組みが存在する地域のみを取り扱っています。そしてこのモデルにおいて、リップルという会社はエンドユーザーに関わることはありません。リップルは厳格な企業向けのソフトウェア会社であり、銀行に対してソフトウェアのライセンスを供与するというのがコアビジネスです。この場合でも、リップルのやることは、ここに書かれている2行に対してxRapidという製品のライセンスを供与するのみです。このソフトウェアが交換所と銀行を繋いでいるだけです。私がエンドユーザーとして送金をしたい場合、メキシコにある銀行、もしくは、決済プロバイダーのもとに行きます。メキシコの銀行、決済プロバイダーは帳簿にXRPを記載する必要はありません。すなわち、デジタル資産を持つ必要はないのです。では何をするかというと、規制対象となっている交換所に行きます。銀行は交換所に口座を持っているので、この交換所で、メキシコペソがXRPに交換されます。これによってフィリピンの交換所と繋がり、フィリピンの交換所とXRP台帳を通してリアルタイムで交換するわけです。次に、今度はフィリピンの交換所が、このXRPをフィリピンペソに変換して、フィリピンの銀行からエンドユーザーにお金が渡るということです。ですから、現在このメキシコとフィリピンの銀行は、どちらも帳簿上XRPを持っていません。交換所を使い、その交換を行うのにXRPをリアルタイムで使っているということです。ですから私達はXRPを個人の投資家に売りませんし、投資商品として売ることもないのです。
XRPをFinCENに登録されている、リップルが持つ子会社に送金し、リップルは本当に機関投資家にのみお売りしています。そのほとんどはマーケットメイカーです。今現在、彼らは様々なユースケースにXRPを利用することができ、XRPを用いた製品を作ることができ、交換所にXRPを上場することができます。ここでの交換所の主要な役割は、XRPから法定通貨、法定通貨からXRPへの変換にまつわる流動性を供給することです。繰り返しますが、XRPは投機対象や投資スキームにすることを意図していません。私たちの目的は非常に単純です。銀行や決済プロバイダーに帳簿にXRPを記載することなく、流動性供給の道具として使っていただくことです。これでお答えになりましたでしょうか。
【神田座長】
他にいかがでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。
それではSarbhaiさん、今日は大変貴重なお話をたくさんいただきましてありがとうございました。
それでは、今日はまだ若干時間がございまして、11時半までとさせていただきたいと思いますので、冒頭申し上げましたように、皆様方から今日のヒアリングというか、先ほどいただいた3名の方からのお話を踏まえて、ご意見その他ご発言がございましたらご自由にお出しいただければと思います。
いつものようにどなたからでも結構でございますので、お願いいたします。いかがでしょうか。
【岩下メンバー】
何度も申しわけございません。今の最後のリップルの議論については、私は彼らとここで論争しても、実りが多いとは思わなかったのであまりしなかったのですが、結局、リップルが――リップルという言葉はよくないですね、XRPがマーケットで割と主要な仮想通貨として既に売買されているということが、多分、何となくこの説明の矛盾点になっているような気がしました。
歴史的に見ますと、たしかリップルという会社をつくった創業者が何人かいて、それらの人たちがXRPをつくったわけですが、たしか一部の創業者が分離してしまったんですね。それで、メインのリップル社とは別に独立してしまった人たちが、自分が持って出たXRPをマーケットに放出したと。結果として、本来エンドユーザーに持たせるつもりはなかったというのは本当だと思うのですが、結果として持ってしまったわけです。そうするともう、ものすごい価格がついてしまった。
今現在は、リップル社がXRPをどれだけ発行するかというのはリップル社の定款で決めています。よく、ビットコインが2,100万BTC以上発行されないというようなことが価値の源泉だと言われますが、それに該当するような話がリップル社の定款なわけです。定款だから変えられると私は思うのですが。
いずれにしろ、そこに一応価値の源泉があって、かつ、XRPをリップル社が発行するのが、月に何リップルずつこれから発行してよろしいということを、たしか数カ月前に決めて、合意していたと思うので、そうすると、今の非常にXRPの値段が上がったタイミングで、それについてはマネタイズするということも、一方でリップル社のビジネスとして現に存在しているわけで、それと、本来は金融機関しか持たないはずの、流動性のための特殊なデジタルアセットとして、本来は使いたかったのだという話は、2つが混じってしまっているので、ちょっと分かりにくくなっているのではないかと私は考えております。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
他にいかがでしょうか。どうぞ、坂メンバー、お願いします。
【坂メンバー】
ありがとうございました。非常に難しい問題に、我々は向かっているのだなという感想を持ちました。
それで、少し課題の整理が必要かなと思いましたのは、やはり使われ方といいますか、使われる場面がいろいろ違うのだろうと思います。決済あるいは送金の手段として行われる場合と、投機の対象となる場合と、資金を流す、ICOのような形で行われる場合というのはやはり違うという感想を、持ちました。
それから、今日の議論というのは、特に前半でお話のあったところは、規制の対象をどう捉えるかというか、規制の実効をどう図るかという観点からのご指摘が多かったかと思います。これについては、技術的なところも含めて検討していかなければならないなとは思うのですが、規制の内容という点でいいますと、やはりマネロン等の対策も重要ですが、投資家保護といいますか、投資者の保護という観点からどういうことができるのかについても、もう少し検討していく必要があるのではないかという感想を持ちました。
特にICO等については、資金が流れていった先できちんと事業が行われていないという件数がかなりあるということが今日も報告をされておりますが、それに対する対応が、技術的な対応で可能なのか、あるいはどういう規制的な対応が必要なのかということについては、引き続き検討が必要と思います。
いずれにしましても、今の点とも関係しますが、技術的な対応がどの部分で可能で、どの部分でなかなか限界があるのかということについて、少し整理が必要かと思いました。
雑駁な感想で申しわけありません。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
他にいかがでしょうか。どうぞ、楠さん。
【楠メンバー】
最後、MITのときに質問させていただいた件で、若干趣旨といいますか、あまり伝わっていなかったなというもどかしさがあったのですが、特にマイニングの責任の話を何でさせていただいたかといいますと、実は5月の半ばに、相次いでモナコインやビットコインゴールドというような仮想通貨で、大規模な二重払い攻撃の事故がありました。モナコインがたしか1,000万円ぐらいで、ビットコインゴールドは20億ぐらいの被害がありまして、この時期にこういったものが増えた背景というのは、1つはナイスハッシュというマイニングプールが関与していると言われています。
これはどういうものかというと、ハッシュパワーそのものをオークションで売買をするという仕組みです。そうすると、市場で流動しているマイニングパワーというものを、例えばそういったブロックチェーンを書きかえるという目的のために短期間で非常に買うことができる。恐らく、ナイスハッシュのマイニングプールに資源を供出している人たちというのは、基本的にはそれでお金を儲けられるということになるわけですが、逆に、仮に二重払い攻撃を目的として、誰かが高い値段でハッシュパワーを買った場合というのは、恐らくその原資の一部というのは、その二重払い攻撃で得られた犯罪収益になるわけですから、本人は多分、何に使われたかはわからないけれど、結果として犯罪に加担をしていて、その分の責任というのは発生するのではないかと思うのです。
そういったことも含めて、マイニングというのは計算処理を通じて収益を得る手段だというふうに、恐らくユーザーには認識されていますが、ブロックチェーンの中でそれ自体というのは本当に情報処理そのものであって、いわば情報処理を行った対価を仮想通貨で受け取っている。じゃあそのときに情報処理の主体というのはマイナーなのか、あるいはフルノードを運営している者になるのだろうか、あるいはそれとも、マイニングプールなりを運営している者になるのだろうか。恐らくそれぞれ別々の責任というのは発生すると思うのですが、意図がわからないからといって法的な責任が免除されるかというと、恐らく議論が必要なのだろうと思いまして、そういった趣旨で、そもそもそういったディスセントラライズされた環境における法的責任というのはどうなるのかというのは、そういう趣旨で質問をさせていただきました。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
他にいかがでしょうか。どうぞ、三宅さん。
【三宅メンバー】
本日はありがとうございました。今回はグローバルな動向に関するご説明をお伺いさせていただきましたが、ICO等も含め、日本に限らず全世界で広く行われているということが確認できました。
したがいまして、今後の対応について考えていく上では、やはり仮想通貨関連の取引が世界的に広がっているということを念頭に置く必要があると思います。こうした観点では、単に日本だけで対策を講じるというのはなかなか難しく、国際協調が必要になるということを改めて強く感じました。
個別の論点で申し上げますと、ICOは喫緊の対応が必要かと思います。特に消費者保護が焦点になると思っていまして、どういったアプローチで対処していくのか、どの程度の厳しい規制を課していくのか、あるいはもう少し柔軟にガイドラインのような形で対応していくのかといったことも含めて、これからはある程度論点を絞った上で、この研究会で検討を行っていく必要があるのではないかというように思いました。
以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
他にいかがでしょうか。どうぞ、岩下さん。
【岩下メンバー】
何度も申しわけありません。1つは、今のICOの点についてですが、最初の伊藤穰一さんとGenslerさんの資料の7ページと8ページにICOの現状が書いてあります。
ベネズエラのペトロをこういう形でICOだというふうに、この動画は私もよくユーチューブで見ておりますが、これを書いているというのはなかなか正直な書き方だなと思うわけですが、その一方で、8ページでございますが、ICOが発行される件数というのが、明らかに減ってきているというご指摘もあったかと思います。
やはり最近では、例えばSECが認める私募形式のICOであって、それなりに名の通った企業が、それなりのきちんとした信頼性のあるバックがあるということを前提にICOを行うぞという形の体をとらなければ、小規模なICO、素人がやるようなICOというのは通らなくなってきているという傾向がどうもあって、それが先ほどのお話の、ICOの50パーセント程度は失敗しているというお話にもつながっているのだと思います。
そういう意味ではICOも徐々に変化してきていて、金額は、テレグラム、ペトロ、EOSを入れると、もう軽く2兆円ぐらいになってしまうので、その意味では非常に大きなインパクトを持ってはいるのですが、一方で、去年の春ぐらいから見られ出した、何も知らない個人がちょっと思いついてホワイトペーパーを書いたら、何か100億円入っちゃったというようなタイプのICOというのは徐々に減ってきているような気がします。その辺の状況の見極めというのも割と大事かと思います。
もう1つ、先ほど楠さんのおっしゃった、51パーセント攻撃と言っておられますが、ブロックチェーンに対する攻撃というのは、これも私見ではありますが、この1カ月の間に非常に急速にふえてきています。最初のモナコインが報じられたのが5月13日だったと思いますが、それからわずか2週間の間に、ビットコインキャッシュ、バージ、ゼンキャッシュ、ライトコインキャッシュという様々な仮想通貨が51パーセント攻撃をやられていて、仰るとおり、ナイスハッシュによる時間貸しのハッシュパワーの力というものがあちこちに利用されるようになった。それはもう今、いろいろな計算をしますと、ナイスハッシュで普通に匿名で、例えばビットコインをマイニングするための0.1ペタハッシュ/hのマイニングパワーを24時間借りて37ドルとか、そのぐらいの相場ですので、誰でも簡単に、かつ支払いもビットコインですから匿名でできる。なので、犯罪者が非常に大量にそういったビットコインのハッシュパワーを手にして攻撃をすると。
実は今、中小の非主流派のコインというのは、ベースになっているハッシュパワーは非常に低いのに、値段が上がってしまっているので、攻撃をするのは安く攻撃できて、リターンは高いので、非常に攻撃しやすい状況になってしまっているということが問題になっていると思うんです。
多分これはグローバルに行われていることですし、そもそもこれ自体は犯罪的行為だと思われますが、何の犯罪なんだかわからないわけですし、仮にブロックチェーンのブロックを51パーセントアタックしたことに対する刑罰を定めたことに万一なったとしても、それをエンフォースすることは絶対に無理なので、いろいろな意味でこれはもう、手の打ちようがない世界になってしまっているのだと思います。
そうなってくると結局、この種のハッシュパワーの低い仮想通貨に高い価格がついてしまっているということ自体が、ある意味で経済的に合理的でない状況だと考えざるを得なくて、昨日から、少なくともこの事件が発覚して2週間ぐらい、仮想通貨全体が大きく下がっていますが、その一方でビットコインのドミナンスは実はむしろ上がっているので、弱小なコインのほうの、相対的に下がっている可能性があります。
ここの調整はこれからもっと働く可能性があって、そういう意味からも、果たしてこういう規制をする議論するときの場で、そういうことまで気にしてあげる必要はないのかもしれませんが、そもそもこれまで理論的なものでしかないと思われていた攻撃が現実に発生してしまって、しかもそれによって、一定の基準から下のものは全部対象になり得るという、割と困った状況が今、生じているということを認識した上で、これからのルールづくりをしていく必要があるのではないかと思います。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
他にございませんでしょうか。
永沢メンバー、どうぞ。
【永沢メンバー】
本日はありがとうございました。私だけかもしれませんが、正直なところ、ついていけなかったというのが正直な感想でございまして、もし可能ならばもう一度、今日のこの録音を聞かせていただきたいと思っております。
リップルについては、今日お話いただいたことと、私の知っているリップルがあまりに違っておりましたが、岩下先生からの先ほどの解説で理解することができました。向こうの方々の常識といいますか、専門家の常識と、私たちがふだんマスコミ等を通じて知っている仮想通貨が随分違うような感じがいたしました。
岩下先生と楠先生に質問ですが、先生方がされた質問に先方が答えていただいていない部分がありましたら、それはどこかをお願いできますでしょうか。
【岩下メンバー】
多分、例えばリップルが、実はリップル社が毎月何XRPずつ発行することをもう議決してしまって、それをマネタイズすることが可能になっているとか、その辺の事実については、一切コメントはなかったと思います。
多分、リップル社のご説明としては、あくまでもXRPがマーケットで仮想通貨として取引されているのは、あれは別のビジネスなのであって、自分たちとはあまり関係ないんだよということを、私もリップルの方とお話しするときは、XRPが値上がりしちゃってむしろ困っているんだみたいな話を仰るのですが、一方で、XRPの大半を持っているのは実はリップル社なので、その値上がりしたリップルというものを多分これからちょっとずつ売っていけば、リップル社は多分世界で最もウェルシーな企業になるのではないかという話があります。リップル社の株を一部持っている日本のSBI社の株が、それが囃されて値上がりしたりしたということもあります。
そういう意味では、その話自体は、当事者としては決して無視できない話なのですが、一方でこういう、きれいなリップル、きれいなXRPをきれいに使うという話からすると、そういうところに使われているということは、できればあまり論じたくないということではないかなと推察したので、そこは大人の判断で突っ込みはしませんでした。
【永沢メンバー】
すみません、前半の方への質問については、先生は2つご質問をいただきましたが、ご回答はどのように評価されていらっしゃいますでしょうか。
【岩下メンバー】
MITの穰一さんとGenslerさんのコメントというか返答は、比較的誠実なものではあったと思うのですが、ただ、これもやはり、現状のいろいろな問題点の部分について、やはり仮想通貨、あるいはブロックチェーンの技術をプロモートして、今後いわゆるブロックチェーン2.0と言われるような世界、仮想通貨ではなくてブロックチェーンの技術を使って、世の中にうまくイノベーションを起こしていくんだという立場からすると、現状、仮想通貨が起こしている問題について、あまりきちんと、問題に取組むことはあまりされたくないのかなと思いました。
例えばカストディアンの部分を、きちんと交換所から機能として取りはずしたほうがいいんじゃないか、今の日本の法律だと、仮想通貨交換業者というので1個のくくりなのですが、その中には株式市場でいえば東京証券取引所みたいな機能もあるし、保管振替機構みたいな機能もあるし、一方で、個々の証券会社のディーリング部門もあるし顧客部門もあるしというので、全部が一個の中に入っているわけです。
普通は、その間には一種の利益相反が起こるわけで、だからそういうことが1つのエンティティの中に入っているということ自体が、やや不思議な現象だと思うのですが、ただ、世界的に見ると、もうそういう形として仮想通貨の取扱事業者というかができてしまっているので、それを外から変えるということはなかなか現実的ではないというふうに考えて、そこの部分についてもスキップされたのかなというふうに、私は感じたところです。
【永沢メンバー】
ありがとうございます。
【神田座長】
よろしゅうございますでしょうか。実は今、皆様方のやりとりをSarbhaiさんが聞いておられて、補足で発言をしたいというふうに言っていただいて、大変ありがたいお申し出なのですが、ちょっといろいろテクニカルな状況がありますので、Sarbhaiさんからの補足のご発言等を、別途皆様方にお伝えするという、つまり、事務局のほうで伺って、それを皆様方にお伝えするということにさせていただければと思います。Sarbhaiさん、どうぞよろしくお願い申し上げます。それで、また必要に応じて議論させていただく場等も検討させていただければ大変光栄です。
私の理解では、楠さんの前のほうの話も、先方からすればそれなりにお答えしているという感じだとは思います。楠さんからすると、やや不満だというか、ややかみ合っていないというところがあるということかもしれませんけれども。
いずれにしましても、永沢先生が仰るように、どこかで、夏の時期でもありますので補習か何かをしないと。ちょっと、どういう形で、今日伺ったお話を私どもで咀嚼できるのかということを事務局とも少しご相談させていただければと思います。また、永沢さんに個別にアドバイスをいただくかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
【永沢メンバー】
よろしくお願いいたします。
【神田座長】
それでは、他にご指摘、ご意見等いかがでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。
それでは、また今後、延長ということも起き得るかとは思いますので、今日はこのあたりとさせていただきたいと思います。
本日いただきましたご説明、ご発言を踏まえ、今後さらに議論を深めていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
最後に事務局から連絡事項等ございましたらお願いいたします。
【廣川信用制度企画室長】
先ほど座長からお話があった夏の補習は、それはまたそれで相談、検討させていただくといたしまして、通常の研究会、次回の研究会の日時につきましては、また皆様のご都合を踏まえさせていただいた上で、改めて後日事務局よりご案内させていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは以上で本日は終了させていただきます。お手元の同時通訳のレシーバーにつきましては、恐縮ですがお席に置いたままお帰りいただければと思います。どうもありがとうございました。
―― 了 ――