「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第6回)議事録
平成30年10月3日(水)
【神田座長】
それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきます。仮想通貨交換業等に関する研究会の第6回目の会合を開催いたします。皆様方にはいつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本日でございますけれども、まだいらっしゃっていない楠メンバー、それから、森下メンバーは、遅れてご出席と伺っております。また、岩下メンバーと永沢メンバーは本日ご欠席と伺っております。
また、今回から、信託協会にオブザーバーとしてご出席いただくことになっておりますけれども、時間の都合がございますので、お手元のメンバー等名簿をもってご紹介にかえさせていただきます。
前回までの研究会でございますけれども、仮想通貨交換業等に関する現行の制度ですとか、これまでの監督上の対応、それから、仮想通貨やICO、イニシャル・コイン・オファリングに関する取引の実態や諸外国の規制の対応の動向、そして、業界による自主規制規則案の準備状況等について、有識者や関係者の方々にご説明をいただいた上で、メンバーの皆様から幅広い観点からご意見をお伺いしてまいりました。
こうした中、先々週でしたか、9月20日だったと思いますけれども、仮想通貨交換業者による顧客資産の流出事案が再び発覚いたしました。いずれにいたしましても、今回、本日からはこれらを踏まえまして、仮想通貨をめぐる諸課題について具体的な制度的対応の方向性を含めて、皆様方に討議、審議をお願いしたいと思います。
そこで本日は、まず事務局からお手元の資料2に沿って、先々週のテックビューロ社による顧客資産の流出事案に関し、これまでの検査及び監督上の対応等についてご説明いただきます。
それに続けて、事務局から討議のたたき台として資料3と資料4に沿って、仮想通貨に係る各種行為と金融規制のあり方、そして、仮想通貨交換業者に係る規制のあり方について説明をいただきます。
その後で、その説明いただきました内容を踏まえて、メンバーの皆様方に討議をお願いしたいと思います。
それでは、まず事務局からの説明をお願いいたします。
【森フィンテック監理官】
それでは、資料2に基づきまして、ご説明申し上げたいと思います。テックビューロ社における仮想通貨外部流出事案ということでございます。
1ページ目をご覧いただきますと、テックビューロ社についてということでございますが、こちらは2014年に設立いたしまして、2017年9月に登録をいたしております。本社は大阪でございます。
2018年2月以降、2度にわたり立入検査を実施いたしました。コインチェックの事案を踏まえたものでございます。また、業務改善命令を2度発出ということで、システムリスク、顧客対応にかかる態勢整備に関するものが3月8日。ガバナンス、法令遵守、利用者保護等にかかる態勢整備に関するものが6月22日にそれぞれ業務改善命令を発出いたしました。
事案の概要でございますが、9月14日の金曜日に外部からの不正アクセスを受け、インターネットに接続した状態で管理していた仮想通貨約70億円が流出したものでございます。うち顧客分は約45億円でございます。
当社の対応でございますが、9月17日月曜日に不正流出を把握し、不正流出した3種類の仮想通貨の入出金を停止。18日火曜日は、不正流出した仮想通貨以外の8種類の仮想通貨の入出金を停止。20日木曜日には、不正流出の事実及び当面の顧客対応等(これは外部から50億円の金融支援を9月末までに受けることを検討する内容の基本契約の締結を含む)について公表いたしております。この「外部」というところは、フィスコ社でございまして、フィスコ仮想通貨取引所という登録業者を傘下に有するJASDAQの上場会社でございます。
現状、10月1日に、当社からは、「同基本契約の締結後は、正式契約締結に向けて協議交渉を進めており、顧客資産の補償に万全を期す方針に変更はなく、具体的な対応の詳細について現在も検討を続けております。内容が確定次第、速やかにご報告いたします」という内容のプレスリリースが出されております。
また、9月28日金曜日には、新規会員の登録受付を一時中止しております。
おめくりいただきまして、2ページ目でございます。金融庁の対応でございますけれども、18日火曜日、金融庁に対する当社の報告後、同日中に報告徴求命令を発出いたしました。20日木曜日には、立入検査に着手いたしまして、現在も実施中でございます。
25日火曜日には、以下の4点について業務改善命令を発出しております。1つが、事実関係及び原因の究明(責任の所在の明確化を含む)、再発防止策の策定・実行。2番目が顧客被害の拡大防止。3番目が、顧客被害に対する対応(具体的な実施方法等の策定)。4番目が、2度の業務改善命令に係る具体的かつ実効的な改善計画の見直し及び実行ということでございます。
また、27日木曜日には、業務改善計画書を受領しておりまして、内容を精査中でございます。
一番最後の矢羽根のところでございますが、立入検査の結果や報告内容等を踏まえ、必要に応じ、さらなる行政対応等を検討してまいりたいと考えております。
3ページ目をご覧いただきますと、こちらは先週金曜日に暗号資産ラウンドテーブルというものを開催いたしております。日本語のところをご覧いただきますと、金融庁は、先週金曜日の9月28日、「暗号資産に関する監督・監視ラウンドテーブル―最近の進展と将来の課題―」と題しまして、東京、金融庁において初めて開催いたしました。本ラウンドテーブルは、国内外の関係者間での暗号資産に関する経験の共有や様々な課題を議論する有益な機会を提供し、参加者間でのさらなる国際協調の強化につなげ得るものになったと考えております。
3番目ですが、議論では、主に、暗号資産に関する技術的な進展と課題、暗号資産取引プラットフォームの監督、国際協調が可能な分野、投資者保護及び市場の公正の主に4つのテーマが扱われました。
参加者からは、金融庁に対して、今回のラウンドテーブル開催への感謝と、本会合の継続的開催に向けた当庁の意向に対する支持が表明されたということでございます。
私のほうからは以上でございます。
【小森市場課長】
続きまして、討議資料と書いてあります資料3、それから、参考資料と書いてあります資料4につきまして、ご説明をいたします。
まず資料3の1ページ目からご覧ください。少し割愛しながらご説明をいたしたいと思います。
まず経緯と状況ということで、マネロン・テロ資金供与対策に関する国際的要請、あるいは国内の交換業者の破綻などを受けて、仮想通貨の支払・決済手段としての性格に着目した上で、仮想通貨交換業者に対して、本人確認義務等の導入、説明義務等の一定の利用者保護の規定の整備が行われております。
その後、交換業者において顧客資産の流出事案が発生。検査によって、交換業者の内部管理態勢の不備等が把握されたこと。また、仮想通貨の価格が乱高下し、仮想通貨が投機の対象になっているとの指摘があるほか、デリバティブ取引や資金調達等の新たな取引が登場してきているといった経緯を経てきているところでございます。
2ポツでございます。仮想通貨に係る各種行為と金融規制のあり方ということになりまして、こちらにつきましては、横紙の参考資料の1ページをまずご覧いただければと思います。こちらにございますように、新しい取引などの登場によって、図もあわせてご覧いただければと思いますけれども、仮想通貨は、支払・決済手段としての性格にとどまらず、投資・資金調達手段等、さまざまな性格を有し得るものになっていると考えられるところでございます。
こうした中、検討の視点としては、こうした複合的な性格を有する仮想通貨に係る各種行為について、金融規制の要否を検討していくに当たり、以下の視点が重要と考えられるが、どうか、ということでございまして、仮想通貨を用いた個々の行為が、金融の機能を有するかどうか。有する場合、仮想通貨の将来の可能性を含む社会的意義や投機の助長等の害悪の有無を踏まえて、金融規制の導入が期待されるかどうか。
金融規制を導入する場合には、そのあり方を具体的に検討していく際、以下の点を考慮して、適切な規制内容を検討していく必要があると考えられるが、そのほか、特に考慮すべき事項はあるかということで、利用者保護の必要性の程度、金融システム全体に与える影響等を踏まえた仮想通貨に係る業務の適正かつ確実な遂行を確保する必要性の程度、といったことが書かれているところでございます。
資料3の縦紙の2ページに移っていただきまして、2ページの上段にある本研究会における議論の進め方というところについてお話しいたします。
本研究会では、仮想通貨をめぐって、足許で顕在化している喫緊の課題である以下の項目を中心に、今後の規制のあり方を検討していく必要があると考えられる。
ア)交換業に係る規制(支払・決済手段、投機対象としての側面)。
イ)仮想通貨を原資産・参照指標とするデリバティブ取引に係る規制(投機・リスクヘッジ手段、投機対象としての側面)。
ウ)ICOに係る規制(投資・資金調達手段、投機対象としての側面)。
本日は、このうち、ア)交換業に係る規制のあり方について討議を行うこととし、その他の項目については後日討議を予定ということでございます。
3ポツの交換業に係る規制のあり方ということで、資金決済法上、以下のような規制が主に課されているということでございます。
サイバーセキュリティ対策等を含めた内部管理体制の整備。利用者への情報提供として、法定通貨ではない旨、価値を保証する者がいない場合にはその旨、価格変動による損失リスク、手数料、分別管理の方法等。最低資本金・純資産に係るルールとして、最低資本金1,000万円以上、純資産が負でないこと。
顧客財産と自己財産の分別管理。預かっている金銭については、自己資金とは別の預貯金口座または金銭信託で管理。仮想通貨については、自己の仮想通貨と明確に区分し、かつ、顧客ごとの数量を直ちに判別できる状態で管理。分別管理監査、財務諸表監査といったことが課されているところでございます。
横紙の2ページ目をご覧いただければと思います。こちらでは、交換業者における業務の実態について整理をいたしております。上の四角でございますように、①交換業者が顧客と相対で仮想通貨の売買・交換を行う業務、②顧客間の売買・交換のマッチングを提供する業務、が存在しており、この①、②をあわせて行う者も存在しているところでございます。
下の図もあわせてご覧いただければと思います。交換業者は、仮想通貨の売買・交換に関し、顧客から金銭・仮想通貨を預かって管理をしており、通常は大半の仮想通貨は秘密鍵をオフラインで管理するコールドウォレットで管理。ただし、一定量の仮想通貨は顧客からの外部ウォレットへの移転指図に迅速に応じるため、秘密鍵をオンラインで管理するホットウォレットで管理しているということでございます。
図の右側のほうに、業者が管理する仮想通貨のウォレットの図が書いてあります。業者が自分で持っている業者資産の管理用のウォレット。それから、顧客資産を混蔵して管理しているウォレットの2種類があり、それぞれにコールドウォレット、ホットウォレットがあるといった形で、図に示しているところでございます。
下にございます分別管理義務等の内容につきましては、先ほど本文の説明で申し上げたところでありますので、割愛させていただきます。
縦の資料の3ページにお戻りいただければと思います。今申し上げましたような交換業者による業務の実態、あるいはこれまでの本研究会における議論を踏まえますと、以下のような項目について検討する必要があると考えられる。
①問題がある仮想通貨の取扱い。②顧客資産の管理・保全の強化。仮想通貨の流出リスクと交換業者の倒産リスク。③投機的取引に伴うリスクの抑制。④取引の透明性確保、利益相反の防止ということでございます。順にご説明いたします。
まず、問題がある仮想通貨の取扱いでございます。仮想通貨にはさまざまな設計・仕様のものが存在し、その中には、移転記録が公開されていない匿名性が高い仮想通貨や移転記録の維持・更新に脆弱性を有する仮想通貨等も存在する。
利用者保護及び交換業の適正かつ確実な遂行を確保する観点から、交換業者に対し、これらに支障を及ぼすおそれがある仮想通貨の取扱いを禁止することも考えられるが、どうか。
一方、仮想通貨の安全性は、そのプロトコルを決定するインナーの議論やマイニングの状況等により変化し得る。また、技術革新により、従来想定されていなかった新たな問題事例が生じる可能性もあると考えられる。加えて、こうした変化は急速に生じてくる可能性がある。こうしたことを踏まえると、問題がある仮想通貨を、あらかじめ法令等で明確に特定することは困難な面もあると考えられるが、どうか。
自主規制との連携等も含め、柔軟かつ機動的な対応を確保することが重要であるが、どのような対応・枠組みが有効と考えられるか。
注1でございますけれども、例えば、交換業協会の自主規制規則案では、問題がある仮想通貨を類型化した上で、以下の内容を規定しているところでございまして、会員による問題がある仮想通貨の取扱いの禁止。会員が新たな仮想通貨を取り扱う場合の協会への事前届出。協会が異議を述べた場合に取扱いが不可となること。協会は、取扱いを認めた仮想通貨の概要説明書を公表する。
注2でございますが、資金決済法上、取扱仮想通貨の変更を含め、登録申請書記載事項の変更は事後届出とされております。一方、例えば、他の法令の中には、登録申請書記載事項のうち重要事項の変更については、監督上、必要に応じて意見交換を行う機会を確保する観点から、事前届出としているものもあるところでございます。
(2)顧客財産の管理・保全の強化(①仮想通貨の流出リスク)でございます。先ほど述べましたように、通常は、受託している仮想通貨の大半をコールドウォレットで管理している。一方、受託仮想通貨のうち日々の流通に要する一定量は、顧客からの指示に迅速に対応するために、一般にセキュリティリスクが高いとされるホットウォレットにおいて管理している場合があるということでございます。
ここで横紙の3ページ目をご覧いただければと思います。仮想通貨の流出リスクについて、これまでの大きな2つの事例と、資金決済法令・ガイドライン、自主規制規則の案の内容についてまとめさせていただいたものでございます。
コインチェックの事例では、仮想通貨、約580億円が流出し、これらについて全てホットウォレットで管理をしていたということでございます。テックビューロで流出した約70億円について、約45億円が顧客から預かったもの。顧客から受託した仮想通貨のうち、ほとんどがホットウォレットで管理されていたといった状況でございます。
資金決済法令あるいはガイドラインで求めている内容につきましては、先ほどの説明とやや重複しますけれども、分別管理とある中で、顧客財産の帳簿上の残高とブロックチェーン上の残高を毎営業日照合すること。また、可能な限り、コールドウォレットで顧客の仮想通貨を管理すること。流出リスク・分別管理の方法に係る顧客の説明を行うことなどを求めているところでございます。
自主規制規則の案におきましては、例えば分別管理業務を担う部門の設置が定められているほか、ホットウォレットで管理する仮想通貨の上限を社内規則で規定し、外部移転の予想数量を著しく上回る数量をオンライン環境で管理しないようにすることとしています。
また、仮想通貨の保管方針の公表として、マルチシグの採用あるいはコールドウォレットの保管比率などの公表を行うことを定めており、また、サイバー攻撃による資産喪失時の対処方針を顧客に説明することなどが記載されているところでございます。
再び縦紙の4ページの下のほうに戻っていただきたいと思います。下から3つ目の丸でございますけれども、このようなリスクに対しましては、法令上のサイバーセキュリティ管理体制の整備義務に則り、交換業者において堅牢なセキュリティ対策を講じることが重要であるが、その他セキュリティ対策の観点から有効な対策があり得るか。
一方で、仮に流出事案が生じた場合の対応があらかじめ明確であることや、賠償原資が確保されていることも重要と考えられるが、どうか。
交換業者に対し、例えば、受託仮想通貨を流出させた場合の賠償方針の策定・公表。ホットウォレットで管理する受託仮想通貨を流出させた場合でも賠償を行い得るような純資産額・安全資産の保持を求めることも考えられるが、これらを含め、どのような方策が有効と考えられるか。
5ページの上の注1でございます。注1では、安全資産に代えて、上記仮想通貨と同種同量の自己保有仮想通貨、厳格な安全管理措置を講じているものを保持していることを認めることも考えられる、と書いてございます。
また、注2では、サイバー保険等がある場合には、上記純資産額、安全資産等を保持する義務を免除・軽減することも考えられる、と注記してあります。
なお、セキュリティの観点から、交換業者から仮想通貨の管理業務を分離させ、専門機関で当該業務を行うべきではないかとの指摘もある。こうした指摘には、以下のような論点があると考えられるが、この点についてどう考えるべきか。
専門機関において集中管理を行う場合、各交換業者において分散管理を行う場合と比して、サイバー攻撃を受けて顧客の仮想通貨を流出させるリスクは低減するのか。また、攻撃先が1機関に集約されることでかえってリスクが増加するのか。
集中管理を行う場合、そのコストや人材は誰が負担するのか。財務基盤や人材の面から信頼に足る専門機関の設置が期待できるかどうか。制度として機能するかどうか。
(2)の②として、交換業者の倒産リスクについて申し上げます。受託仮想通貨についてですが、我が国の金融法制上、顧客から預かった財産の分別管理の方法については、自己の財産と顧客財産を明確に区分して、①信託を用いて保全するもの。②自己または委託先において顧客ごとの財産を直ちに判別できる状態で管理するものに大別されております。
資金決済法では、信託法を含め、仮想通貨の私法上の位置づけが明確でない中、仮想通貨の分別管理方法として②を規定しております。また、先ほど申し上げましたように、監査も課しているところでございます。
なお、金融規制において、②の分別管理方法を同様に採用しているケースとしては、金融商品取引業者における受託有価証券の管理がございます。顧客から有価証券の寄託を受けて、管理する業者において分別管理が適切になされていれば、当該業者が破綻しても顧客は当該業者に寄託した有価証券を取り戻すことができます。
注として、金融商品取引業者は、顧客から寄託を受けた有価証券の管理については②、顧客から消費寄託を受けた金銭の管理については①の方法で分別管理を行う義務が金融商品取引上、課されています。これによりまして、業者が破綻した場合でも顧客財産の倒産隔離が機能するわけでございます。
一方、仮想通貨につきましては、私法上の位置づけが明確ではなく、②の方法で適切に分別管理を行っていた場合でも、上記のような倒産隔離が有効に機能するか定かではない。
こうした中、一般に倒産隔離機能を有する信託を仮想通貨についても義務づけてはどうかとの指摘がある。これに対しては、以下のような論点があると考えられるが、この点についてどう考えるべきか。
ア)仮想通貨の私法上の位置づけが明確ではない中、仮想通貨について、倒産隔離等の観点から信託が有効なものとして機能し得るのか定かでない場合、その中で、信託義務を課すことで問題が生じるおそれはないか。
イ)有効に機能し得るとして、各交換業者が取り扱う全量・全種類の受託仮想通貨について信託義務を課すことが円滑な取引の実行を阻害しないか。
ウ)交換業者が管理する顧客財産が増加する中、これまで仮想通貨の信託の引き受け実績がない信託銀行・信託会社において、財務やセキュリティリスク等に係る管理体制の整備状況に照らし、各交換業者が取り扱う全量・全種類の受託仮想通貨の信託を引き受けることが現実的に可能か。制度として機能しないおそれはないか。
なお、少なくとも、上記ア)に関して、仮想通貨の信託が有効なものとして機能するとの整理がなされた場合には、例えば、交換業者に対して、可能な限り、仮想通貨の信託を行うよう促していくことも考えられるが、この点についてどう考えるべきか。
現実に仮想通貨の信託を行うことができない場合には、顧客が業者の選別を行いやすくするための方策を設けることも考えられるが、どうか。例えば、交換業者に対して、仮想通貨の全部または一部が信託されていない旨の顧客説明や財務書類等の開示を求めることなども考えられるが、これらを含め、どのような方策が有効と考えられるか。
また、信託の方法によらず、そのほか、倒産隔離を効かせる方法や破綻時に顧客が優先的に弁済を受ける権利を定める方法が考えられ得るか。
注でございますが、資金決済法上、仮想通貨の売買等に関して顧客の仮想通貨を管理することは交換業に該当するところでございますが、売買等を伴わない仮想通貨の管理は交換業に該当しないところでございます。当該業務を行う、いわゆる「ウォレット業者」に関する規制の要否については後日、別途討議を予定しております。
受託金銭につきましては、資金決済法上、仮想通貨に信託義務を課さない中で、金銭についてのみ信託を行うこととしても、どこまで利用者保護の実効性があるか疑問であるとの指摘等を踏まえまして、金銭の分別管理方法としては、自己資金とは別の預貯金口座または金銭信託で管理することが規定されております。
一方、足許におきましては、交換業者が管理する受託金銭の額が高額になってきているほか、交換業者による受託金銭の流用事案も発生しております。
上記への対応として、受託金銭の信託を含め、どのような方策が有効と考えられるか。
(3)投機的取引に伴うリスクの抑制。交換業者による積極的な広告等により、仮想通貨の値上がり益を期待した投機的取引が助長されており、また、そうした取引を行う顧客の中には、仮想通貨のリスクについての認識が不十分な者も存在する、との指摘がございます。
顧客によるリスクの誤認や投機的取引の助長を抑止する観点から、交換業者に対し、例えば、以下のような広告・勧誘を行わないことを求めることも考えられるが、これらを含め、どのような方策が有効と考えられるか。
誇大広告、虚偽告知、断定的判断の提供、不招請勧誘。顧客の知識・経験等に照らして不適当と認められる勧誘。投機的取引を助長する広告・勧誘等。
(4)取引の透明性確保、利益相反の防止。一般に仮想通貨は、株式や債券等の金融商品と異なり、本源的な価値を算定しがたい面があると考えられる。また、例えば株式の取引については、企業が円滑に資金調達を行うために必要不可欠な取引であること等を踏まえ、価格の透明性を高めるためのさまざまな枠組みが構築されてきたが、仮想通貨には、こうした枠組みが十分に整備されているわけではないと考えられる。
注でございますが、金融商品取引法では、例えば金融商品取引所への価格情報の外部公表義務、不正行為の禁止等の不公正取引規制等が設けられているところでございます。
こうした中にあっては、顧客が妥当でない価格で仮想通貨の取引を行うこととなるおそれもあるため、株式等の取引との相違、仮想通貨の特性・取引実態等に留意しつつ、取引価格の透明性を高めていくことや交換業者による利益相反行為を防止していくことが重要と考えられるが、どうか。
注でございますが、交換業者が顧客と相対取引をする場合、多くの交換業者においては、取引手数料は無料と表示・広告する一方、自己の利益を上乗せした売買価格を顧客に提示しております。また、その価格は、交換業者の利益の分、「顧客間の取引のマッチングの場」における約定価格とも乖離があるケースが多く、顧客が妥当な価格か判別しにくい状況にあるか。
その場合、例えば、足許の対応として以下のような方策が考えられるが、これらを含め、どのような方策が有効と考えられるか。
交換業者が顧客と相対取引をする際に、以下のような情報のいずれか、または複数を顧客に提供・開示すること。自己が提供する売値と買値、その差。自己が別途提供する「顧客間の取引のマッチングの場」における約定価格や気配値、自己の相対取引価格との差。国内や海外の業者が提供する「取引のマッチングの場」における約定価格や気配値をもとに、認定協会等が算出する基準価格、及び自己の相対取引価格との差。
交換業者が、顧客との相対取引、顧客間の取引のマッチングの場、他の交換業者への取り次ぎなど、顧客に複数の取引チャネルを提供する場合には、利益相反を防止し、かつ、顧客にとって最良の条件で注文を執行するための方針(利益相反防止・最良執行方針)を策定・公表し、それを適正かつ確実に実施するための体制を整備すること。
交換業者が、顧客から「自己が提供する顧客間の取引のマッチングの場」への取引注文を受けた場合に、それをマッチングの場に取り次がず、自己が相手方となって取引を行う場合には、その旨及びそれが最良の条件による執行であった理由を顧客に説明すること。
交換業者が、流動性供給の観点から、「自己が提供する顧客間の取引のマッチングの場」に自らも参加することがある場合には、その旨及び理由を顧客に説明すること。
注でございますが、仮想通貨の価格を不当に変動させるような不正行為に対する規制の要否につきましては、後日討議を予定しております。
(5)その他でございます。仮想通貨の分野では、技術革新によりサービスの内容等が急速に変化する可能性もあり、認定協会の自主規制と法制度の連携が重要であると考えられます。
協会への加入を促すとともに、未加入の交換業者に対しても自主規制に準じた体制整備を求める観点から、どのような方策が考えられるか。例えば、以下のような登録拒否・取消要件を設けることも考えられるが、どうか。
認定協会に加入しない者であって、認定協会の自主規制に準ずる内容の社内規則を作成していない者。当該社内規則を遵守するための体制を整備していない者。
以上でございます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、ただいままでのご説明を踏まえて、メンバーの皆様方からご質問やご意見をお出しいただきたいと思います。
なお、本日、森下メンバーは、少し遅れて来られると伺っているのですけれども、場合によっては、ご出席は難しい可能性もあるということで、ご意見を書面で提出していただいております。メンバーの皆様方のお手元に配付させていただいておりますので、ご参考にしていただければと思います。
それでは、いろいろ問題は多岐にわたっておりますけれども、どの点についてでも、また、どなたからでも結構でございますので、ご質問、ご意見等、ご発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
福田先生、どうぞ。
【福田メンバー】
ありがとうございます。非常に重要な問題を丁寧にまとめていただいて、非常に参考になると思います。
まず利用者保護という観点から一つ、コメントを始めさせていただきたいと思います。もちろん金融の分野というのは利用者保護が非常に大事だということに関しては、幅広い合意があります。ただ、どれぐらい利用者保護が必要かということに関しては、金融商品の種類によって大分違うということもコンセンサスはあって、おそらく一番利用者保護が手厚く必要なのが銀行の預金だということは一つのコンセンサスはあると思います。これはおそらく預金者は日常生活を営む上で預金が理由のいかんにかかわらず、なくなってしまうというのは大きな問題になるし、預金というのは、その仕組み上、取りつけ騒ぎとかシステミック・リスクを起こしやすいということで、そういう意味で利用者保護というのはかなり手厚くなっているということだとは思います。ただ、預金でもペイオフという仕組みがあって、全てが保護する必要があるわけではないという感覚はあるんだと思います。
また、預金ほどじゃないけども、それなりに保護が必要かもしれないというのは、一般の資産です。特に小口の投資家の資産というのは、やはり貯蓄の形成とかそういうことを考えた場合には、やっぱりある程度保護しなければいけないという感覚はあるんだろうとは思います。
そういう観点から考えたときに、仮想通貨の利用者保護というのはものすごく必要性があるのかというと、おそらく優先度は総体的には低い。おそらく仮想通貨を持たなくても、日常生活あるいは自分の人生設計に大きな障害があるというふうにはおそらく考えにくい。そういう観点からは、仮想通貨の利用者保護の優先度というのは、本来は低いという観点は成り立ち得るんじゃないかなとは思います。
ただ、リスクにもいろいろあるという観点はもう一つ必要なんじゃないかというのが私のもう一つの視点です。大きく分けて金融の分野では、例えば信用リスク、これは銀行が貸し出したときにお金が返ってこないというようなものです。それから、市場リスクというのは、価格が大きく変動して、投機的な行為ということで価格が大きく変動するというものだと思います。
仮想通貨に関しては、非常に市場リスクが大きいというのはご指摘のとおりですし、実際それによって大きく儲けた人もいれば、損した人もいるということですけれども、それに対して、ともかく保護しなければいけないという議論はそんなにはないんじゃないかなとは私は思っていて、それは先ほどの利用者保護の優先度という観点の感覚から来ているんじゃないかなとは思います。
ただ、もう一つ、仮想通貨をめぐっての大きなリスクというのは、いわゆるオペレーションリスク、管理リスクと言われているものなんじゃないかなとは思います。これは伝統的な金融システムではないわけではなくて、例えば、金融機関、銀行がシステム障害を起こしてしまうとか、あるいは最近大きな管理リスクになっているのは、リーマンショック前に売り出した金融商品の説明が不十分だったので訴訟になって、それに対して極めて大きな賠償金を払うみたいなものも、金融システムにとってはオペレーションリスクと考えてもいいかもしれません。ただ、これまでは金融機関の経営を大きく揺るがすようなものではなく、総体的に位置づけとしては小さいもので考えられてきたとは思うんです。
ただ、交換業者が現在直面する倒産リスクを考えた場合、ほんとうにハッキングみたいなものによる、ある意味ではオペレーションリスクだと思うんです。それが極めて大きくて、そういうものに対して利用者というのはどこまで理解しているのかという問題というのはやっぱりあるんじゃないかなとは思うんです。そういう意味では、市場リスクに対する利用者保護という観点は、総体的には小さくてもいいかもしれませんけれども、現実に今起こっているオペレーションリスクによる問題というのをどこまで利用者に負担してもらうのかということというのは大きな論点だと思います。
実際そういう意味では、市場リスクに関する投機的な取引の抑制とかという事務局の原案というのは、伝統的な金融のリスク管理の問題等に非常になじむ問題ですし、非常にリーズナブルなものだと思うんです。けれども、今起こっている現実のこのセキュリティに関するリスク、オペレーションリスクみたいなものというのはそういう伝統的な金融のリスク、金融機関のリスク管理のあり方みたいなものになじむのかどうかという問題というのは一つの別の大きな論点になるかなとは思います。
特にこの分野は、極めて大きな技術革新が起こっていると同時に、何が起こるかわからない。そういう意味では、経済学で言うと、確率分布がわかるリスクとの対比で、何が起こるか確率分布すらわからないナイトの不確実性と我々経済学者は呼んでいる問題があります。確率分布がわかっているリスクというのは比較的、そういうのが起こったときにどう対処しましょう、あるいはその確率に応じていろんな負担をしてもらいましょうという観点が可能です。けれども、今起こっているシステム障害、セキュリティに関するリスクというものは、どういう確率でどう起こるのかという確率分布すらわからないという、そういうリスク、あるいは不確実性で、これに対して、今の段階でいい制度設計というのを考えられるというのはなかなか難しいという問題はあります。そういう意味では、仮想通貨に関して、もう一つの大きなリスクの市場リスクに関しては事務局案が非常にリーズナブルなものだとは思うんですけれども。もう一つのオペレーションリスクに関する問題に関してはなかなか難しい問題があって、通常の伝統的な利用者保護、あるいはリスク管理の問題ではなかなか対応が難しいというのがある面はあると思います。答えを私自身も持っているわけではないんですけれども、そういう大きな問題点があるんじゃないかなという印象は持ちました。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、井上メンバー、どうぞ。
【井上メンバー】
ありがとうございます。先ほどはご説明、どうもありがとうございました。一般論として、イノベーションの促進と、利用者あるいは投資者の保護とをバランスしなきゃいけないことについては、ほぼコンセンサスがあるのだろうと思いますけれども、どうバランスをとるのか、あるいはどこから光を当てるかについては、論者によって温度差があると感じておりまして、一般的なスタディあるいは全般的な議論というよりは、金融機能ごとに、ご説明のとおりですけれども、どのようにどの程度規制するのかを具体的に議論する段階に来ているのではないかと思っておりまして、その意味では、この研究会でスタディのステージから具体的な検討のステージに移るのは大変適切であり、そのタイミングだろうと思います。
本日の検討対象である交換業に対する規制のあり方については、現状は、支払手段としての機能に着目した仮想通貨取扱業者規制がありますけれども、今のご説明にもありましたように、匿名性の高い仮想通貨の取扱いなどについては、AML対応などの強化が必要になると思いますし、また、交換業者が単なるブローカーではなくて、販売後に顧客からの仮想通貨を預かるカストディアン的な機能も果たしていることに鑑みますと、コインチェックやテックビューロなどの事案があったことを踏まえて、やはり今、福田先生からもありましたようなオペレーショナルリスク、ハッキングリスクにどう対応するかも強化する必要があって、これらについては、いずれにしても技術的な面、あるいはスピード感が非常に重要な分野ですので、法令で一つ一つ対応していくというよりは、自主規制との連携が必要であって、自主規制団体がその時々の業者が満たすべき一般的なスタンダードを逐次定めていくとか、その対応状況を各社ごとに公表していくとかいった工夫があり得るのではないかと思います。
こういったオペレーションに関するリスクに現在は非常に注目が集まっていて、実際、不祥事案が起こっているわけですけれども、こういったリスクについては、業者の体制レベルを上げていく努力をして、また、100%確実ではない以上は、集中的なリスクが発現しないように分散していくような工夫もまた必要だと思うんですけれども、いずれにしても技術的な側面がかなり強いんだろうと思っております。これに対して、法的枠組みの整備がより強く求められる分野としては、顧客から仮想通貨や金銭を預かっている業者の破綻リスクにどう対応するかという問題があり、これが非常に重要になってくるのではないかと思います。
しばらく前のことになりますけれども、2014年にマウントゴックスという仮想通貨交換業者が破産しまして、東京地裁の判断によれば、その顧客には仮想通貨の取戻権が認められず、単なる債権を持つにすぎないということで、破産手続において債権カットの対象になったわけです。それはもちろん、その事案における判断ではございますけれども、先ほどのご説明にもありましたように、分別管理をしていれば必ず保護されるということではない可能性が十分にあることを踏まえると、その当時に比べて、今は取引量も激増しておりますので、先日、コインチェックの事件が起きたときなどは、一体どうなるんだろうと思って一時ヒヤヒヤしたわけです。たまたま同社は支払い能力が十分にあって、大きな問題に至らなかったわけですけれども、しかし、この業界の収益状況が今後、ずっと同じように好調であるかどうかわかりませんし、そんなに急にポンと何百億円も出せるような会社ばかりではないわけでして、そうすると、第2、第3のマウントゴックス事件が起こったときに、ほんとうに大丈夫なのかについては、法的枠組みを整備する必要性として認識する必要があると思います。
それではどうしたらいいのかということになるわけですけれども、この仮想通貨交換業者に自己資本比率規制なり、兼業禁止なりの銀行並びの規制を導入するのは現実的でないと思いますので、そうすると、倒産しないようにするというよりは、むしろ倒産しても、顧客からの預り資産相当額がきちんとその責任財産から切り離されていることが求められるのではないかと思いまして、そうすると、金商業者に義務づけられている顧客分別金信託が一つのモデルにはなるのかなと考えます。
そのほか、預り金または預り仮想通貨と同等の金銭を供託するとか、仕組みにはいろいろ工夫の余地があると思いますし、供託プラス信託という組み合わせも考えられると思います。いろいろなやり方があると思うのですが、いずれにしても、業態の実情を踏まえて、できる範囲で早期に何らかの措置をとる必要はあろうかと考えます。
現実に可能な対応として、業務上できる範囲で導入するというときに、全額全量が難しいとすれば、一定の範囲ということもあり得るのかもしれませんけれども、何もしないまま、第2、第3のマウントゴックス事案が起こることは避けるべきではないかと思います。
信託についてちょっとだけつけ加えますと、そもそも仮想通貨を信託することができるのかという議論がないわけではないと理解しておりますけれども、ただ、現在までに公表されている研究者の方、あるいは実務家の方のさまざまな論考を見ても、仮想通貨を信託できることについては、ほぼコンセンサスがあると認識しておりまして、仮想通貨の法的性格にはいろいろな見方があるかもしれませんが、信託して責任財産から切り離すことができることについては、ほぼ争いがないと思われる以上、その法的性格が判例なり何なりで極めて明確に確定されない限り信託保全に一歩も踏み出せないというわけではなかろうと思いますので、ぜひ検討を進めるべきだと思っております。
それ以外の広告規制や利益相反防止ルールについては、ご説明に全く同感です。
以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。加藤さん、どうぞ。
【加藤メンバー】
ご説明ありがとうございます。3点ほど意見ないし質問させていただきます。
1点目は、討議資料4ページ目の顧客財産の管理・保全の強化、その1の仮想通貨の流出リスクについてです。この4つ目の白丸のところで、流出事案が生じた場合の対応であるとか、賠償原資の確保の点についてご提案がされています。このような規制を新たに設ける際には、仮想通貨の流出が起きたときに顧客がこうむる損害の中で仮想通貨交換業者が賠償すべきものは何かということを明らかにする必要があると思います。
この問題に対する解答は、顧客と仮想通貨業者の契約によって異なるかもしれませんけれども、コインチェックの事例でも、テックビューロの事例でも、仮想通貨は確かに不正に流出しましたが、流出したことによって、仮想通貨交換業者の仮想通貨を返す義務はなくなってはいないはずです。つまり、交換業者は、顧客から預かった仮想通貨を流出させても、倒産しない限り、仮想通貨を返還する義務を負い続けるということです。仮想通貨を返還する義務を果たすということは、顧客が別の仮想通貨交換業者に開いた口座に移す、もしくは顧客がブロックチェーン上に持っているウォレットに移すといったことを意味します。仮想通貨の返還義務に加えて、コインチェック社やテックビューロ社の事件では、不正流出に対応をするために取引を停止せざるを得なくなって、顧客が仮想通貨の売買や仮想通貨の移転を行うことができなくなったことも問題になったように思います。
このような取引停止に関連して生じる問題にどのように対応すべきかも重要だと思います。この問題に関する賠償ルールを検討する際には、仮想通貨交換業者がハッキングなどによる不正流出の可能性に気づいたら取引を可能な限り早く止めることを促すという視点も重要であると思います。つまり、交換業者が不正流出への対処という合理的な理由に基づき取引停止を行っても、莫大な損害賠償責任を負う可能性があるならば、取引停止を決定することを躊躇するということにもなりかねない気がします。被害の拡大を防止するという観点からは、取引停止を速やかに行うことが望ましいので、こういったことも考えた上で、ルールを考えていく必要があると思います。
2点目は交換業者の倒産リスクについてです。先ほど井上メンバーがおっしゃったとおり、信託できるのであれば、信託させるというのも一つの解なのかもしれません。信託以外の対応策としては、顧客から預かった仮想通貨を補完するウォレットの管理を別法人に移すということも考えられるように思います。別法人といっても、外部の業者に移すのではなくて、子会社に管理させる、つまり、純粋に形式的に法人格を分けるということが考えられるということです。
ウォレットの管理を別法人に分離することは、仮想通貨の管理業務を交換業者から分離するという提案とも関連しています。私が申し上げたいのは、各交換業者が分離した管理業務を共通の管理専門の業者に委託するという形ではなくて、グループ内で法人として分けて、別に管理させる体制をつくらせることも一つの手法としてあるのではないかということです。このような手法は、金融規制の他の分野でも用いられていますし、同じような手法が、仮想通貨交換業者が現在行っているさまざまな業態をより効率的に、かつ、適正に管理監督する手法になり得るのか、検討に値すると思います。
最後に、8ページ目でご提案いただいた取引の透明性確保と利益相反の防止という点についてですが、ご提案の内容に異存はありません。ただ、大変勉強不足なのですけれども、実態がどうなっているかということが非常に重要であると思います。例えば同じ時間帯に取引が成立したにもかかわらず、個々の取引の間にどれくらいの価格差があるのかといった情報や、そのような価格差が生じる理由が明らかになれば、このような規制を設ける必要性はより高まると思います。ご提案いただいた(4)のような規制を導入する際には、可能であれば、実態を自主規制機関の方々のご協力を得ながら明らかにしていくということが望ましいと考えます。
以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。では、坂メンバー、お願いします。
【坂メンバー】
ありがとうございます。各論の議論ということで、それぞれ重要な項目ですので、少しずつ意見を述べさせていただければと思います。
まず最初の金融規制のあり方のところについて、金融の機能という点で指摘がされておりますが、この点については、金銭というよりも資金ないし購買力の融通というように少し広く捉えたほうがいいのではないかなと思います。それを前提として、資金ないし購買力の融通の円滑を図ること。それから、資金等が生産性の高い事業ですとか、あるいは社会的に意義のある事業等、適切な先に流れる。反社会的勢力や悪質な業者等、不適切な先に流れることがないように条件を整備するというのが、金融規制の一つの重要な趣旨ではないかと思います。こういう観点からしますと、例えばホワイトペーパーによって資金を集めるICOなどは、まさに金融機能を有するものと考えられるのではないかと思います。
他方で、仮想通貨自体の売買は、現状、単なる投機という性格が強くて、資金等の融通という機能は必ずしも本来的ではない面があるのかとも思います。しかしながら、少なくとも不適切な投機取引を防ぐということは、不正防止ですとか、あるいは資産運用という金融機能との関係において配慮をすべき点があるのではないかというふうに考えます。
規制検討に当たって考慮すべき事項として指摘がされているところについて、2点述べておきたいんですが、1つは、前回の会議でもご指摘あったかと思うんですけれども、マネーロンダリングですとか、あるいは資産隠し等、仮想通貨の乱用、悪用を防止するという観点も重要な視点として必要かと思います。また、今、一点気になりますのは、登録業者等についてもかなり広い、厳しい行政処分が出されている実態などに鑑みますと、現状は非常に心配される状況にあると思うんですけれども、不適切な取引慣行や業態が広がっていきますと、不適切な事業者や主体に利益が蓄積され、不適切な事業者等を育てていくことになってしまうので、きちんとその防止を図っていくことは重要な視点ではないかと考えます。
それから、次に、2ページ目の交換業に係る規制のあり方についてですけれども、ここの点については、後ろのほうの勧誘規制ともちょっと関係する点について、1点述べておきます。現行法においても仮想通貨のリスクについては、適切な情報提供が求められていていると思いますけれども、提供すべきリスク情報が何であるのかということについては、少し精緻な議論が必要なのではないかと思われます。
先ほど来幾つか出ておりますけれども、例えば仮想通貨のプログラム自体の脆弱性の問題ですとか、あるいは民事執行の可能性がどうかとか、あるいは現時点で判明してないリスクもあり得るということ等々、さまざまなものがあり得るんだろうと思います。情報提供に関しては、リスク分担のあり方という観点からも検討が必要で、この点、基本的に情報提供ないし注意喚起が適切に利用者に対して行われなければ、リスクは利用者には移転しないという考え方を念頭に置く必要があると思います。
例えばブロックチェーンの脆弱性について、これ自体、顧客にリスクを移転できるかどうか議論があり得るかとは思いますけれども、仮に移転できるというふうに考える場合も、少なくとも情報提供ないし注意喚起が適切に行われていなければリスクは移転しないというふうに考えるべきではないかと思います。
また、情報が提供されていても、利用者に移転しないリスク、流出リスク等はこういった一例であろうかと思いますけれども、そうしたものもあり得るということも念頭に置きつつ、どういう情報提供ないし注意喚起が必要かということについては、いま少し検討が必要かと思われます。
それから、3ページ目の問題がある仮想通貨の取扱いですけれども、基本的にこの点については、2つの観点から考えるべきではないかと思っております。一方で、アンチマネーローンダリング等の観点からは、規制の網は広くかけるべきであると思われます。他方で、一般に流通する仮想通貨は、ある程度適切なものに限定すべきであるのではないかと思います。
こういう観点からしますと、仮想通貨の交換業者の取扱いを認める通貨を比較的広く認めながら、他方で、一般の利用者に取引を認める仮想通貨を限定するというアプローチも、一考に値するのではないかと感じております。
いずれにしろ、この分野については、自主規制機関の協力が必要かと思いますけれども、最終的なグリップは、公的機関がきちんと握るべきであると思います。
それから、4ページ目の流出リスクについてですけれども、この点については、先ほど来議論があるところでありますけれども、やはりホットウォレットとコールドウォレットの管理区分を前提として、ホットウォレットの仮想通貨の量を限定するとともに、流出の場合における責任財産を確保するというのが一つの形かと思います。これは前回、自主規制機関のほうから提案があった枠組みと思いますけれども、相応に合理性があると思います。
ただ、この場合には、ホットウォレットに置かれる仮想通貨のリスクの量の適切な把握と、それから、そのリスク量に対応する責任財産の的確な確保、これが図られる必要があるので、そこのところをきちんとやっていくということが重要になると思います。
それから、仮想通貨交換業者の倒産リスクについてですけれども、これは現状の業者さんたちの状況、行政処分等をされている状況等に鑑みますと、少なくとも、FX業者さんたち並みの分別管理は必要なのではないかと思います。仮想通貨の保管については、信託を用いるということが重要かと思いますけれども、基本的に技術的なところの問題はあろうかと思いますが、秘密鍵を信託銀行の管理に委ねるということで、可能になるのではないかと思います。それから、金銭についても現在の状況に鑑みますと、信託管理を入れることは必要と思います。
それから、長くなってすみません。7ページ目の投機取引に伴うリスクの抑制のところですけれども、この点については、二、三申し上げたい点がございます。基本的には投機の対象というふうになっておりますので、金商法に倣った勧誘規制が必要であると考えます。並んでいる項目の中では、不招請勧誘の禁止、これは現状、広く行われている状況にはないとは思いますけれども、そのおそれはあり得ますので、これは必要と思います。
それから、適合性の原則です。これも重要と思いますが、適合性の有無は対象商品の商品性と、利用者の属性、状況、取引目的等の相関関係によるというふうに考えられていると思います。そうしますと、その適用に当たっては、仮想通貨が価格変動のほか、その仕組みにおいてもリスクがあること、特に、現状を把握できない未知のリスクがあるということについては、十分に踏まえる必要があるだろうと思います。
それから、仮想通貨については、インターネットやスマホを通じた取引も多く行われていると思いますが、ビッグデータやAI分析の進展の中で、ターゲティング広告ですとか、ステルスマーケティング等、インターネットにおける勧誘環境というのはかなり変わってきていると思いますので、そうしたことも踏まえた対応が必要かと思います。
それから、8ページの取引の透明性確保、利益相反の防止のところです。不透明な取引状況の中で、不公正な取引が行われて、知識、情報が劣る利用者の犠牲のもとで、専門性を有する業者に不適切な利得が生じるということがあり得るとすれば、これは極めて不公正な資産移転が起こるということになると思いますので、適切に抑止される必要があると思います。かかる観点から、記載されております価格情報の外部公表義務ですとか、あるいは不公正行為の禁止等のこういった規制というのは、前向きに検討されるべきではないかと思います。
それからまた、その後、記載されております利益相反の解決策としての価格情報の開示、利益相反の防止、裁量執行方針等定めることは、その実効が確保されれば有効というふうに思います。利益相反統制の観点からも、交換業者がマッチング取引に参加する場合に、その旨の情報提供を行うことは必要であると思います。また、交換業者の取引の内容の適正をチェックできる仕組み、先ほどもご指摘ありましたが、これが重要と思います。
この観点からは、自主規制団体や監督機関への情報提供も必要ですけれども、利用者のチェックの目を入れるという観点から、情報の公表ですとか、あるいは利用者による情報取得の制度というのも検討すべきかと思います。
一番最後に記載されております登録条件のところですけれども、この点も非常に重要で、業務の適正確保とともに、公正な競争条件の確保の観点から、これはぜひ入れる必要があるのではないかと考えます。
以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、三宅メンバー、神作メンバーの順で、三宅さん、どうぞ。
【三宅メンバー】
本日は的確な論点整理をいただきまして、ありがとうございました。既に他のメンバーから様々なご意見がありましたので、少し重複してしまう部分もあるかもしれませんが、私の意見を述べさせていただければと思います。
まず資料4の1ページに「仮想通貨の利用方法の多様化と金融規制の関係」が整理されており、仮想通貨の性格として、支払・決済、投資、リスクヘッジ、資金調達という4つの機能が右側に示されています。一方で、左側の利用方法についてですが、「投機の対象?」と書かれておりますように、金融としての機能を果たしている部分もなくはないと思いますが、大半は投資ではなく投機の手段として利用されているのが実態ではないかと思います。
また、利用者数ということでも現状では約350万人と預金などと比べると圧倒的に少ないということもございますし、今回ご説明いただきましたテックビューロ社、あるいはコインチェック社等々における流出事案によって、サイバーリスクに加え、交換業者に起因するリスクについても世間に周知されております。さらには、仮想通貨の価格変動リスクについても金融庁さんからの注意喚起等々もあって、一般的にかなり広く認識されているところではないかと思います。
したがいまして、金融規制の要否について検討していく上では、やはり利用実態に基づいた判断が必要になるのではないかと思います。利用実態は先ほど申し上げた通りであり、これを踏まえますと、私としては、利用者保護のかなりの部分については自己責任に帰結するのではないかと考えております。ただ、一方で、最低限の利用者保護は当然必要でしょうから、こうした最低限の利用者保護という、喫緊の課題に対する当面の対応としては、今回お示しいただいたように、既存の資金決済法という枠組みを維持しながら、金融商品取引法等も参考にしつつ、個々の論点でファインチューニングを行っていくというアプローチは現実的ではないかと思います。
それから、自主規制と法制度の連携を強化させるという基本的な方向性についても違和感はございませんが、どこまで監督側で規定し、どこまで自主規制に委ねるのかといった線引きについてはしっかりと議論する必要があると思います。
これに関連して、資料3の最後のページに、その他の論点として認定協会未加入の交換業者に対する取扱いが挙げられておりますが、これについては慎重に考える必要があると思います。もちろん自主規制との同等性評価に基づいて判断されるべきではありますが、自主規制に委ねている部分も多々あることから、それを確実に遵守させるといった観点で、こういった認定協会未加入の交換業者に対する取扱いは、より一層の注意を要するのではないかと思います。
今申し上げました以外に、本日は4つの論点が示されておりますけれども、2番目の「顧客財産の管理・保全の強化」以外につきましては、記載内容に特段の異論はございませんので、以下では、2番目の論点についてコメントさせていただければと思います。
まず1つ目の仮想通貨の流出リスクについてですが、セキュリティ対策が求められるのは言わずもがなですが、むしろどこまで高度化しても流出リスクはゼロにならないということを所与とした上で、例えば賠償方針の策定・公表に加え、自主規制案にも盛り込まれているように、ホットウォレットで管理する仮想通貨に上限を定め、その上限額相当の賠償原資を確保する必要があるのではないかと思います。
賠償原資を確保する方法としては、例えば信託保全といったことが考えられるのではないかと思います。サイバー保険等の手法も考えられますが、あらゆる事由に伴う流出に対して迅速に賠償を行うといった観点では、やはり信託保全を優先して考えるべきだろうと思います。
それから、先ほど坂メンバーもおっしゃっていましたが、やはり交換業者の遵守体制が一番の問題になると思いますので、モニタリングに加え、開示の充実、あるいは比較可能な共通KPIの設定といったことを通じて、各社の取り組みが見える化されることが望ましいと思います。
例えば現在でも顧客から預かった金銭については、金銭信託、あるいは自己資金とは別の預貯金口座での管理といったように2つの方法が認められておりますが、実際には預貯金口座で管理しているケースが大半だと認識しています。本来であれば、金銭信託の方が望ましいわけですので、今申し上げたような開示の充実等を通じて、交換業者側の意識やカルチャーを変革していくことが有効と考えられます。つまり、利用者側から見られているということを意識させた上で、コストをかけて体制整備を行えば、それが他社との差別化、ひいては顧客からの選別につながるといった良い循環に向かわせることが可能になるのではないかと思います。
それから、2つ目の交換業者の倒産リスクということですと、井上メンバーがおっしゃられたように、もし仮想通貨の信託が可能という整理がなされるのであれば、基本的には信託で保全するのが望ましいのではないかと思います。
ただ、資料にも記載がございますが、初めての取り組みということになり、交換業者側と信託業界側の双方において体制整備が必要になってきますので、そういった取り組み状況も踏まえつつ、徐々に進めていく必要があると思います。
私からは以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、神作メンバー、どうぞ。
【神作メンバー】
ありがとうございます。3点コメントさせていただきます。
第1点は、資料3の3ページの問題がある仮想通貨の取扱いについてでございます。仮想通貨の中には、匿名性の点ですとか脆弱性の点等で問題があるものもあるとして、そのようなものは排除すべきであるという基本的な考え方に賛成でございます。その場合に法令ではなかなか対応が難しいという面があり、自主規制との連携等を含めた柔軟かつ機動的な対応を確保するという方向に賛成いたします。
そのことを前提にして、第2に、問題があると認められない仮想通貨については、私は、そのような問題のないものであれば、預かっていたものは返すというのは当たり前のことであって、これについて必要な法的保護を与えるのは最低限の保護の範囲であると思います。つまり、金銭については、受託金銭はきちんと確実に返せるように例えば金銭信託等を設定する義務を課す。仮想通貨の場合は、問題はどのようにすれば確実に返せるのかはっきりしない点が問題なのですけれども、ルール一般としては、とにかく問題が起こったときもきちんと返せるようなそういう体制とか仕組みをつくってくださいという規範になるのではないかと思います。
そのような体制や仕組みを自分できちんとできればいいですけれども、自分できちんとできないときには、きちんとできる人にアウトソースする義務があり、アウトソースした先にも監督権限が及ぶことが望ましいと思われます。本日ご提案のあった信託というのもおそらくそのような話の一環として位置づけられるべきものであると思います。
ただ、他方で、すべての仮想通貨について信託の設定がほんとうに可能で、かつ、確実であるのかどうかという点については、さらに慎重な検討が必要であると思われます。仮想通貨の種類等によっても、もしかしたら取扱いが違うかもしれませんし、この点については制度を設計するときに、信託をすれば確実に倒産隔離を実現できるという前提をとるのはなかなか難しいのではないかと思います。
そうすると、複合的な方法の組合せを考えなければならず、先ほど述べたアウトソースするということも考えられるでしょうし、あるいは返さなかったときのために保障とか保険のようなものに入っておくということも考えられます。7ページに記載がありますように、優先弁済権を利用者に付与することも考えられます。しかし、優先弁済権を付与するときは、その実効性を確保するために、最低限資本金とか純資産に関する規制が現在のままでいいのかどうかということを検討する必要があると思います。
いずれにしましても、私は問題のない仮想通貨を預かったのであれば、金銭はもちろんのこと、預かった仮想通貨をお返しするというのは、これは当たり前のことであり、それを確実にするための制度設計をすべきではないかと考えます。
それから、3点目でございますけれども、必ずしもペーパーになかったのではないかというふうにも思われる点について、もしかしたら既に触れられていて、私が見過ごしているだけかもしれませんけれども、コメントいたします。前回の研究会で、仮想通貨に特別なリスクについてお尋ねしたのですけれども、例えば秘密鍵の問題ですとか、分岐が生じるとか、プログラム自身が変更される可能性があるといったご教示をいただいたと存じます。そのようなリスクについては警告と申しますか、現在も既に利用者に対する情報提供というのがなされておりますけれども、利用者に対する情報提供、特に通常の金融商品ではないようなものについては、仮想通貨にはどのような固有のリスクがあるのか、少なくとも警告をすることが必要であると思います。
以上でございます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、楠メンバー、翁メンバーの順で。楠さん、どうぞ。
【楠メンバー】
主に交換業者に対する規制について4点ありましたけれども、3点目、4点目には余り異議はございませんので、主に1番目の問題のある仮想通貨の取扱いと、2番目の顧客財産の管理・保全の観点で意見を述べさせていただきます。
まず問題がある仮想通貨の取扱いにつきまして、先ほど坂メンバーから、2つに分けて考えてもいいんじゃないかと。いわゆる前広に捉えて、規制の網をかけていく部分と、ある程度利用の促進も含めて考えていくと。こういう2つのレイヤーで考えるというお話がありましたけれども、私もその必要が非常にあると考えておりまして、と申しますのは、匿名性というのはもちろんマネーロンダリング等も含めた問題もある一方で、あるいは消費者のプライバシーを守る点でも非常に有効な技術であります。逆に言うと、同じアドレスで仮想通貨で買い物をしていると、自分の残高であったりとか、あるいはこれまでの取引履歴とか全てがブロックチェーン上で公開されてしまうので、それがほんとうにふだんからの支払手段として適切であるかどうかというと、正直かなり難しいんじゃないかと。その中で、匿名化技術というのはコンシューマー向けのベネフィットもありますし、また、おそらく非常に研究開発要素も強い部分になってきますので、これを日本の国内の取引所で買えないというふうになってくると、仮想通貨の研究をしている企業等の中で困るところというのが出てくるのではないかという点を懸念をしております。
ただ、一方で、これらが広くマネーロンダリング等に使われているまま、広く流通することは決して望ましいことではないと思いますので、例えばきちっと申告を行って、ある程度の、税金は税金で決済手段じゃないので払ってみたいな形であれ、何がしか正規に取り扱う方法という道を残しておくということも考えられるのではないかと。
特にマネーロンダリング対策の観点で考えましても、おそらく仮に問題がある仮想通貨の取扱いを禁止したとしても、結局、ビットコインの現物で引き出したもので、分散取引所とかで調達をすることになってしまうと思うので、そういう形で取引がDEXに流れてしまうよりは、国内の取引所できちっと資金の使途を明確にして、記録が残って、本人確認された状態で売買されたほうが、結果としてマネーロンダリング対策としても前進するのではないかということがありますので、なので、一律に禁止をしていくというよりは、利用に対してしっかりと牽制をしつつ、注意深く取り扱っていくという考え方もあるのではないかと思いました。
また、顧客財産の管理・保全についてなんですけれども、かねて、コインチェック事件以降、ずっと技術的安全管理措置について有志で勉強会を9カ月ぐらいやってまいりまして、ようやっと今日ドラフトの公表というのを行ったんですけれども、正直申しまして、現段階ではかなり技術としても確立していないと。例えばやはり秘密鍵の管理というのは非常に重要なわけですけれども、信頼できる機械というのはほとんど存在しないんですね。
市場で販売されているウォレットもかなり脆弱性が見つかっているものが多いという実情もありますし、あと、銀行、金融機関が使っている成熟した技術というのは、基本的には米国政府の調達基準によって安全性が担保されておりまして、ある意味、民生機器も含めて、そういった米国政府のバリデーションの上に乗っかって安全な機器が入手できているという実態があるんですけれども、仮想通貨で使われている新しい暗号等につきましては、そういった認証を受けた機器がそもそもないものを、国内の事業者が手づくりをしているような状況でありますので、いろいろ記述を書いていってみても、これは今の時点で信頼できる機器を使えとも書けないし、これは相当しばらくハードルが高いなと。おそらくこれがきちっと市場として成熟して、安全なシステムを組めるようになるにはまだ数年以上の時間がかかるのではないかと。つまり、どの事業者のシステムもおそらくその中には非常に注意深く頑張ってつくったものもあれば、できることをやっていないもの。いろんなレベルのものがあるんじゃないかと推察をするんですけれども、ここまでやっていれば安全であるというものができている段階にはないという状況にあると考えております。
その中で、信託の話は、これはぜひ有効な方法ではあると思うので、こういった道を開いていくことはいいと思うんですけれども、じゃあ、信託を義務づけることができるかというと、現時点ではまだ時期尚早ではないかと考えております。と申しますのは、つまり、信託銀行としてある程度責任を持ってお預かりできる種類の仮想通貨というものの銘柄がおそらく限定されてしまう。そうすると、結果的に義務づけることによって、それで扱える銘柄というのが限定されてしまうリスクがあるというのが1点と、もう1点は、おそらく交換所のシステムのつくり方と銀行のシステムのつくり方とかなり違うと。おそらく銀行のほうがウォーターフォールでしっかりと時間をかけてドキュメントを整理してつくるところ。これはよいところもあるので、こういったカルチャーが仮想通貨の世界に入ってくるのはメリットだと思うんですけれども、一方で、ひょっとすると小回りがきかないかもしれないと。ここ1週間、2週間で新たに見つかったいろんな手法に対して、パッと数日以内に対応するみたいなことが得意かどうかというのは正直わからないところもいっぱいございまして、そうすると、現時点では幾つかの保全の方法を提供して、それぞれどのように有効に機能したか、機能しなかったかということをある程度市場の中で見て、判断をする期間というのが必要になるのではないかと思います。
そういった点から、現時点ではできるだけ保全の方法というのを多様化させていくと同時に、それらが実際に有効に機能しているかということの見極めが必要ではないかと思います。
最後に、特にザイフの事件で、私、非常に不思議に思っておりますのは、9月14日に事件が実際に起こって、それの報告が9月18日までかかっているということでして、ガイドライン上、基本的には日時で現物の残高確認は行われているはずなので、本来は9月14日中に見つけられていないといけないと。おそらくシステム的にも残高不足でエラーがいっぱい起こっていたはずで、14日、15日の段階で、既にユーザーから、ザイフからお金、おろせないというようなクレームというのはツイッター等でも書かれているところを見ると、それのトラブルシューティングの過程でも当然わかっていたはずであると。
そうすると、非常に残念ながら、交換所がそういったインシデントに気がついても、即座に報告しないということを残念ながら想定せざるを得ない状況にあるんじゃないかと。だとすると、例えば仮想通貨の場合は、残高はブロックチェーン上で確認ができますので、きちっと、むしろ当局のほうがプロアクティブにモニタリングして、残高の異常な変化があったところに対してはきちっと見にいく。そういった、よくスーパーバイジングテクノロジー、Sup Techとか言われますけれども、仮想通貨のモニタリングにおいては、そういったSup Techの導入も必要となるんじゃないかと考えます。
以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、翁メンバー、どうぞ。
【翁メンバー】
私もこの2つの利用者保護の必要性の程度と、金融システム全体に当たる影響ということで、皆様の意見と同様かと思いますが、利用者保護の必要性に関しましては、福田先生もおっしゃっていましたけれども、ほかの金融商品と比べた場合の利用者保護の必要性というのは、例えば預金とかと比較した場合には低いかもしれないけれども、一方で、さまざまな事案が出ている中で、一定程度の利用者保護のあり方を考えていく必要があると思います。また金融システムに関しましても、法定通貨のシステムと無関係ではありませんので、ここについても視野に入れて、やはり考えていく必要があると思っております。
それぞれの項目について少しずつコメントをいたしますが、問題がある仮想通貨の取扱いに関しましては、やはりここに記載されておりますような問題がある仮想通貨につきましては、これをできるだけ排除できるようにしていく工夫が必要だと思っております。
一方で、ここでご指摘になっていますけれども、やはり技術面とかスピード面とかこういった対応の面で、法令というのは非常に難しい面もあるので、やはり自主規制等、いかにうまく組み合わせて実効性のある排除をしていくかということを考えていくということが重要かと思っております。
それから、顧客財産の管理・保全に関しましては、セキュリティ対策に関しては、やはりリスク管理自体がかなり技術革新でいろいろ進んでいくというような面もございますので、事業者の方がどういうふうなリスク管理をよりよいものとして考えていくかというところが発展していくことも非常に重要な視点だと思います。一方で、必ず今後も流出という事案が出てくると考えられますので、そこは4ページの下にあるような賠償方針の策定などについて考えていくことが必要だと思いますし、一方で、保険を適用するというような考え方での対応を求めるということも必要かなと思っております。
それから、3につきましては、信託について、これが法律の側面から可能であれば、これを考えていくということは重要だと思っております。一方で、新しいこういった信託を担う人たちの人材とかそういったところもしっかりと対応していく必要があるので、課題が非常に多いというふうに思っております。今、楠さんがおっしゃったような点かと思います。
また、信託ができない場合に、例えば優先弁済をしたらどうかと。弁済権を持たせたらどうかというようなことが書いてあるんですが、これはやっぱり優先弁済権を求めるというのは、一般債権者がそれだけ多くを負担するということになり、その分一般債権者がリスクプレミアムを要求するとかそういうことがあり得ると思いますので、優先弁済権ということについては少し慎重に考えたほうがいいんじゃないかと考えております。
それから、3については、8ページに書いてあるような不招請勧誘とか投機的取引を助長する広告などについては有効と考えられますし、2もそのとおりなんですけれども、エンフォースメントを考えたときに、この2番目の適合性の原則みたいなのはどういうふうにやっていくのかなというところが難しい。モニタリングというか、そこが難しいなとい感じております。
4については、基本的には大きな方向はよいのではないかと思います。
5については、やはり自主規制を義務づける、加入を義務づけるというようなことで、それ以外の場合は登録拒否とかそういった厳しい要件を求めていくということが大事ではないかなと思っております。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
では、中島メンバー、どうぞ。
【中島メンバー】
事務局の資料に沿って幾つかコメントを申し上げます。
まず問題がある仮想通貨の取扱いということですけれども、交換業者が取扱いを始めることを仮想通貨の世界では上場するというふうに呼んでおりまして、それをきっかけに人気が出たり、あるいは価格が上昇したりするというケースが多くなっております。したがって、事業者がどの仮想通貨を取り扱うかというのはかなり重要な問題ではないかなと考えております。
特に金融庁が認めた登録業者が取扱いを行うということは、利用者は一種のオーソライズされたものというふうに受けとめて、安心して取引を行うケースが多いと考えられます。このため、やはり適切でない仮想通貨の取扱いについては、一定の制限を設けるべきではないかと考えます。
幾つかケースがあると思うんですが、一つは神作先生もおっしゃっていたとおり、「匿名性が高い通貨」ということで、これらはどうしても犯罪行為かマネーロンダリングなどに使われることが多くなりますので、やはり取扱いは禁止の方向で考えた方がいいのではないかと思います。銀行等に対しましては、かなり厳しいマネーロンダリングの規制が課されておりますので、一方で、仮想通貨の業者には違法な使い方がされても、追跡ができないような通貨の取扱いを認めるというのは、公平性というか、イコール・フィッティングの原則からやや問題があるのではないかと考えます。
それから、ケースの2つ目は、「詐欺コイン」と言われるような、あまり実態のないコインでありますとか、あるいは実際には存在しないんですが、特定の政府がバックアップしているというようなことを謳った仮想通貨などがあります。これらも実際には、あまり実態がなくても、上場されることによって、一定の信任を得てしまうというケースがありますので、この辺も防止していく必要があるものと思います。
それから、ケースの3つ目、ちょっと気になっているのが、上場に際して、交換業者が経済的な便益の供与を受けるというケースがあります。取引所の側から上場させるに当たって、手数料を徴収するという場合もありますけれども、逆に、新しいコインを発行する側から一定量のコインを提供するから上場してほしいというような提案を持ちかけるケースもあるようですね。株式の場合には、東証に金を払うから上場してくれというのはかなりまずいケースだと思うんですけれども、仮想通貨の世界ではそれに近いことが行われているということになります。
利用者の側から見ますと、交換業者が新しい通貨の取扱いを始めるということは、当然交換業者がその通貨をさまざまな面から検討して、適切だという判断をして、取扱いを始めたんだというふうに信用すると思うんですけれども、実は裏で経済的な便益を受けたから取扱いを行ったというケースもあり得るということです。今やっているということではありませんが、あり得るということなので、この辺も野放しにしておいていいかということが論点の一つになり得るかなと考えます。
ペーパーにありました取扱通貨の規制の方法なんですけれども、この世界は変化が激しいので、おっしゃるとおり、確かにあらかじめ法令上で「限定列挙」のような形で明確に特定しておくことは困難だと思われます。ただし、どういうコインについては望ましくないのかという定性的な規定をつくっておいて、ざっくりと網をかけておくということは可能なのではないかと考えます。個別の仮想通貨の事例が出てきたときには、この定性的な規定に基づいて個々に判断していけばいいのではないかなと思います。
それから、事前届出か、事後届出かという論点もありましたが、これは一旦上場されてしまうと、上場されたという事実によって一気に投資家層が広がってしまうということがありますので、やはり事前に審査する体制を整備するということが望ましいと考えます。また、一旦上場したものを後になって禁止するというような措置をとりますと、利用者の混乱が一層大きくなるということが考えられます。
それから、2点目の流出リスクですけれども、仮想通貨業者の安全性確保という点につきましては、前にも申し上げたとおり、「安全対策基準」、「セキュリティ基準」というものをやはり早急に策定することが必要ではないかと考えます。
コインチェックの事件であれだけホットウォレットが危ないということが言われていたにもかかわらず、今回のテックビューロの事件でも、またホットウォレットから多額のコインが流出しておりまして、基本的な最低限の原則だけでも速やかに決めたほうがいいのではないかと思いました。
セキュリティ基準の決め方については幾つかあると思います。金融庁が中心になって決める。それから、交換業者のような自主規制団体が決める。それから、銀行のセキュリティ基準を決めているような第三者機関が決めると。いろいろやり方はあると思いますけれども、早く作ったほうがよいと考えています。
それから、安全対策を定め、基準を作って、それに準拠させるということがまず第一なんですが、それでも万が一、流出事件が発生してしまうということもあり得るわけで、そこに対してはあらかじめ原則を決めておくということが大事で、このペーパーにもありますように、賠償方針をあらかじめ策定して公表しておくこと。それから、危険性が高いホットウォレットで管理する部分については、対応する安全資産、あるいは同種の仮想通貨の補充を義務づけるといった点は、私はいずれも賛成です。
やはりホットウォレットでたくさんの通貨を持つことが、ビジネス上はマイナスになる、あるいはコストがかかるというようなインセンティブ付けをするような仕組みをどこかで入れておかないと、なかなか危険性の高いホットウォレットでの資産の保持というのが減らないのではないかなと思います。
それから、やはり利用者保護の観点からは、ビジネスの規模に対応して一定の財務資源、「ファイナンシャルリソース」を確保していくことが重要ではないかなと考えます。それに加えまして、流出事件が発生した場合の損失補填の順序のようなものを決めておくことも検討してはどうかなと考えます。
損失補填の原資としては、交換業者が持っています、まず現預金ですね。それから、保有している同種の仮想通貨、それから、保有している他の仮想通貨、それから、先ほど話があったサイバー保険、それから、収益とか自己資本といったものですね。それから、親会社がある場合には、親会社からの支援とか、いろいろ原資はあり得ると思うんですが、こういったものをどういう順番で補填していくかといったことをあらかじめ整理しておくということはかなり有益ではないかと思います。
実際に流出事件が発生してしまったときには、混乱状態にありますので、あらかじめこういった補填の順序のガイドラインみたいなものを示しておくことは重要ではないかなと考えます。
ちなみに、清算機関(セントラル・カウンター・パーティー)については、事業の性格は若干異なりますけれども、やはりこういった損失が発生した場合の損失補填の順番についても国際的な基準がございますので、そういったものも一つ参考になるのではないかなと考えます。
それから、次に、倒産リスクの件ですけれども、仮想通貨の分別管理では、倒産隔離が十分機能していないということで、交換業者が倒産した場合に、利用者は自分の預けてある仮想通貨を取り戻せないかもしれないというご説明だったと思います。森下先生の書面にも書いてありますが、利用者は当然これは取り戻せるものと考えていると思いますので、やっぱりここはまずいんだろうと思います。せっかく分別管理というものを導入した以上は、それによって、何かあったときにはちゃんと顧客が自分の資産を取り戻せるようにすべきではないかと考えます。
それで、それを倒産隔離の機能をどうやって確保するかということで、事務局から3つ、案が上がっているんだと思います。1つは私法上の位置づけを明確にする。2つ目が信託の制度を活用する。それから、3つ目が優先弁済の権利を定めるということです。
1番目の私法上の位置づけを明確化するというのは、これから民法学者も巻き込んで、そもそも仮想通貨とは何なのかとか、物なのか、権利なのかというところから、一から議論を始めることになると、かなり議論も拡散すると思いますし、時間もかかってしまうおそれがあると思います。したがって、2番目の信託か3番目の優先弁済権というのが現実的だと思いますけれども、信託については、楠委員からもご指摘がありましたが、まだちょっと実務上、確立されていない面もありますし、あとはコストがかかるということもありますので、もし可能であれば優先弁済権というほうで確保できるのであれば望ましいかなというふうに思っております。いずれにしても、この辺は法的な面もありますので、専門の先生方の議論にお任せしたいと思います。
それから、倒産リスクという点につきましては、前にも申し上げたんですが、今の最低資本金ですね。1,000万円というのはやはりあまりにも低過ぎるのではないかと考えます。大手の仮想通貨業者は、預り資産の残高が大体地銀の下位行並みの規模になっています。そうすると、銀行として業を行おうとすると、今、最低、最低資本金は20億円ですか。それなのに、仮想通貨業者として数千億円を預かる場合は1,000万円でいいということで、非常にギャップが大き過ぎるのではないかなと考えております。
それから、リスクの抑制の点につきましては、やはり昨年の秋ごろからの一部の仮想通貨事業者のテレビの宣伝がやっぱり目に余るものがありまして、これにつられて多くの若年層が、大体仮想通貨が何たるかもあんまりよくわかってなくて投機的な相場に参加してしまったという現実があります。その結果、日本人によるビットコインの取引が一時、世界の4割から5割を占めるといった事態を引き起こしてしまったということで、やはりこういった広告宣伝による投機的な動きの広がりということについては、一定の歯止めをかけていく必要があるのではないかと考えます。特にテレビのCMについては、知識が十分でない素人筋と言うんでしょうかね。そういう人への影響が大きいので、制限する方向で考えていただければと思います。
それから、最後に、市場の取引の透明性という点ですが、ここに書いていないことで一つ申し上げたいんですが、仮想通貨市場の透明性確保のためには、やはりもっとデータを開示していくということが必要ではないかなと考えます。4月のこの会合で、交換業協会の方から、仮想通貨取引についての現状報告ということで大変詳しい計数のご報告をいただいたわけなんですけれども、このうち、例えば国内業者の取引金額であるとか、預り資産額であるとか、現物取引とレバレッジ取引の内訳であるとか、利用者数というような基本的なデータにつきましては、やはり毎月発表していただくのがよろしいのではないかなと思います。それによって、仮想通貨市場の現状を把握することが可能になるということでございます。
それから、価格データの透明性という点でございますけれども、この点については、東京市場の終値のようなものを作って公表してはどうかと考えます。ちなみに東京外為市場につきましては、ドルとかユーロについて、午後5時時点のスポット・レートが日々発表されておりまして、取引の関係者の間では非常に役に立つ指標として活用されているというのはご存じのとおりだと思います。
仮想通貨は、グローバルで24時間取引されているものなので、その一定時間をとっても意味がないという見方もあるかもしれませんけれども、グローバルで24時間というのは、実は為替レートも同じことでありまして、やはり一定時点を区切って、毎日一定の時間のレートをとっておくというのは大事なことではないかと思います。もしこういう価格指標があると、例えば流出事件が起きた場合にも価格の補償額の算定に、その日の終値を使うといった形で補償のルールにつなげていくことも可能だと思いますので、こういった価格データの透明性という面につきましても、ご検討いただければ有難いと思います。
せっかく今、事業者の協会のほうで体制を整備されていると伺っておりますので、よりデータの開示を積極的に行っていただいて、透明性の高い市場にしていっていただければありがたいと思っております。
以上でございます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
森下さん、書面でご意見をいただいているのですけど、もしよろしければ、手短にでもご発言いただければと思います。
【森下メンバー】
すみません。所用がございまして、来られないかもしれませんでしたので、書面で意見を述べさせていただきました。特につけ加えることはございませんので、そこに記載をしているとおりでございますが、1点だけ申し上げるとしますと、いろいろ顧客の権利、あるいは顧客を保護しようというふうに申し上げましても、私法上の仮想通貨の性質がなかなかはっきりしないというようなことがいろんな場面でネックになっているのかと思います。ただ、そもそも仮想通貨って何なのかということを決めなければ、顧客が交換所に対してどういうような権利を持っているかということを決められないわけではないと思いますので、そういった点にも立ち入って、法制化を図っていくというような考え方は十分あるのではないかということなど書かせていただきました。
以上でございます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
これで今日ご出席のメンバーの方全員からご発言いただいたのですけれども、本来はこういう研究会は1回発言して終わりではあまり意味がなくて、ほかのメンバーの方のご意見も聞いて、また自分の意見を言っていただくというのが望ましい。つまり、討議をし、議論をし合うということではあるとは思います。
非常に多様なご意見いただいたのですけれども、追加でのご発言があればぜひお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
楠さん、どうぞ。
【楠メンバー】
(1)の問題がある仮想通貨の取扱いに関しまして認めてもよいのではないかという意見が私からしか出なかったので、非常にちょっとつらいなという思いがあるんですけれども、幾つかやはり実際に規制しようとしたときに懸念している点がありまして、一つはフォークコインの取扱いになります。フォークコインというのは例えばビットコインを持っていると、それがある日、ハードフォークしたときにビットコインとビットコインキャッシュに分かれたりですとか、ビットコイン系だけで今、何種類もそういったコインがあるんですけれども、こういったものって持ってしまうんですね。現状だと取引所でその銘柄を扱っていない場合というのは多分現物で払い戻すようになっていると思うんですけれども、そういった取引所もありますけれども、現物で払い戻されても、それ、お金にできなくなってしまって、非常にどうしていいかわからないというのが実情かと思いまして、なので、例えば決済手段かと言われると、フォークコインの多くって、そんなに市中で流通するものでもないので、決済手段と呼ぶことはかなり難しいだろうと。
とはいえ、例えば、じゃあ、消費税を払ったり、ある程度サンクションがあっても構わないので、取引そのものを禁じるのではなくて、何がしか処分する方法なりを提供することができないかというようなことで、どちらかというと、もう取扱いは分けてもよいと思うんですね。
安心してホワイトリストで広く使える決済手段として使われている仮想通貨というレイヤーと、ただ、それ以外に研究目的であったりとか、持っていることで、付随して所有してしまったものの取扱いというのは何らかの形でお考えいただけるとありがたいなというふうに思いましたのと、もう1点が、払戻しの準備で1,000万円の規制が適切であるかみたいな話も中島メンバーから出ましたけれども、これもやはり取引所の業態によってかなり大きな違いがあるだろうと思いまして、それこそ十分な預り資産があるところは、そのリスクに応じてきちっと払戻し資産はあるべきで、持つべきだと思うんですけれども、一方で、仮想通貨が始まったときのことを考えると、ほとんど実態のないところからプログラマーがつくったものですし、日本でも例えばモナコインであったり、ビットゼニーであったり、いろんな日本で生まれた仮想通貨を見てもほとんど高校生とか高専生が遊びでつくっているようなものがちょこちょこあったりして、そういったものが一律に禁止されてしまうと、やはりそういった人たちって、そういう遊びの中で技術を習得したりですとか、新しい技術を開発しているような面もありますので、その消費者のリスクがちゃんと、あまりない世界においては緩い規制の部分というのもあってもいいんじゃないかと。リスクに応じてきちっと払戻しのための原資を確保するというルールであって、入り口のところでこれを、10億とか20億というふうな形にしてしまうと、イノベーションの種だとかいろんな、子供たちが勉強するチャンスというのを摘んでしまうんじゃないかというような点をちょっと心配をしております。
以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
森下さん、どうぞ。
【森下メンバー】
今、楠メンバーからお話のあった点ですけれども、私もペーパーの中にリスクに応じた規制をというふうなことを書かせていただきました。これから160社ずらっと仮想通貨交換業者の登録の申請が並んでらっしゃるというようなお話もあったと思います。その中には、ほんとうにいろんなビジネスのモデルなどもあると思うのですけれども、例えば160社、どれだけ認められるのかわかりませんが、認められたところの全てにフルスケールの同じ規制を当てはめ、同じような監督労力をかけることが期待されているのかというと、それはほんとうにそれが望ましいのだろうか、あるいは可能なのだろうかということもございます。
諸外国のいろいろな金融規制の立法例なんかを見ていましても、やはりリスクに応じてある程度色分けをするとか、そのようなことはなされていて、十分あり得る話だと思います。どのような基準で区別するかを決めるのが簡単ではないというような問題はあるとは思うのですけれども、こういうところはむしろ、例えば実務をなさっている方から積極的に、例えばこの範囲であれば、こういうリスクの限定ができるのではないかというようなお知恵なんかが出てくるということは望ましいのかもしれませんけど、やっぱりリスクに応じて、多少規制を変えていくというような考え方というのは、十分検討に値するのではないかというように感じております。
【神田座長】
ありがとうございます。
福田さん、どうぞ。
【福田メンバー】
皆さん、非常に私にとっても有益な議論をたくさんして大変勉強になりました。リスクに応じてといったときに、わかっているリスクとわかってないリスクもあるというのはこの分野の大きな問題だと思うんです。
先ほど中島メンバーがおっしゃったように、コールドウォレットとホットウォレットの問題、これはかなりわかってきている問題で、それに関しては確かにおっしゃったようにかなり規制をして、あるいはいろんなルールをつくってということができるんだろうとは思うんです。けれども、わかってないリスクというのもかなりあるんじゃないかなという印象は持っています。私は技術面での専門家ではないのでわかりませんけれども、何となくこういう事件が起こるたびにただ、ただびっくりするだけということが多いように、やっぱりわかってないリスクというのはかなりある。そうした中でどうするんだという問題です。あらゆる可能性を心配して規制を始めると、ものすごくもう重い規制になってしまうわけですけれども、そうすると、先ほどのお話もあったイノベーションという問題ともかかわってくるとは思うんですよね。
やっぱりわかってないリスクというものに関しては、あらゆる可能性を心配し始めて規制をするというのはこういう分野では必ずしもいい規制体系とも言えないという問題もあります。わかっているリスクに関しては皆さんおっしゃったように、非常に適切な規制というのをつくっていくということは大事なんですけれども、わかってないリスクにどう対応すればいいかという問題は、必ずしも自明な問題ではないんじゃないかなというふうには思います。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
どうぞ、楠さん。
【楠メンバー】
今の点なんですけれども、やはりリスクをマキシマムで見積もるんだとすると、仮想通貨というのは価値のないファンダメンタルズのないところから生まれてきているので、最終的にはやっぱりゼロ円で始まったものがゼロ円に返る可能性までは想定をしておく必要はあるんだろうと思うんですね。全額流れてしまったときにどういう対応をするかということは考える必要があると思います。
これまでの事件が主にホットウォレットで起こっているので、コールドにしておけば安全だという話もあるわけですけれども、これも例えば内部犯行等のリスクまで考えると、コールドだから絶対に盗まれないということではなくて、サイバー攻撃に対しては非常に効果があるけれども、内部犯行に対してはコールドもやはりリスクはある。おそらくそこは全額持ち出されるリスクというのを想定した上で、どうやって合理的なルールをつくっていくかということになると思いますし、その中でよくコールドウォレット比率を決めればよいというのは、私は正直、簡単ではないと思ってまして、これはなぜかというと、コインチェック事件のときを振り返ると、NEMで問題が起きたわけですけれども、コインチェック事件が起きるほんの2カ月ぐらい前に初めてNEMに対応した仮想通貨のウォレットが出てきたというような状況でありましたから、それをおそらく今後きちっとしたプロダクトがない状態で仮想通貨が使われると、おそらく全額ホットで扱うということは残るだろうと思います。ただ、それはだめだということではなくて、それが十分に金額が小さければ、その分の準備金を積んでいれば、別にホットで扱ってもいいですよと。流れたら流れたで払い戻せるからというような形で、仮想通貨それぞれにおいていろんな事情がある中で、最悪を想定して、それに対してどこまでリスクをヘッジするのかという姿勢が必要なような気がします。
あと、保険は結構厳しいと思っていまして、これまでこれだけの事故が起きていて、果たして保険料率が見合うのかというようなところがありますので、やはり返せないということはどうしても起こってしまうと。そのときに、いわゆるマウントゴックス事件のように倒産として扱うのがよいのか、あるいは今後ICOの議論も出てくると思うんですけども、ビットフィネックスのときなんかは流出した額の分のコインを発行して、ビットフィネックスの経営が立ち戻るたびにだんだんと本来の被害額にコインの価格が近づいていくみたいな形で処理された例もありますので、ゼロ円から始まった仮想通貨がゼロ円に戻る可能性があるという前提で、最悪を想定したリスク管理というのを行っていく必要があるのかなというふうに思います。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
奥山さん、どうぞ。
【奥山オブザーバー】
仮想通貨交換業協会、奥山でございます。まず最初に、今後の発展が見込まれる仮想通貨の中で、安全性、信頼性に今回大きく傷跡をつけるような事案のほうも発生しておりまして、まことに遺憾の極みであるというところは申し上げさせていただきます。
先ほどのわかっていないリスクですとか、そういうような部分のご指摘もありましたけれども、本年1月の仮想通貨流出の事件以降も仮想通貨の流出は日本国内だけで起こっているわけではございませんで、世界各国で流出の事件というのは起こっているわけでございますが、まさにこれは愉快犯というよりは、むしろ国家的な動きも指摘されるほどの組織的サイバーテロに近いような状況というものが、特に日本をターゲットに行われている状況だというふうに認識をしております。
交換業者におきましては、一層の安全管理、セキュリティの徹底というのが早期に求められるところであろうということでございます。
すみません。まず私が申し上げたいのは、最も悪いのは盗んだ者だと、盗んだやつが一番悪いというふうに思っており、顧客に対しての債権・債務関係が外れない以上、つまり、返せませんと言って開き直ることは、私ども業者はできませんので、そういった部分でいいますと、盗まれた業者自身も被害者であるということをまずご理解いただければと思います。コインチェック社の580億円もしかり、今回のザイフ、テックビューロ社における70億円も、基本、その会社の損失であるということでございまして、盗まれたいと思っている業者はいないということでございます。
その上で、お客様の資産を預かり、会社が利用者と債権・債務関係にある中で、利用者に対しての信頼を逸失してしまうこと、ないし、信頼を大きく損ねてしまうことがやはりとても問題だと思っておりまして、そういったところで業者自らの安全管理対策というものをしっかり進める必要があろうかと思っておるところでございます。
すみません。何が言いたいのかといいますと、この件に関しましては、実際、日本の業者は今狙われております。狙われておりますので、コインチェックの事案、また、テックビューロの事案について、何が実際に起こっているんだ、どこをターゲットされているんだというところをホットイシューとして、業者、協会としては正確に認識し、かつ、業者に対して、そこの穴を塞ぎに行く作業を襟を正す意識を持って対応させたいわけでございます。
現在まだ認定協会になっておりません状況の中で、警察、または当局に対しての報告は動いておりますが、なかなか民間協会にはその情報が来ない状況になっておりまして、それをフィルタリングして、各業者のほうに徹底させるというようなこと自体も私どもが行う行為としてまず限界があるわけでございます。ここをご認識いただきたいということでございます。
次に、流出を早期発見するのは当然のことでございますが、それを発見したときには、実はもう時すでに遅しな状況でございまして、もちろん関連当局に対しての報告は喫緊をもってなすべきでございますが、流出させないために我々は何をするのかというところに最大限の努力と知見の共有を図っていく必要があろうというふうに思っているところでございます。
具体的に取り急ぎということで、セキュリティの点検等はさせておりますし、ホットウォレットのほうに置く量等の注意喚起も促しておるところではございますが、今後、私どもが考えております今回の事案に見た安全管理上の対策というのはおおむね3点ほどを考えているところでございます。
一つこれは現在のネット証券あるいはネットバンキング、FX会社等でも行っていないことでございますが、ブラウザ、メール等の社内利用、また、インターネット疎通等に関して、社内の制限あるいはネットワーク回線自体の分離、こういったもの自体をしっかり設けてはどうかというところを自主規制として今後検討していきたいと考えております。つまり、物理的ネットワークラインをいかに遮断させるかというようなところでございます。
2点目でございますが、ホット・コールドウォレットの定義、こちらは先ほどの先生方のご指摘の中でも曖昧だから問題なんだという話もいただいております。こちらのほうは、協会としてもしっかり区分、分類分けした形で、それぞれに見合うリスクがどれぐらいの程度なのかというところを当局としっかり連携させていただきながら、決めさせていただくとともに、ホットウォレットに必要以上に業者が仮想通貨を保持するということのないように、というところの制限を自主規制規則に設けてまいりたいと考えております。
3点目でございますが、安全管理、セキュリティ面の知見というのを私ども業者だけの知見ではやっぱり不十分なところもありますでしょうから、外部の有識者も加えた形での技術委員会、これは前回の自主規制の組織体系の中にも計画しておったところでございますが、こちらのほうの早期設置を進めてまいりたいと思います。
また、その際には、先ほどのご説明にありました、楠先生や、今日おられませんけれども、岩下先生などがおやりになっているVCGTF、そういったところの知見なども参考にさせていただきながら、しっかりとした形で業者の安全管理が行えるようにしてまいりたいと考えておるところでございます。
すみません。話したいことがまだ幾つかあるんですが、私の話したいことはここまでにさせていただきます。
何点か、先生方のご指摘の中で、気にかかった点をご説明を少しさせていただいてよろしいでしょうか。
まず信託についてでございますが、FX会社の信託が業者任意によって始まったのが2000年からでございまして、信託が信託法改正によって義務化されたのが2008年の2月1日ということで、実に8年の歳月をかけて全業者に対しての義務化が行われたということになります。現在、2018年ということで、それから10年たつんですけれども、FXの世界においても現時点で、まだドル、ユーロなどの外貨に関しては、信託を実施していただいている信託銀行のほうはございません。当社のマネーパートナーズという会社の、おおむね15%ほどの残高は、これはドルでございますが、これに関しましては、会社資産を利用しながら、円貨相当分ということで、信託しておるような状況になっておりまして、そういった部分で言いますと、仮想通貨自体をほんとうにその信託として預かってくれる信託銀行がリスクも見合いながら、何社あらわれてくるんだろうかということとか、また、先ほど先生方の中からご指摘もありましたけれども、今後あらわれてくる仮想通貨に関しての信託が義務化されない以上、該当する仮想通貨銘柄を取り扱えるか、取り扱えないかというのは、信託銀行が取り扱うか、取り扱わないかということに下位依存してしまうような形になってしまいますので、これでその取扱銘柄をどうこうという話というのは少し問題なのではないのかなと思っておりまして、信託が悪いわけではございませんで、できるのならやっていただきたいということでございますが、それだけに選択肢を限定してしまうと、かなりハレーションが生じるのではないのかなと思っているところでございます。
また、先生方の中で、取扱仮想通貨の上場、取扱いの際の便益についてのご指摘のほうがございましたけれども、通常、証券の世界でも主幹事証券が上場のコンサルティングを行い、また、前段階でグリーンシューオプションなどのように、一部株式を保有したりですとか、先行して何%か株式投資をしておくケースというのは通常あるわけでございます。そういったところでいいますと、個社だけが審査基準を設定すると、お手盛りで上場させるんじゃないか、お手盛りで取り扱わせるんじゃないかということで、こちらのほうはやっぱり問題だというふうに考えておりますので、自主規制団体のほうで連携して、しっかり取り扱わせていいのかどうか、その審査は十分に行われたのかどうか、そういったところを確認していくということの中で取扱いをさせるか否かというところもまた見ていけるような状況にすればいいのかなというふうに思っております。
最終的には金融庁に対しての届出になるわけでございますので、こういった観点で当局のほうとも連携しながら動くような自主規制団体でありたいと考えておるところでございます。
その上で、現在は取扱通貨に関して事後届出となっておるんですが、先ほど楠先生のほうからもご指摘ございましたように、ハードフォーク等の理由によって、先行して、我々が意図せずして分離してしまうような、そういったケースもございますし、また、仮想通貨の規模、これは何をして規模かというのはとても難しいわけでございますが、例えば全額で500万円に満たないようなマイクロクラウドファンディングのようなICO発行を行いたいといったものまで、事前届出でどこまで縛るのか、ということもなかなかしっかり検討していただく必要があろうかと思っておりまして、そういった部分では取扱規模ですとか種類、用途、こういったものに応じて、相応の仮想通貨をどういうふうに届け出ていくのかというところに対しては、しっかりご検討をいただきたいなと思っているところでございます。
広告に関しましては、現在、当局と調整をさせていただいておりますが、過度な広告、あるいは著しく誤認させるような勧誘・広告はしないという方針で自主規制を調整しておりますし、不招請勧誘の禁止等を前提とした形の中での自主規制規則を展開しようとしておるところでございます。
価格に関しましては、基準ベンチマークのほうを、こちらのほうも当局と調整させていただきながら、できるだけ早い段階の中で、全体の現在の価格帯がどのように推移しているかという、リアルタイムと申しましても、毎秒単位のものになるかどうかはちょっと難しいわけでございますが、少なくとも1日単位というよりはもう少し頻度がある状態の中での基準価格、ベンチマーク等を自主規制団体側で出せないかというようなところを検討させていただいておるところでございます。
基本データの改善に関しましては、現在、データ収集の規則はできておりますので、施行に伴いまして、翌月、翌々月程度からしっかりとした定期的なデータの公表が行えるような体制を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
すみません。急ぎ足でございましたが、申しわけございません。
【神田座長】
どうもありがとうございました。
加藤さん、どうぞ。
【加藤メンバー】
残り時間が2分ほどしかありませんが、簡単に2点ほど追加でコメントさせていただきます。
1点目は、仮想通貨交換業者との関係で顧客の利益保護を考える際には、その前提作業として、顧客と仮想通貨交換業者の間の契約にどういった条項があるのかを詳細に調べる必要があるように思います。契約内容に関して交換業者ごとにどの程度のばらつきがあるのかということを踏まえた上で、統一的な規制を設けることが望ましいと思いました。
2点目は、決して私自身の考えを論理的に整理できているわけではないのですが、問題がある仮想通貨の取扱いについて、私が抱いている印象のようなものを述べさせていただきます。特に匿名性の高い仮想通貨の取扱いですが、現在の仮想通貨の利用のされ方を想定するのか、もしくは、何年先かわかりませんけれども、支払手段として仮想通貨が使われるようになる日が来ることも想定するかによって、考え方は大きく異なるように思います。漠然とした印象しか申し上げることができませんが、日本銀行券を利用した支払いが減少して、デジタルな支払いが主流になった世界、要は、日本銀行券と比べると匿名性に劣る支払手段しか存在しない世界が到来した場合、仮想通貨を支払いの手段として利用する一般人の需要が変化して、一般人からも一定程度の匿名性が確保された仮想通貨が求められるようになる可能性があるように思います。
もちろん、今現在の仮想通貨の使われ方を前提とするのであれば、匿名性が高く、かつ、非常に大量の経済価値を移転できる手段を放置すると、マネーロンダリングや違法行為に関連した形で用いられることが予想されますので、匿名性の高い仮想通貨に対して否定的な態度をとらざるを得ないと思います。
しかし、例えば利用者として一般消費者を念頭に置いた小口の決済などに特化した仮想通貨、いわば現在の日本銀行券と同様の役割を果たすことができる決済手段の開発自体を否定する必要はないように感じました。
以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。大体時間が来たと思います。大変貴重なご指摘をたくさんいただきまして、ありがとうございました。
私も2点、皆さんおっしゃったことなのですが、感想です。一つは、先ほど最近の事件は、サイバーセキュリティというか、業者さんが被害者であるというのはそのとおりだとは思うのですけど、ハッカーとの関係では被害者ですけども、利用者との関係で「私は被害者です。」と言えるかというのが今日の議論なのですね。
ですから、そこは必ずしもそうは言えないのではないかということではないかと思います。というか、現在の利用者規制は十分かと言われると、議論する余地がある。他方、多くの方がご指摘されましたけれども、一つ一つの規制というのは、足しあわせていくと過剰規制になってしますので、そこの組合せというか、連立方程式というか、例えば先ほどどなたか、楠さんがおっしゃったことですけど、準備金がたくさんあるところであれば、ほかの規制は不要なわけですしという、そういう組合せを解いていかなければいけない。全部で100になればいいので、一つ一つ足していったら200になってしまうというのは明らかに過剰ですよね。ですから、そういう世界を今後どういうふうにつくっていくかということを議論していただく必要があるように思います。
そういう意味で、リスクがわからないというご指摘、それから、楠さん、今、加藤さんも最後におっしゃった、将来何が出てくるのかわからないので、そういうところでこの連立方程式というか、最適組合せを考えていかなければいけないという難しさがあるというふうに思いました。
いずれにしましても、そういった規制の柔構造化とでも言うのですかね。そういうものの要否とか、あるいは仮想通貨交換業と他の金融業とのリスク等の比較ですとかいったようなご指摘もあったと思いますので、議論していただくべき論点はまだ数多くあるということなのかもしれませんけれども、いずれにしても、そういったことについても今後いずれどこかのタイミングでご議論いただければとは思います。
予定の時間を過ぎておりますので、本日はこのあたりとさせていただきます。大変活発なご議論、そして、多数の貴重なご指摘をいただきまして、ありがとうございました。
これらを含め、本日いただきましたご説明、ご意見等を踏まえて、今後さらに議論を深めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
なお、次回の研究会の日時についてですけれども、皆様方のご都合を踏まえた上で、後日、事務局からご案内させていただきます。
それでは、以上をもちまして、本日の研究会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
―― 了 ――