「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第11回)議事録

平成30年12月14日(金)

【神田座長】 
 それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきます。仮想通貨交換業等に関する研究会の第11回目の会合を開催させていただきます。皆様方にはいつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 
 本日でございますけれども、仮想通貨交換業等を巡る諸問題についての制度的な対応ということについて、方向性の取りまとめに向けて、この研究会におけるこれまでのご議論を踏まえて、お手元に報告書(案)を事務局で用意していただいております。
 
 そこで、本日は、事務局からこの報告書の(案)についてご説明をいただいて、皆様方からご意見をいただくという流れで進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
 それでは、事務局からの説明をお願いいたします。
 
【小森市場課長】 
 ご説明させていただきます。前回、第10回目の研究会におきまして、論点整理や、あるいはICOの、討議資料についてご議論いただいたところであります。これらにつきまして、メンバーの方々から、第10回の研究会の席上でいただいたご意見、また、その後、本日に至るまでの間にいただいたご意見などを踏まえまして、本日は、報告書(案)をご用意させていただいております。
 
 報告書のサブスタンスについて、大きな方向性は前回の研究会までと変更はございませんけれども、表現ぶりを含めまして若干の改訂が行われているところでございます。また、「はじめに」や「おわりに」などがつけ加えられているものでございます。
 
 それでは、この報告書(案)の資料に沿いまして、概要をご説明させていただきます。
 
 目次をめくっていただいて、1ページ目でございます。「はじめに」ということで、本研究会の設置の経緯、あるいはこれまでの状況について述べているものでございます。
 
 2ページの最後のほうで、認定協会が果たすべき役割につきまして、認定協会においては、今後、自主規制機能の十全な発揮に向けて、行政当局と緊密に連携していくとともに、執行体制の充実も含め、実効性の確保に尽力していくことを期待したい。さらに、仮想通貨に関する各種業務の実態を誰もが正確に把握できるようにしていくため、認定協会が必要な統計調査・情報提供の充実を図っていくことが望まれる、と記載しているところでございます。
 
 3ページに進んでいただきたいと思います。まず1ポツということで、仮想通貨交換業者を巡る課題への対応でございます。冒頭に、経緯や状況等について記述がございます。
 
 2つ目のパラグラフの終わりでございますけれども、利用者保護の確保等の観点から、制度的枠組みの改善による対応が適切と考えられる課題について検討を行った、と記載がございまして、以降、それぞれの論点について記述がなされているところでございます。
 
 (1)顧客財産の管理・保全の強化。
 
 ア.受託仮想通貨の流出リスクへの対応でございます。
 
 4ページの2つ目のパラグラフをご覧いただきまして、こうしたセキュリティリスクへの対応としては、まずは、交換業者において、法令等で求められるセキュリティ対策を着実に講じることが重要である。一方で、セキュリティ対策に加えて、流出事案が生じた場合の対応があらかじめ明確であることや、顧客に対する弁済原資が確保されていることも利用者保護の観点から重要と考えられる。このため、交換業者に対し、受託仮想通貨を流出させた場合の弁済方針の策定・公表や、ホットウォレットで秘密鍵を管理する受託仮想通貨に相当する額以上の純資産額及び弁済原資(同種・同量以上の仮想通貨)の保持を求めることが適当と考えられる、と記載がございます。
 
 この点に関しまして、注の11がございます。2行目の真ん中以降、なお、弁済原資として金銭等の安全資産の保持を求めることも考えられるが、交換業者が顧客に対して負っている義務は受託仮想通貨を返還することであることや安全資産の保持額が仮想通貨の価格変動により弁済必要額に満たなくなる場合があり得ること等に留意が必要と考えられる、とあるところでございます。
 
 本文に戻りまして、イ.仮想通貨交換業者の倒産リスクへの対応でございます。
 
 5ページに進んでいきまして、(ア)受託仮想通貨の保全についてまず論じております。
 
 2つ目のパラグラフの終わりのあたりに、まずは、各仮想通貨交換業者におけるコンプライアンスの徹底が求められる。一方で、仮に、交換業者が適切に分別管理を行っていたとしても、受託仮想通貨について倒産隔離が有効に機能するかどうかは定かとなっていない。このため、受託仮想通貨について、倒産隔離の観点から、交換業者に対し、顧客を受益者とする信託義務を課すことも考えられるが、仮想通貨の種類や受託仮想通貨の量が増加してきている中で、それに対応した信託銀行等におけるセキュリティリスク管理等に係る態勢整備の必要性を踏まえれば、現時点で、全種・全量の受託仮想通貨の信託を義務づけることは困難と考えられる。
 
 なお、今後、仮に、信託銀行等において十分な態勢整備等が図られる場合には、交換業者が可能な範囲で受託仮想通貨の信託を行っていくことは望ましいと考えられる。
 
 また、交換業者の財務の健全性を認識できるようにする観点から、交換業者に対し、貸借対照表や損益計算書をはじめとする財務書類の開示を求めることが適当と考えられる。
 
 さらに、交換業者の破綻時においても、受託仮想通貨の顧客への返還が円滑に行われるようにする観点からは、顧客の交換業者に対する受託仮想通貨の返還請求権を優先弁済の対象とすることも考えられる、としてあるところでございます。
 
 続きまして、(イ)受託金銭の保全でございます。次のページの「このため」のパラグラフに結論部分が書いてございますけれども、受託金銭については、交換業者に対し、信託義務を課すことが適当と考えられる、としているところでございます。
 
 (2)仮想通貨交換業者による業務の適正な遂行の確保でございます。
 
 ア.取引価格の透明性の確保、利益相反の防止でございます。2つ目のパラグラフからでございますが、顧客が妥当でない価格で仮想通貨の取引を行うおそれもあるため、取引価格の透明性を高めていくことや、交換業者による利益相反行為を防止していくことが重要であり、交換業者に対し、以下の対応を求めることが考えられる。
 
 顧客との取引に関し、以下の情報を公表すること。
 
 ①自己が提示する相対取引価格及びスプレッド、または、自己が提供する「顧客間の取引のマッチングの場」における約定価格・気配値及び当該約定価格と自己の相対取引価格との差。
 
 ②認定協会が算出する参考価格及び当該参考価格と自己の相対の取引価格との差。
 
 次の点に行きまして、交換業者が、顧客との相対の取引、「顧客間の取引のマッチングの場」の提供等、顧客に複数の取引チャネルを提供する場合には、利益相反を防止し、かつ、顧客にとって最良の条件で注文を執行するための方針を策定・公表し、それを適正かつ確実に実施するための体制を整備すること。
 
 次のポツに参りまして、交換業者が、顧客から取引注文を受けた場合に、マッチングの場に取り次がず、自己が相手方となって取引を行う場合に、その旨及びそれが最良の条件による執行であった理由を顧客に説明すること。
 
 最後のポツといたしまして、交換業者が、自己が提供する「マッチングの場」に自らも参加することがある場合には、その旨及び理由を説明すること。
 
 イ.過剰な広告・勧誘への対応でございます。
 
 2つ目のパラグラフ、顧客によるリスクの誤認や投機的取引の助長を抑止する観点から、交換業者に対し、以下のような行為を行うことを求めることが適当と考えられる。
 
 ・誇大広告、虚偽告知、断定的判断の提供、不招請勧誘
 ・顧客の知識等に照らして不適当と認められる勧誘
 ・投機的取引を助長する広告・勧誘
 
 ここで、注18でございます。勧誘につきまして、前回までは、ICOのところにつきまして、ターゲティング広告等についての記載がございましたけれども、この仮想通貨交換業者による広告・勧誘につきましても、そのことが該当いたしますので、初めに出てくるこの箇所におきまして、注を記載させていただいているところでございます。
 
 次のページに進んでいただきまして、ウ.自主規制規則との連携でございます。2つ目のパラグラフからでございますが、認定協会への加入を促すとともに、未加入の交換業者に対しても、自主規制規則に準じた体制整備を求める観点から、交換業者について、以下のような登録拒否・取消要件を設けることが考えられる。
 
 ・協会に加入しない者であって、自主規制に準ずる内容の社内規則を作成していない者
 ・社内規則を遵守するための体制を整備していない者
 
 (3)問題がある仮想通貨の取扱いに進ませていただきます。3つ目のパラグラフでございますが、問題がある仮想通貨をあらかじめ法令等で明確に特定することは困難であることが想定され、行政当局と認定協会が連携し、柔軟かつ機動的な対応を図っていくことが重要である。
 
 具体的には、現状、行政当局に対する事後届出の対象とされている、交換業者が取り扱う仮想通貨の変更を事前届出の対象とし、行政当局が、必要に応じて、認定協会とも連携しつつ、柔軟かつ機動的な対応を行い得る枠組みとすることが適当と考えられる、と記載しております。
 
 次のページ、11ページにお進みいただきまして、2ポツ、仮想通貨の不公正な現物取引への対応でございます。
 
 (1)仮想通貨の不公正な現物取引の現状と規制導入の必要性でございます。そのページの一番下のパラグラフからでございますが、仮想通貨の現物取引については、有価証券の取引とは経済活動上の意義や重要性が異なることや、有価証券の取引と同様の不公正取引規制を課した場合に費やされる行政コスト等を勘案すれば、現時点で、有価証券の取引と同様の規制を課し、同等の監督・監視体制を構築する必要性までは認められない。
 
 一方で、利用者保護や不当な利得の抑制の観点から、不公正な現物取引を抑止していくための一定の対応は必要と考えられる、とございまして、内容につきまして、(2)仮想通貨の不公正な現物取引に係る規制の内容をご覧ください。
 
 そのパーツの2行目の真ん中以降でございますが、まずは、交換業者に対し、不公正な行為の有無についての取引審査を行うとともに、そうした行為が判明した場合に、取引停止を含めた厳正な対応を求めることが適当と考えられる。
 
 また、実際に不公正な行為を行う者は、仮想通貨交換業者以外の者である場合も多いと想定されることから、実効性確保の観点からは、行為主体を限定することなく、不公正な行為を罰則つきで禁止することも有効と考えられる。
 
 その場合には、不正行為の禁止、風説の流布等の禁止と同様の規制に加え、有価証券の取引における相場操縦に相当する行為の禁止も課すことが考えられる。
 
 一方で、インサイダー取引規制につきましては、現時点で、法令上、禁止すべき行為を明確に定めることは困難と考えられる。
 
 次のページの「ただし」の段落になりますが、ただし、インサイダー取引のような取引に関しては、交換業者に対し、前述の取引審査の実施に加え、自己が取り扱う仮想通貨に関して有する未公開情報を適切に管理し、当該情報に基づき利益を図る目的で取引を行わないことを求めることが適当と考えられる、とございます。
 
 次のページ、14ページにお進みいただきまして、3ポツ、仮想通貨カストディ業務への対応というところでございます。この点につきましては、これまで「ウォレット業務」と呼んで議論をしていただいたところでございますけれども、世の中におきまして、ウォレット業務と呼ばれているものの範囲が、この報告で想定している範囲よりも広いということでございまして、誤解を招かないようにしたほうがよい、といったご意見を委員の先生方から複数いただいたところでございまして、それに基づきまして、このような表現にさせていただいております。
 
 (1)仮想通貨カストディ業務の現状と規制導入の必要性でございます。
 
 3行目からでございますが、仮想通貨の売買等は行わないが、顧客の仮想通貨を管理し、顧客の指図に基づき顧客が指定する先のアドレスに仮想通貨を移転させる業務につきまして、これを「仮想通貨カストディ業務」と呼んでいるところでございます。
 
 次のパラグラフでございますが、仮想通貨カストディ業務は、以下の点を踏まえると、一定の規制を設けた上で、業務の適正かつ確実な遂行を確保していく必要があると考えられるとございます。以下の点というものは、カストディ業務については、マネーロンダリングのリスク等、交換業と共通のリスクがあると考えられること等が指摘されているところでございます。
 
 次のページ、(2)に進んでいただきまして、仮想通貨カストディ業務に係る規制の内容でございます。仮想通貨カストディ業務を行う業者について、交換業者に求められる対応のうち、顧客の仮想通貨の管理について求められる以下のような対応と同様の対応を求めることが適当と考えられる、と記載されており、具体的な内容が書いてございます。
 
 このうち下から3つ目に、「顧客の仮想通貨の返還請求権を優先弁済の対象とすること」というのをこれまでの記述に追加して記載をしてあります。もともとここに挙げられておりますのは例示でございますので、内容に入っていたものでございますけれども、明確化のためにここに記載したほうがよいというご意見をいただいたため、今回追加して記載をさせていただいております。
 
 16ページ目に進んでいただきまして、4ポツ、仮想通貨デリバティブ取引等への対応でございます。このページの真ん中から下のあたりのパラグラフでございますが、仮想通貨デリバティブ取引については、原資産である仮想通貨の有用性についての評価が定まっておらず、また、現時点では専ら投機を助長しているとの指摘もある中で、その積極的な社会的な意義を見出しがたい。
 
 仮想通貨デリバティブ取引については、これを禁止するのではなく、適正な自己責任を求めつつ、一定の規制を設けた上で、利用者保護や適正な取引の確保を図っていく必要があると考えられる。
 
 (2)仮想通貨デリバティブ取引に係る規制の内容。ア、デリバティブ取引であることを踏まえた対応でございます。
 
 次のページに進んでいただきまして、仮想通貨デリバティブ取引についても、少なくとも、他のデリバティブ取引と同様の業規制を適用することが基本と考えられる。
 
 ただし、証拠金倍率については、仮想通貨の価格変動が法定通貨よりも大きいことを踏まえ、実態を踏まえた適切な上限を設定することが適当と考えられる。
 
 なお、仮想通貨デリバティブ取引については、これを金融商品取引所のような多数の市場参加者による取引が可能な場で取り扱う必要性は、現時点では認められないと考えられる、と記載してございます。
 
 イ.仮想通貨の特性等を踏まえた追加的な対応でございます。仮想通貨の特性についての顧客の認識不足、問題がある仮想通貨の取扱い等、仮想通貨交換業者に求められる対応について、これが仮想通貨デリバティブ取引を業として行う者についても同様に求めることが適当と考えられる。
 
 また、資力や知識が十分でない個人に、これらの害悪が及ぶことがないよう、業者に対し、以下のような対応を求めることが適当と考えられるとございまして、最低証拠金(取引開始基準)の設定。資力等に照らして取引を行うことが不適切と認められる顧客との取引を制限するための措置。顧客に対する注意喚起の徹底、と記載してございます。
 
 (3)仮想通貨信用取引への対応でございます。下から4行目以降でございますが、仮想通貨信用取引につきまして、仮想通貨の証拠金取引と同じ経済的機能やリスクを有するものと考えられ、仮想通貨の証拠金取引と同様の規制の対象とすることが適当と考えられると記載がございます。
 
 次のページ、19ページに進んでいただきまして、5ポツ、ICOへの対応でございます。
 
 (1)ICOの現状と対応の方向性、ア.ICOによる資金調達の現状ということで、一番初めのパラグラフに、ICOというものが何を指しているのかという説明がございまして、それに関して、注の35が付されております。
 
 ICOにつきましては、明確な定義がございませんので、昨今、STOという言葉も出てきておりますけれども、今後どのように呼ばれるということにつきましては、必ずしも見通しがたい面があるところでございますけれども、本研究会で検討された内容は、呼び方のいかんを問わず、電子的に発行されたトークンを用いて資金調達を行う行為全般に妥当するものと考えられる、と述べているところでございます。
 
 次のページ、20ページに進んでいただきまして、一番上の「また」のパラグラフでございますけれども、ICOは、その設計の自由度が高いことからさまざまなものがあると言われているが、トークンの購入者の視点に立った場合には、以下のような分類が可能と考えられるということで、3つほど、分類について記載がございます。
 
 ・発行者が将来的な事業収益等を分配する債務を負っているとされるもの(投資型)
 ・発行者が将来的に物・サービス等を提供するなど、上記以外の債務を負っているとされるもの(その他権利型)
 ・発行者が何ら債務を負っていないとされるもの(無権利型)
 
 イ.ICOに関する規制の現状ということで、諸外国や、我が国における注意喚起や規制などの措置について、記述がされているところでございますが、本日は説明を割愛させていただきまして、次のページ、21ページ、ウ.ICOへの対応の方向性でございます。
 
 ICOについては、さまざまな問題が指摘されることが多い一方で、将来の可能性も含めた一定の評価もあることを踏まえれば、現時点で禁止すべきものと判断するのではなく、適正な自己責任を求めつつ、規制内容を明確化した上で、利用者保護や適正な取引の確保を図っていくことを基本的な方向性とすべきと考えられる。
 
 同様の経済的機能やリスクを有する場合には同様の規制を適用することを基本としつつ、ICOの機能やリスクに応じた規制の対象とすることが重要と考えられる。
 
 その際、ICOの性格に応じて、投資商品の販売と認められるものについては投資に関する金融規制を、支払・決済手段の販売と認められるものについては決済に関する規制を、それぞれ参考としながら、必要な対応を行うことが適当と考えられる。
 
 (2)ICOに関する規制の対応、ア.投資に関する金融規制を要するICOに係る規制の内容。
 
 ICOの特徴がまず書かれておりますけれども、こうした特徴は、いずれも投資家にリスクを生じさせるものであることから、以下のような仕組みが必要となると考えられる。
 
・発行者と投資家の間の情報の非対称性を解消するための継続的な情報提供(開示)の仕組み
・詐欺的な事案等を抑止するための第三者が発行者の事業・財務状況についてのスクリーニングを行い得る仕組み
・不公正な行為の抑止を含め、トークンの流通の場における公正な取引を実現するための仕組み
・発行者と投資家の間の情報の非対称性の大きさ等に応じて、トークンの流通の範囲等に差を設ける仕組み
 
 23ページでございます。「しかしながら」のパラグラフでございますが、購入の対価が私的な決済手段である仮想通貨であったとしても、法定通貨で購入される場合と、経済的効果に実質的な違いがあるわけではないことを踏まえれば、仮想通貨で購入される場合全般を規制対象とすることが考えられる。また、集団投資スキーム持分の購入についても、同様に妥当するものと考えられるとしているところでございます。
 
 (ア)情報提供(開示)の仕組みでございます。トークン表示権利は、事実上多数の者に流通する可能性があるため、第一項有価証券と同様に整理することが適当と考えられる。
 
 また、公衆縦覧型の開示規制が課されているもの、課されていないものがございますけれども、トークン表示権利につきましても、これと同様に整理することが適当と考えられる。
 
 トークン表示権利の開示の内容については、その性質に応じた形で整理していくことが適当と考えられるとしているところでございます。
 
 (イ)第三者による事業・財務状況のスクリーニングの仕組みでございます。
 
 2つ目のパラグラフ、ICOについても詐欺的な事案の抑止や内容が曖昧なトークン表示権利の発行・流通の防止の観点からも、第三者が発行者の事業・財務状況を審査する枠組みを構築することが適当と考えられる、でございます。
 
 次のページに進んでいただきまして、25ページ、上からでございますが、ICOにおけるトークン表示権利を取り扱う業者は、事実上多数の者に流通する可能性がある権利を取り扱うことから、第一種金融商品取引業者と同様に整理した上で、当該業者に対し、発行者の事業・財務状況の審査を適切に実施していくことを求めることが適当と考えられる、としております。
 
 次のパラグラフは、自己募集についてでございます。詐欺的な事案の抑止等の必要性を踏まえると、第三者による審査を経ることが最も望ましいが、トークン表示権利の自己募集についても、禁止するのではなく、適切に規制の対象としていくことが考えられる。
 
 具体的には、発行者に業登録を求め、広告・勧誘規制や説明義務等の行為規制を課すことを通じて、一定の投資家保護を図っていくことが適当と考えられる。
 
 (ウ)公正な取引を実現するための仕組みでございます。
 
 26ページの一番上のパラグラフに進んでいただきまして、トークン表示権利については、独自の流通の場や形態をあらかじめ用意すべき特段の理由はなく、また、流通の場や形態の一部を利用できないようにすべき特段の理由もないと考えられる、と整理をしております。
 
 有価証券の取引に適用される不公正取引規制については、基本的にはトークン表示権利の取引にも同様に適用することが適当と考えられる。
 
 ただし、インサイダー取引規制については、トークン表示権利は、設計の自由度が高い一方で、何が投資家の投資判断に著しい影響を及ぼす重要事実に該当するかは現時点で明らかであるとは言いがたく、インサイダー取引規制の適用については、事例の蓄積や適時開示の充実等が図られた後に改めて検討することが適当と考えられる、としております。
 
 27ページに進んでいただきまして、(エ)トークンの流通の範囲に差を設ける仕組みでございます。
 
 2つ目のパラグラフの2行目からでございますが、例えば金融商品取引所に上場されている場合のように、第三者による適切な審査を経ているなどの利用者保護の観点からの特段の措置が講じられていない限り、トークン表示権利の勧誘を非上場株式の場合と同様に制限することが適当と考えられる。また、自己募集の場合についても同様に勧誘を制限することが適当と考えられる、としております。
 
 続きまして、イ.決済に関する金融規制を要するICOに係る規制の内容でございます。次のページ、28ページに進んでいただきまして、仮想通貨に該当するトークンを含め、発行者が存在する仮想通貨については、利用者保護の観点から、交換業者に対し、発行者に関する情報、発行者が仮想通貨の保有者に対して負う債務の有無・内容、発行価格の算定根拠等を顧客に提供することを求めることが考えられる。さらに、ICOの場合には、これらに加え、発行者が作成した事業計画、事業の実現可能性、事業の進捗等の情報についても、その客観性・適切性に留意しつつ、顧客に提供することを求めることが適当であると考えられる。
 
 なお、ICOについては、仮想通貨交換業者においては、仮想通貨に該当するトークン表示権利の取扱いに際しては、特に厳正な審査を行った上で、問題がないと判断したもの以外は取り扱わない対応の徹底が求められる。また、行政当局においても、トークンの購入者が自己責任で十分に注意する必要があることについて繰り返し注意喚起を行っていくことが重要である。
 
 加えて、金融規制に基づく対応のみでは限界があることも想定されることから、消費者関連機関を含む関係者には、問題事案の性質に応じて利用者保護の観点から、適切な対応を講じていくことを期待したい、とございます。
 
 次のページ、30ページ、業規制の導入に伴う経過措置のあり方でございます。
 
 ページの真ん中のあたりからでございますが、今後、本報告書に沿って、仮想通貨デリバティブ取引等について業規制を導入する際に、みなし業者に係る経過措置を設ける場合には、当該みなし業者に対し、以下のような対応を求めることが適当と考えられる。
 
 ・業務内容や取り扱う仮想通貨等の追加を行わないこと。
・新規顧客の獲得を行わないこと(少なくとも、新規顧客の獲得を目的とした広告・勧誘を行わないこと)。
・ウェブサイト等に、登録を受けていない旨や、登録拒否処分等があった場合には業務を廃止することとなる旨を表示すること。また、登録の見込みに関する事項を表示しないこと。
 
 31ページに進んでいただきまして、なお、こうした対応に加え、みなし業者として事業を行う期間の長期化を回避する観点から、行政当局において、適切な制度上または監督上の対応について、引き続き検討していくことが期待されると記載があるところでございます。
 
 32ページ、7ポツ、「仮想通貨」から「暗号資産」への呼称変更でございます。
 
 2つ目のパラグラフでございますが、一方で、最近では、国際的な議論の場で、「crypto-asset(暗号資産)」との表現が用いられつつあるとございます。
 
 注の66がついてございます。例えば、先月末から今月初めにかけてございましたG20ブエノスアイレス・サミットの首脳宣言において、以下のように「crypto-assets」との表現が用いられている点について言及がございます。
 
 また、これに加えまして、仮想通貨交換業者に対して、法定通貨の誤認防止のための説明義務等が課されているが、なお「仮想通貨」の呼称は誤解を生みやすい、との指摘もある。こうしたことから、法令上、「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」に変更することが考えられる、と記載してございます。
 
 最後のページに、「おわりに」がございます。かいつまんで申し上げますが、実現可能なものから速やかに対応が図られることを期待すること。できる限り柔軟な制度設計を図っていく視点が重要であり、可能な限り、将来を見据えた検討を行ってきたこと。必要に応じて、さらなる検討、対応を行っていくことが重要。国際的な協力が不可欠。利用者においても、一定の自己責任を認識することが望まれ、関係者には、今後とも、不断の取組みを行っていくことを望みたい、という旨が書かれているところでございます。
 
 以上で説明を終わらせていただきます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、皆様方から、ご質問、ご意見等をお出しいただければと思います。どなたからでも、どの点についてでも結構でございます。いかがでしょうか。
 
 では、岩下委員、どうぞ。
 
【岩下メンバー】 
 どうもありがとうございます。今回、この研究会の報告書の(案)を取りまとめていただいた内容につきまして、今、丁寧にご説明いただきました。内容について一々この研究会の内容を十分に反映したものであると思えるところでございました。また、今回改めて追加、変更がございました。例えばウォレット業者について、仮想通貨カストディ業務という呼称を用いること、あるいは、いわゆるターゲティング広告に関する注の位置を変更することなど、従来の説明に加えて、今回変更した部分についても、いずれも同意できるものと考えております。
 
 この報告書の全体について賛成の立場を述べた上で、若干のコメントをもう少し挙げさせていただきます。今回、特に32ページの7ポツの「仮想通貨」から「暗号資産」への呼称変更というのは、これは大変大きな決断であろうと思います。今の法令で、改正資金決済法上に定められた「仮想通貨」を「暗号資産」と呼びかえるということは、しかも、ついこの間改正したばかりものでございますので、いろいろと当局のご苦労も多いと思います。ただ、この報告書の中に書かれているとおり、あるいは国際的な動きを踏まえると、「暗号資産」という名称が定着しつつある中で、日本のみが公式な名称であるということで「仮想通貨」という名称を使い続けるということになると、これはどうも国際的にぐあいが悪いことになるだろうと思いますので、是非ご対応をお願いしたいと思います。
 
 考えてみれば、日本は2015年のFATFのガイダンスに基づいて、世界で最も積極的にこの仮想通貨、暗号資産に対する規制を検討し、また、実質的な対応を当局が大変力を入れて進めてきました。ただ、その中で、2017年の1年間に生じた、極めて異常とも思える仮想通貨の相場の上昇というものが、もともと仮想通貨の法制化、改正資金決済法を制定したときに想定していた状況をかなり大きく変えてしまって、結果として、この仮想通貨があたかも一攫千金を夢見る人のための宝くじのようなものであるというふうになってしまったというのは、関係される業者の方々も含めて、大変不幸なことであったのではないかと私は考えます。
 
 その後、2018年の1年間を通じて、仮想通貨全体の価値は大きく減じました。とはいっても、2年前と比べて、仮想通貨全体のマーケットキャピタライゼーションでいえば、まだ五、六倍の価値を持っているかと思いますので、その意味では、全く価値が無に帰してしまったというわけではありせん。けれども、ビットコインの登場によって国際的な取引がインターネットを用いて容易になったこと、途中に業者を介さなくても、さまざまな送金が可能になったとことは、大きなメリットであると同時に、マネーロンダリングやテロリスト・ファイナンシングを考えれば、大きな脅威でもありました。従来の一攫千金のような話から、仮想通貨が本来持つ機能を果たすべきという議論に変わったとしても、なお、そこには規制で対応するべき点が多々残されているように思われます。
 
 その意味で、今回の報告書で示された変更は、本来こういった事態がよくわかっていれば、最初からこういった形で臨むべきようなものだったと思いますが、規制を率先して導入したことによって初めてわかったことです。また、日本だけでこれをやっても、あんまり十分な効果は上がりませんので、G20等の場で国際的な協力を求めつつ、この仮想通貨全体の、あるいは「暗号資産」と変わったもの全体の適切な発展、あるいはそこが持っているポテンシャルというものが決して失われたわけではないと思いますので、それをポジティブに生かしていくという発想で対応をとっていくのが望ましいのではないかと考えます。
 
 私からの意見は以上でございます。どうもありがとうございました。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、中島メンバー、どうぞ。
 
【中島メンバー】 
 報告書の全体については、特に違和感はありません。短い期間にまとめていただきまして、どうもありがとうございました。全体としては、仮想通貨交換業者に対して、これまで必ずしも規制が明らかでなかった部分について明確にしているという方向性であると理解しております。
 
 例えば、①問題のある仮想通貨は取り扱わないようにする、②不公正な取引は禁止する、③ホットウォレットで保有する量が増えると、業者の負担が重くなるようなインセンティブ付けを行う、④過剰な広告は行わない、といった点が明確に規制されている、規制をしていくという方向性だと思います。
 
 それから、いろいろ問題になっておりますICOにつきましても、投資性を有する証券に近い性格のものについては金商法で規制する一方で、それ以外の部分については、資金決済法で規制の網をかけていくということになっております。この研究会でも「できるだけ広く網をかけていく」ことが望ましいのではないかという議論が多かったと思いますので、そういう意味では、妥当なアプローチではないかと考えております。
 
 全体としての総論はそういうことでございまして、その上で各論について、いくつかコメントを申し上げたいと思います。
 
1つは、セキュリティ対策という面です。本研究会が設置されたのは、今年1月のコインチェック事件というのがやはり大きな契機になっていたものと思います。ご存じのように、この案件では不正アクセスで580億円という巨額の仮想通貨が外部に流出したということで、史上最大というか、最悪の流出金額であったということで、社会的にも大きな問題になったという事案です。
 
それを考えますと、やはり本報告書では、セキュリティ基準を策定して、それを業者がきちんと守るように体制整備をしていくというところが何よりも重要なのではないかと考えます。
 
 この点について、この報告書では、4ページのところで、「業者がセキュリティ対策を着実に講じることが重要である」としているほか、同じページの脚注の10において、「セキュリティ対策については、関係団体等について、技術面からの指針等が整備されることが望まれる」ということで、何か割とあっさり書いてある感じがします。
 
 それから、そうした安全に対する基準ができた場合にも、それを誰がチェックしていくのかということについては、何も記述がないという意味で、ちょっと物足りない感じがいたします。
 
 そういう意味では、安全対策基準の策定あるいは遵守状況のチェックという点について、可能であれば、もう少し突っ込んで書いていただくとよろしいのではないかと考えます。事の重要性からいって、安全対策の徹底について、1項目を設けてもよいのではないかと思っております。
 
 いずれにしても、我が国では、マウントゴックス事件があり、コインチェック事件があり、それから、テックビューロの事件がありということで、3回にもわたって流出事件を起こしてきておりまして、これ以上はこういった流出事件を起こさないようにすることが重要です。この報告書ではぜひそういう固い決意を読み取れるような報告書にして頂きたいと希望いたします。
 
 それから、2つ目が、事業者の最低資本金についての議論です。「現行の1,000万円は低過ぎるのではないか」という議論が何度かあったかと思いますけれども、これがちょっと、私が見た感じでは、報告書の中に見当たらないように思うんですけれども、やはり財務的に脆弱な業者が参入してきますと、業界全体の信頼性にも影響することにもなりますし、十分な安全対策がとられない。当然コストがかかることですから、そういう脆弱な先では十分な安全対策がとられないで、また流出事件を起こすといったことも考えられます。
 
 現状、160社ぐらいの業者が金融庁に登録を求めて殺到していると伺っておりますけれども、このこと自体がやはりハードルが低過ぎるということを端的に表しているのではないかと考えます。金融庁も160社も審査するのは大変だと思いますので、この報告書の中の表現を借りれば、「行政コストの問題」ということで、もう少しハードルを上げた方がよいのではないかということで、報告書に何か書いていただければと思います。
 
 それから、3つ目が証拠金取引の証拠金倍率ですが、これについては、17ページのところにありますが、業界の自主規制案である4倍や、あるいは海外の事例にある2倍というのが出発点になるのだと思います。最終的にはヒストリカル・ボラティリティなどを見ながら、内閣府令で決めていくことになるものと思いますけれども、米国の先物取引所では約2倍になっておりますし、EUの規制でも2倍になっている中で、日本だけが4倍にするという合理的な理由はなかなか見出しがたいのではないかなと考えております。他の委員の方からも、2倍を支持する意見があったように記憶しております。
 
 それから、4点目は、みなし業者の長期化の回避ということで、31ページに書いてありますけれども、やはりみなし業者というのは、あくまでも過渡的な措置でありまして、やはりいたずらに長引くことは好ましくないのではないかと考えております。
 
 この点については、報告書では、31ページのところで、「行政当局において引き続き検討していくことが期待される」とか、脚注の65では、「一定の期限を設けることも考えられるのではないかとの意見があった」ということで、かなり腰の引けた表現になっておりまして、何かあんまりやりたくなさそうな書き方になっています。多分これは多数のみなし業者が発生してきたような場合に、期限を区切ってあると、行政手続が間に合わなくなるようなケースを懸念されているのではないかと思いますけれども、むしろ原則としてはやはり一定の期限内でやるということにしておいて、もし何か特段の事情が生じた場合には、それを一定期間延長できるというような決め方にしておけば、そういう問題は回避できるのではないかと考えます。やはり「経過措置は長引かせない」というのが原則ではないかと思います。
 
 それから、5点目ですが、新たな仮想通貨を取り扱う際の手続ということが10ページに書いてありまして、事前届出の対象にするということになっておりますので、その点はいいのではないかと思いますが、1点、仮想通貨の世界では、事業者が仮想通貨の発行者から「一定量のコインの提供を受ける」などの経済的な便益を受けて、いわゆる「上場させる」というケースがみられています。そうしますと、例えば株式の世界で「大した企業ではないけど、金を払うから上場してくれ」というのはかなりまずい事態だと思いますが、仮想通貨の世界では実際にそういうことが起きているということです。このため、仮想通貨の発行者との利害関係について、やはり注意喚起が必要だと思います。
 
 一つは、事前届出の内容に含めさせるということがあり得ると思いますし、もう一つは、顧客に対する情報提供の中に含めるということもあり得ると思いますけれども、いずれにしても、そういう点が、顧客ないし行政サイドに対して開示されるということが必要なのではないかと思います。
 
 ということで、総論賛成のうえで、各論について、幾つかコメントを申し上げました。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、お隣の永沢メンバー、どうぞ。
 
【永沢メンバー】 
 ありがとうございます。おまとめいただきました報告書については、私は全て賛成でございます。その上で、念のために確認させていただきたいことが2点と、それから、意見を4点ばかり述べさせていただきたいと思います。
 
 まず質問ですけれども、8ページ目のイ、過剰な広告・勧誘への対応のところですが、本報告書は、資金決済法という法律の改正に向けたものですので、これ以上踏み込んで、記載は必要ないとは思いますが、どこで具体化していくのかについて、再度確認させていただきたいと思います。
 
 それから、24ページです。第三者による評価とありますが、この第三者というのはどこが想定されているのかをもう一度確認させていただきたいと思っております。
 
 また、その第三者というのは、ICOがわが国で今後どのようなスピード感で具体化してくるのかはわかりませんが、仮にすぐにこれが日本で行われるとして、具体的にすぐに動ける体制にあるのかもお聞きできたらと思います。
 
 続いて意見でございます。
 
 第1点としては、16ページのところになりますが、今回の研究会では、我々メンバーの仮想通貨に対する現時点の評価はかなり消極的な評価にならざるを得ない結果となりましたが、その点を報告書にも明確に書いていただいたことは、私としてはこれはよかったことと思っております。それが1点目でございます。
 
 そして、2点目としては、利用者への注意喚起として、仮想通貨の利用や投資は自己責任であるということを本報告書では強調して記載いただいたと認識しておりますが、この点も私は評価しております。先ほど中島メンバーからもご指摘ありましたように、仮想通貨の取締りに行政コストをかけ過ぎることに対して、我々は消極的であるというところも書かせていただいきましたが、その分、仮想通貨についてどのように具体的に注意喚起をしていくのかというところ、消費者庁や国民生活センターなどとどのように連携して注意喚起を具体的にしていくのか等が課題になるであろうと考えております。注意喚起については、抽象的に「リスクがあります」というのでは足りません。場を改めて具体的な議論をし、また、各所からも意見を求めることや海外の事例なども参考にして行くことが必要と考えます。消費者団体・グループとしても、そうした議論に参加したいと思っております。
 
 それから、3点目ですが、これも中島メンバーのご指摘と重なりますが、登録を待っている事業者数が100社以上もあるということですが、登録業者数が多くなりすぎると、行政コストをかけないで監督をするということができるだろうかということも心配されます。私も、登録要件のハードルは現行よりも上げてもいいのではないかと考えます。登録業者が100を超えるような状況で、行政コストをかけ過ぎず有効に監督ということが可能かという視点、再検討も必要なのではないでしょうか。
 
 最後になりますけれども、今回の規制の見直しに関して、自主規制を担う認定団体の役割が非常に重要で、責任も大きいものということを再確認いたしました。行政と協働して、自主規制が機能するように、しっかりと活動していただきたいと思っておりますが、これは認定団体のほうへの質問になるかもしれませんが、どのような体制、具体的には何名体制ぐらいでこれから自主規制機関を運営されるご予定かについて情報提供をいただけたらと思っております。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 そうしましたら、順序は逆になりますけれども、奥山さん、最後のところをもしお答えいただければ。お願いします。
 
【奥山オブザーバー】 
 仮想通貨交換業協会、奥山でございます。ご質問にご回答させていただきます。
 
 9月12日の第5回において、仮想通貨交換業に関する自主規制の概要をご説明させていただいた際に、当協会のその時点での体制状況ですとか、こういったところを簡単にご説明させていただいたことを記憶しておりますが、あの計画のとおり、10月24日には、資金決済法87条の認定をいただいたわけでございますが、現時点で、当協会はおおむね19名の職員が専任として従事していただいておる状況になっておりまして、計画に従いまして、20名強の体制までは持ち上げていくところが現在予定されております。
 
 また、今後も自主規制の内容等、増加していくことが検討されますので、適宜状況を見ながら、増員をかけていきたいと思っております。
 
 現在、登録仮想通貨交換業者が16社でございまして、20名の体制を年間維持するというのもなかなか自主規制のコストも重たい状況とはなっておりますが、この辺の、いわゆる自主規制に関するコストもにらみながらということではございますが、コストにかかわらず、やるべきことはしっかりやっていくという姿勢をしっかりと維持したまま、自主規制をまずしっかりと立てていく、回せるようにしていく。よってもって、それを基盤としながら、利用者保護と市場の健全な発展に資する状況を目指してまいりたいと思っておるところでございます。
 
 以上、ご回答申し上げました。
 
【神田座長】 
 よろしゅうございますでしょうか。永沢委員、今の点。
 
【永沢メンバー】 
 こういう質問をしては、ちょっといけないのかもしれませんが、何社ぐらいの会員であれば、逆に言えば、しっかりした自主規制機関としてワークできるのか。16社じゃおそらく無理だと思いますけれども、どんなものなのかというところも。差し支えない範囲で教えていただけたらと思います。
 
【奥山オブザーバー】 
 ありがとうございます。ここには認定自主規制団体のベテランの皆様がいらっしゃるので、もう口幅ったいわけでございますが、私自身がやっております業者も金商業者でもございますし、日本証券業協会も金融先物取引業協会も資金決済業協会も加盟させていただいておる状況の中でも、やはり数が多くなればなるだけ、1社当たり負担していくべき自主規制のコストというのは按分化されていく形になります。また、市場がしっかりと利用者も抱え、売上げもやはり業界自体がつくれるということになりますので、当然コンプライアンスにかけていくコストも多大なるものを提供していくような状況ができ上がってまいります。
 
 また、同様に認定団体ともなりますと、段階的にではございますが、業容に応じた形での自主規制のコストをご負担いただくということも各業者のほうにお願いしていくこともできるようになりますので、そういった部分で言いますと、コンプライアンスを充実させるにも市場の健全な発展との両輪のアプローチというのがとても大事であると思います。
 
 ですので、一概に何社がいいというのは何とも言えないところではあるわけですけれども、やはり現在の16社というのはいささか少な過ぎる状況であろうかと思っております。もちろん適切に運営していただくという業者様が、しっかりと一つ一つ増えていくということが大事だと思っており、やみくもに増えたらいいというふうには思っているわけではございません。一つずつ丁寧に増えていく中で、市場の発展とあわせて、業者の数が増えていただくということ自体が自主規制を円滑に回すために大事なことなのではないのかなと思います。
 
 すみません。数が言えなくて申し訳ございません。
 
【永沢メンバー】 
 ありがとうございました。
 
【神田座長】 
 ありがとうございました。
 
 それでは、報告書(案)についてのご質問については、事務局からお願いします。
 
【小森市場課長】 
 永沢メンバーが確認なさりたいとおっしゃった2点でございますが、まず1点目が広告・勧誘への対応ということで、報告書の8ページに関するものでございます。具体的には今後検討させていただきますが、例えば府令やガイドラインなどで、より具体的な内容というのが定まっていくことが想定されるところでございます。また、ものによりましては、自主規制団体にもご協力をいただきながら、細部を定めていくということになるのではないかと考えております。
 
 それから、2点目がスクリーニングをする第三者は何かということで、ご質問いただいたところでございます。こちらにつきましては、24ページに、(イ)第三者によるスクリーニングの仕組みと題して論じたパーツがございます。投資型のICOというのが現状存在しないため、誰がスクリーニングするのかというのがわからない部分がございますけれども、既存の資金調達の例といたしましては、例えば第一種金融商品取引業者が第三者としてスクリーニングをしております。あるいは小さなものであれば、第一種少額電子募集取扱業者等がこのスクリーニング等の役割を果たしていくといったことでございまして、今後出現していく投資性ICOトークンの性質等によって、こうしたものに類した者が第三者として登場してくるのではないか、ということが考えられるところでございます。
 
 それから、永沢先生と中島先生がおっしゃった点に関して、幾つかつけ加えさせていただきます。参入に関してのバリアをどうするのか、といったご指摘があったと思います。
 
 それにつきましては、例えば仮想通貨交換業について、今回、仮想通貨カストディ業務も仮想通貨交換業になるわけでございますけれども、その場合に仮想通貨交換業というのが、一つの固まりとして、同質性の高いものとして捉えられるのかどうかというのは、議論が必要なところであろうかと思います。
 
 規模などが大きくなった仮想通貨交換業者のみを想定して、それに対する資本規制を求めていくのか、あるいはベンチャー的な形で仮想通貨交換業が存在することも許容するのか、といった論点ではないかと考えております。
 
 今回の報告書の(案)に含まれておりますのは、ホットウォレットにあるものについては、別途、その財務の確保を求めるということで、そのオペレーショナルリスクや、あるいはその業者が行っている事業の規模に応じて、資金的な規制がかかってくるといった形になっております。そうしますと、ベンチャー的なものも存在し得るし、あるいは大きな業務を行うものについては、それに応じた重い規制がかかるという対応がされているところでございます。こうしたことについて、メンバーの方からさらにご議論があれば、ご意見をいただきたいと思っておるところでございます。
 
 それから、よろしいですか。
 
【神田座長】 
 はい、どうぞ。
 
【小森市場課長】 
 中島先生のおっしゃった件で、証拠金倍率につきましては、ご指摘いただいた点を含めまして、結局その仮想通貨の原資産のボラティリティがどうであるかに強く依存する問題でございますので、実施するときの足許の状況に合わせた形で、適切な倍率に設定していくということになろうかと存じます。
 
 それから、みなしの長期化の問題でございます。ご指摘いただいたとおりですけれども、実際に何社出てくるのか、というのが事前に推測がつかない状況でございますので、一定の期間をあらかじめ区切るというのは少し難しい点もあるのではないか、と思っているところでございますけれども、それでもなお、見通しがつかない状況というのが好ましくない、というご意見だと思いますので、報告書の中にその旨を記載させていただいているところでございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、ほかにいかがでしょうか。福田先生、どうぞ。
 
【福田メンバー】 
 私も特にこの報告書(案)、全面的に賛成です。よくまとめていただいたというふうに思っております。
 
 若干この報告書に対する感想というか、私の印象ということだけを最後、手短に述べさせていただきます。
 
 関係するのは、「仮想通貨」か、「暗号通貨」かという点に関してでございまして、この報告書(案)の内容は、ほぼ「暗号資産」と呼んだほうがいい内容に関する記述になっているということなんだろうと思います。そういう意味では、この大きな問題点というのが、「暗号資産」的な側面で出てきて、それに関していろいろと問題点があって、どうにかしなければいけないという報告書になっているんだろうとは思います。
 
 ただ、我々が当初、仮想通貨に期待したことはあって、議論もやはりブロックチェーンによる安価で便利な決済の機能というものを期待して始まったものだったわけです。実際この報告書では、そのような当初期待した役割は何ら否定していないし、何ら問題点があるという報告書にもなっていないということだと思います。そういう意味では、この報告書を、「仮想通貨」と呼んでいいか、「暗号通貨」と呼んでいいかわかりませんけど、そういうものをこれからは否定するような報告書というよりかは、むしろ現状の「暗号通貨」に非常に偏ってしまった大きな問題点は指摘して、それを規制すると同時に、本来持っている、我々が当初期待していたブロックチェーンによる決済の機能というものをむしろ育成していくような方向性の側面も持つということを、私がこの報告書にひとつ期待したい役割だということだけを述べさせていただきたいと思います。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、森下メンバー、どうぞ。
 
【森下メンバー】 
 ありがとうございます。お取りまとめをいただきまして、ありがとうございました。私としては、現時点において、日本として、いろいろな問題に対処していく上での必要なルールのメニューというのは、おおむね今回のこの報告書の中でカバーされているのではないかというふうに思います。
 
 これまでルールが不明確なので、いろいろビジネスがしにくかったというような声もあったと思うのですけれども、今後ルールが明確になるということによって、ビジネスがやりやすくなる部分が出てくると、そのような方向で今回の取組みが進むと非常にいいなというふうに考えております。
 
 私は、「おわりに」のところにかなりいろいろ重要なメッセージが含まれていると感じておりまして、例えば国際的な協力が不可欠であるということが書かれてあります。これはほんとうに、例えば規制の実効性を確保する上でも重要だと思いますし、諸外国との連携というのは大変重要なポイントかと考えております。
 
 そういった観点からは、今いろいろな国でこのような仮想通貨、暗号資産に関する取組みについて、英文でこういうことをしますといったことを積極的に広報していると思いますので、この報告書などにつきましても、できるだけ早い段階で英文でどんどん、日本としてはこう考えるのであるということを打ち出していっていただくといいのではないかと感じております。
 
 あと、その上のところですが、イノベーションに配慮しつつ、利用者保護を確保していく観点から、リスクの高低等に応じて規制の柔構造化を図ると。必要なさらなる検討・対応を行っていくというふうにお書きいただいていると思います。この点も非常に重要かと思います。
 
 今回、いろいろな規制の見直しをいたしましたけど、基本的には、従来、仮想通貨として考えられていたようなものの範囲というのは依然として、何らかの規制に服すると。例えば、2号、仮想通貨も含めて考えればですね。いろいろなものが、結構幅広いものが規制の対象になるのではないのかなというふうに理解をしております。
 
 他方で、仮想通貨ですとか暗号資産を使ったビジネスのありようというのは、フルに行うような仮想通貨交換業や本格的なICO以外にも、トークンやユーティリティコインと呼ばれるようなものをビジネスの一部に組み込むなど、いろんなビジネスモデルが考えられるのかなと思います。そうすると、比較的リスクが小さいようなものも出てくるかと思いますので、私としては、まさにここにお書きいただいているように、リスクの高低等に応じて規制の柔構造化を図れるような法的な枠組みに最終的にはしていただくのがいいのではないかと思います。
 
 場合によっては、例えば仮想通貨版のレギュレトリー・サンドボックスと言うと、ちょっと言い過ぎかもしれませんけど、いろいろやってみながら、リスクの所在などを当局としても把握・発見できるというようなことがサンドボックスにはあるというふうにも言われておりますので、ビジネスや技術の発展の速さや規制の柔構造の必要性に鑑み、リスクに応じて、場合によっては規制を減免するということが望ましい場合もあるのではないかということを考えますと、ここの部分というのはぜひ前向きに考えていただければなと考えております。
 
 あと、最後に、今回この暗号資産ということに関しまして、仮想通貨交換業ですとか、カストディ業務、あとは金商業としての規制がかかってくる部分とか、いろいろな部分が一つの暗号資産と呼ばれるものに関係してきます。従来は仮想通貨交換業だけでよかったと思うんですけれども、今度、その仮想通貨交換業だけではなくて、金商業もかかる、場合によっては、カストディ業務に関する規制というものも出てくると。いろんな規制が新たに登場しますので、その相互関係につきましては、ぜひわかりやすい形で整備をしていただけるといいのではないかというふうに感じております。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、坂メンバー、三宅メンバー、楠メンバーの順で。坂メンバー、どうぞ。
 
【坂メンバー】 
 お取りまとめありがとうございました。若干の点、今後重要と思われる点も含めて意見を述べさせていただければと思います。
 
 まず現物の取引について3点ほどです。
 
 1点目ですけれども、問題がある仮想通貨については、今回、交換業者やウォレット業者でも多分扱わないということになるんじゃないかと思うんですけれども、こういった枠組みについては、仮想通貨の選別を行って、問題のない仮想通貨についてはきちんとした管理を行って、問題のある仮想通貨については、実質的に取扱いを抑制するということを企図するものと理解をされます。それはそれで一つのあり方ですけれども、2点、留意が必要かと思います。
 
 一つは、選別の基準のあり方で、問題仮想通貨を的確に排除することが必要かと思います。ここは技術的な観点からの検討も必要ですので、ぜひ自主規制機関と監督官庁に適切な目配りをお願いしたいと思います。
 
 いま一つは、問題がある仮想通貨についての対応で、注意喚起等によって、一般の利用を遠ざけるということが必要であるとともに、なお、これを利用する取引については、マネロンですとか、あるいは資産隠し等の防止の観点から、ブロックチェーン自体を適切に監視していくということも必要なのではないかと思います。
 
 それから、2点目ですけれども、価格の透明性確保ですとか、あるいは利益相反の防止というのは、健全な取引環境の確保の観点から、極めて重要と思います。各社、自主規制機関によるモニタリングが実効的に行われることを期待したいと思います。
 
 この点に関しては、利用者や一般への情報開示が重要というふうに思います。広く情報開示が行われれば、利用者や一般による監視機能を期待するということもできようかと思います。自主規制機関や監督機関が情報を抱え込むと、そこに責任と負担が集中して、コストも要するということになろうかと思います。
 
 監視コストの節約の観点からも、広く情報を開示し、利用者や一般が日常的に監視できる環境をつくって、利用者からの指摘がある場合に、適切に対応を行うというあり方が重視されるべきなのではないかというふうに思います。
 
 それから、3点目ですけれども、投機の対象として用いられたことに鑑みて、広告・勧誘規制が入っておりますけれども、これは極めて重要と思います。8ページの注の18に、ターゲティング広告やアフィリエイトに関する問題提起がありますけれども、ターゲティング広告が勧誘に近いものとなってきていることに留意が必要です。投資商品については、一般に不招請勧誘が適切でないと思われますけれども、同様にターゲティング広告が行われることも一般的には適切ではないというふうに思っておりまして、特に仮想通貨やICOトークン等については、これを禁止する必要性は高いのではないかと思います。
 
 アフィリエイトについては、多面的な検討が必要と思いますけれども、利用者が契約に至る過程の重要な一部になるというふうに思われますし、そこにおける情報提供の適正が確保される必要もあろうかと思います。
 
 この実効確保のためには、注に記載されていることも重要ですけれども、やはり交換業者が適切にチェックをしていくということも重要で、証券業協会等の広告規制等の中では、そういった規律も入っているかと思いますけれども、そういったことも含めた実効的な規律が期待されるのではないかと思います。
 
 それから、次に、デリバティブ取引についてですけれども、これについては、価格の透明性がここでも重要であると思いますので、その点を指摘しておきたいと思います。
 
 それから、ICOについてですけれども、ICOについては、基本的に20ページにありますとおり、投資型、それから、その他権利型、無権利型があるということが前提になっておって、投資型については、金商法を下敷きにして、規制、枠組みを整える。その他、権利型と無権利型については、資金決済法の仮想通貨規制を下敷きに規制、枠組みを整えるという方向が示されていると思います。
 
 わかりやすい図としては、前回の資料3の最終ページに、横長の図があったと思います。基本的にはあのような形で規制、枠組みを整えるというのがこの場での趣旨かと思います。
 
 ICOについて3点ですけれども、まず1点目、消費者相談の現場対応について、少しお話をしておきたいと思うんですけれども、おそらく今回の規制整備によって、ICOトークンの販売については、金商業者としての登録または仮想通貨交換業者としての登録を要するということが明確化されるということになると思います。詐欺的な商法への対応には迅速な対応が求められるところ、詐欺的なICOは、多くが無登録で行われるというふうに見られ、登録の有無を確認して、無登録を指摘するということは、迅速な解決を図る上での重要な一つの視点になるだろうと思います。
 
 無登録業者に対しては、民事的には、特定商取引法ですとか、あるいは消費者契約法等の消費者保護法も活用しながら解決を図っていくことになると思いますけれども、注の中でも触れていただいていますが、無登録取引を原則無効とする規律についても、引き続き検討いただければと思います。
 
 なお、民事的には、決済型のICOトークンを含めて、金販法の適用対象とすることも必要なのではないかと思います。
 
 それから、詐欺的なICOでは、ICOトークンについて、上場されれば価値が上がるかのように勧誘する事例が見られますけれども、こういった勧誘のあり方は、かつての未公開株詐欺と基本構造が似たようなところがありまして、虚偽説明や虚偽告知、公序良俗違反に該当するというところは重ねて指摘をしておきたいと思います。
 
 他方で、登録業者においては、整備される規制、枠組みのもとで、適切にICOを活用することが期待されると思いますけれども、もしトラブルとなったときには、それぞれICOの型によって規制されている法律の対応に応じて見ていくということになるんだろうと思います。
 
 投資型のICOについては、金商法に基づいて、一般投資家への流通を抑制する規律が入りますので、これに違反がないか、勧誘等に問題がなかったかということを検討することになると思いますし、決済型については、販売が認められたICOトークンかどうかということを確認した上で、勧誘等の問題点について検討していくということになるんだろうと思います。
 
 それから、2点目ですけれども、これまでも、これも指摘してきたところではありますけれども、ICOにおいては、利用者がトークンによって得ることができる権利ですとか、あるいは、モノ、サービスというものが的確に把握、認識されて、適切に価格水準の判断ができるという環境が重要と思いますので、この点についてはぜひ留意をお願いしたいと思います。
 
 それから、3点目です。この点も前回か、前々回あたりにご指摘あったかと思いますけれども、アービトラージの防止という観点は非常に重要かと思います。アービトラージというふうに横文字で言うと、スマートな印象がありますけれども、要は、脱法と言うと言い過ぎかもしれませんが、脱法と紙一重のものも存在するのだろうと思います。
 
 もともと利用者保護等の観点から、理由があって規制が入っているわけで、この規制を回避するということは、利用者保護等を回避する姿勢というふうに社会的に見られるのではないかと思います。また、モノやサービスの質や、あるいは製造やサービス提供過程の効率化を競うのではなくて、いわば本来の競争条件から外れることによって、競争上の優位を得ようとするということなのであれば、これは公正な競争条件の確保や、健全な競争の観点からも問題だろうと思います。アービトラージはかえって、リーガルリスクやリーガルコストを高めるということも起こり得るだろうと思います。
 
 こうした観点に鑑みると、できるだけアービトラージを誘発しないように、きちんと規制、枠組みをつくっておくということも重要でありますけれども、やはり現在、規制がある程度縦割りの中で、技術革新等によって、アービトラージが行われやすい環境があるというのもまた事実だろうと思います。アービトラージと見られる不適切な事態が生じたときには、実質的な解釈、運用に基づく法執行によって、適切にその対応を図っていくということが重要ですし、必要に応じて、規制範囲や規制方法について迅速な見直しを行うということも必要かと思います。
 
 今回、この仮想通貨についても一まとまりの方向性が出ておりますけれども、やはり今後とも事態が動いていくと思いますので、引き続きこういった観点からも検討をお願いできればと思っております。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、次に、三宅メンバー、どうぞ。
 
【三宅メンバー】 
 報告書のお取りまとめをいただきまして、ありがとうございました。これまで本研究会で議論されてきたさまざまな論点が的確に整理されており、内容自体には全く違和感はございません。
 
 既にほかのメンバーの皆様からもかなりご意見が出されておりますので、重複する部分もあるかと思いますけれども、私からは、実効性の確保という観点と、今後の展望という観点から若干コメントさせていただければと思います。
 
 まず実効性の確保という観点で、関係する主体別に申し上げたいと思います。
 
 まず最も重要な主体は、交換業者ということになるかと思います。ところが、改めて、報告書(案)の「はじめに」や「おわりに」といったところを拝見しますと、認定協会の記載はあるのですが、交換業者に関する直接的な記載があまり見受けられません。もちろん、当たり前のことですので、あえて書いていないということなのかもしれませんが、この点、すなわち交換業者こそが一番重要な主体で、きちっと規制を守らなければならないといったことは改めて書きこんでも良いのではないかと思いました。
 
 どういうことかといいますと、交換業者においては、これまでのようにいたずらに業容拡大だけを目指すのではなく、自らの内部管理体制や経営資源、こういったものを踏まえた上で、提供するサービスを選定する。顧客本位の業務運営を追求していくといったことが求められるのではないかと思います。
 
 利用者に対して一定の自己責任を求めるということについては私も賛成ですが、その大前提として、やはり一般個人にもわかりやすい形で、幅広く情報を開示していくといったことも必要になるのではないかと思います。
 
 次に、認定協会ですが、これは当然、会員に対するモニタリングが求められるということですけれども、認定協会自身についても、例えば自主的に第三者によるモニタリングを受けるといったように、自らのガバナンス強化に意を用いていただきたいと思います。
 
 それから、最後に、監督当局ということですが、認定協会との連携、あるいは認定協会に対するモニタリングが求められますし、当然、海外当局との連携も必要不可欠になってまいります。来年、わが国がG20議長国ということもございますので、国際的な議論を主導していただければと思います。
 
 こうした主体とは直接関係ありませんけれども、実効性の確保という観点では、先ほど来、幾つかご意見が出されておりますように、8ページの脚注18に挙げられているターゲティング広告やアフィリエイト広告についても、大変重要な問題であると考えられます。ただ、この点については認定協会だけで対応していくというのも、やや限界があるのではないかと思われますので、やはり横断的な検討を今後行っていく必要があるだろうと思います。
 
 それから、次に、今後の展望という観点で申し上げます。
 
 「おわりに」のところで、今後、「必要に応じて更なる検討・対応を行っていく」と、書かれており、これは非常に重要なことだと思いますが、今後検討を行う際には、仮想通貨の社会的意義がその時点でどのようになっているのかといった点を踏まえる必要があるかと思います。
 
 また、法律面で言えば、仮想通貨の私法上の位置付け。これには信託法上の取扱いも含まれると思いますけれども、こうした法的な位置付けについて検討が進んだ段階で、当然、制度的な対応についても改めて検討を行う必要性が出てまいります。
 
 今後、こういった仮想通貨の社会的意義や法的な位置付けを判断していく上では、取引の実態を見る必要があるということで、やはり最も重要になってくるのは交換業者であるということになるかと思います。
 
 交換業者に関しては、こういった点を改めて認識した上で、適切なサービスを提供して、利用者利便の向上、あるいはイノベーションの促進といったところを目指していただきたいと思います。
 
 私からは以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、楠さん、どうぞ。
 
【楠メンバー】 
 ありがとうございます。検討の間にもさまざまな事件等も含めて起こっている中で、これほど短期間に的確な内容をまとめていただいたことをまずは感謝をさせていただきます。
 
 特に顧客資産の保護という、最も重要なところと、これまで法的にグレーであったICOや証拠金取引の法的な位置づけといったところについて、こういった形で報告書が出たということは非常に大きな前進だというふうに考えております。
 
 一方で、最後の「おわりに」のところで触れられているように、非常に日々目覚ましい変化を遂げている世界でありますし、これからもいろいろなことが起きていく中で、これはお上任せでやっていくことではなくて、きちっと認定自主規制団体をはじめとして、民間でもきちっと議論をしていって、日々刻々と起こっていることと向かい合っていかなきゃいけないということだというふうに理解をしております。
 
 そういった観点から、特にこういったことが明確化していく中で、イノベーションをきちっと育てていけるのかという観点から、何点かコメントをさせていただければと思います。
 
 1点目は、特にこれまで銘柄に関しまして、どちらかというと、交換所で取り扱う銘柄というのが事後申告になっていたものが、今回、事前にきちっと評価をするということになっておりまして、これはきちっと厳格に中身を見ていくためには非常に重要な点だと思うんですけれども、一方で、1点懸念しているのは、分裂の問題でありまして、先般も例えばビットコインキャッシュという仮想通貨、ビットコインキャッシュABCと、ビットコインキャッシュSVに分裂するという事件がおきました。これまで、分裂の際には、大体どちらがメーンになるかというのがはっきりしていて、マイナーのほうの価値というのは、メーンの10分の1ぐらいの価格まで下がっていたので、仮に主たる残ったものだけを取り扱っていても、それほど顧客資産を毀損しないということは起こらなかったんですけれども、今回、分裂から1カ月近くたっても、片方が90ドル、片方が80ドルということで、ほぼ値段として拮抗しておりまして、今後分裂の取扱いというのはしっかりと認定自主規制団体のほうで考えていただかないと、最終的に顧客資産というのは保護されにくい状況というのが考えられるように思います。
 
 例えばですけれども、全体としては事前規制にするんですけれども、分裂をした場合には、3カ月か6カ月の経過を見て、改めてその両方を評価するですとか、分裂を前提としたルールというのをしっかりとつくっていく必要があるように思います。
 
 もう一点、特に、当初ウォレットとして議論していたものをカストディ業務というふうに位置づけていただいたということは、特にFATFでKYCの義務を課すべきものの範囲との整合という点で非常によかったと考えております。
 
 一方で、カストディではないウォレットに対して、ほんとうに何ら規制が必要がないのかという点で申しますと、やはり先般のザイフ事件の追跡等をやっている中でも、そういったカストディ型ではないウォレットから盗まれたお金が送金指示がされているような実態もございますので、例えばアドレスの照会に対する警察への対応であったりですとか、ログの保存と、必要な場合の提出といった形で、非カストディ型のウォレットに対しても何らかの規制をかけていくということは考えられるように思います。
 
 一方で、これを日本国内だけでやっても全く意味がない話でして、どちらかというと、それこそFATFのような場所で、いわゆるKYCをきちっと必要とするようなカストディ型のウォレットの議論に加えて、それ以外のフルノードや、非カストディ型のウォレットを運営している者についても、少なくともインターネットサービスプロバイダー等と同等の通信事業者と似たような、ごくごく当たり前の義務というものはひょっとして、考えられるのではないかというふうに思います。
 
 一方で、これは金融の話ではなくなってくるので、果たして金融庁さんの所管になるのか、あるいは、サイバー犯罪条約とか、そのほかの枠組みの中で処理をしていくべきかという点は議論があろうかと思います。
 
 もう一点は、おそらく業務に差しさわりのある仮想通貨という議論というのは、匿名通貨を念頭に議論をされているんじゃないかというふうに思われますけれども、この点について、やはり現金も同様ですけれども、重要なことはそれぞれの銘柄がどのような技術的特徴を持っているかということも重要なんですけれども、行為として、それをどのように使おうとするかというところがより重要でありまして、例えばビットコインであっても、ミキシングサービス等を利用することによって、匿名で利用することも可能ですし、おそらく今後ビットコインのバージョンアップで、匿名性が増してくるということは十分に起こり得ると思います。
 
 一方で、匿名通貨と呼ばれているものの中でも、非匿名で取引をするようなトランザクションを投げるということも可能な場合もあると。そうすると、当面、その銘柄で見るというのはわかりやすいですし、現実的なところではあるんですけれども、今後、認定自主規制団体の中でどういった取扱いを考えていくかという点では、徐々に、その銘柄に縛られた議論をしていくよりも、実態として取引を隠そうとしているのか、適切に広く公開をしたり、あるいはきちっと適切にマネーロンダリングリスクに対して対処をした形で取り扱おうとしているのかといったことに対する、行為規制に近い形に変わっていくのではないかというふうにも考えております。
 
 最後に、今後さまざまな、今回のこの結論を受けて、トークンの議論というのが出てくると思うんですけれども、実際にさまざまな権利を表章したトークンというものが出てくる場合に、それが実際に日本法において有効なのかというのは、いわゆるトークンの交換における法制度の問題ではなくて、例えば民法上の対抗要件をはじめとして、さまざまな金融の分野にとどまらない法律との関係が出てまいりますので、こういったことに関しても、きちっと民間でも勉強していきますし、政府でも金融庁にとどまらない前広なご検討というのをしていただければというふうに思います。
 
 ありがとうございました。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、加藤メンバー、どうぞ。
 
【加藤メンバー】 
 ありがとうございます。私も本日取りまとめていただきました報告書の内容に異論はございません。私もこの研究会に参加することができ、非常に勉強になりました。ありがとうございます。
 
 私が意見を申し上げたいのは、この報告書で提言させていただいた事項を具体的な制度に落とし込む際に、どういった点に注意して欲しいかということについてです。
 
 まず、今回、「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」に変えることによって、これまで資金決済法が想定していた仮想通貨とは異なる目的で発行されるものも含む総称として「暗号資産」という呼称を利用することになるわけですけれども、その結果として、暗号資産の内容が多様化し、かつ、規制上の取扱いも多様化していくように思います。
 
 そうすると、暗号資産を買う人にとって、自分が何を買っているのかということが非常に重要になってくると思います。つまり、どんな種類の暗号資産を買ったかによって、自分が規制上、どういった保護を受けているのかということに差が出てくる可能性があります。このような差異は、金融の機能の違いですとかリスクの違いに着目すれば、合理的なものではありますけれども、投資者、特に消費者が暗号資産を買う場合には、そういった規制上の差異というものを考えて買う人はあまりいないと思います。ですから、投資者が何を買っているのかということをちゃんと明確に意識できるような体制が望ましいと思います。
 
 そういった観点で、報告書の例えば12ページで、仮想通貨にも顧客間の取引のマッチングの場があるという表現は非常に重要だと私は思います。仮想通貨について取引所があるとは言っていないということです。あえて取引所という言葉を避けているのではないかなという気がしています。
 
 一般の人が取引所という言葉から抱くイメージは、東京証券取引所のように、透明性が高い一定のルールに従った、監督も受けている交換の場であって、現実に存在する仮想通貨の顧客間の取引をマッチングする場とは、実情が相当程度に異なると思います。
 
 さらに、もう一点、26ページの注の50にある、上場という言葉についての記述です。上場によって流動性が高まるかという点では、株式の場合と同じく暗号資産についても交換業者が扱うようになれば、流動性が高くなるという点は理解できます。しかし、誤解を避けるという点では、やはり上場という言葉は慎重に使うことが望ましいと私は考えております。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 そういたしますと、大体メンバーの方々から一通りご意見いただきましたけど、遅れていらっしゃった神作先生、もし何かあれば。よろしゅうございますか。
 
 オブザーバーの方々、もし何かあれば伺いたいと思いますけど、奥山さん、どうぞ。
 
【奥山オブザーバー】 
 改めまして、交換業協会、奥山でございます。資料をまとめていただきまして、まことにありがとうございました。
 
 交換業16社からなる自主規制団体として、総論としてこちらを受けとめながら、金融庁様と連携してしっかり自主規制が回るよう、取り組んでまいりたいと考えております。
 
 先ほど小森課長からご指摘、ご返答もいただいておりましたレバレッジの件でございますが、4倍で良いと思っているわけではございません。当面、基本、4倍と設定しながら、ボラティリティですとか、あるいは通貨ごとの変動要件ですとか、そういったものをしっかり見守りながら、業界の行き過ぎた25倍という水準は是正していくための措置であると私どもとしては認識しております。また、ESMAですとか、海外におけるボラティリティ規制も2倍でフィックスされている規制ではございませんで、やはり流動的にボラティリティを見ながら変動するルールになっていると認識しておりますので、そういったところも踏まえながら、今後の状況を見守りながら適切な自主規制が運営できるという形の中で取り組んでまいりたいと考えております。
 
 また、ICOに関するご指摘が幾つかありましたが、発行者と交換業者が利害が一致した形の中で、便宜を図るという行為がないようにということで、注意喚起、情報提供を促していく必要があるというようなご指摘をいただいたかと思います。当座、その交換業者が取り扱おうとするものにつきましては、自主規制団体も審査を行うことになりますので、そういった利益相反行為であるとか、あるいは協業で利益を得ようとするような行為。こういったところが著しく出ていかないようにというところは、自主規制団体としましてもしっかりモニタリング、審査のほうをしてまいりたいと思っておるところでございます。
 
 あと、すみません。1点だけ、申し訳ございません。僕の読み違いかもしれないですし、誤認であればお許しください。25ページの(ウ)の4行、一番最後の手前のパラグラフですが、具体的には、「集団投資スキーム持分等の自己募集と同様に、発行者に業登録を求め」というふうに、これは明確に記載されておりまして、ということでいうと、今後、仮想通貨を発行しようとする者は、交換業登録をするということになるのかなというふうにも読み取れる文面でございまして、もちろん交換業者の自主規制であり、そういったところのルールに準拠した形での発行を行ってもらわなきゃ困るというところは当然のことでございますし、これを交換業者の中で売買させる分においては、ちゃんとそのルールに則ったものでないと売買させないんだというところは、これは理解できるところでございますけれども、発行者自体が交換業登録をしないといけないというふうに私は読めておりまして、そうではないのであればというようなところで、ここは一言申し添えさせていただいた次第でございます。
 
【神田座長】 
 ありがとうございます。
 
 では、小森課長。
 
【小森市場課長】 
 最後のご指摘の点ですけれども、この投資性のICOについては、例えば金商法の世界をイメージして議論が行われております。ここでいう発行者の業登録というのは、その上にありますように、例えば第二種金融商品取引業者としての登録を求める、といった文脈で書かれております。したがって交換業者とは位置づけが異なる業登録になると考えております。
 
【奥山オブザーバー】 
 了解いたしました。ありがとうございます。
 
【神田座長】 
 よろしいでしょうか。ほかのオブザーバーの方、もし何かあれば伺いたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
 
 それでは、大体、今日、事務局からお示しさせていただきました報告書(案)の中身と方向性については、皆様方のご賛同をいただけたというふうに理解しております。ただ、物足りないということで、幾つかさらに書き加えるなり、工夫があったほうがいいのではないかという、各論的というか、具体的なご指摘もいただいたところです。
 
 そこで、こういう時期ですので、私としても大変迷うところで、もう一回お集まりいただくかどうかということなのですけれども、まあ、私の感じでは、もう一度皆様方にお時間をとってお集まりいただくまでの必要はなく、今日いただきましたご指摘で盛り込める部分を事務局において盛り込んでいただいて。それで、あと、皆様方にはその修正したものを取りまとめとして、メール等でご覧いただくというようなことでよろしいのではないかというふうに感じますので、そういう意味では、本日、皆様方からいただきましたご指摘で、盛り込めるものについては盛り込むという作業をさせていただき、「てにをは」その他、表現の平仄などの精査させていただく必要がありますので、こういった作業を、恐縮ですけれども、私のほうにご一任いただいて、修正というか、最終的なバージョンを皆様方にご覧いただいて、取りまとめとさせていただくということにしてはいかがかと思いますけれども、どういたしましょうか。もう一回お集まりいただくことも不可能ではありませんけれども、今、私が申し上げたような方法でよろしゅうございますでしょうか。
 
 どうもありがとうございます。それでは、そういう方向で作業をさせていただき、皆様方にご確認、ご覧いただくということにさせていただきます。その上で、取りまとめたものの公表等の取扱いについては、大変恐縮ですけれども、私にご一任いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
 この研究会は、本年の4月10日から11回の会合を重ねてまいりました。メンバーの皆様方には、大変お忙しいところを、仮想通貨あるいは暗号資産を巡る非常に幅広く、かつ、非常に難しい諸論点について、大変精力的なご議論、ご示唆、また、前向きのいろいろ提言をいただきまして、まことにありがとうございました。この場をおかりして、厚く御礼申し上げます。
 
 皆様方には今後もいろいろとお教えいただく機会も多いと思いますけれども、研究会としては、本日をもって取りまとめの最後の会と言うのでしょうか。区切りということとさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

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