平成14年7月23日
金融庁

金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律施行令(案)及び金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律施行規則(案)に対するパブリックコメントの結果について

金融庁では、標記法令案について、平成14年6月26日(水)から7月16日(火)にかけて公表し、広く意見の募集を行いました。ご意見を提出いただいた皆様には、法令案の検討にご協力いただき、ありがとうございました。

本件に関してお寄せいただいたご質問・ご意見の概要及びそれに対する金融庁の考え方は以下のとおりです。

【内容についての照会先】

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3517、3644)


Q1 [ご質問・ご意見の概要]

金融庁として、本法令の内容について、なんらかの方法で広く国民の理解を得られるように周知されたい。

A1 [ご質問・ご意見に対する考え方]

本法令の本人確認及び取引記録の保存制度は、テロ資金供与及びマネー・ローンダリング防止の観点から、広く金融取引全般を対象とするものであり、国民経済活動に影響を及ぼすものであります。そこで、当該制度を実施するにあたっては、金融機関等及び顧客等双方において、当該制度の必要性と当該制度手続に対する御理解を得ることが肝要であり、そのために今後の広報活動に力を傾注してまいりたいと考えております。

Q2 [ご質問・ご意見の概要]

金融等業務の中で、「政令で定めるもの」とは、どのような業態を想定しているのか。例えば、全労済・全生協等の消費生活協同組合法に基づく共済事業その他の共済事業についても、本法令の対象業務とすべきではないか。

A2 [ご質問・ご意見に対する考え方]

金融機関等及び金融等業務の範囲は、基本的に、テロ資金供与、マネー・ローンダリングに利用されるおそれがあるとして組織的犯罪処罰法における疑わしい取引の届出義務の対象と整理された金融機関等と同一として決定されたものです。今後、疑わしい取引の届出義務とともに、本人確認・記録の保存義務の対象としてどのような業態が加えられていくかについては現段階では未定ですが、例えば「FATFの40の勧告」の見直しに関する国際的な議論など、テロ資金供与、マネー・ローンダリングを防止するための更なる検討を踏まえ、新しい金融商品の開発等、金融市場の成長も注視しながら、適切に対応していくべきものと考えております。

Q3 [ご質問・ご意見の概要]

取引記録の作成が必要な「金融等業務に係る取引」は、具体的にはどのような範囲のものか。例えば、顧客等との間で行われるものに限定して良いか。社員への給料支払などの取引も含まれるのか。

A3 [ご質問・ご意見に対する考え方]

「金融等業務に係る取引」とは、「金融等業務」に係る取引全般であり、上記御質問への回答(A2)と同様に、テロ資金供与、マネー・ローンダリングの観点から本法律と同様の目的を有する疑わしい取引の届出の対象となる取引とパラレルに解すべきものです。そこで、「金融等業務に係る取引」とは、基本的には顧客等との取引を中心とする概念ですが、金融機関等の固有業務に限定するものではなく、例えば、金融機関等の金融等業務において、金融機関等の固有業務に深く関連を有する取引や、大きな資金の移動を伴うような取引については、顧客等との直接の取引ではなくても対象となり得ます。

一方、ご指摘の社員への給料支払のような純粋な内部取引は「金融等業務に係る取引」にはあたらないと解するものとします。

Q4 [ご質問・ご意見の概要]

金融機関等は、預貯金契約の締結等の取引「を行うに際しては」、顧客等の本人確認を行わなければならない。しかし、「を行うに際しては」という文言からは、必ずしも時間的な先後関係が明らかではない。本人確認を完了するまでは取引を行ってはならないという趣旨か、又は、取引の実行と同時若しくは実行後に本人確認を行うことで足りるという趣旨か。

A4 [ご質問・ご意見に対する考え方]

「行うに際しては」の文言は、「行うためにはあらかじめ」とは異なり、本人確認対象取引を行うために、本人確認が完了していることを必ずしも求めるものではありません。ただし、少なくとも、社会通念上「取引を行うに際しては、」と言えるためには、取引を行う場合に本人確認手続きが開始しているなど、合理的期間内に終了することが予測される状況であることが必要であり、例えば、本人確認書類に記載されている住居に、取引関係書類を送付し、返送されないことをもって確認する方法により本人確認を行う場合には、取引時に、当該住所に向かって取引関係書類を送付する手続きを開始する程度の段階にあることは必要と解しております。

Q5 [ご質問・ご意見の概要]

自動契約受付機コーナーにおける取引は、「対面取引」と同様の解釈で良いか。

A5 [ご質問・ご意見に対する考え方]

「対面取引」と扱ってよいと解しているところです。

自動契約受付機コーナー等を利用した取引が「対面取引」と認められるためには、少なくとも、

(1) テレビカメラ等で顧客の挙動確認が逐次なされていること、

(2) 確認書類である身分証明書の真偽を確認するに十分な画面の大きさと解像度を有する確認システム(テレビカメラ・スキャナー等)を有していること、

が必要であるが、一般に自動契約受付機コーナーはこれらの要件を充たしていると考えられます。

Q6 [ご質問・ご意見の概要]

顧客等が法人である場合において、取引を担当する部署に部長・課長・平社員といった内部階層があるときは、誰が「取引の任にあたる」ものとみなされるのか。例えば、部長印で法人のための契約を締結するけれども、実際の交渉は平社員が行っている場合はどうか。

A6 [ご質問・ご意見に対する考え方]

「取引の任にあたっている自然人」とは、実際の取引の相手方であり、実際に交渉にあたっている人間です。この条文は、実際の権限者が行っている場合には問題にならず、会社名や、社員名を利用して実体の無い取引を行おうとしている人間が窓口に現れた場合に、直接当該者の本人特定事項にかかる情報を捕捉しようとする趣旨ですので、実際の交渉者の確認が必要となります。

Q7 [ご質問・ご意見の概要]

規則6条において、団体扱い保険に係る契約を締結する被用者については「取引の任に当たっている自然人」の本人確認をもって個別被用者の本人確認に代替できる旨規定されている。ここでいう「取引の任に当たっている自然人」とは、人事部担当者など団体扱い制度を管理している部門の担当者という理解で良いか。

A7 [ご質問・ご意見に対する考え方]

「取引の任にあたっている自然人」とは、実際の保険取引の相手方であり、実際に取引を行っている者です。団体取り扱い制度を管理している部門の担当者が保険取引業務も行っているのが一般ですので、このような場合には当該者が「取引の任にあたっている自然人」と解されることとなります。

Q8 [ご質問・ご意見の概要]

クレジットカードの付随機能であるカードキャッシングについては、本法の適用対象外とされたい。また、対象外と出来ない場合は、200万円までの取引を本法の適用対象外とされたい。

A8 [ご質問・ご意見に対する考え方]

クレジットカード会社も貸金業者であり、貸金契約の締結が、大口現金に係る取引に限らず、全て本人確認の対象業務とされている以上、クレジットカード会社の行う貸金契約の締結契約のみを法律の適用除外と解したり、多額の資金の移動を伴うものに対象を限定するのは、他の貸金業者との均衡を欠き、困難と考えております。

Q9 [ご質問・ご意見の概要]

既に本人確認済みの法人である顧客等が合併、営業譲渡等により他の法人に事業を承継した場合、本人確認済みの顧客等とみなすべきではないか。

A9 [ご質問・ご意見に対する考え方]

顧客等として、本人確認済みの法人と、本人確認済みではない法人が合併等を行い、新法人となった場合、当該新法人は、旧本人確認済みの法人と当然に同じ法的主体とは言えず、原則として本人確認済みの顧客等とはみなせないものと解されます。ただし、当該新法人が前本人確認済みの法人と経済実体上同一と見なせるような事情が特にある場合には、本人確認済みの顧客等とみなせる場合も有り得ると考えられます。

Q10 [ご質問・ご意見の概要]

過去の本人確認は、どの程度の期間有効なものとして取り扱われるのか。

A10 [ご質問・ご意見に対する考え方]

本法の施行前に、本法の規定に準じ顧客等を特定するに足りる事項の確認を行い、かつ、当該確認に関する記録を作成してこれを保存している場合には、当該取引は、本人確認済みの顧客等との取引とみなすこととしています。このような場合、当該記録が保存されている限り、有効に本人確認済み顧客等とみなされることとなります。

施行後に本人確認を行っている顧客等との取引に関しては、当該本人確認記録が保存されている限りは本人確認済みの顧客とみなされます。

ただし、本人確認後、非常に長期間、取引が休眠していたにもかかわらず、突然顧客が現れたような場合には、組織的犯罪処罰法上の疑わしい取引の届出対象取引や、なりすましの疑いがある本人確認対象取引として対応することも考えられます。

Q11 [ご質問・ご意見の概要]

証券業協会公正慣習規則第9号において「仮名取引の受託の禁止」が謳われているが、一方で細則において「名義人の配偶者及び二親等内の血族である者が名義人本人の取引にかかる注文であることを明示して有価証券の売買その他の取引等を発注した場合には本人名義の取引とみなす」という規定がおかれており、注文を受けることができる。

本人確認法においては、法人取引における取引の任に当たっている自然人の本人確認も必要とされていることに鑑みると、上記の場合にも、発注者本人の本人確認も必要となるのか。

A11 [ご質問・ご意見に対する考え方]

ご指摘の事例が、証券口座の開設等の本人確認対象取引にあたる場合で、本人確認済みの顧客等との取引にあたらない場合であれば、本人確認法第3条第2項に規定する、「現に預貯金契約の締結等の取引の任に当たっている自然人が当該顧客等と異なるとき」に該当することから、当該取引における取引の任に当たっている自然人の本人確認が必要となるところ、発注者本人の本人確認も必要となります。

Q12 [ご質問・ご意見の概要]

「証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律」の成立により改正された「社債等の振替に関する法律」に定める加入者保護信託契約については、主務大臣の認可を受け、振替機関を委託者、信託会社等を受託者、補償対象債権を有する加入者(適格機関投資家等を除く。)を受益者とする信託契約であり、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等又は薬物犯罪収益等の隠匿及び収受に利用される虞がないので、本法第3条に規定する「預貯金契約の締結等の取引」の対象から除外していただきたい。

A12 [ご質問・ご意見に対する考え方]

ご指摘の法律の改正に伴う政省令の整備の際に併せて措置する予定です。

Q13 [ご質問・ご意見の概要]

施行令第3条第1項第4号に掲げる取引につき、受益者の変更は実際に行われたが、受託者たる金融機関等が受益者の変更を知らない時点では、当該金融機関等に変更後の受益者にかかる本人確認義務は無く、受益者の変更を知らないことについても当該金融機関等に注意義務は無いと解してよいか。

A13 [ご質問・ご意見に対する考え方]

当該規定は、金融機関等が受益者の変更を認識した時点で義務が生じるとするものであり、認識以前には、変更後の受益者に対する本人確認義務も生じないものです。また、本法は、金融機関等が通常の業務における善管注意義務以上に、特に受益者の変更を知ることに関する注意義務を金融機関等に課すものではありません。

Q14 [ご質問・ご意見の概要]

運転免許証の住所変更は、はがき等の利用により可能であることから、住民票記載の真の住所と異なる住所の記載された運転免許証が存在し得るが、本人確認としての有効性をどのように担保するために、金融機関はどのように対応すべきか。

A14 [ご質問・ご意見に対する考え方]

本法令は、金融機関等が顧客と取引関係を有する場合に、当該顧客の本人特定事項を公的証明書により確認し、当該記録を作成・保存することを要請するものです。これは、金融機関等に、業務における通常の善管注意義務以上に、顧客の提示した本人確認書類の内容の真実性の調査義務まで課すことを趣旨とするものではありません。

一方、この場合、顧客が自己の住所情報を隠ぺいする目的で、真の住所と異なる住所の記載された運転免許証を提示した場合は、本人特定事項の真実告知義務違反として罰則の対象となる余地があると解されます。

Q15 [ご質問・ご意見の概要]

本人確認記録における取引記録を検索するための事項と、取引記録における本人確認記録を検索するための事項とは、どのようなものか。

A15 [ご質問・ご意見に対する考え方]

具体的に、いかなる事項をご指摘の事項として保存するかは、各金融等業務において適切に判断されるものと解されます。本人確認記録における取引記録を検索するための事項とは、個別の顧客の本人確認記録が存在する場合に、当該顧客の取引記録の履歴が検索できるために十分な情報であり、取引記録における本人確認記録を検索するための事項とは、個別の取引に係る取引記録が存在する場合に、当該取引を行った顧客の本人確認記録を検索するために十分な事項です。どういう事項であれ、上記の要請に応えられる記録の保存を行っていれば、当該金融機関等は本法上の義務を果たしているといえます。通常は、口座番号等、金融機関内で顧客情報と取引情報を結びつけるための事項を意味しておりますが、このような手段ではなく氏名や住所などで整理している場合は、このような事項を保存することとしてもよいと考えられます。

Q16 [ご質問・ご意見の概要]

規則第2条2号ロにおける年金の金額の合計とは、終身年金等の場合にはどのように計算されるのか。

A16 [ご質問・ご意見に対する考え方]

年金総額の計算は、原則として支払額の総額を基準とすることとします。ただし、確定年金であれば問題ありませんが、ご指摘の終身年金等の場合では、支払額の総額は無限大に及ぶ可能性があります。この場合、年金支払の総額を計算しなければなりませんが、その方法は社会通念上、終身年金等の年金支払総額の計算として適切と判断される基準であれば足りると解され、具体的に年金の原資の額を利用するか、平均余命を利用するか、その方法の選択は金融機関等の実務における合理的な判断によるものとします。

Q17 [ご質問・ご意見の概要]

共済組合並びに使用者が国家公務員共済組合法、地方公務員共済組合法、私立学校教職員共済組合法、労働基準法に基づき組合員並びに労働者から給与天引きで資金を集め、その制度における資金運用の一環として、その全部又は一部を信託しているものであれば、規則第1条第1項第4号に掲げる信託契約に該当すると考えてよいか。

A17 [ご質問・ご意見に対する考え方]

ご指摘の解釈どおりです。

Q18 [ご質問・ご意見の概要]

非対面取引における本人確認方法として、本人確認書類に記載された住所に「書留郵便若しくは配達記録郵便又はこれらに準ずるもの」により取引関係文書を送付する方法において、宅配事業者による宅配便を利用することが可能か。

A18 [ご質問・ご意見に対する考え方]

宅配業者による宅配便でも、送付先の受領が確認され、転送不要として送付されるものであれば、当該規定の「書留郵便若しくは配達記録郵便又はこれらに準ずるもの」にあたるものと解することができます。

Q19 [ご質問・ご意見の概要]

規則第3条1項1号トにより、口座振替契約については「口座振替元の金融機関(以下、取扱い金融機関等という)が本人確認を行い、かつ、当該本人確認記録を保存していることを確認する方法」が本人確認方法として認められているが、あらかじめ取扱い金融機関等との間で自己のために本人確認を行うことに関し合意があることが必要とされている。この場合の合意については必ずしも新たな契約書を作成せずとも、既存の委託契約の文言を生かしたまま、その文言の中に本法による本人確認が含まれる旨を別途当事者間で文書等の形で明らかにすることでも良いか。

A19 [ご質問・ご意見に対する考え方]

同規定における「合意」は、必ずしも文書による合意を要請しているわけではありませんが、言うまでもなく、「合意」の存在を証明することが出来ることは肝要です。ご指摘のような対応をしていれば、上記の要請に対応できると考えられます。

Q20 [ご質問・ご意見の概要]

口座開設時等に届出た印鑑と、その後の取引の際の印鑑を照合することでは、本人確認として不十分ではないか。実印の押印と印鑑登録証明書の提示を求めるべきではないか。

A20 [ご質問・ご意見に対する考え方]

本人確認の方法として、書類の提示のみで本人確認を完了するための本人確認書類としては、実印の押印と当該印鑑登録証明書を要求しているところですが、一方、実印以外を利用して口座開設する場合には、印鑑登録証明書に記載する住所への文書の送付を更に義務付けることにより、顧客と被証明者の同一性を図っております。一方、口座開設以後の取引においては、当該本人確認済みの顧客と、取引を行おうとしている人間の同一性を担保できればよい(本人確認済みの確認)ことから、例えば、通帳の提示とともに、届出られた印鑑と取引の際に所有している印鑑の照合を行えば足りると考えております。

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