平成14年12月26日
金融庁
「金融商品販売法の施行状況の調査、点検」の結果について
平成14年8月に金融庁が公表した証券市場の改革促進プログラムの項目の1つとして、施行後1年半余たった「金融商品販売法」の施行状況の調査、点検を年内に行うこととしました。
これを受けて8月以降、金融商品販売法の施行状況を調査してまいりましたが、この度、その調査等の結果をとりまとめ公表することといたしました。
[お問い合わせ先]
金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課 鈴木(内線3508)、岡(内線3516)
金融庁
平成14年12月26日
金融商品の販売等に関する法律の施行状況の調査、点検の結果
I . 調査の概要
1. 調査の目的
金融商品の販売等に際し、顧客に説明すべき事項及び金融商品販売業者(以下、「業者」)が当該事項を説明しなかったことによって当該顧客に損害が発生した場合の損害賠償責任、並びに勧誘の適正の確保等に関して規定する「金融商品の販売等に関する法律(以下、「金融商品販売法」)」は平成13年4月1日に施行された。今般、証券市場の改革促進プログラム(平成14年8月金融庁発表)の項目の1つとして、施行後1年半余たった金融商品販売法の施行状況の調査、点検を年内に行うこととしたことから、本調査を実施したものである。
2. 調査対象
(1)アンケート調査
アンケートについては、「業者」と消費者行政機関の「相談員」を対象としたものを実施した。このうち業者については、全国銀行協会正会員及び準会員、日本証券業協会会員、生命保険協会会員を対象とした。また、相談員については、国民生活センターや都道府県、政令指定都市の消費生活センターに所属する相談員を対象とし、このうち197人から回答を得た。
[対象及び回収率等] 対象 回答数 回収率 銀行 185行 178行 96.2% 証券会社 279社 278社 99.6% 生命保険会社 42社 41社 97.6% 消費者行政機関 60先 49先 (197人) 81.7% (2)ヒアリング調査
ヒアリング調査については、消費者行政機関(国民生活センター)、業者団体(全国銀行協会、日本証券業協会、生命保険協会)、消費者団体(金融オンブズネット)、有識者(金融消費者に関する問題に詳しい弁護士)を対象に実施した。
3. 実施時期
アンケート調査:平成14年10月
ヒアリング調査:平成14年8月~10月
II . 調査結果の概要
1. アンケート結果の概要
(1)業者向けアンケート
総論的には、業者内部における金融商品販売法の周知状況をみると概ね周知徹底されており、一方、外部に対しても適正に勧誘方針を策定・公表しているとの回答であった。
勧誘方針の内容をみると、「顧客の知識・財産・経験の状況に応じた勧誘を行うこと」、「商品やリスクの内容等に関して適切な説明を行うこと」、「顧客の不都合な時間帯や場所での勧誘を行わないこと」については、ほとんどの金融機関で記載されていた。その他、「内部研修の実施」や「関係法令の遵守」等を内容とするものが多かった。
勧誘方針の公表方法については店頭ポスター掲示、店頭閲覧、ホームページ上の掲載によるものが多く、これ以外の方法で公表している業者はあまり多くなかった。また、金融商品販売法の施行にあわせた相談窓口等の改善についても、対応したとする業者の割合は低い水準にとどまった。さらに、金融商品販売法施行後、その実施状況について消費者団体・弁護士等との意見交換等を行った業者はごく少数にとどまっている。
金融商品販売法の事業への影響については、「販売しやすくなった」、「広告・説明がしやすくなった」、「顧客の質問が多くなった」との回答が1割程度見られたが、全体としては8割弱の業者が「特に影響は無い」と回答している。
(2)消費者生活センター等相談員向けアンケート
金融商品販売法施行以降、短期的には金融機関によるリスク説明及び勧誘についての苦情・相談件数は概ね変化はないとの回答が多かった。
相談員はかなりの割合で金融商品販売法の内容を「だいたい理解している」ものの、約2割の相談員は同法の対象等について「あまり理解していない」と回答している。また、金融商品販売法を有効に利用する機会が増えると考える割合も7割を超えており、金融商品販売法に対する期待も大きいものがあると思われる。
ほとんどの相談員は金融知識の習得方法として参考図書や金融商品のパンフレット等を参考にした自習をあげた。一方、インターネットを通じて習得したとの回答は1割程度に留まった。また、相談員が金融知識の習得をするにあたって特に負担を感じることは、「情報量が少ない」、「対象商品が多く、複雑な商品が増えているため、自力学習は困難」、等があげられた。
また、相談員から見た金融商品販売法の消費者への周知状況については、ほとんどの消費者が知らないようであるとの回答であった。有効な金融商品販売法の消費者への周知方法については、「学校教育の一環に含める」、「販売時に金融商品販売法の概要を説明させる」等があげられている。
2. ヒアリング調査における意見の傾向
(1)金融トラブルについて
「金融関連の苦情・相談は(中期的には)増加傾向にある。金融商品の多様化や運用難等を背景に、なれないリスク商品を購入し、これが苦情等につながるケースが目立つ」、「全くの説明不足や断定的判断は減っており、訴訟に至る等のトラブルは減少しているようであり、金融商品販売法の抑止力効果が一部機能しているといえるのかもしれない」等の意見があった。
(2)金融商品販売業者等の対応
「業者団体としては、金融商品販売法導入に伴い、会員業者を集めて各種説明会を開催する等、周知に努めた」、「業者は勧誘方針の策定・公表を行うとともに、金融商品販売法に係る内部研修や販売マニュアル等を整備している」等の意見があった。
(3)周知状況について
「金融商品販売法の消費者への周知状況は極めて低く、今後も周知に努めるべき」、「消費者センター等との連携等の工夫も必要」、「金融以外の相談の方が多く、金融商品販売法についても研修はあったものの、多くの相談員は金融の相談には苦労しているのではないか」、「金融商品の販売・勧誘に関する民事ルールという性格上、消費者の認知度が低いのはある意味、やむを得ないのかもしれない」等の意見があった。
(4)勧誘方針について
「ネット証券等で特徴のある勧誘方針が公表されているものの、全般的には横並び的、かつ具体性に欠けるものが多く、改善余地があるのではないか」、「コンプライアンスに関する業者間競争は、一部にその萌芽は認められるものの、十分とはいえない」、「勧誘方針の調査を公表したところ、業者等から問い合わせや意見交換を求められ、さらに調査の対象業者が自らの勧誘方針を若干見直した例があった」等の意見があった。
(5)制度の利用状況について
「現在までのところ、金融商品販売法単独で提訴しているものはないと思う。しかし、ある程度のタイムラグはあるが、今後、徐々に使われていくのではないか」等の意見があった。
(6)その他
「業者の言い訳にしてはいけないが、金融知識の普及は重要」等の意見もあった。
III . 対応
金融商品が多様化等していく中で、金融商品販売法は一層重要なものとなってきているものと思われる。そこで今回の調査結果も踏まえ、以下のような対応をとることとしたい。
(1)パンフレットやホームページ等による金融商品販売法等の広報活動の継続・改善を検討する。(業者団体を通じて業者の協力も要請)
(2)消費者生活センター等の相談員へ金融商品販売法を含む金融情報を提供し、トラブルに見舞われた金融知識を求める人等に対しての金融関係情報の伝達改善に努める。
(3)学校における金融教育の一層の推進について文部科学省に要請する。(11/14実施済)
(4)金融広報中央委員会等を通じた金融商品販売法を含む金融知識の普及・啓発活動に、積極的に取り組む。
(5)各業者は勧誘方針を公表する等の対応をしているものの、これを顧客が十分認知しているとは言えないとの調査結果であった。そのため、各業者が勧誘方針の公表方法の工夫に一層努めるよう、業者団体を通じて要請する。
(6)勧誘方針を顧客の取引判断に一層資するものとするために、調査結果を踏まえて各業者がそれぞれ自らにふさわしい勧誘方針の内容改善に努めるよう、業者団体を通じて要請する。
(7)なお、金融庁としては金融商品販売法に係るコンプライアンスの状況について通常の検査監督業務を通じてチェックしており、引き続き各業者における勧誘方針に関するコンプライアンスの状況についてもしっかりチェックしていくこととする。
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