平成14年10月15日
金融庁

「証券市場の改革促進プログラム」に対するパブリックコメントの結果について

8月6日に公表した「証券市場の改革促進プログラム」について、広く意見の募集を行いましたところ、数多くのご意見をお寄せいただきありがとうございました。

本件に関して、お寄せいただいた主なコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方は下記のとおりです。

なお、プログラムに盛り込まれた具体的な施策の実施については、いただいたご意見も参考としながら、今後とも、スピード感をもって着実に実施していきたいと考えています。

(内容についての照会先)

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課有泉(内線3604)、一松(内線3606)


販売代理店制度

販売代理店制度の導入について、

(1) 責任の所在を明確化する制度や苦情やトラブルに対応する制度が必要。

(2) 代理店の、証券業以外の本来業務との利益相反に関する規制及び監視が必要。

(3) 取扱商品については当面は投信・変額個人年金に限定してはどうか。

(4) 責任の所在を明確化するため、証券代理店については一社専属が適当ではないか。

(5) 金融機関に、登録金融機関に認められている業務の範囲内で、証券代理店となることを認めるべき。

(6) 保険会社の代理店も兼ねることが出来るのか。

(7) ファイナンシャル・プランナーが投資家サイドに立った営業を行うため、複数の証券会社の代理店になれるようにすべき。

証券代理店制度の具体的なスキームについては、いただいた御意見等を踏まえながら、代理店が、適正なコンプライアンスを確保しつつ、証券市場における競争促進を図っていくとの観点から、その組織形態、業務範囲、規制方法等について幅広く、金融審議会でご議論いただくこととしています。

資産管理型営業

証券会社の資産管理型営業を促進することは望ましいが、行政がビジネスのあり方について方向付けることは困難ではないか。証券会社の競争・参入促進等により、証券市場を活性化するほうが望ましいのではないか。

今回のプログラムは、あくまで証券会社の自己の経営判断で新たな業務展開を可能とするための環境整備を行うものであり、証券会社に資産管理型営業を押し付けるものではありません。

また、プログラムには、最低資本金の引下げ等により、証券会社の競争・参入を促進し、証券市場を活性化する施策も盛り込まれているところです。

現行制度においても証券会社が投資顧問業を兼業することはできるが、兼業を行った証券会社の業務範囲が限定されるほか、現在の制度ではあえて証券会社が投資顧問業を兼業し、資産管理型営業を目指すだけの制度上の利便性に欠けると思われる。

証券会社が投資家の期待に応える業務運営を行うことを通じた投資家の市場参加を促進する観点から、資産管理型営業への移行など、証券会社の新たな業務展開を可能とする方策を今後検討してまいります。

商品の種類にかかわらずポートフォリオの額に応じて手数料をとることや、手数料に成功報酬の要素を入れることにつき、特段の規制はないものと理解しているが、この理解で差し支えないか。

証券会社が預かり資産の額に応じて手数料を設定するルールや、投資顧問業者が運用実績に基づき手数料を設定するルールを定めることについては、証券取引法及び投資顧問業法上は、特段の規制はありません。

取引一任勘定取引の範囲の見直し

取引一任勘定取引に係る規制を緩和する場合には、投資家保護にもとる行為が横行することのないよう、証券会社内の管理体制並びに行政上の監視体制の整備が必須ではないか。

証券会社の行為規制等に関する内閣府令第1条第4項において、証券会社が取引一任勘定に係る契約を締結する際には、十分な社内管理体制をあらかじめ整備することが義務付けられています。

また、行政上の監視体制強化についても、引き続き努力してまいります。

投資単位の引下げの促進

投資単位の引下げを促進するためには株券不発行制度の導入や印紙税の軽減等、上場会社のコスト負担を軽くする措置を同時に進めるべきである。また、既に十分な流動性がある銘柄についてまで投資単位の引下げを強制する必要はないものと考える。

投資単位の引下げは、個人投資家の参入を促進し、活力ある証券市場を育成する観点から極めて重要であると考えています。実際、本年5月に内閣府の行った「証券投資に関する世論調査」では、「株式投資を行うつもりはない」とする者(1,779人)に対し、行うつもりはないと考える理由について尋ねたところ、32.4%もの人が「まとまったお金がないと購入できないから」と回答(複数回答可)しています。

流動性が既に十分ある銘柄については投資単位の引下げは必要ないのではないかとのご意見ですが、株式投資単価が高くなると個人投資家の参入が減少する傾向が顕著に認められており、こうした銘柄についても投資単位の引下げ努力が必要であると考えており、関係者のご理解を賜りたいと思います。

なお、印紙税の軽減に関して、大幅な株式分割及び投資単位のくくり直しに伴う株券発行による印紙税の非課税措置については、平成15年度税制改正要望において、その延長を要望しているところであり、その実現に向けて働きかけてまいります。

銀行と証券会社の共同店舗

銀行等と証券会社の共同店舗について、

(1) 新たに規定される誤認防止措置について、顧客の利便性の低下及び店舗のレイアウト変更に伴う大幅なコスト負担を招くような過重な規制とならないようにしてもらいたい。また、インターネット取引においてもどのように適用されるか示してもらいたい。

(2) 顧客ニーズに応じた総合的かつ機動的な金融サービス・商品の提案が行える基盤を整備するため、行為規制府令の非公開情報の授受が制限されていることを撤廃してほしい。

(3) 銀行と証券会社の共同スペースにおいて、顧客から銀行のロビー係に対して証券会社の窓口の場所や証券の申込帳票の記入方法を尋ねられた場合、これに回答することは、証券取引法第65条に違反しないか。

  • (1)今般、投資家の利便性向上の観点から、証券会社の行為規制等に関する内閣府令が改正され、系列関係にある銀行等と証券会社の店舗の共用制限が廃止されたところです。これにより、これまで義務づけられていた銀行等と証券会社それぞれの独立した出入り口の設置、及び銀行等と証券会社間の固定壁・間仕切りの設置が不要となった他、電話・受付・会議室の共用も認められることになりました。併せて、顧客の誤認防止のために、窓口の区別や、顧客に対する十分な説明といった最低限の措置が定められましたが、これらの規定により、店舗のレイアウト変更に伴なう大幅なコスト負担を招くことはないと考えます。

    また、インターネット取引については、今回改正された証券会社の行為規制等に関する内閣府令第10条第5号ではなく、同内閣府令第10条第6号において、顧客が証券会社と他者を誤認することを防止するために証券会社が適切な措置を講じることが求められています。

  • (2)非公開情報の授受の禁止を定める行為規制府令第12条第1項第7号の規定は、顧客情報の保護及び公正な競争の確保の観点から適切なものと考えています。

    なお、事前に顧客等の書面による同意がある場合や大口信用供与等規制にかかる信用供与等の額を親銀行等又は子銀行等に提供する場合には、顧客等にかかる一定の非公開情報の授受が可能とされています。

  • (3)銀行と証券会社の共同スペースにおいて、銀行のロビー係が顧客を証券会社の窓口に案内することは、今般改定された事務ガイドライン7-2-1(3)に定められている「銀行等が勧誘行為をせず、当該顧客を紹介する」行為に該当するものであり、証券取引法第65条第1項に違反するおそれはありません。

    一方、銀行のロビー係が、顧客の証券取引に係る申込帳票の記入方法について顧客の質問に対して回答を行うことは、同条同項違反となるおそれがあると考えられます。

店舗共用制限の見直し以外について改正の要望をする。行為規制府令第12条第1項第2号の主幹事制限については、緩和していただきたい。

主幹事制限を定めた行為規制府令第12条第1項第2号の規定については、利益相反の防止及び証券会社の健全性の確保の観点から、適切なものと考えています。

なお、発行された有価証券に格付機関による格付が付与されている場合については、投資家保護上弊害が生じるおそれが少ないことから、規制の適用除外とされています。

行為規制府令第12条第1項第7号の非公開情報の授受の禁止について、管理目的での持株会社との情報共有の容認など、弊害が生じるおそれのないものは、見直してもらいたい。

非公開情報の授受の禁止を定める行為規制府令第12条第1項第7号の規定は、顧客情報の保護及び公正な競争の確保の観点から適切なものと考えています。

なお、リスク管理等の内部管理部門については、この規制の適用除外承認を受けることが可能です。

店舗の共用制限の撤廃により、投資家の選択の幅を広げるような新商品や組合せ商品を提供するためには、銀行・証券間の顧客情報の共有について制限を緩和することが必要である。

事前に顧客等の書面による同意がある場合は顧客等の非公開情報の授受が可能であることを定める行為規制府令第12条第1項第7号の規定は、顧客情報の保護及び公正な競争の確保の観点から適切なものと考えています。

投資家の選択の幅を広げるような新商品や組合せ商品を提供するために、顧客情報を共有する必要がある場合には、事前に顧客等の書面による同意を得ていただく必要があります。

銀行等による有価証券売買の書面取次ぎ

今回の書面取次ぎのガイドラインの策定において、電磁的方法による取次ぎも書面による取次ぎとして扱われることとなるのか。

電磁的方法は、証券取引法第65条に規定する「書面」には該当しません。

電磁的方法による取次ぎを書面による取次ぎとして認めるかどうかについては、金融機関の証券業務を原則として禁止している証券取引法第65条の趣旨等を踏まえた根本的な議論が必要となります。

投資信託・投資顧問サービスの運用体制のあり方

投資信託の特定資産である信託受益権については、取得及び譲渡等の行為が行われたときは、第三者による価格調査が義務づけられており、かつ利害関係人との取引の場合にはすべての受益者に対し当該取引に関する書面を交付しなければならないとされていることから、これを緩和していただきたい。

証券取引所に上場されている有価証券など、客観的な価格評価が容易な資産を除き、このような客観的な価格評価が困難な資産をファンドが取得、譲渡する際には、外部の公正な第三者による価格調査を義務付け、ファンド計算の透明性、公正性を確保し、投資家保護を図る必要があると考えます。

さらに、この調査結果は投資家に開示されることから、投資家のチェックを通じてファンドの適正な運営が行われることが期待されます。

また、このような客観的な価格評価の困難な資産について、ファンドと当該ファンドを運用する投資信託委託業者の利害関係人との間で取引を行うことについては、利益相反行為が起こりやすく、投資家保護上問題があります。

したがって、そのような取引が行われた場合には、その取引内容を記載した書面を交付し、情報開示を行うことにより、投資家のチェックを通じて利益相反行為が牽制されることが期待されると考えます。

なお、このような客観的な価格評価が困難な個別性の強い資産について、ファンドと当該ファンドを運用する投資信託委託業者の利害関係人との間で取引を行うことにつきましては、取引が行われたファンドの投資家に開示することに加え、同種の資産に投資運用する他のファンドの投資家についても開示を行い、自己のファンドの投資機会が不当に妨げられなかったかどうか判断できるようにすることのメリットは、多数の投資家に書面を交付しなければならないというデメリットを上回るものであると考えています。

特色ある投資信託・投資顧問業者の市場参加の促進

認可投資顧問業者の最低資本金は、ファイナンシャル・プランナーなどの個人事業主が容易に新規参入できるよう、条件を緩和すべきである。

これを、少なくとも3千万円以下程度まで引き下げることによって、ブティック的な業者の参入が容易となり、既存の助言専業業者による一任認可取得が促進されることも十分期待しうる。

また、ハードルを低くすることに伴い、参入する業者の主要株主に係るルールを銀行・保険並とする必要がある。

認可投資顧問業者につきましては、現行法上、資本の額が1億円以上であることが認可の基準とされているところですが、特色ある事業者の新規参入を促進するという観点から、その引下げを検討することとしています。

その具体的な引下げ額につきましては、投資家保護に留意しつつ、今後、金融審議会でご議論いただくこととしています。

また、信頼される投資顧問サービスの確立を図るとの観点から、主要株主の適格性に係るチェックのあり方につきましても、金融審議会であわせてご議論いただくこととしています。

投資一任業務の認可要件を更に明確化すべき。

投資一任業務の認可については、投資顧問業法施行規則第27条の2において審査基準を定めているほか、投資顧問業者の監督に関する事務ガイドライン3-2、3-3において審査に関する留意事項が定められており、現状においても認可要件は十分に明確化されているものと考えています。

規制改革推進3カ年計画で措置された、信託銀行が投資一任業務を営むことを可能とするための法的手当てを行っていただきたい。

今後、信託銀行が投資一任業務を行うことができるよう、改正法案を提出する方向で検討してまいります。

分かりやすい投資信託の実現

投資信託の目論見書について、内容を一層分かりやすくするとともに、

(1) 同じ住所に同じ目論見書を送らない

(2) 目論見書不要とする投資家に対しては交付を不要とする(目論見書を証券会社の支店等に備置し、閲覧可能とする)

等の措置を検討すべき。

また、運用体制、運用方針、運用方法などの詳細な情報の開示を義務づけるべきであり、必要があればガイドラインを作成すべき。

投資信託の目論見書については、平成13年8月に金融庁が発表した「証券市場の構造改革プログラム」における「個人投資家にとって魅力ある投資信託の実現」の一環として、投資家にとってより分かりやすくするための目論見書の記載内容の改善等を図るため、金融審議会においてご議論いただき、そのご議論を踏まえて、有価証券届出書(目論見書)の記載内容、記載方法等を見直し、平成14年4月1日に施行されたところです。

金融庁としては、投資信託の目論見書について、本年4月から実施された記載内容、記載方法等の見直しの成果を検証しつつ、投資家にとって一層分かりやすいものとするため、目論見書の交付方法等の手続面を含め、目論見書による情報開示のあり方について金融審議会においてご議論いただくこととしています。

投資信託について、運用実績を客観的に比較できる情報の提供や販売手数料を含む顧客資産から支弁される手数料の正確かつ詳細なディスクロージャーが必要ではないか。

運用実績、顧客資産から支弁される手数料のディスクロージャー等について、現在投資信託協会で各投資信託委託業者の実態を調査しているところであり、その結果を踏まえ、投資家保護の一層の充実を図る観点から検討していきたいと考えています。

投資知識の普及・情報の提供

学校教育現場への金銭教育の普及を図る場合、経済・金融・資産管理・投資といった一連の教育としてとらえるべきであり、これらの教育効果を上げるためには、教育現場でそれらを実施することに対する教師の理解と教師自身の学習が必要不可欠である。

金融や株式等の機能・働きは経済活動に重要な役割を果たしているものであることから、教員への支援の一環として教材の開発(平成15年度予算要求をしています。)や文部科学省への働きかけ等を通じて学校における金融・証券教育の一層の促進を図ることとしています。

また、教員自身に金融・証券に関する知識、理解を深めていただくことが重要であるとの認識から、上記の教材開発の検討のほか、金融広報中央委員会、日本証券業協会や東京証券取引所等において、教員向けセミナー等を積極的に実施し、教育現場での金融・証券教育の普及等に努めています。

金融業界の団体等では金融広報中央委員会等とのネットワークを生かし投資知識の普及・情報提供を展開してきたが、個々の活動が消費者に十分浸透していない等の指摘がある。

金融広報中央委員会や業界団体等では、普及・情報提供活動を消費者の目線に合った内容に近づける工夫をすることが重要である。

また、こうした活動を広めるためには、NPO等の参加拡大、ファイナンシャル・プランナーの積極活用が効果的である。

投資知識の普及・情報提供の重要性が高まってきていることから、金融・証券関係団体やNPO等との連携をより一層強化する方策について、金融広報中央委員会に検討を要請しています。

金融広報中央委員会においては、各地域において金融知識の普及・啓発活動を行う「金融広報アドバイザー」に対してファイナンシャル・プランナー資格の取得を支援するなど、その育成・強化に努めています。

金融庁などの規制当局が、特定の団体の活動を奨励したり、あるいは特定の教育・情報プログラムを開発、認可や推奨を行うことは望ましくない。

証券知識の普及・情報提供は、民間任意団体や、証券会社、銀行、資産運用会社などが様々な活動を行って、初めて効果を上げることが可能であり、規制当局は、これら団体・会社の活動が行いやすくなる環境を整備することが重要である。

金融・証券関係団体等が行っている各種の金融知識普及や情報提供活動については、こうした団体から成る金融広報中央委員会を中心に関係団体やNPO等との連携をより一層強化する方策について、同委員会に検討を要請しており、これらを通じて、各団体等の活動がより効率的・体系的に行えるよう期待しています。

また、金融庁においても、金融・証券関係団体等が行っている各種の金融知識普及・啓発に関する事業について、これを一覧的に紹介するコーナーを金融庁ホームページ「金融・証券情報コーナー」に増設することを検討しています。

「証券市場の改革促進プログラム」に盛り込まれた、金融市場に関する一般投資知識の向上を目指した提案を支持する。

こうした構想は、資産管理セクターから、一般個人投資家や、洗練された個人及び機関投資家に提供されるサービスに関する投資知識の向上を目指した措置を含むべきである。

金融・証券関係団体等が行っている各種の金融知識普及や情報提供活動については、こうした団体から成る金融広報中央委員会を中心に関係団体やNPO等との連携をより一層強化する方策について、同委員会に検討を要請しており、これらを通じて、学校教育以外の場においても各団体等の活動がより効率的・体系的に行えるよう期待しています。

また、金融・証券関係団体等が行っている各種の金融知識普及・啓発に関する事業について、これを一覧的に紹介するコーナーを金融庁ホームページ「金融・証券情報コーナー」に増設することを検討しています。

こうした措置等を通じ、金融庁として積極的に投資家教育に取り組んでまいります。

学校での金融・証券教育は必要なことであるが、小学校の基礎教育はともかく、中学・高校の場合、金融・証券の実際を知らない社会科の先生では、教育の任に耐え得ず、実際の市場・金融を知っている者の登用を考えるべきである。

本年5月に、内閣府の行った「証券投資に関する世論調査」においても、学校教育において金融・証券に関する基礎的な知識を教える必要性が指摘されるなど学校における金融・証券教育の重要性が高まってきていることから、金融・証券に関する教育が学校においてより一層取り入れられるよう文部科学省に対して働きかけるとともに、教材の開発(平成15年度予算要求をしています。)等を通じて教員に対する金融・証券知識の向上に向けた支援を行うこととしています。

また、英米においても学校における金融・証券教育の実施のため、教員向けセミナー等の開催などを通じて教員の育成等が行われているところであり、まずは、上記の教材の開発等を通じて教員に対する支援に努めることとしていますが、このほか、金融広報中央委員会、日本証券業協会や東京証券取引所等においても、教員向けセミナーや講師派遣等を積極的に実施し、教育現場での金融・証券教育の普及等に努めています。

なお、金融庁ホームページにおいても、各金融・証券関係団体が行っているこうした学校教育支援事業について紹介しています。

平成12年6月の金融審議会答申「21世紀を支える金融の新しい枠組みについて」を踏まえて、生活者向けの金融教育の基本体系は、生活者が理解しやすいように縦割り行政の枠をこえ一元的に、政府主導で早急に整備すべきである。

当該答申を受け、平成12年7月の金融庁発足時の長官談話において、「消費者教育の充実を図る」との基本的な考え方を示し、これまで、金融庁ホームページに「金融・証券情報コーナー」の開設や各種パンフレットの配布、財務局における講演会の開催等を通じて金融・証券に関する知識の普及・啓発活動を行っています。

NPOの設立、投資教育組織の設立・運営及び個人投資家を育てるための教育、啓蒙を行う機関が必要ではないか。

NPOは、行政とも企業とも異なる第三の立場から、ボランティア活動をはじめとする市民が行う非営利の自由な社会貢献活動として設立・運営がなされるものと理解していますが、現在、こうしたNPOによる投資教育を含む金融知識の普及・啓発活動もみられるようになってきていることから、金融広報中央委員会を中心に関係団体やNPO等との連携をより一層強化する方策について、同委員会に検討を要請しています。

なお、日本証券業協会では、個人投資家の育成・教育のためのNPOを本年6月に設立し、講師派遣事業等の活動をしています。また、金融・証券関係団体においても様々な金融・証券投資知識の普及活動を行っています。

証券税制

平成15年にスタートする新証券税制は、複雑で理解しがたい。証券税制は、シンプルで分かりやすく、納税者(投資家)の納得が得られるものでなければならない。

ご指摘のとおり、平成15年にスタートする新証券税制については、優遇措置の適用期間や特定口座制度について、複雑でわかりにくいとの批判があります。

金融庁としては、証券市場への個人投資家の積極的な参加を促すためには、証券税制を分かりやすい簡素な税制とすることが重要と考えており、こうしたご指摘を踏まえ、

  • (1)特定口座内で譲渡損が発生した場合の源泉徴収額の計算方法等の改善

  • (2)源泉徴収を選択した特定口座について緊急投資優遇措置の適用を可能とすること

  • (3)長期保有株式等に係る優遇措置の大幅延長

  • (4)配当課税に係る申告不要制度の拡充

等を内容とする平成15年度税制改正要望を行ったところであり、簡素で分かりやすい税制に向け、税当局に引き続き働きかけてまいります。

配当課税は二重課税であるから、これを撤廃すべき。

配当の二重課税問題については、その是正の一環として配当控除制度が設けられていますが、平成15年度税制改正要望においては、二重課税問題の是正に向けて、この配当控除の適用限度額の引上げを要望しており、その実現に向けて働きかけてまいります。

高齢者資金を株式市場へ誘導するため、株式での相続・贈与税を優遇すべき。

高齢者の方が有する資金についても、これが株式市場に投資されるような方策を講じることは、証券市場に個人投資家の参加を促進する観点から有効なことと考えています。

こうした考え方の下、平成15年度税制改正要望において、株式等の取得に必要な資金の贈与にかかる贈与税については、住宅取得資金の贈与についての贈与税の計算方法の特例と同様の取扱いとするよう要望しており、その実現に向けて働きかけてまいります。

金融庁、証券界、投資家が一体となって、証券税制の改善に取り組むべき。

証券税制については、証券取引のインフラとなるものであり、金融庁としては、今後とも、投資家の方や証券界の方の意見を十分踏まえ、必要な改正を働きかけてまいりたいと考えています。

外国人投資家は、本邦資本市場に対して追加的な資本流入をもたらす存在であるので、外国人投資家による証券投資に際して、源泉課税が免除されるといった明確かつ簡素な証券税制の確立が望まれる。

外国人投資家の社債等流通市場への参加促進を図るため、非居住者等が受け取る公社債の利子のうち、「社債等の振替に関する法律」上の振替社債等(地方債、社債、外債等)に係るものについて、非課税とするよう、平成15年度税制改正要望において要望しており、その実現に向けて働きかけてまいります。

監視体制の強化等

有価証券報告書発行会社に対する報告または資料の提出命令(報告徴取権)及び立入検査権は金融庁から委任を受けた財務省関東財務局長が有し、犯則事件としての調査権は監視委員会が有しているが、監視委員会の体制・機能を強化するために、前者の権限を関東財務局長から監視委員会に移すべき。

証券市場の改革を促進するためには、市場の公正性・透明性を確保することが極めて重要です。このため、金融庁としては、欧米での対応なども踏まえながら、ディスクロージャーや監査の充実・強化及び悪質な市場仲介者等に対する検査・調査の充実を図るための施策について幅広く検討していくこととしています。

こうした施策を担う証券取引等監視委員会について、人員の質・量ともの充実を含めて、必要となる体制・機能を整えるべく、関係当局の理解を得つつ、具体的な内容について検討していくこととしています。

仲介者は法令の文面のみでなくその精神を尊重し、市場の公正性及び投資家の保護に意を用いるべきであると考えるが、検査・監督当局においても法令の適用にあたっては過度に形式的な運用を行うことがないように留意することを希望する。

金融庁も市場の公正性及び投資家の保護は非常に重要な事であると認識しています。

検査・監督においては、今後とも、個々の案件ごとに問題となっている背景や原因について個別に十分な検討を行い、法令の厳正な運用を行うように努めてまいります。

監査法人等に対する監督の強化

公認会計士又は監査法人に対する罰則の強化、検査・監督の強化を含む所要の措置をとるべき。

会計、監査の充実・強化の観点から監査法人等に対する監督の強化等については、重要な課題と認識しており、金融審議会においてご議論いただくこととしています。

信頼される価格形成の確保

いわゆる「仕手筋」による株価操縦まがいの行為を放置することは、一般投資家の市場に対する信頼を大きく損なうものであるため、現行の刑罰による抑止に加え、行政的な手法(差し止め命令、疑わしい取引の公表制度等)により、相場操縦的な行為を行おうとする者に利益を実現させない制度の構築を検討すべきである。

相場操縦については、証券取引法第159条により禁止されており、違反した場合は5年以下の懲役等の刑罰が科せられることとされており、このような犯罪行為は刑事罰によって抑制が図られるべきであると考えられます。

なお、同法第160条では犯罪行為による損害賠償、また、同法第198条の2では犯罪行為により得た財産の没収・追徴が定められる等の制度が整備されています。

信用取引への価格ルールの導入

信用取引は、例えば価格変動リスクをヘッジする手段としての機能を有するなど、投資家にとって重要な投資手法の一つであることから、価格ルールの導入にあたっては過度に選択肢を狭めることがないように配慮願いたい。

今回の信用取引への価格ルールの導入にあたっては、個人投資家等の行う1回あたり50単位以下の信用取引を適用除外とした他、従来から適用除外とされているものとの関係や米国における取扱い等を踏まえ、証券会社が顧客の実需を背景として行う出来高加重平均価格(VWAP=Volume Weighted Averaged Price)による取引の事前ヘッジや一定の裁定・ヘッジ取引及びつなぎ売りなど、価格ルールの適用除外について幅広く措置したところです。

VWAPを基準とする顧客の売り注文において、受注した証券会社が自己ポジションをヘッジするために行う信用取引について、適用除外としていただきたい。

顧客の実需を背景とするものであり、価格も市場の加重平均価格そのもの、又はその価格を目標とするものであることから、売り崩しとなる蓋然性は低いと考えられます。このため、売付けがVWAP価格となるよう、一定の算式等による取引手法が定められており、特別の勘定により管理されていることを条件として価格ルールの適用除外としたところです。

(注)信用取引関係のパブリック・コメントの結果については、一部、「有価証券の空売りに関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)の概要に対するパブリックコメントの結果について」に掲載していますので、合わせてご覧ください。

機関投資家の受託者責任の実効性確保

プログラムの「機関投資家の受託者責任の実効性確保」において、投資家に対する受託者責任につき実態把握及びあり方の検証を行うこととされているが、運用機関の質を正しく評価するためには、単に支払手数料の額など数字で把握しやすい事項に限らず、リサーチの質に対する評価をきちんと行っているかといった運用体制の基本となる事項について、十分に検証を行うことが必要。

機関投資家の受託者責任については、単に機関投資家が支払っている手数料の多寡に留まらず、

  • (1)運用にあたって発注先の情報提供力、執行力、信用力などをどのように評価しているか

  • (2)運用にかかる方針の決定や執行を行う体制はどのようなものとされているか

  • (3)コンプライアンス体制や運用結果にかかる検証体制は整備されているか

  • (4)顧客への情報開示は行われているか

など、幅広い観点から実態の把握及びあり方の検証を行っているところです。

インターネットによるタイムリーなディスクロージャーの促進

インターネットによるタイムリーなディスクロージャーの促進について、現行のいわゆる12時間ルールについて早急な見直しを行うべきである。

関係省庁とも調整の上、具体的な見直しを検討したいと考えています。

金融商品の説明の充実等

金融商品販売法においては、金融商品の元本割れの可能性について説明するだけでなく、リスクの種類と損失の程度についても、説明する義務を課すべきである。

抽象的で将来の収益が不確実である金融商品の特性から、金融商品を購入する顧客にとっては、金融商品の元本が確保されるかどうかが決定的に重要な判断基準となります。このため、本法においては、「元本欠損が生じるおそれ」がある場合、その旨及びその要因を業者に説明を義務付ける事項としています。本法は損失の程度までは説明を義務付けていませんが、これは、各金融商品のリスクの程度を正確に見積もることは、販売業者にとっても難しい問題であり、こうした予見困難な将来の可能性について説明を義務付けることは、性格上、法の義務付けになじまないと考えられるからです。

金融商品販売法において、「適合性の原則」、「不招請勧誘の禁止」についても盛り込むべきでないか。

金融商品販売法においては、勧誘方針の策定及び公表を義務付けていますが、この勧誘方針には「適合性の原則」、「不招請勧誘の自制」等について定めることとされています。また、公表された勧誘方針に対する顧客側の評価を通じて法令遵守の向上が業者間の競争により促進されることとなれば、より一層、適正な勧誘が確保されることとなるものと考えられます。

日本版金融サービス法を制定するべきでないか。

  • 1. 金融審議会答申(「21世紀の金融を支える新しい枠組みについて」平成12年6月27日)等にもあるように、金融を支える新しい枠組みとして、機能別・横断的な視点に立った法制の整備・拡充を進めていくことは重要であると考えています。

  • 2. これまでに、以下のような機能別・横断的な考えに立った法制の整備を行ってきたところです。

    • (1)「資産の流動化等に関する法律」(SPC法)等の改正により、一般的な集団投資スキーム法制を整備(平成12年11月30日施行)

      (注) これを受けて、不動産投資信託が上場されたところ(平成13年9月10日上場)。

    • (2)「金融商品の販売等に関する法律」を制定し、すべての金融商品を横断的に対象とする利用者保護の法制を整備(平成13年4月1日施行)

  • 3. さらに、以下のような取組みを行っていく所存です。

    • (1)平成13年4月より施行された「金融商品の販売等に関する法律」の着実な実施のため、引き続きその周知徹底を図りつつ、今後、新しい商品が登場した場合には、本法の枠組みを活用して、速やかに本法の対象に加えるとともに、勧誘方針の策定・公表を通じた勧誘の適正化に向けての業者の自主的な取組みを促すなど、適切な対応を行います。

    • (2)金融サービス分野での苦情・紛争の簡易・迅速な解決を図るため、民事訴訟処理制度を補完する制度として、裁判外での紛争処理制度の整備に努めることとし、日本証券業協会による「証券あっせん・相談センター」の設置等の改善措置の効果を検証するとともに、専門・中立性を有する他の機関について、日本証券業協会のあっせん手続と同様の法的効果を与えることを検討するなど、現時点で取り得る効果的な方策の早急な実施に向けた取組みを行います。

    • (3)業者や市場参加者一般への行為規制については、金融サービス分野における規制の全体像を視野に入れつつ、各業法の整合的な整備や証券取引法の一層の活用により、横断的なルールの整備に努めます。

  • 4. 金融庁としては、金融審議会答申等を踏まえ、今後とも、機能別・横断的ルールの整備を着実に進めてまいります。

紛争処理手続の充実

日本証券業協会のあっせん手続きがすでに整備されているにもかかわらず、さらに他の機関に同様の法的効果を与える必要性があるのか。

紛争処理手続きの充実をはかるため、現在のあっせん手続きの評価も含め、関係者の意見も聞きながら検討していきたいと考えています。

ディスクロージャーの充実・合理化

投資家の利益(投資リスク情報の明確で簡潔な投資家への提供)を念頭に置いた情報開示(目論見書の内容を含む。)についての新しいガイドラインを策定すべき。

現行では、投資リスクに関する投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項を「事業の概況等に関する特別記載事項(リスク情報)」として有価証券届出書(目論見書)に一括して記載することとされ(企業内容等の開示に関する内閣府令)、また、投資信託の有価証券届出書(目論見書)については、本年4月から「投資リスク」の項目が設けられ、投資に関するリスクの特性、管理体制等について具体的に、かつ、分かりやすく記載することとされています(特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令)。

さらに、金融庁としては、有価証券届出書のみならず、有価証券報告書等の継続開示の重要性に鑑み、「投資家の信頼が得られる市場の確立」に向けたディスクロージャーの充実・強化の一環として有価証券報告書等における「リスク情報」等の開示の充実を図ることとし、具体的な開示項目、開示内容について金融審議会においてご議論いただくこととしています。また、目論見書による情報開示のあり方についても、金融審議会においてご議論いだくこととしています。

証券化商品の目論見書をより分かりやすいものに改善すべき(フロッピーディスクやCD-Rの添付を可能とすることにより、証券化された対象の詳細なデータを提供)。

投資家への目論見書の交付は、企業内容等の開示に関する内閣府令等において、書面による交付のほか、投資家の承諾があれば電子メール等による交付やCD-ROM等による交付も可能となっています。

また、勧誘に際して提供される文書又は表示(テレビ、インターネット等)は、法定目論見書と異なる内容(「矛盾」、「虚偽」及び「欠缺」がある場合)でなければ、使用することは可能です。

投資家保護の観点から、投資家(株主等)に有価証券報告書等を送付すべき。

証券取引法におけるディスクロージャー制度は、有価証券の取得等の勧誘時に目論見書を投資家に交付して直接開示する方法と、有価証券届出書、有価証券報告書等の開示書類を財務局等一定の場所に備え置いて、一定期間、公衆の縦覧に供する間接開示の方法があり、公衆縦覧の制度は、開示の徹底を図る重要な手段、方法とされています。

なお、有価証券報告書、半期報告書等については平成13年6月から、有価証券届出書等については本年(平成14年)6月から、EDINET新しいウィンドウで開きます(証券取引法に基づく有価証券届出書等の開示書類に関する電子開示システム。金融庁のホームページ内で閲覧できます。)による提出が開始されており、EDINETにより提出された有価証券報告書等は提出された翌日からインターネットを通じていつでもご覧いただくことができます。さらに、平成16年6月からは、開示書類(一部を除く。)はEDINETによる提出が義務付けられるため、有価証券報告書はすべてインターネットを通じてご覧いただくことができるようになります。

決算短信のあとに(法定開示書類の)有価証券報告書が提出されるように、今般の四半期財務情報のあとに四半期報告書が開示されるのか。それは連結及び個別の双方の開示か。

証券市場を、幅広い投資家の参加する真に厚みのあるものとし、我が国金融システムの中核を担うものとしていくためには、市場における投資対象ともいうべき企業が、自らの財務内容等に関するタイムリーかつ正確な情報開示を行い投資家の信頼を確保していくことが重要であり、国際的にも四半期開示制度を導入する動きが顕著となっています。

こうした状況を踏まえ、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月24日閣議決定)に沿って金融庁が行った要請を受け、東京証券取引所において、上場企業に対して、平成15年4月以降に開始する事業年度から「四半期業績の概況」の開示を、平成16年4月以降に開始する事業年度から「四半期財務・業績報告」の開示を求める「四半期財務情報の開示充実に向けたアクション・プログラム」が公表され、現在その実務要領の作成作業が始められたところです。

なお、この四半期開示は、取引所に上場している企業については特に投資家にタイムリーな情報開示を行う必要性が特に高いことから、取引所がその上場企業に対して求めるものです。非上場企業にも四半期開示を求める法定開示については、上場会社等による四半期開示の定着状況を踏まえて検討すべきものと考えています。

企業負担を軽減し連結財務諸表の充実のため、欧米同様に、連結財務諸表を開示する場合には個別財務諸表の開示は省略すべき。

連結財務諸表と個別財務諸表の開示のあり方については、企業会計審議会において各界各層の委員により幅広い観点から検討され、その結果、平成9年に公表された「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」において、連結情報を中心とするディスクロージャー制度への転換を図るとともに、個別情報については可能な範囲で簡素化するなど、ディスクロージャーの効率化を図ることが適当との提言を受けています。

この提言を受け、連結財務諸表の開示は国際的な開示と遜色のないものに充実する一方、個別財務諸表の開示の簡素化を行ってきました。また、商法においても、個別財務諸表に加え連結財務諸表の開示が導入され、個別・連結とも開示されることとなりました。このようなことから、現時点において、個別財務諸表そのものの開示を省略することは適当ではないと考えています。

わが国の企業が国際会計基準を適用できるようにすべき。

わが国における外国会計基準の適用については、国際会計基準の動向をも踏まえつつ、一般に公正妥当と認められる会計基準として認められるものについて、その適用を認めているところです。国際会計基準の国内での利用については、国際会計基準の整備の進捗状況を注視しつつ、欧米各国の取組みや国際的な利用状況、国内における国際会計基準の理解度や会計監査の対応可能性等幅広い観点から、国内基準としての妥当性について検討を進めていくことが適当と考えています。

現在17時で締め切られているEDINETによる流通開示書類・発行開示書類の提出時間を拡大すべき。

EDINETの提出時間は、受付財務局の勤務時間に合わせているものであり、提出会社からの問い合わせや証券監査官の審査事務等に係る現在の勤務体制を踏まえると、延長は難しいところであります。

有価証券届出書の効力発生期間を現行の15日から出来る限り短縮するとともに、訂正届出書の効力を即日発生としていただきたい。

有価証券届出書に係る効力発生までの期間は、発行会社、証券会社等が有価証券の内容や発行会社の事業内容・財務内容を周知させる周知期間であるとともに、投資家が当該有価証券を購入するかどうかを事前に熟慮するいわゆる熟慮期間であり、投資家保護の観点から相応の期間を要するものであります。

なお、現在でも、届出書類の内容が公衆に容易に理解されると認められる場合又は届出書類の届出者に係る企業情報が既に公衆に広範に提供されていると認められる場合は効力発生期間の短縮を行っており、また、いわゆるブックビルディングによる場合においては当該訂正届出書の提出日又はその翌日にその届出の効力が生ずることとされています。

さらに、近年の情報通信技術(IT)の進歩により、投資家への迅速な情報提供が可能となり、また、平成13年6月より有価証券報告書等について、本年(平成14年)6月より有価証券届出書等についてEDINET(証券取引法に基づく有価証券届出書等の開示書類に関する電子開示システム)の適用が開始されたことをも踏まえ、投資家保護の観点から適当であると認められる場合として、組込方式の有価証券届出書の効力発生までの期間を短縮すべく、金融審議会においてご議論いただくこととしています。

持株会社新設の場合にも発行登録制度が利用可能となるよう、利用適格要件に関して、「1年間の継続開示」の緩和又は証取法第5条第4項を改正すべき。

発行登録制度は、企業情報等の周知性が十分に認められるものとして、継続開示要件(1年間以上の継続開示)及び一定の周知性要件(株券の市場における売買総額等)を満たす企業が利用することができますが、株式交換、株式移転により新設される持株会社については、直ちに利用適格要件を満たすことはできません。

しかしながら、企業組織の再編を迅速化、活発化させる等の観点から、例えば利用適格要件を満たしていた継続開示会社を完全子会社とする持株会社に係る利用適格要件の見直しについて、金融審議会においてご議論いただくこととしています。

SPC及び投資法人について、発行登録制度を導入すべき。

発行登録制度は、企業情報等の周知性が十分に認められるものとして、継続開示要件(1年間以上の継続開示)及び一定の周知性要件(株券の市場における売買総額等)を満たす企業が利用することができます。

現在、投資法人が発行する投資証券及び投資法人債券については発行登録制度を利用することはできません。投資証券等の発行登録制度の利用については、そのニーズや必要性を考慮し、投資家保護の観点をも踏まえつつ検討する必要があると考えています。

不動産投資信託について、大量保有報告制度を適用すべき。

大量保有報告制度の趣旨は、公開会社の株式等について、その取得・保有・放出による当該会社の支配権等の異動等の情報を投資家に迅速に開示することによって、市場の透明性、投資家保護を図るものです。

しかしながら、不動産投資信託の投資口は、集団投資スキームの一形態であり、投資信託の受益権に相当するものであって、株式等の移動とは性格が異なるため、現状の大量保有報告制度の趣旨を鑑みれば、不動産投資信託の大量の取得等についての情報を大量保有報告制度によって開示することに慎重な検討を要すると考えます。

発行者以外の発行する有価証券により償還される債券(いわゆる他社株償還条項付社債、リパッケージ債等)及び証券化商品の募集又は売出しを行う場合の開示についてのルールを整備すべき。

他社株償還条項付社債券に係る発行開示については、有価証券届出書において、償還の対象となる有価証券の発行者の情報を「保証会社以外の会社の情報」として記載することとされており(企業内容等の開示に関する内閣府令)、また、証券化商品(資産流動化証券)に係る発行開示については、有価証券届出書において、証券化される債権等の資産の情報を具体的に記載することとされています(特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令)。

金融庁としては、ご指摘いただいた有価証券を含め、それぞれの有価証券の特性等に合わせた情報開示のあり方について検討して参りたいと考えます。

国外において既に流通している発行前の有価証券を国内で少人数向けに勧誘する場合には海外発行有価証券の少人数向け勧誘に該当することを明確にすることを含め、内外の資本市場の一本化の動きに対応した制度の見直しを行うべき。

また、わが国においても券面の不発行制度が導入されつつあることから、この面での制度の見直しも必要。

海外発行有価証券の少人数向け勧誘に係る開示規制の趣旨は、海外で既に発行された有価証券で国内において情報開示が行われていないものを売出しに該当しない形(少人数向け勧誘)で国内に持ち込み、持ち込み後に情報開示されないまま多数の者に転売されることを回避するため、条件付勧誘が義務付けられているものです。したがって、勧誘時において海外で発行されていない有価証券については、海外発行有価証券の少人数向け勧誘には該当せず、日本国内においては、新規発行有価証券の取得の勧誘という扱いになります。この場合、一般の国内発行有価証券と同じ条件の下で少人数向け勧誘を行うことができます。

なお、内外資本市場の一本化の動きに対応したディスクロージャー制度の見直し及び券面不発行制度の導入によるディスクロージャー制度の見直しについては、これらの動向を注視しつつ、必要な検討を行って参りたいと考えています。

財投機関債の(証券取引法に基づく)開示の義務化、開示書類の統一化、証券取引法監査の義務化を行うべき。

財投機関債については、投資家に必要な情報開示は個々の法令制度に基づいた規律に従っており、その規律体系において投資家保護が図られています。

このような現状において、金融庁としては、さらに証券取引法による規制を課す必要はないと考えます。

上場企業等のガバナンスの充実

企業価値、株式価値の増大を図り、証券投資を魅力あるものとするためには、投資家の議決権行使に対する積極的な取り組みを推進する必要がある。このため上場企業等に対し、議決権行使に関する環境整備を促すことが急務と考えられる。

ご指摘のとおりです。

金融庁は、「証券市場の改革促進プログラム」に基づき、投資家の議決権行使に向けた上場企業の環境整備を促すよう、取引所等に要請を行い、多くの企業で来年度の株主総会招集手続が開始される来年3月までには、取引所等において対応がなされることとされています。

金融庁としては、投資家がコーポレート・ガバナンスの重要な担い手であるとの認識の下、取引所等及び上場企業等の双方において、投資家の議決権行使に関する環境整備に向けて真摯な対応がなされることを強く期待しています。

また、上場株式の議決権代理行使の環境整備の観点から、「上場株式の議決権の代理行使の勧誘に関する規則」の改正を検討しています。

株式上場基準

経営不振の上場企業をLBOやMBOによって一旦上場廃止とし、企業再生後に再び東証上場を目指すというケースが考えられ、場合によっては投資事業組合や未公開企業が対象会社の親会社となることも想定される。

ところが、東証の上場規則では、上場申請会社の親会社等が継続開示会社等でないと上場できないため、企業再生後の再上場に支障が生じる恐れがある。

このようなケースの場合には、東証に上場できるよう規則改正ができないか。

現行の東証上場規則においては、ご指摘のような問題もあることから、東証に対してどのような対応が考えられるか検討を要請したところです。

公社債流通市場

現行制度では、従来、基準気配として発表されていた銘柄の25%程度が対象から外れ、中でも上場企業の8割以上を占めるBBB格以下の企業群の9割以上については公正性のある価格情報を得ることが不可能となっているほか、当該銘柄については市場で過大なプレミアムを求められるリスクを内包している。したがって、気配発表銘柄数を増加させるべく見直しを望む。

現在、日本証券業協会の「公社債店頭取引等に関するWG」において、公社債流通市場の流動性及び価格の公正性・透明性を一層向上させるための方策を検討中です。ご指摘の点については、日本証券業協会において、最低報告会社数をそれまでの「10社」から「7社」に引き下げることにより、従来基準気配として公表されていた銘柄の9割超を復活させる等の方策を講じたところですが(9月25日発表分より実施)、更に、公社債流通市場の透明性等を向上させるための方策の検討を要請しています。

私募債市場等の整備

適格機関投資家の範囲の拡大に当たり、資産管理型営業の対象となるような一定額以上の資産・収入を有する個人・法人について、機関投資家に準じた取扱いを認めるべき。

また、短資会社も適格機関投資家の範囲に含めるべき。

私募市場を活性化するため、「プロ私募」における「適格機関投資家」の範囲を拡大しようとしています。

(参考)「適格機関投資家」は、証券取引法第2条に規定する定義に関する内閣府令において、金融機関(一定の要件を満たす事業会社(有価証券報告書提出会社)を含む。)が限定列挙されています。

拡大する「適格機関投資家」の範囲については、適格機関投資家になることを希望する者、発行者、一般投資家等からの意見を十分に踏まえつつ、投資家保護等の観点から金融審議会においてご議論いただくこととしています。

現行の私募の基準(少人数私募、プロ私募)の見直しにより、私募の人数要件(49人ルール)を緩和すべき。

多数の投資家を勧誘の相手方とする場合には、当該発行者の事業内容等の情報が投資家に充分に伝わらないことが考えられるため、証券取引法では、多数の者(50名以上の者)を相手方として有価証券の取得等の勧誘を行う場合には、有価証券の発行者に開示義務を課し、投資家保護を図っているものですが、適格機関投資家の範囲の拡大等を含め、現行の私募の基準に関しては、投資家保護を勘案しながら、金融審議会においてご議論いただくこととしています。

住宅ローン証券化市場

住宅ローン債権の証券化商品の円滑な流通に向けて、

(1) 証券化市場整備のため、価格付けの検討に不可欠な住宅金融公庫の住宅ローンデータ及び繰上げ返済に関する情報開示を推進してほしい。

(2) 商品性(例えばローン債権年限)の多様化についての配慮を期待したい。

  • (1)住宅ローンの基礎データの開示・整備は重要な課題だと考えています。国土交通省の「市場機能を積極的に活用した住宅金融のあり方懇談会報告書」においても、「住宅ローンの基礎データの開示・整備」が、早急に着手すべき事項とされています。

    住宅金融公庫債においては、月次パススルー方式と称される元利支払方法が採用されていますが、資産プールにある住宅ローンが期限前に弁済されると、その償還金が月次の元利払に加えて返済されることになり、投資家が再投資のリスクを負うことになります。従って、期限前弁済(確)率の予測は投資家の証券購入に際して重要であり、証券発行主体は過去の期限前弁済率のデータを積極的に情報提供することが期待されます。また、この他にも、標準的な商品を継続的に発行し続けることにより、当該債券の適正な価格付けが円滑に行われるよう配慮することが期待されます。

  • (2)平成15年度から住宅金融公庫の証券化スキームが開始される予定と聞いています。本スキームが軌道に乗り、投資家(買い手)のニーズを踏まえた商品の多様化等が図られることは、市場の拡充に資するものと考えられますので、今後の動向を注視し、必要に応じ、働きかけてまいります。

住宅金融公庫及びノンバンクの住宅ローン債権を信託する他益信託の信託受益権を有価証券とみなすことができるよう検討すべき。

現在、証券取引法で「有価証券」とされているものは、その流通状況や経済的性質等を勘案し、公益又は投資家保護のため、「有価証券」とすることが必要かつ適当であると認められたものです。

したがって、ご指摘の信託受益権を「有価証券」とみなすことについても、このような観点から検討していく必要があると考えています。

資産流動化スキームの利便性の向上

特定目的会社による資金調達が、数次に渡って行えるよう法令等の規定の緩和をお願いしたい。

あらかじめ資産流動化計画への記載があれば、現行法下においても数次に渡る資金調達は可能でありますが、その一層の円滑化のために必要な措置を図りたいと考えています。

証券化・流動化を視野に入れた倒産法制の整備をお願いしたい。

流動化促進という観点からは、適正価格による資産の売却(真正売買)等に係る否認権のあり方等がスキームの安定性という面で重要となります。現在、倒産法制の整備については、法制審議会倒産法部会にて議論されていますが、その動向を注視し、必要に応じ、働きかけてまいります。

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