英語版はこちら新しいウィンドウで開きます

平成15年8月18日
金融庁

「平成15検査事務年度検査基本方針及び基本計画」の公表について

本日、標記について各財務(支)局長、沖縄総合事務局長宛て通知しましたので公表します。

問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
検査局総務課堀本(内線2504)、高橋(内線2514)


平成15年8月18日
金融庁

平成15検査事務年度検査基本方針及び基本計画

I .検査基本方針

金融検査については、平成11年以降「金融検査マニュアル」等を定め、市場規律と自己責任原則を機軸とした、明確なルールに基づく透明かつ公正な金融行政を遂行するという基本的考え方の下、金融機関の自己責任に基づく適切な内部管理等を促す観点から、効率的・効果的な検査の実施に努めてきた。

平成15検査事務年度においては、前検査事務年度において実施された各種施策や金融機関を取り巻く現下の情勢を踏まえ、以下の基本的な考え方に基づき、引き続き厳正で実効性のある検査の実施に努めるものとする。

1.平成14検査事務年度に実施された施策

  • (1)主要銀行グループに対する深度ある検査の実施

    • (a)通年・専担検査の導入(平成14年7月)

      主要行検査部門を主要銀行グループ別に再編成し、各部門が専担的に、同一グループ内の金融機関及び金融持株会社を順次検査することにより、当該銀行グループを年間を通じて検査することとした。

    • (b)資産査定の厳格化の徹底

      主要行の資産査定の厳格化を徹底させる観点から、「金融再生プログラム」(平成14年10月公表)に盛り込まれた以下のような施策を実施した。

      • 自己査定と検査結果の集計ベースでの格差公表(平成14年11月)

      • 市場評価に著しい変化が生じている等の債務者に着目した特別検査の再実施(平成15年1月から実施し、その結果を同年4月に公表)

      • 再建計画検証チーム(平成14年12月設置)による、債務者企業の再建計画の妥当性や進捗状況の重点的な検証(上記特別検査と同時実施)

      • DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法等による引当について、公認会計士協会によるガイドラインの策定と連携して検査マニュアルを改訂・公表し(平成15年2月)、適用状況を検証(平成15年3月期決算以降を対象とする検査において検証)

      • 複数の主要行から融資を受けている大口債務者に対する銀行間の債務者区分の統一(平成15年1月以降の検査において実施)

    • (c)増資に係る法令等遵守態勢等に着目した検査の機動的実施(平成15年4月~6月)

  • (2)中小企業等の経営実態等に即した的確な検査の確保

    • (a)金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕(平成14年6月作成)の適切な運用確保のための対応

      • 模擬査定研修等による検査官に対する周知徹底

      • 金融機関及び借り手企業等に対する説明会の開催(平成15年6月末までに全国の商工会議所等382団体で実施)

      • 「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」(平成15年3月公表)を受けて、当該別冊の内容が中小企業の実態により即したものとなるよう改訂作業に着手し、当該別冊の浸透状況等についてアンケート調査を実施

    • (b)平成14年10月に設けられた「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」で得られた情報の検査への活用

    • (c)オンサイト検査モニター(検査立入中に検査局等の幹部が直接被検査金融機関の経営者から検査に関する意見聴取を行う仕組み)等の積極的な実施

      • (注)平成14検査事務年度の被検査金融機関の約8割にあたる合計341金融機関に対してオンサイト検査モニターを実施

    • (d)意見申出制度(検査官と被検査金融機関との間で意見相違が生じた場合に金融機関が申出を行う制度)の運用改善(平成15年1月実施)

      • (注)提出期限、提出先等について見直し

  • (3)今日的課題への的確な対応

    • (a)システムリスクや市場関連リスク等に精通した専門家を中心とする専門検査班を別途編成し(平成14年7月)、主要行グループに対する横断的な検査や、合併等によりコンピューターシステム統合を予定している金融機関に対する検査を機動的に実施

    • (b)「システム統合リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト」の作成・公表(平成14年12月)

    • (c)「金融持株会社に係る検査マニュアル」の作成・公表(平成15年7月)

2.平成15検査事務年度における重点事項

平成15検査事務年度においては、金融機関を取り巻く諸問題に的確に対応する観点から、平成14検査事務年度に導入された施策を含め、特に以下の施策に重点的に取り組むこととする。

  • (1)主要行グループに対する深度ある検査の一層の推進

    主要行の資産査定の厳格化を徹底させる等の観点から、通年・専担検査体制の下で、「金融再生プログラム」を踏まえ、自己査定と検査結果の集計ベースでの格差公表、再建計画検証チームによる債務者企業の再建計画の検証、大口債務者に対する主要行間の債務者区分の統一、繰延税金資産の厳正な検証等を継続して実施するとともに、情勢の変化等に適時・的確に対応して、所要の施策を実施する。また、先般策定した「金融持株会社に係る検査マニュアル」に基づき、各グループとしての法令等遵守態勢やリスク管理態勢について重点的に検証を行う。

  • (2)中小企業等の経営実態等に即した的確な検査の確保

    金融機関の与信業務の役割は、適切なリスク管理を行いながら必要なリスクをとることにより資金の円滑な供給を行うことにある。金融機関がこうした資金仲介機能を実行する上で、中小企業と大企業で融資の際の着眼点が異なること等を踏まえ、中小企業等の経営実態等に即した的確な検査を実施する観点から、前年度の成果を踏まえつつ、特に以下の施策に重点的に取り組むこととする。

    • (a)金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕の改訂

      金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕については、引き続き、関係者への浸透を図るほか、アンケート結果の分析により、その定着状況や残された課題について実態把握等を行い、同別冊がより中小企業の実態に即したものとなるよう改訂を行う。

    • (b)借り手企業に対する説明責任の履行状況等の検証

      借り手企業に対する金融機関の説明責任の履行状況等については、本年7月29日に公表された預金等受入金融機関の顧客への説明態勢及び相談苦情処理機能に関する事務ガイドラインの改正(以下、「改正事務ガイドライン」という。)等を踏まえ、その履行状況等について検証を行う。その際、取引関係の見直し等を行う場合に、各預金等受入金融機関の営業上の判断に即した説明を適切に行っているか(金融検査や金融検査マニュアル等を口実とするなど不適切な説明が行われていないかを含む)等について重点的に検証を行う。

  • (3)利用者保護の確保、利用者利便の向上に向けた取組み

    金融機関の経営は、利用者保護、利便性の向上を図りつつ、利用者ニーズにあった各種金融サービスを提供し、その対価を得ることにより成立するものであり、その際、利用者に対する説明責任、忠実義務等を的確に履行することが求められる。

    こうした認識の下、利用者保護の確保、利用者利便の向上を促す観点から、以下の点について重点的に検証を行うこととする。

    • (a)説明責任の履行状況等の検証

      • 預金者・保険契約者・投資家に対する説明責任

        金融機関における預金者・保険契約者・投資家への説明責任の履行状況については、金融商品の内容や当該金融商品の包含するリスクについて、説明内容、説明方法、顧客の承諾の確認方法や、そのための態勢整備の適切性について検証を行う。

      • 債務者等に対する説明責任

        債務者等に対する説明責任の履行状況等については、「改正事務ガイドライン」等を踏まえ、契約時点等における取引等の内容や取引等の包含するリスク等についての説明内容、説明方法、顧客の承諾の確認方法や、そのための態勢整備の適切性について検証を行う。

    • (b)忠実義務等の法令等遵守状況等の検証

      金融機関における顧客への忠実義務・書面交付義務等の法令等遵守状況や、そのための態勢整備の適切性について検証を行う。

    • (c)顧客情報管理態勢等の検証

      顧客情報の取扱いについて、顧客情報の保護の観点から、グループ内で顧客情報を共有する場合に顧客の同意を書面で得ているか、顧客情報の漏洩等を防止するための管理方法等が適切になされているか、顧客情報への不正アクセス防止等システム上の安全措置が的確に実施されているか等について検証を行う。

    • (d)苦情等処理態勢等の検証

      金融機関における顧客からの苦情等に対処する体制の整備状況について検証を行うほか、苦情への対応が適切に行われているか、経営上重要な苦情等について経営陣に的確に報告されているか等について検証を行う。また、預金等受入金融機関の債務者等に対する苦情処理については、「改正事務ガイドライン」等を踏まえ、苦情処理態勢の検証を行う。

  • (4)システムリスク管理態勢の検証

    金融機関においてコンピューターシステムは、業務運営上必要不可欠な基幹的インフラとなっており、システムトラブルの防止の重要性が近年特に高まっている。また、コンピューターシステム統合を伴う金融機関等の経営再編が進展する中で、金融機関のシステム統合等に係るリスクも拡大している。こうした状況に対応するため、引き続き、「システム統合リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト」等を活用したシステムリスク管理態勢の検証を行う。

  • (5)政策金融機関・郵政公社に対する検査の実施

    政策金融機関・郵政公社については、各機関の特性も踏まえ、自己査定の正確性、償却・引当の適切性、内部管理態勢の適切性について、民間金融機関に適用している「金融検査マニュアル」、「保険検査マニュアル」等を用いて検査を実施する。

  • (6)業態の特性に対応した深度ある検査に向けた取組み

    2.(1)~(4)の施策に加えて、各業態の特性に応じ以下の点に留意して、深度ある検査を実施する。

    • (a)金融持株会社

      金融機関のコングロマリット化、業態間の垣根の希薄化等に対応するため、先般策定した「金融持株会社に係る検査マニュアル」に基づき、金融機関グループの一体的な経営という実態に即した検査を実施する。

    • (b)預金等受入金融機関

      預金等受入金融機関については、経済・金融環境やリスクの変化に的確に対応した財務の健全性の確保のためのリスク管理態勢とともに、内部監査を含めた経営管理(ガバナンス)の状況について重点的に検証を行う。また、平成15年1月に施行された本人確認法等に沿った預金口座等の適切な管理が行われているか等について検証を行う。

    • (c)信託銀行

      信託銀行については、他人の財産の管理、処分を行うという信託業務の特性を踏まえ、的確な実態把握に努めるとともに、利用者に対する説明責任の履行等の状況について重点的に検証を行う。

    • (d)保険会社

      保険会社については、保険募集の適切性やコーポレートガバナンスの状況について検証を行うほか、生命保険会社、損害保険会社の業態に固有のリスクを踏まえ、的確な実態把握に努めるとともに、リスク管理態勢等について重点的に検証を行う。

    • (e)証券会社

      証券会社については、顧客資産の分別管理状況、自己資本規制比率の正確性、法令等遵守状況、顧客に対する説明責任の履行等の状況について重点的に検証を行う。

    • (f)投資信託委託業者、投資顧問業者

      投資信託委託業者及び投資顧問業者については、利用者に対する説明責任の履行等の状況、資産運用に係る管理体制の整備状況、顧客への忠実義務・書面交付義務等の法令等遵守状況について重点的に検証を行う。

    • (g)外資系金融機関

      外資系金融機関(銀行、証券会社等)については、上記(a)~(f)の施策によりつつ、ルール遵守状況やリスク管理態勢について重点的に検証を行うとともに、複数業態にまたがるグループの一体的な実態把握に努める。

    • (h)その他の金融機関

      貸金業者については、改正後の貸金業の規制等に関する法律を踏まえ、金利規制及び取立て行為規制等の法令等遵守状況について重点的に検証を行う。

      また、前払式証票発行者については、発行保証金の供託状況等について重点的に検証を行う。


II .検査基本計画

検査基本計画

(注1)  上記検査実施予定数は変動することがあり得る。
(注2)  主要行及び主要行グループの持株会社については、通年・専担検査の枠組みの下、同一社に対し通常検査、特別検査等複数回の立ち入りを行っているが、あわせて1件とカウントしている。
(注3)  銀行持株会社は銀行に、保険持株会社は保険会社に含めている。

サイトマップ

ページの先頭に戻る