平成15年11月13日
金融庁

貸金業に係る実態調査結果

「規制改革推進3か年計画(改定)」(平成14年3月29日閣議決定)において、貸金業に係る規制に関する実態調査を実施することが定められたことに伴い、下記のとおり調査を実施し、結果(別紙)を取りまとめました。

実施時期 平成15年3月
調査先 有識者(弁護士、研究者等)、関連業界団体、貸金業者等 計278
回答数 265(回答率95.3%)
調査項目

(1) 貸金業者が交付する書面の電子化の可能性

(2) 流動化の際の債権譲渡時における債務者への通知義務の緩和の可能性

(3) 資金需要者の属性や規模にかかわらず貸金業者に同一の規制を課す必要性

(4) 貸金業者の行う広告に対する規制の緩和の可能性

   
 

本調査結果につきましては、今後の制度の企画・立案等の参考とさせていただきます。

【内容についての照会先】

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局信用課(内線3567)


別紙)

各調査項目における主な回答

1.貸金業者が交付する書面の電子化の可能性

貸金業規制法(以下「法」という。)第17条、第18条は、貸金業者に対し、貸付契約等の締結時及び債権の全部又は一部の弁済を受けたときに、所定の事項を記載した書面の債務者等への交付を義務付け。

  • (1)実務上の問題点

    • 包括契約の増加や、リボ払い、ATMの利用進展等の実態を踏まえると、記載事項、交付方法等が現実に合わない。IT化が図れず貸金業者のコスト要因にもなり顧客利便の点からも問題(業界関係者等)。

    • 任意に支払った利息制限法の上限を超える利息の支払について、法第17条、第18条の書面を交付しているときは超過部分の支払は有効な利息の弁済とみなす旨の法第43条の規定に関して、実態は債務者が契約内容を必ずしも十分に理解できる書面となっていないのではないか(研究者、弁護士等)。

  • (2)書面交付に代わり、電子的手段を用いることの是非

    • 貸金業者のコスト・事務負担の軽減に資するもので、顧客利便も向上する(業界関係者、研究者、弁護士等)。

    • 情報セキュリティやプライバシー保護の観点や、契約内容を巡るトラブルの解決に支障が生じるおそれがある等の理由から、引き続き書面交付が必要(消費者団体、研究者、弁護士等)。

    • 本検討にあたっては、情報セキュリティやプライバシーのみならず、法第43条の適用条件に関する検討も必要(業界関係者、関連業界等)。

2.流動化の際の債権譲渡時における、債務者への通知義務の緩和の可能性

法第24条第2項は、貸金業者から貸付債権を譲り受けた者に対し、法第17条、第18条に規定する書面の債務者等への交付を義務付け。

  • (1)実務上の問題点

    • 債権の流動化を行う場合など、大量の債権譲渡の場合に対応が困難である。債務者の立場でも流動化の際の債権譲渡通知は必ずしも望まないのではないか(業界関係者等)。

    • 債権譲渡時に適法な通知がなかったため、契約内容や弁済の事実関係が不明確化し、トラブルとなっているケースもある(消費者団体、弁護士等)。

  • (2)流動化の際の債権譲渡時において、法第24条第2項に基づく債務者への通知義務を緩和することの是非

    • 債権流動化の促進の観点から妥当である(業界関係者、弁護士、研究者等)。

      【考え得る緩和措置】

      • (a)流動化のための債権譲渡時には通知を不要とする。

      • (b)譲渡債権に関する債務者対抗要件を具備するとき、又は原債権者以外の者が債権の回収を行うときのみに通知を義務付ける。

      • (c)債権譲渡に関する事前承認があった場合には譲渡時の通知の省略を認める。

    • 譲渡の過程で不適切な者や方法による取立てを招かないよう、債務者保護の観点から条件、制度設計が必要(研究者、関連業界)。

    • 目的の如何を問わず、債務者保護上、現行規定の緩和は不適当(消費者団体、弁護士)。

3.資金需要者の属性や規模にかかわらず、貸金業者に同一の規制を課す必要性

貸金業規制法は、全ての貸金業者に対し、資金需要者等の属性や規模の如何にかかわらず、一律に適用される。

  • (1)実務上の問題点

    • 一定規模以上の法人に対する貸付けについては、個人債務者と同様の資金需要者保護の必要性は薄く過剰規制となっている。一律の規制は非効率(業界関係者、弁護士等)。

    • 資金需要者の属性や規模にかかわらず、統一的な規制を課していることに特段問題は生じていない(消費者団体、弁護士等)。

  • (2)資金需要者の属性等にかかわわらず貸金業者に同一の規制を課すことの是非

    • 例えば、上場企業のような一定の金融知識・能力を有しているものと考えられる資金需要者に対しては、現行規制を緩和しても資金需要者保護上の問題は生じ難く、事務コストの軽減により貸金業者・資金需要者の双方にメリットがもたらされる。例えば、資金需要者が一定規模以上の法人である場合に金利規制や書面交付義務において異なる規制とする。(業界関係者、研究者等)。

    • 資金需要者保護の観点からの規制は、貸金業者のみならず与信を行う全ての業種において、資金需要者の属性に応じたものとすることについて検討すべき(関連業界)。

    • 貸金業者と資金需要者の関係は、経済力や交渉力に差が生じがちであり、契約を巡るトラブルを防止し、資金需要者の保護を図るという法の趣旨は、資金需要者の属性等により異なるものではない(弁護士等)。

    • 全ての資金需要者に対する貸付について現行の規制を維持した上で、個人の場合には契約内容の理解を一層図る措置を講じる(消費者団体等)。

4.貸金業者の行う広告に対する規制の緩和の可能性

法第15条は貸付条件の広告における表示事項を定め、法第16条は誇大広告の禁止を規定している。

  • (1)実務上の問題点

    • 他社利用者を対象とした広告が、銀行等においては規制されていないにもかかわらず、貸金業者に対してのみ禁止されており公平を欠く(業界関係者)。

    • テレビ広告などにおけるイメージ広告が野放しになっている、違法広告を掲載する広告媒体への規制がない、無登録業者等による広告が規制されていない(弁護士等)。

  • (2)他の貸金業者の利用者を対象として勧誘する旨の表示をした広告の解禁等、貸金業者の行う広告に対する規制を緩和することの是非

    • 規制緩和により商品の特性に応じた広告が可能となり、利用者にメリットがもたらされる(業界関係者)。

      【考え得る緩和措置】

      • (a)法第15条に規定する広告表示事項の見直し、他の貸金業者の利用者を対象として勧誘する旨の表示をした広告の解禁等。

      • (b)規制緩和を行う場合は、同時に違法・不当広告に対する民事上・刑事上のサンクションの設定・強化が必要。

    • 多重債務者の増加を招く懸念があり、規制緩和は不適切である、むしろ安易な借入れを招かないよう規制強化を図るべき(消費者団体、弁護士等)。

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