平成17年2月25日
金融庁
明治安田生命保険相互会社に対する行政処分について
I 明治安田生命保険相互会社については、保険業法第128条第1項に基づく報告により、以下のとおり、法令等違反及び内部管理態勢上の問題が認められた。
1. 同社からの報告内容によれば、生命保険募集人の募集時の説明状況、告知義務違反の内容などを十分考慮せず、例えば以下のような事例について詐欺・錯誤を広く適用し、本来支払うべき死亡保険金を支払っていなかった。
○確定診断・病名告知がないことにより被保険者に病気の認識がないなど、被保険者に欺罔の意思を認めることが困難なもの
○告知義務違反のあった事実(被保険者の職業について他社の生命保険募集人であることを秘匿したこと)が、重要事項の告知義務違反とはいえず、詐欺を問うことが困難なもの
○生命保険募集人が被保険者に不告知を勧めているなど、不適切な募集行為が認められるもの
○商品特性(一時払養老保険などの貯蓄性商品)を踏まえれば、被保険者に欺罔の意思を認めることが困難なもの
これらは保険金の支払事由の適用を事業方法書・普通保険約款で定められたとおりに行っていなかったものであり、保険業法第4条第2項第2号に掲げる事業方法書、同項第3号に掲げる普通保険約款に定めた事項のうち特に重要なものに違反していたものと認められた(保険業法第133条第1号に該当)。
2. 生命保険募集人が、重要事項の説明を行っていない、不告知を教唆するなど、保険業法第300条第1項第1号及び同項第3号に違反する保険募集を行っていたものと認められた。
さらに、同社は、生命保険募集人が法令違反の募集行為を行っていたことを把握しながら、保険業法第127条第1項第8号に基づく不祥事件届出を、不祥事件の発生を知った日から30日以内に行っておらず、同条に違反していたものと認められた。
3. また、次のような内部管理態勢上の問題も認められた。
(1)保険金支払部門(一部事案については法務部門も)においては、保険金の支払いの可否を検討するに当たって、違法な保険募集が多数存在することを把握していたにもかかわらず、関係部門と連携をとらず、改善に向けた取組みを怠っていたものと認められた。
(2)保険金受取人に詐欺適用を知らせる通知文において、約款上の条文番号だけを記載し、詐欺無効を適用したことをあいまいにする、告知義務違反とは関係ない病歴等を多数列挙するなど、不十分、不適切な説明を行っていたことが認められた。
(3)保険金の支払いは保険会社の基本的かつ最も重要な機能であるが、これに係る重要事項である詐欺・錯誤の適用について、取締役会等の経営陣によるチェックが何ら行われていないなど、経営管理態勢が不十分であったものと認められた。
また、告知義務違反に詐欺・錯誤を広く適用するとの方針について、保険金支払部門と保険募集部門の連携が全くとられておらず、保険募集部門において何らの対応も行われなかったことが認められた。
II このため、本日、明治安田生命保険相互会社に対し、保険業法第132条第1項及び第133条の規定に基づき、以下の内容の行政処分を行った。
1. 保険業法第133条の規定に基づく処分(業務停止命令)の内容
保険業法第3条第4項の免許に係る保険のうち、団体保険及び団体年金保険を除く保険契約の締結及び保険募集(自動継続による契約の更新を除き、生命保険募集人に委託しているものを含む。)を平成17年3月4日から平成17年3月17日までの間停止すること。
2. 保険業法第132条第1項の規定に基づく処分(業務改善命令)の内容
(1)保険約款及び法令等に従い、迅速かつ適切な保険金支払いを行うための保険金支払管理態勢を確立すること。また、今回生じた不適切な保険金不払いに関して役職員の責任を明確化すること。
(2)保険募集時に適切な説明を行う及び保険契約者・被保険者から正しい告知を受けるための施策を含めた保険募集管理態勢を確立すること。また、不適切な保険募集を行った者及び管理責任者を厳正に処分するよう適正な人事考課を確立すること。
(3)告知義務違反に詐欺を適用する場合には、適用理由及びその適用の基礎とした証拠(入手方法も含む。)などについて、保険契約者等に対して十分に説明を行い得る態勢を整備すること。また、告知義務違反があることが判明した場合の会社の対応方針を明確化し、顧客に対して周知すること。
(4)保険契約者等の保護に係る重要な事項の決定においては、取締役会等の経営陣が関与する態勢を確立すること。
(5)実効性のある法令等遵守体制を構築し、全役職員に対して法令等の遵守について教育・指導の充実・強化を図ること。
【連絡・問合せ先】
金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
監督局保険課(内線3335、3769)