令和2年11月27日
金融庁

監査法人及び公認会計士の懲戒処分等について

 金融庁は、本日、監査法人大手門会計事務所(法人番号9010005003922)及び公認会計士2名に対し、下記の懲戒処分等を行いました。

1.監査法人

 

(1) 処分の対象者

 監査法人大手門会計事務所(法人番号9010005003922)(所在地:東京都千代田区)
(注)当監査法人は、令和2年10月27日をもって解散し、清算法人に移行している。

(2) 処分の内容

 業務停止5月(清算業務を除く。)
 (令和2年11月30日から令和3年4月29日まで)

(3) 処分理由

ア.監査法人大手門会計事務所(以下「当監査法人」という。)の社員である下記2名の公認会計士が、日本フォームサービス株式会社(以下「日本フォーム」という。)の平成29年9月期及び平成30年9月期における財務書類の監査において、故意により、虚偽のある財務書類を虚偽のないものとして証明し、また、相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した。
(根拠条文:公認会計士法(昭和23年法律第103号)(以下「法」という。)第34条の21第2項第1号、第2号)
 

イ.当監査法人の運営が著しく不当と認められた。
(根拠条文:法第34条の21第2項第3号)

2.公認会計士

(1) 懲戒処分の対象者及び内容

・公認会計士 武川 博一(登録番号:8689 事務所所在地:静岡県伊東市)
 登録抹消

・公認会計士 向井 真悟(登録番号:24442 事務所所在地:東京都練馬区)
 業務停止2年(令和2年11月30日から令和4年11月29日まで)

(2) 処分理由

 上記2名の公認会計士は、日本フォームの平成29年9月期及び平成30年9月期における財務書類の監査において、故意により、虚偽のある財務書類を虚偽のないものとして証明し、また、相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した。
(根拠条文:法第30条第3項において準用する同条第1項、第2項)

3.事案の概要

(1) 日本フォームの財務書類に対する虚偽証明

当監査法人が実施した日本フォームの監査において、当監査法人は、被監査会社との関係を良好に保つため、職業的懐疑心を発揮せず、日本フォームの説明等に対して批判的な観点からの検証を行わなかった。
 また、当監査法人は、十分かつ適切な監査証拠が入手できなかったとしても、監査報告書の提出期限内に無限定適正意見を表明することを最優先と考え、職業的専門家としての正当な注意を払っておらず、監査法人として社会から期待された役割と責任を果たす意識が不足していた。

 こうした背景事情を原因として、下記ア.からオ.までに記載する事実が認められた。

ア.当監査法人の平成29年9月期監査を行った筆頭業務執行社員は、日本フォームに対する監査手続の実施に関し、その大半を他の業務執行社員に委ねていた。当監査法人は、平成29年9月期監査において、買掛金残高が大幅に減少していることを認識していた中、その理由を確認するため、日本フォームから資料を入手しようとしたが、システムが故障したとの説明を受けたため、当該残高の減少理由を質問したところ、「在庫調整を行った結果」との説明を受けたほか、残高確認、請求書綴り等の確認を行った。
 当監査法人は、買掛金に対する監査手続及びその結果に特段問題はないと判断し、システムが故障したとの説明を裏付ける十分な証拠を入手せず、また、買掛金残高が大幅に減少した理由を十分に確認することなく、買掛金に対する監査を終了させた。更に、当監査法人は、日本フォーム監査役とコミュニケーションがとれていないことについて、不正リスクの観点での検討を行わなかった。
 

イ.平成30年9月期監査を行った筆頭業務執行社員は、平成29年9月期監査同様、日本フォームに対する監査手続の実施に関し、その大半を他の業務執行社員に委ねていた。当監査法人は、平成30年9月期監査において、買掛金残高が更に減少していることを認識し、理由を質問したところ、日本フォームから、当期期首に行った工場のレイアウト変更工事等の処理を漏らしていたとの説明を受け、当該工事等の実在性を確認できる証憑の提出を依頼すると共に、実在性がない場合には損失処理するよう伝達した。その後、当監査法人は、日本フォームから上記証憑が提出されなかったこと等から、日本フォームが主張する当該工事は実在しないと認識していたにもかかわらず、全額損失処理することを優先し、当該資産の計上を容認した。
 また、当監査法人は、当期の買掛金の監査において、前期と同様に日本フォームからシステムが故障したとの説明を受け、資料が提出されず、十分かつ適切な監査証拠を入手できていないことに加え、これらの内容を監査調書に何ら記録していなかった。
 

ウ.日本フォームは、平成29年9月期の固定資産の減損処理の検討において、主要資産グループに市場価額を著しく下落した資産があることから減損兆候ありと判定したが、割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を上回ることから、減損処理は不要と判断した。
 業務執行社員は、これを踏まえ、平成29年9月期監査において、割引前将来キャッシュ・フローを算定し直し、減損処理は不要と判断したが、検討結果等を監査調書へ記録しなかった。
 当監査法人は、当該業務執行社員が行った監査手続の内容を把握していないほか、減損兆候判定において、当該グループの営業損益が継続して減少傾向にあり、平成29年9月期は赤字であること等を踏まえた検討を十分に行わなかった。
 

エ.当監査法人は、平成29年9月期及び平成30年9月期監査において、実地棚卸の立会において棚卸表を基にシステムのデータと突合等を実施していたが、棚卸表の確定版と実地棚卸の立会で入手した棚卸表との差異について確認を行わず、また、棚卸資産について分析的手続を実施していない等、必要な監査手続を実施しなかった。
 

オ.当監査法人は、平成29年9月期監査の監査計画立案時において、グループ・レベルで分析的手続を実施することを決定しているが、日本フォームの連結子会社について、グループ・レベルで分析的手続を実施しなかった。


(2) 当監査法人の運営

 当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、令和元年12月6日、金融庁は、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)から行政処分勧告を受け、調査を行った結果、下記ア.からウ.までに記載する事実が認められた。

ア.業務管理態勢
 当監査法人は、代表社員3名、社員5名、公認会計士である常勤職員を中心とした監査補助者等による約20名の人員で構成されている。
 当監査法人は、長年にわたって上場会社10数社を被監査会社としているとともに、近年、上場会社数社との新規の監査契約の締結を行っている。
 こうした中、当監査法人の最高経営責任者は、人員が不足していると認識しており、また、品質管理の維持及び強化を、当監査法人の経営方針の最優先事項としている。
 しかしながら、最高経営責任者は、実際には、監査報告書の提出期限内に、無限定適正意見を表明することを最優先と考え、職業的専門家としての正当な注意を払っておらず、また、財務諸表の信頼性を担保するという監査法人として社会から期待された役割と責任を果たす意識が不足していた。
 また、品質管理担当責任者を含むその他の代表社員及び社員は、最高経営責任者の考えに同調し、業務管理態勢及び品質管理の基準が求める品質管理態勢が組織的に機能するような最高経営責任者を含む他の社員への牽制をしておらず、相互牽制という監査法人の社員としての職責を果たす意識が希薄であった。
 さらに、最高経営責任者を含む代表社員及び社員は、監査の基準全般、職業倫理及び独立性に関する法令等、監査の基準並びに監査法人として適切な業務管理態勢及び品質管理態勢を整備するために必要な法令及び基準の理解が不足しており、被監査会社のリスクに応じた監査業務が実施できる水準に達していなかった。
 こうしたことから、特定の監査業務において、最高経営責任者を含む業務執行社員が、監査意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手できなかったと認識していながら、無限定適正意見を表明している極めて不適切な状況が認められている。
 

イ.品質管理態勢
 当監査法人の品質管理態勢については、監査契約の新規の締結及び更新、監査業務に係る審査、監査調書の整理・管理・保存並びに法令等遵守態勢について重要な不備が認められるほか、広範に不備が認められており、著しく不適切かつ不十分である。
 

ウ.個別監査業務
 最高経営責任者を含む業務執行社員は、十分かつ適切な監査証拠が入手できなかったとしても、監査報告書の提出期限内に無限定適正意見を表明することが最優先であると考えていた。そのため、財務諸表等及び内部統制報告書の監査意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手していないと認識しながら、無限定適正意見を表明しているほか、訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査に係るリスク評価が不十分、特別な検討を必要とするリスクを識別した売上高、売掛金等の実証手続が不十分であるなどの重要な不備が認められる。
 また、最高経営責任者を含む業務執行社員及び監査補助者は、会計基準及び監査の基準の理解が不足している。そのため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に対する検証が不十分であるなどの重要な不備が認められる。
 さらに、最高経営責任者を含む業務執行社員及び監査補助者は、被監査会社から提出された資料を追認するのみであり、職業的懐疑心が欠如している。そのため、企業環境の理解を通じたリスク評価が不十分、被監査会社の期末日付近の通例でない重要な取引に関する検討が不十分、不正リスクの評価及び対応手続が不十分、棚卸資産及び固定資産の評価等の会計上の見積りに関する検討が不十分、全社的な決算・財務報告プロセスに係る監査手続が不十分、連結子会社に対する監査手続が不十分であるなどの重要な不備が認められる。
 上記のような重要な不備は今回審査会検査で検証対象とした個別監査業務の全てにみられる。そのほか重要な不備ではないものの、グループ監査の監査計画におけるリスク評価が不十分、売上高等の損益勘定に対する監査手続が不十分、棚卸資産等の貸借対照表残高に対する監査手続が不十分、引当金の検討が不十分、仕訳テストが不十分、関連当事者との取引に関する検討が不十分、監査役等とのコミュニケーションが不十分であるなど、不備が広範かつ多数認められる。

 
 このように、当監査法人の個別監査業務において、重要な不備を含めて広範かつ多数の不備が認められており、同業務の実施は著しく不適切かつ不十分なものとなっている。

 

お問い合わせ先

金融庁企画市場局企業開示課

Tel:03-3506-6000(代表)(内線3662、2766)

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