令和4年3月8日
金融

事業者等に対する金融の円滑化について

 官民の金融機関等におかれては、累次にわたる要請等も踏まえ、事業者への資金繰り等の支援と感染拡大防止の両立に着実に取り組んでいただいていますことに感謝申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症の影響が2年という長期にわたっているほか、ウクライナ情勢、原油価格の上昇等の影響も懸念されるところ、様々な事業者が大変厳しい状況に置かれております。

 こうした中で、先般、全国銀行協会等の関係者は、増大する債務に苦しむ中小企業の経営改善に向けた環境整備等のため、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)や「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」を策定・公表したところです。また、特に資金需要の高まる年度末も見据え、資金繰り支援の更なる充実を図るとともに、増大する債務に苦しむ中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを促す総合的な支援策を展開するため、経済産業省・金融庁・財務省においては、「中小企業活性化パッケージ」を策定・公表したところです。

 官民の金融機関等におかれては、足下、年度末の資金需要に万全を期すことは勿論のこと、今後、ガイドライン等も活用した、より一層の事業者支援等が求められております。

 つきましては、官民の金融機関等における事業者支援の徹底等の観点から、以下の事項について、改めて要請いたしますので、3月7日に開催した「中小企業等の金融の円滑化に関する意見交換会」における要請事項等と合わせ、営業担当者をはじめ、貴機関、貴協会会員金融機関等の職員等に周知・徹底をお願いいたします。
 

 
  1.  新型コロナウイルス感染症に加え、足下ではウクライナ情勢、原油価格の上昇等の影響が懸念されるところ、資金需要の高まる年度末を迎えることを踏まえ、改めて、中小企業のみならず、大企業・中堅企業を含めた事業者の業況を積極的に把握し、資金繰り相談に丁寧に対応するなど、事業者のニーズに応じて、事業者に最大限寄り添ったきめ細かな支援を引き続き徹底すること。また、「ウクライナ情勢・原油価格上昇等を踏まえた資金繰り支援について」(令和4年2月25日)にて周知した内容について改めて徹底すること。
  2.  新型コロナウイルス感染症等の影響を直接・間接に受けている飲食業者、旅客運送事業者、宿泊事業者、観光事業者、遊興関連施設事業者、小売店、旅行代理店、ライブエンタメ・文化芸術・スポーツ・イベント関連事業者、ブライダル事業者、医療・福祉機関等、及びこうした施設のオーナーや、これらの事業者と取引をしている事業者など、中小企業のみならず、大企業・中堅企業も含め、資金繰りが厳しい事業者の状況を十分に勘案し、貸し渋り・貸し剥がしを行わないことは勿論のこと、そのような誤解が生じることのないよう、引き続き事業者の立場に立った最大限柔軟な資金繰り支援を行うこと。
  3.  新型コロナウイルス感染症等の影響により、追加融資が必要とされる状況も想定されるところ、本年1月から申請を開始した「事業復活支援金」を含め、各種支援金等の支給までの間に必要となる資金は勿論のこと、ポストコロナに向けた設備投資に要する資金、運転資金などについても、それぞれの事業者の現下の決算状況・借入状況や条件変更の有無等の事象のみで機械的・硬直的に判断せず、事業の特性、需要の回復や各種支援施策の実施見込み等も踏まえ、官民金融機関等及びメイン・非メインが密に連携し、丁寧かつ親身に対応すること。その際、本年6月までの申込期限の延長と合わせて、貸付期間が20年に延長される政府系金融機関による実質無利子・無担保融資等を活用した融資の積極的な実施に努めること。
  4.  事業者からの返済期間・据置期間延長の事前の相談において、申込みを断念させるような対応を取らないことは勿論のこと、返済期間・据置期間の長期の延長等を積極的に提案するなど、既往債務の条件変更や借換等について、事業者の実情に応じた迅速かつ柔軟な対応を継続すること。その際、据置期間終了後の返済負担が重くなることをおそれて据置期間の延長を躊躇する事業者がいる場合には、返済期間の延長も併せて提案すること。
  5.  民間金融機関が事業者の資金繰り支援に当たって条件変更や借換、新規融資を行う場合の債権の区分に関しては、貸出条件緩和債権の判定における実現可能性の高い抜本的な経営再建計画等の柔軟な取扱い[1]を含め、引き続き金融機関の判断を尊重することとしていることを踏まえ、事業者に寄り添った資金繰り支援に努めること。
  6.  こうした資金繰り支援に加え、新型コロナウイルス感染症等の影響が長期化する中で、借入れが増加した事業者を含め、ポストコロナにおける事業者の力強い回復を後押しするため、官民金融機関、信用保証協会、中小企業再生支援協議会[2]、REVIC等の支援機関が密に連携し、事業者の実情に応じた、条件変更にとどまらない経営改善・事業再生支援や、事業再構築補助金等の政府の支援施策も活用した事業再生・転換支援、ファンド等も活用した資本性資金の供給、地域企業のニーズに応じた人材紹介や事業承継支援などの取組を積極的に促進すること。
  7.  また、事業再生・事業転換を要する事業者等の財務基盤を強化し、民間金融機関の融資を呼び込むため、事業者のニーズを踏まえ、政府系金融機関の資本性劣後ローンの積極的な実施・活用を図るほか、官民金融機関において、同ローンを活用した協調融資商品を開発するなど、効果的な連携に取り組むことで、事業者に寄り添った支援に努めること。加えて、同ローン等の実施に必要な事業計画の民間金融機関による策定支援を積極的に行うこと。
  8.  信用保証協会を含む官民金融機関等は、資本性資金の供給等も活用した事業者の成長・再生を後押しする態勢を地域において構築するため、株式会社地域経済活性化支援機構や独立行政法人中小企業基盤整備機構の出資するファンド(中小企業経営力強化支援ファンド、中小企業再生ファンド等)の組成・活用について真摯に検討すること。さらに、政府系金融機関においては、資本性劣後ローン等の利用先や融資相談があった先に対し、出資等を通じて事業者の資本を強化する中小企業経営力強化支援ファンド等についても紹介するとともに、民間金融機関においては、同ローンのほか、同ファンド等の活用についても積極的に検討すること。
  9.  官民金融機関は、事業者からの相談に適切に対応できるよう、ガイドラインの趣旨・内容を営業現場の第一線まで確実に浸透させるとともに、増大する債務に苦しむ事業者の事業再生計画の策定を積極的・継続的に支援すること。加えて、信用保証協会は、事業者の円滑な再生を図るため、ガイドラインに基づく手続の初期段階から、必要に応じて官民金融機関と緊密に連携・協力すること。
  10.  信用保証協会を含む官民金融機関等は、債務返済猶予や債務減免等の金融支援を伴う場合を含め、ガイドラインに基づく事業再生計画の成立に向け、真摯に協議・検討を行うこと。
  11.  ガイドラインの活用等に際しては、必要に応じて、経営改善計画策定支援事業や、事業再構築補助金の「回復・再生応援枠」、官民ファンド[3]等、「中小企業活性化パッケージ」に掲げられた施策も合わせて利用し、事業者の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援に努めること。
  12.  実質無利子・無担保融資により新たに取引先となった先や残高メイン先でなくなるなど融資シェアが低下した場合等であっても、本業支援がおろそかになることがないよう、メイン・非メイン先の別や、既存顧客・新規顧客の別、プロパー融資・信用保証協会保証付き融資の別にかかわらず、資金繰りにとどまらない経営課題に直面する事業者に対して、据置期間中のみならず同期間経過後も含めて能動的に本業支援を行うなど、継続的な伴走支援に努めること。
  13.  「経営者保証に関するガイドライン」の一層の浸透・定着に努めるとともに、新規融資等における根保証・根抵当の設定は必要な範囲に留め、返済が完了した際には、顧客意向を踏まえた対応に努めること。また、「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」について営業現場の第一線まで浸透・定着を図り、経営者の個人破産の回避に向け、経営者等から保証債務整理の申出があった場合には誠実に対応すること。
  14.  引き続き、住宅ローンやその他の個人ローンについて、顧客の状況やニーズに応じた返済猶予等の条件変更の迅速かつ柔軟な対応を行うこと。また、「『自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン』を新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則」の趣旨を踏まえ、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた債務整理を要する個人・個人事業主への丁寧な相談対応などを通じ、事業や生活・暮らしの支援に努めること。
 
[1] 詳細は、金融庁HP“「新型コロナウイルス感染症の影響下における貸出条件緩和債権の判定に係る実現可能性の高い抜本的な経営再建計画の取扱いについて」の公表について” (https://www.fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20211008.html)を参照。
[2] 中小企業再生支援協議会は、関連機関と統合し、令和4年4月1日から中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを一元的に支援する「中小企業活性化協議会」を設置。
[3] 株式会社地域経済活性化支援機構及び独立行政法人中小企業基盤整備機構に対しては、別途「『中小企業の事業再生等に関するガイドライン』等を通じた一層の事業再生支援について」を要請。
お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

監督局総務課監督調査室(内線3706・3862)

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