令和3年8月6日
金融庁

監査法人の処分について


金融庁は、本日、監査法人原会計事務所(法人番号4010005003927)に対し、公認会計士法第34条の21第2項に基づき、以下の処分を行いました。

1.処分の概要

(1)処分の対象

監査法人原会計事務所(法人番号4010005003927)(所在地:東京都千代田区大手町)

(2)処分の内容

業務停止1月(令和3年9月1日から9月30日まで)

2.処分理由

当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、令和3年2月26日、金融庁は公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)から行政処分勧告を受け、調査を行った結果、下記ア.からウ.までに記載する事実が認められ、当該事実は公認会計士法(昭和23年法律第103号)(以下「法」という。)第34条の11第1項に規定する「利害関係規定違反」及び同法第34条の21第2項第3号に規定する「運営が著しく不当と認められるとき」に該当する。

ア.業務管理態勢

当監査法人は、代表社員4名、社員2名、常勤職員である監査補助者等による約10名の人員で構成されており、他の監査法人での監査経験者はおらず、法人設立以来の運営態勢を踏襲している。
 当監査法人は、長年にわたって数社の上場会社を主な被監査会社としており、当監査法人の業務収入に占める当該各上場被監査会社からの監査報酬の割合(報酬依存度)が高くなっている状況にある。
 こうした中、最高経営責任者兼品質管理担当責任者は、当監査法人の強みを、業務執行社員自らが親身になって被監査会社に対応すること及び小回りが利くことであるとしている。
 しかしながら、最高経営責任者兼品質管理担当責任者は、当監査法人設立以前から続く被監査会社との関係の維持・継続を最優先に考えており、被監査会社に長く変動はないことから、実施した監査や法人運営に問題がないと思い込んでいる。
 また、最高経営責任者兼品質管理担当責任者は、監査品質や職業倫理・独立性など公認会計士に求められる資質を重視する意識が不足しているほか、組織的な業務運営や品質管理態勢を構築する必要性を認識していない。
 さらに、最高経営責任者兼品質管理担当責任者のみによる法人運営が常態化しており、最高経営責任者兼品質管理担当責任者以外の社員は、社員としての職責を果たす必要性を認識していない。
 こうしたことから、下記イ.に記載するとおり、品質管理レビュー等の指摘事項に対する改善が不十分で同様の不備が繰り返されていること、公認会計士法や日本公認会計士協会の倫理規則に違反する「特別監査報酬」の受領や「贈答」を行っていること、適切な審査が実施されていないことなど、品質管理態勢において重要な不備を含む不備が広範かつ多数認められている。
 また、下記ウ.に記載するとおり、今回の審査会検査で検証対象とした全ての個別監査業務において、業務執行社員及び監査補助者に、監査の基準及び会計基準に対する理解が不足している状況、職業的懐疑心が不足している状況が確認され、それらに起因する重要な不備を含む不備が広範かつ多数認められている。

イ.品質管理態勢

(品質管理レビュー等での指摘事項の改善状況)
 最高経営責任者兼品質管理担当責任者は、品質管理レビューでの指摘事項を踏まえた対応として、全社員及び職員を対象として指摘された個々の不備を周知するとともに、業務執行社員を中心とする監査チームが指摘事項の改善状況を確認する等の改善措置を指示している。
 しかしながら、指摘を受けた事項や指摘を受けた監査業務についてのみ改善しているかを確認すれば足りると思い込んでおり、指摘事項の再発防止に向けた改善措置が講じられておらず、今回審査会検査で検証した個別監査業務の全てにおいて、これまでの品質管理レビュー等での指摘事項と同様の不備が繰り返されている。

(職業倫理及び独立性の保持)
 当監査法人は、公認会計士法の大会社等以外の被監査会社1社から、監査契約上の監査報酬とは別に監査業務の対価性が認められない「特別監査報酬」を継続して受領している。また、同社の役員に対して商品券を継続して贈与している。
 当該「特別監査報酬」については、公認会計士法令上の「特別の経済上の利益」に相当するものと認められ、当監査法人は、公認会計士法で禁止している「監査法人が著しい利害関係を有する会社」に対して監査業務を提供している状況にある。
 また、当監査法人による当該商品券の贈与については、日本公認会計士協会が定める倫理規則で禁止している保証業務の依頼人に対する「社会通念上許容される範囲を超える贈答」をしている状況にある。

(監査業務に係る審査)
 複数の審査担当社員は、品質管理の基準及び監査の基準を十分に理解しておらず、業務執行社員の説明を過度に信頼し、適切な審査が実施されていない。その結果、今回審査会検査において指摘した重要な不備を指摘できていない。
 このほか、内部規程の整備及び運用、法令等遵守態勢、情報管理態勢、独立性、監査契約の更新、監査実施者の教育・訓練及び評価、監査調書の整理・管理・保存、品質管理のシステムの監視など、広範に不備が認められる。
 このように、当監査法人の品質管理態勢については、品質管理レビュー等での指摘事項の改善状況、職業倫理及び独立性の保持、並びに監査業務に係る審査において重要な不備が認められるほか、広範かつ多数の不備が認められており、著しく不適切かつ不十分である。 

ウ.個別監査業務

業務執行社員及び監査補助者は、監査の基準及び会計基準に対する理解が不足している。
 また、業務執行社員は、継続監査期間が長期化する中で、被監査会社を過度に信頼しており、職業的懐疑心が不足している。加えて、品質管理レビュー等において重要な指摘を受けていないことをもって、従来からの監査手続で監査品質が確保されていると思い込んでいる。
 これらのことから、不正リスク対応手続が不適切かつ不十分、収益認識に関する不正リスクの識別が不適切、関係会社株式の評価に係る会計上の見積りに関する検討が不十分、のれんの評価に係る会計上の見積りに関する検討が不十分、固定資産の減損の検討に係る会計上の見積りに関する検討が不十分、事業損失費用の評価に係る会計上の見積りに関する検討が不十分などの重要な不備が認められる。
上記のほか、訂正監査に係るリスク評価手続が不十分、仕訳テストが不十分、棚卸資産の評価に係る会計上の見積りに関する検討が不十分、売掛金及び棚卸資産に係る残高確認手続が不十分、売上高等の損益勘定に係る監査手続が不十分、グループ監査において評価したリスクへの対応が不十分、監査役等とのコミュニケーションが不十分など、不備が広範かつ多数認められる。
 このように、検証した個別監査業務において、重要な不備を含めて広範かつ多数の不備が認められており、当監査法人の個別監査業務の実施は著しく不適切かつ不十分なものとなっている。

お問い合わせ先

企画市場局企業開示課

TEL:03-3506-6000(代表)(内線3660、3804)

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