監査法人の処分について
記
1.処分の概要
(1)処分の対象
UHY東京監査法人(法人番号9010405001708)(所在地:東京都品川区)
(2)処分の内容
2.処分の理由
当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、令和4年4月1日、金融庁は審査会から行政処分勧告を受け、調査を行った結果、下記ア.からウ.までに記載する事実が認められ、当該事実は法第34条の21第2項第3号に規定する「運営が著しく不当なものと認められるとき」に該当する。
ア.業務管理態勢
また、法人代表者は、業容が急速に拡大する中、業務執行社員における十分な監査業務時間の確保が困難になっている状況や、監査補助者全体のスキルの底上げが必要となっている状況において、監査事務所に求められる品質管理の水準を十分に理解していないほか、品質管理態勢を迅速に改善する必要性を認識していない。その結果、品質管理責任者に対して、十分かつ適切な監査業務を実施するための環境整備を具体的に指示していない。
こうしたことから、下記イ.に記載するとおり、品質管理レビュー等での指摘事項に係る改善状況が不十分で同種の不備が繰り返されていること、監査業務に係る審査が適切に実施されていないことなど、品質管理態勢において、重要な不備を含めて広範かつ多数の不備が認められている。
また、下記ウ.に記載するとおり、今回審査会検査で検証対象とした全ての個別監査業務において、業務執行社員及び監査補助者に監査の基準に対する理解が不足している状況及び職業的懐疑心が不足している状況が確認され、それらに起因する重要な不備を含めて広範かつ多数の不備が認められている。
イ.品質管理態勢
しかしながら、今回審査会検査では、個別監査業務において、当該品質管理レビュー等で指摘された企業及び企業環境の理解、会計上の見積りの監査等に係る事項と同種の不備が複数検出されるなど、当監査法人における当該品質管理レビュー等での指摘事項に対する改善は、不十分なものとなっている。
しかしながら、審査の担当者は、監査チームが実施した、企業及び企業環境の理解、会計上の見積りに係る監査、継続企業の前提の検討に係る監査手続に関し、監査チームとの討議や関連する監査調書の査閲を十分に実施することなく、監査チームによる重要な判断及びその結論に問題がないものとして審査を完了させている。このため、審査の担当者は、今回審査会検査が検証対象とした個別監査業務において認められた重要な不備を含む多数の不備を指摘できていない。
このほか、「内部規程の整備及び運用」、「法令等遵守態勢」、「職業倫理」、「監査補助者に対する指示・監督及び監査調書の査閲」、「品質管理のシステムの監視」などに不備が認められる。
このように、当監査法人の品質管理態勢については、品質管理レビュー等での指摘事項の改善状況、及び監査業務に係る審査において重要な不備が認められるほか、広範かつ多数の不備が認められており、著しく不適切かつ不十分である。
ウ.個別監査業務
くわえて、業務執行社員は、法人全体の監査業務を少人数で分担しており、各々が担当する個別監査業務に割ける時間が限定的であることから、監査補助者が実施した監査手続が適切かどうかを十分に検討できていないなど、監査補助者の実施する監査手続に対する十分かつ適切な指示・監督及び監査調書の深度ある査閲を行う意識が不足している。
これらのことから、重要な構成単位の企業環境の理解が不十分、固定資産の減損、関係会社株式の評価及び関係会社貸付金の評価に係る会計上の見積りに関する監査手続きが不適切かつ不十分、継続企業の前提の検討が不十分といった重要な不備が認められる。
上記のほか、重要性の基準値の検討、収益認識における不正リスクへの対応の検討、仕訳テストの検討、債権の評価に係る会計上の見積りに関する検討、企業作成情報の信頼性の検討、注記の検討、内部統制の評価範囲の検討、グループ監査における監査証拠の十分性及び適切性の検討、関連当事者取引の検討、初年度監査における期首残高の検討及び監査上の主要な検討事項の監査報告書への記載の検討が不十分、さらに、売上高等に係る実証手続、内部統制の運用評価手続、内部統制の不備の評価、情報システムに係る全般統制の評価及び未修正の虚偽表示の評価が不十分など、広範かつ多数の不備が認められる。
このように、検証した個別監査業務において、重要な不備を含めて広範かつ多数の不備が認められており、当監査法人の個別監査業務の実施は著しく不適切かつ不十分なものとなっている。
3.業務改善命令の内容
(1)法人代表者は、組織的に監査の品質を確保する必要性を十分に認識し、各社員が協働して監査品質の維持・向上を図るという組織風土を醸成し、組織的監査が実施できる態勢を構築すること。併せて、業容が急速に拡大する中、業務執行社員における十分な監査業務時間の確保が困難になっているなど、品質管理態勢を迅速に改善する必要がある状況を認識し、十分かつ適切な監査業務を実施するための環境整備に向け、当監査法人の業務管理体制の改善に取り組むこと。
(2)法人代表者は、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)の検査及び日本公認会計士協会の品質管理レビューにおいて指摘された不備の根本原因を十分に分析したうえで改善策を策定及び実施するとともに、改善状況の適切な検証ができる態勢を整備すること。併せて、監査チームが行った監査上の重要な判断及び監査意見を客観的に評価するための審査の態勢を整備し、当監査法人の品質管理態勢の整備に責任を持って取り組むこと。
(3)現行の監査の基準に準拠した監査手続を実施するための態勢を強化すること(重要な構成単位の企業環境の理解、固定資産の減損、関係会社株式の評価及び関係会社貸付金の評価に係る会計上の見積りに関する監査手続き、並びに継続企業の前提の検討など、審査会の検査において指摘された事項の改善を含む。)。
(4)上記(1)から(3)に関する業務の改善計画について、令和4年8月1日までに提出し、直ちに実行すること。
(5)上記(4)の報告後、当該計画の実施完了までの間、令和4年12月末日を第1回目とし、以後、6箇月ごとに計画の進捗・実施及び改善状況を取りまとめ、翌月15日までに報告すること。
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企画市場局企業開示課
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