令和4年12月23日
金融庁

個人保証に依存しない融資慣行の確立に向けた取組の促進について

個人保証は、スタートアップの創業や経営者による思い切った事業展開を躊躇させる、円滑な事業承継や早期の事業再生を阻害する要因となっているなど、様々な課題が存在しており、こうした背景も踏まえ「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」においては、「個人保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策を年内に取りまとめる」ことが盛り込まれました。

これを受け、経済産業省・金融庁・財務省においては、個人保証に依存しない融資慣行の確立に向け、「経営者保証改革プログラム」を策定・公表し、その中には、金融庁における「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の改正等の各種施策が盛り込まれているところです。

これらを踏まえ、以下の事項について、要請いたします。また、「経営者保証改革プログラム」や本要請内容については、政府としても事業者に対し積極的に周知していきますので、皆様におかれましても、経営トップから現場の営業担当者等を含めた金融機関全体に周知・徹底をお願いいたします。

なお、金融庁としては、改正後の監督指針に係る取組状況について、状況に応じて、特別ヒアリング等を実施してまいります。

経営者保証一般

  1.  公表された経営者保証改革プログラムの趣旨を踏まえ、改めて、「経営者保証に関するガイドライン(以下、ガイドライン)」の内容を十分に理解し、適切な対応を行うこと。
  2.  個人保証に依存しない融資の一層の促進のため、例えば、停止条件又は解除条件付保証契約、ABL、金利の一定の上乗せ等、個人保証の機能を代替する融資手法の活用を検討すること。また、停止条件付保証契約におけるコベナンツ要件についてはモニタリング負担も踏まえ、経営者に経営規律を守らせる動機となるような、過度に複雑でない要件とする対応も検討すること。
  3.  信用保証協会への信用保証申込の際には、金融機関連携型[1]のような、個人保証を不要とする信用保証協会の取り扱いがあることを認識し、信用保証協会と連携のうえ、積極的に個人保証を不要とする取扱いの活用を検討すること。
  4.  民間金融機関においては、信用保証協会や政府系金融機関が個人保証を徴求しないと判断した協調融資については、その判断に至った経緯を十分に踏まえ、プロパー融資の個人保証の有無を判断すること。

監督指針(説明・記録化)

  1.  民間金融機関においては、改正された監督指針の趣旨・内容について営業現場の第一線まで漏れなく説明し、運用開始までに確実に浸透させること。また、事業者等の知識、経験等に応じ、その理解と納得を得ることを目的とした説明を行うことを各金融機関の企業文化として定着させるための態勢を整備すること。
  2.  民間金融機関は、保証契約締結時において、ガイドライン第4項(2)に掲げられている要素を参照の上、債務者の状況に応じ、可能な限り、資産・収益力については定量的、その他の要素については客観的・具体的な目線を示すなどにより、事業者等の知識、経験等に応じ、その理解と納得を得ることを目的とした説明に努めること。
  3.  民間金融機関は、保証契約締結時において、保証人等へ適切な説明を行い、その結果等を記録した件数を金融庁へ報告できる態勢を整備すること。なお、事務負担軽減の観点から、記録は営業日報等で代用するなど、既存の枠組みでの対応でも差し支えないと考えている。また、金融庁としては、改正後の監督指針の内容が各金融機関の企業文化として定着した暁には「個人保証を徴求せず融資した件数」と「個人保証を徴求した融資で、適切な説明を行い、結果等を記録した件数」の合計が新規融資件数と一致するものと考えている。
  4.  民間金融機関においては、今般の監督指針改正が個人保証を制限する趣旨でないことを十分に理解し、貸し渋り、貸し剥がしを行わないことは勿論のこと、そのような誤解が生じることのないよう留意すること。

監督指針(取組方針)

  1.  民間金融機関においては、「経営者保証に関するガイドラインを融資慣行として浸透・定着させるための取組方針等」について、経営陣を交えて議論し、対外公表すること。当該取組方針等は、『「経営者保証に関するガイドライン」の活用に係る組織的な取組み事例集』の内容も適宜参照のうえ、事業者とよりよい信頼関係を築くためのコミュニケーションツールとして利用できる内容となるよう、具体的かつわかりやすい記載で「見える化」するとともに、取組方針等に沿った運用が行われるよう職員への周知徹底等により現場まで浸透させること。
     なお、当該取組方針等は、経営者保証に依存しない融資の促進に係る方針に加え、可能であれば、保証人等から保証債務整理の申出があった場合の方針についても盛り込むことが望ましい。

    【参考】金融庁『「経営者保証に関するガイドライン」の活用に係る組織的な取組み事例集』
       (令和3年10月5日)より抜粋
    • 保証徴求の判断や回収に要する時間を、顧客とのリレーション構築に使いたいとの経営トップの考えの下、原則、個人保証を徴求しない取組み。
    • 例外を除き、原則個人保証を求めない。例外に該当し、個人保証を徴求する場合は全て本部決裁とし、妥当性を検証のうえ、不要な個人保証を防止する取組み。
    • 「法人のみの資産・収益力で借入返済が可能」と判断できた先であれば、他の要件が未充足であっても、原則個人保証を徴求しない取組み。
    • 代替融資手法の整備やコベナンツ付保証契約を具体的に制定した取組み。
    • 営業店の「経営者保証に関するガイドライン」への取組状況を確認するためモニタリングを実施し、その結果(好事例・不芳事例)を営業店に還元するとともに、当該モニタリング結果を踏まえ、行員向研修において「経営者保証に関するガイドライン」の趣旨等を再徹底。

中小企業のガバナンス

  1.  「収益力改善支援に関する実務指針」や「ガバナンス体制の整備に関するチェックリスト」を適宜活用し、事業者との対話を通じてガバナンス体制の整備による中小企業の持続的な企業価値の向上に繋げるよう、適切に対応すること。

スタートアップ・創業

  1.  「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(2022年6月7日閣議決定)において、「スタートアップの育成は、日本経済のダイナミズムと成長を促し、社会的課題を解決する鍵」とされた。こうした中、創業時の融資において個人保証を求める慣行は、創業を躊躇させるなど創業意欲の阻害要因となり得るところ、創業時点では企業は必ずしも充分な資力を有していない場合が多いことなどの事情を踏まえ、ガイドラインの要件のうち財務基盤の強化に係るものについて機械的に当てはめることなく、個人保証を求めない対応ができないか、事業の将来性等を踏まえた検討を行うこと。
  2.  日本公庫等においては、新たに創業後5年以内のスタートアップ向けに要件を緩和した経営者保証免除特例制度や、無保証で利用可能な資本性劣後ローンなどを積極的に活用するなど、事業者のニーズに適切に対応すること。
  3.  民間金融機関においては、事業者のニーズに応じて、これらの日本公庫等の制度を紹介するとともに、新たに信用保証協会に措置されるスタートアップ創出促進保証を積極的に利用すること。また、こうした制度を利用する事業者に対し、日本公庫等や信用保証協会と協調で資金供給を行うなどの連携に努めること。さらに、創業後6年目以降の事業者の資金ニーズへの対応については、民間金融機関の果たす役割が大きくなってくることも踏まえ、早期の段階から事業者の状況を積極的に把握しつつ、必要に応じ、事業者の将来の展望も踏まえた支援に努めること。
(以上)

[1] 取扱金融機関がプロパー融資について経営者保証を不要とし、担保による保全が図られていない場合であって、財務要件(「直近決算期において債務超過でないこと」かつ「直近2期の決算期において減価償却前経常利益が連続して赤字でないこと」)を満たすほか、法人と経営者の一体性解消等を図っている(または図ろうとしている)等の条件に該当する場合に個人保証を不要とできる制度。
お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

監督局総務課監督調査室(内線3379・3314)

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