令和5年3月7日
金融

年度末における事業者に対する金融の円滑化等について

 官民の金融機関等におかれては、累次にわたる要請等も踏まえ、事業者への資金繰り等の支援と感染拡大防止の両立に着実に取り組んでいただいていますことに感謝申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症の影響がこれまで長期に及んできたところですが、足下では、新型コロナの感染症法上の位置付けについて、特段の事情が生じない限り、5月8日から、5類感染症とすることを政府として決定したところです。こうしたことを受け、我が国は、社会経済活動の正常化が進みつつあり、日本経済は本格的な経済回復、そして新たな経済成長の軌道に乗せていく時期に差し掛かっております。他方、3年超にわたる新型コロナウイルス感染症及び昨今の物価高騰等の影響を受け、依然として厳しい状況に置かれている事業者が数多く存在する状況です。

 大きく傷ついた日本の経済社会を立て直す上で、こうした事業者に対する支援は喫緊の課題です。

 官民の金融機関等におかれては、足下、年度末の資金需要に万全を期すことは勿論のこと、更なる事業者支援の徹底等の観点から、以下の事項について、改めて要請いたしますので、「中小企業の金融の円滑化等に関する意見交換会」における要請事項等と合わせ、営業担当者をはじめ、貴機関、貴協会会員金融機関等の現場の第一線の職員等に周知・徹底をお願いいたします。
 

 
  1.  新型コロナウイルス感染症の影響や世界的な物価高騰等への対応等様々な課題に直面する中、足下の経営環境の変化、資金需要の高まる年度末を迎えることを踏まえ、改めて、中小企業や小規模・零細企業、中小企業組合はもとより、中堅・大企業等も含めた事業者の業況を積極的に把握し、資金繰り相談に丁寧に対応するなど、事業者のニーズに応じたきめ細かな支援を引き続き徹底すること。加えて、観光分野も含めて、飲食業・宿泊業の事業者は、新型コロナウイルス感染症の影響を特に受けてきており、そうした中で実質無利子・無担保融資等の元金返済の開始に直面されている中において、例えば、政府系金融機関に設置された経営相談窓口を活用する等、官民の金融機関等において、より一層のきめ細やかな資金繰り支援を徹底すること。
  2.  貸付条件の変更等の実行率は極めて高い水準で推移しているものの、事業者からの返済期間・据置期間延長の事前の相談において、すでに元金返済を開始している事業者や2度目、3度目の条件変更の相談の事業者も含め、申込みを断念させるような対応を取らないことは勿論のこと、返済期間・据置期間の長期の延長等を積極的に提案するなど、既往債務の条件変更や借換え等について、事業者の実情に応じた迅速かつ柔軟な対応を継続すること。その際、事業者の年間返済額の軽減を図る観点から、実質無利子・無担保融資(民間ゼロゼロ融資)からの借換えに加え、既往の信用保証協会付き融資からの借換えや、事業再構築等の前向き投資に必要な新たな資金需要にも対応する新たな借換保証制度(コロナ借換保証)の活用を積極的に提案し、伴走支援に努めるなど、事業者に寄り添った対応を徹底すること。
  3.  民間金融機関が事業者の資金繰り支援に当たって条件変更や借換え、新規融資を行う場合の債権の区分に関しては、貸出条件緩和債権の判定における実現可能性の高い抜本的な経営再建計画等の柔軟な取扱い[1]を含め、引き続き金融機関の判断を尊重することとしていることを踏まえ、事業者に寄り添った資金繰り支援に努めること。
  4.  各種補助金等の支給までの間に必要となる資金を含め、ポストコロナに向けた設備投資に要する資金、運転資金等[2]について、貸し渋り・貸し剥がしを行わないことは勿論のこと、そのような誤解が生じることのないよう、引き続き事業者の立場に立った最大限柔軟な資金繰り支援を行うこと。その際、新たな資金需要にも対応できるコロナ借換保証や、申込期限が本年9月末まで延長された日本政策金融公庫等によるスーパー低利・無担保融資(新型コロナウイルス感染症特別貸付等)、資本性劣後ローン及びセーフティネット貸付(物価高騰対策)等の積極的な活用に努め、借換えや新規融資の円滑化を図ること。
    特に、本年2月より、日本政策金融公庫等によるスーパー低利・無担保融資については、債務負担が重い事業者(債務償還年数が13年以上)であれば、売上減少要件を満たしていなくても融資対象となるよう要件を緩和したところであり、増大する債務に苦しむ事業者に対しては、こうした緩和を周知の上、活用を促すこと。
    加えて、日本政策金融公庫及び民間金融機関においては、資本性劣後ローンについて、実質無利子・無担保融資等からの借換え促進も念頭に、協調融資商品の組成拡大に努めること。日本政策金融公庫においては、事業者が民間金融機関等からの協調支援を希望しない場合等においては、認定支援機関の支援を受けて事業計画書を策定していれば対象となることを周知の上、活用を促すこと。周知にあたっては、認定支援機関が所属する税理士・中小企業診断士等の関係団体はもちろん、商工会、商工会議所等の中小企業関係団体にも徹底すること。
    なお、融資判断に当たっては、それぞれの事業者の現下の決算状況・借入状況や条件変更の有無等のみで機械的・硬直的に判断せず、事業の特性、需要の回復や各種支援施策の実施見込み等も踏まえ、官民金融機関等及びメイン・非メインが密に連携し、丁寧かつ親身に対応すること。
  5.  こうした資金繰り支援に加え、官民金融機関、信用保証協会、中小企業活性化協議会、株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)等の支援機関が密に連携し、保証期間15年以内の経営改善サポート保証や本年1月末より要件を緩和して対象を大幅に拡充した信用保証付DDS等の施策や中小企業庁及び中小企業活性化全国本部が作成した「中小企業活性化協議会における業種別支援事例集」、金融庁が今後公表予定の「業種別支援の着眼点」も活用しつつ、債務返済猶予や債務減免等の金融支援を伴う場合を含めた事業者の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援に努めること。商工組合中央金庫においても、これまで確立してきた経営改善・再生支援のノウハウを最大限活用して、率先して支援に努めること。
  6.  5.の総合的支援に当たっては、資本性資金の供給や債権買取等が可能な株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)の全国をカバーするファンド(復興支援ファンド等)や独立行政法人中小企業基盤整備機構の出資するファンド(中小企業経営力強化支援ファンド、中小企業再生ファンド等)等の組成・活用についても真摯に検討すること。
  7.  官民金融機関は、事業者からの相談に適切に対応できるよう、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の趣旨・内容を営業現場の第一線まで確実に浸透させるとともに、増大する債務に苦しむ事業者の事業再生計画の策定を積極的・継続的に支援し、債務返済猶予や債務減免等の金融支援を伴う場合を含め、事業再生計画の成立に向け、真摯に協議・検討を行うこと。
  8.  実質無利子・無担保融資により新たに取引先となった先や残高メイン先でなくなるなど融資シェアが低下した場合等であっても、本業支援がおろそかになることがないよう、メイン・非メイン先の別や、既存顧客・新規顧客の別、プロパー融資・信用保証協会保証付き融資の別にかかわらず、資金繰りにとどまらない経営課題に直面する事業者に対して、据置期間中のみならず同期間経過後も含めて能動的に本業支援を行うなど、継続的な伴走支援に努めること。
  9.  経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けて、令和4年12月23日付で政府より発出した要請文「個人保証に依存しない融資慣行の確立に向けた取組の促進について」において要請された事項について、営業現場の第一線の職員等に浸透・定着を図るよう徹底すること。商工組合中央金庫については、スタートアップ向け融資における経営者保証を原則廃止したが、スタートアップのみならず、より幅広く経営者保証に依存しない融資の実行に努めること。併せて、「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」についても営業現場の第一線まで浸透・定着を図り、経営者の個人破産の回避に向け、経営者等から保証債務整理の申出があった場合には誠実に対応すること。その際、株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)の特定支援(経営者の再チャレンジ支援)の活用も検討するほか、再チャレンジに向けた事業者の資金繰り支援についても柔軟に対応すること。
  10.  引き続き、住宅ローンやその他の個人ローンについて、丁寧な相談対応や顧客の状況やニーズに応じた返済猶予等の条件変更の迅速かつ柔軟な対応を行い、生活・暮らしの支援に努めること。
以 上

[1] 詳細は、金融庁HP“「新型コロナウイルス感染症の影響下における貸出条件緩和債権の判定に係る実現可能性の高い抜本的な経営再建計画の取扱いについて」の公表について” (https://www.fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20211008.html)を参照。
[2] 例えば、DX投資を通じた非接触型ビジネスモデルへの転換といった新分野進出等の前向きな取組に向けた投資に要する資金等。
お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

監督局総務課監督調査室(内線3706・3852)

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