令和5年1月27日
金融庁

監査法人の処分について

 金融庁は、令和4年6月3日、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)から、監査法人ハイビスカス(法人番号3430005004396)に対して行った検査の結果、当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、当監査法人に対する行政処分その他の措置を講ずるよう勧告を受けました。
 同勧告を踏まえ、金融庁は本日、下記のとおり、当監査法人に対して公認会計士法(昭和23年法律第103号)(以下「法」という。)第34条の21第2項に基づき、以下の処分を行いました。

1.処分の概要

(1)処分の対象

 監査法人ハイビスカス(法人番号3430005004396)(所在地:北海道札幌市)

(2)処分の内容

 業務改善命令(業務管理体制の改善。詳細は下記3.参照。)

2.処分の理由

 当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、令和4年6月3日、金融庁は審査会から行政処分勧告を受け、調査を行った結果、下記ア.からウ.までに記載する事実が認められ、当該事実は法第34条の21第2項第3号に規定する「運営が著しく不当なものと認められるとき」に該当する。

ア.業務管理態勢

当監査法人は、高品質の監査等を実現することにより、クライアントや社会から信頼される存在となることを目指している。また、監査品質の維持・向上を図る目的で、札幌事務所及び東京事務所の双方の社員・職員が出席する会議を定期的に開催し、監査基準の改訂等に対する監査実務上の対応等を議論するなどの施策を実施してきている。
 しかしながら、統括代表社員は、適切な業務管理や監査品質の維持・向上に資する品質管理に係る最高経営責任者としての責任を負っているにもかかわらず、職業的専門家としての誠実性・信用保持の重要性に対する認識が不足しており、職業倫理の遵守を重視する組織風土の醸成に向けて、リーダーシップを発揮していない。このため、当監査法人の社員・職員においては、不適切な検査対応に関与するなど、業務の遂行に際し、法令、倫理規則、内部規程等を遵守する意識が共有されていない。
 また、統括代表社員及び品質管理担当責任者においては、業務運営に係る重要な事項について、特定の社員のみで議論すれば足りるものと考えており、内部規程等を適切に整備し、当該規程等に従って、品質管理のシステムを運用する意識が欠けている。このため、統括代表社員及び品質管理担当責任者においては、適切な監査品質を確保するための実効的かつ組織的な業務管理態勢・品質管理態勢が構築できていない。
 さらに、当監査法人の各社員は、当監査法人所属の社員・職員は豊富な実務経験に基づく十分な能力を有しており、これらの者が実施する監査業務の品質には特段の問題がないものと思い込んでいる。このため、当監査法人の各社員は、業務執行社員を含む監査実施者において、現行の品質管理の基準や監査の基準が求める水準の理解が不足する者が存在することを認識できていないほか、他の社員・職員が実施する監査業務について、審査や定期的な検証等を通じて、監査品質の維持・向上を図る意識が不足している。

こうしたことから、下記イ.に記載するとおり、今回の審査会検査における不適切な対応、監査調書の差替え等の防止措置の未実施、監査業務に係る不適切な審査など、品質管理態勢において、重要な不備を含めて広範かつ多数の不備が認められている。

また、下記ウ.に記載するとおり、今回の審査会検査で検証対象とした全ての個別監査業務において、業務執行社員及び監査補助者に監査の基準に対する理解が不足している状況及び職業的懐疑心が不足している状況が確認され、それらに起因する重要な不備を含めて広範かつ多数の不備が認められている。

イ.品質管理態勢

(不適切な検査対応)

当監査法人は、検査実施通知日以降、検査官に品質管理関連資料及び検証対象個別監査業務に係る監査ファイル(以下「検査対象資料」という。)を提出する日までの間、一部の社員及び職員が、事後的に検査対象資料を作成し、あるいは、事後的に作成した監査調書を監査ファイルに差し込むなどした上で、その旨を秘して検査官に当該検査対象資料を提出した。

(監査調書の管理及び監査ファイルの最終的な整理)

統括代表社員及び品質管理担当責任者は、監査ファイルの最終的な整理後における監査調書の差替えなど、当監査法人の方針及び手続に従わない監査調書の変更を防止するための具体的な措置を講じていない。
 また、業務執行社員は、監査ファイルの最終的な整理に際し、当該ファイルにとじ込まれるべき監査調書が過不足なくとじ込まれているかなど、情報の完全性の観点からの確認を実施していない。

(監査業務に係る審査)

審査担当社員は、監査チームが実施した、企業及び企業環境の理解や会計上の見積りに係る監査手続等に関し、実施した監査手続の概要等を把握するのみで、監査調書に基づき、現行の監査の基準が求める手続が実施されているかの検討を行うことなく、監査チームによる重要な判断及びその結論には問題がないとして審査を完了させている。
 このため、審査担当社員は、今回の審査会検査で検証対象とした個別監査業務において検出された、重要な不備を含む複数の不備を、審査において指摘できていない。

このほか、内部規程の整備及び運用、法令等遵守態勢、情報管理態勢、品質管理レビューでの指摘事項の改善状況、監査契約の新規の締結、監査補助者に対する指示・監督及び監査調書の査閲、品質管理のシステムの監視に不備が認められる。

このように、当監査法人の品質管理態勢については、不適切な検査対応、監査調書の管理及び監査ファイルの最終的な整理、監査業務に係る審査において重要な不備が認められるほか、広範かつ多数の不備が認められており、著しく不適切かつ不十分である。

ウ.個別監査業務

業務執行社員及び監査補助者は、監査の基準や、現行の監査の基準が求める手続の水準の理解が不足している。特に、収益認識に関する不正リスクの評価及び対応に係る手続についての理解が不足している。
 また、業務執行社員及び監査補助者は、経営者の主張を批判的に検討していないなど、職業的懐疑心が不足している。
 さらに、業務執行社員及び監査補助者は、監査手続の効率性を意識するあまり、リスク評価及びリスク対応に係る手続について、慎重に検討する意識が希薄となっていた。
 くわえて、業務執行社員は、監査補助者を過度に信頼していたことから、監査補助者が適切に業務を実施していると思い込み、監査補助者に対する適切な指示・監督及び監査調書の深度ある査閲を実施しなかった。

これらのことから、収益認識に係る不正リスクの検討が不適切かつ不十分、重要な虚偽表示リスクの評価及び内部統制の不備の評価が不適切、重要な貸付取引の事業上の合理性の評価、債務保証損失引当金の検討及び重要な構成単位の識別に関する監査手続が不十分といった重要な不備が認められる。

上記のほか、不正リスクの評価が不適切並びに仕訳テストの検討、繰延税金資産の回収可能性の検討、事業構造改善引当金の検討、将来計画の見積りの検討、取得原価の再配分の検討、資産除去債務の検討、セグメント情報に関する注記の検討、内部監査人の利用に係る検討、内部統制監査の評価範囲の検討及び監査上の主要な検討事項の記載に係る検討が不十分、さらに、売上高の分析的実証手続、売上原価の実証手続、売掛金の実証手続、棚卸資産の実証手続、特定項目抽出による試査による実証手続、監査サンプリング及びグループ監査に係る監査手続が不十分、くわえて、子会社株式の評価、のれんの評価、構成単位の固定資産の減損、決算・財務報告プロセスの検証、取締役会等の議事録の閲覧、監査役等とのコミュニケーション、個人情報の取扱い及び独立性の確認が不十分であるなど、広範かつ多数の不備が認められる。

このように、検証した個別監査業務において、重要な不備を含めて広範かつ多数の不備が認められており、当監査法人の個別監査業務の実施は著しく不適切かつ不十分なものとなっている。

3.業務改善命令の内容

(1)法人代表者は、職業専門家としての誠実性・信用保持の重要性を十分に認識し、職業倫理の遵守を重視する組織風土の醸成に主体的に取り組むこと。併せて、組織的に監査の品質を確保する必要性を十分に認識し、各社員が協働して監査品質の維持・向上を図るという組織風土を醸成するほか、十分かつ適切な監査業務を実施するための環境整備に向け、当監査法人の業務管理体制の改善に主体的に取り組むこと。

(2)法人代表者は、監査ファイルの最終的な整理や、その後の監査調書の管理が着実に行われるよう具体的な措置を講じるとともに、十分かつ適切な審査を実施するための態勢を整備するなど、当監査法人の品質管理態勢の整備に責任を持って取り組むこと。併せて、審査会の検査において指摘された不備の根本原因を十分に分析したうえで改善策を策定及び実施するとともに、改善状況の適切な検証ができる態勢を整備すること。

(3)現行の監査の基準に準拠した監査手続を実施するための態勢を強化すること(収益認識に係る不正リスクの検討、重要な虚偽表示リスクの評価及び内部統制の不備の評価、重要な貸付取引の事業上の合理性の評価、債務保証損失引当金の検討及び重要な構成単位の識別に関する監査手続など、審査会の検査において指摘された事項の改善を含む。)。

(4)上記(1)から(3)に関する業務の改善計画について、令和5年2月28日までに提出し、直ちに実行すること。

(5)上記(4)の報告後、当該計画の実施完了までの間、令和5年7月末日を第1回目とし、以後、6箇月ごとに計画の進捗・実施及び改善状況を取りまとめ、翌月15日までに報告すること。

お問い合わせ先

金融庁企画市場局企業開示課

03-3506-6000(代表)(内線3660、3804)

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