令和5年3月31日
金融庁

監査法人の処分について

 金融庁は、令和5年1月20日、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)から、ひびき監査法人(法人番号7120005004127、以下「当監査法人」という。)に対して行った検査の結果、当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、当監査法人に対する行政処分その他の措置を講ずるよう勧告を受けました。

 同勧告を踏まえ、金融庁は本日、下記のとおり、当監査法人に対して公認会計士法(昭和23年法律第103号。以下「法」という。)第34条の21第2項に基づき、以下の処分を行いました。

1.処分の概要

(1)処分の対象

 ひびき監査法人(法人番号7120005004127)(所在地:大阪府大阪市)

(2)処分の内容

 業務改善命令(業務管理体制の改善。詳細は下記3.参照。)

2.処分の理由

 当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、令和5年1月20日、金融庁は審査会から行政処分勧告を受け、調査を行った結果、下記ア.からウ.までに記載する事実が認められ、当該事実は法第34条の21第2項第3号に規定する「運営が著しく不当なものと認められるとき」に該当する。

ア.業務管理態勢

当監査法人は、経営理念として、「信頼される監査法人」、「人を大切にする監査法人」及び「変化に対応する監査法人」を掲げており、投資家や被監査会社からの信頼を得るために、自由闊達な議論ができる組織風土を醸成し、監査を取り巻く環境の変化にキャッチアップする必要性を認識しているとしている。また、理事長及び品質管理部長は、社員会等において、品質管理の重要性について繰り返し強調するほか、研修等を通じて、監査品質を改善するための施策の浸透を図っているとしている。

しかしながら、理事長は、職業倫理の遵守を重視する組織風土を醸成できておらず、当監査法人の社員及び職員は、職業的専門家としての誠実性・信用保持の重要性に対する認識が著しく不足している。また、理事長及び品質管理部長は、大手監査法人での勤務経験がある公認会計士の採用や、当監査法人が受講を求めている研修等を通じて、現行の監査の基準や監査の基準が求める手続の水準に対する理解が法人内部で十分に浸透しているものと思い込んでいる。このため、審査会検査で検証対象とした全ての個別監査業務について、不適切な検査対応が行われるなど、当監査法人の社員及び職員においては、法令、倫理規則、内部規程等を遵守して業務を遂行する意識が欠如している。

また、品質管理部長は、各種監査調書様式や「自主点検チェックリスト」等の監査品質を改善するためのツールを提供しさえすれば、社員及び職員が当該ツールを適切に利用するものと思い込み、当該ツールの利用状況を直接確認するまでの必要性はないものと考えている。

さらに、当監査法人の社員においては、被監査会社の監査リスクはいずれも相対的に高くはないとの認識の下、被監査会社の監査リスクに対応した十分かつ適切な監査証拠を入手したかについて慎重に見極める意識が不足しており、また、職業的懐疑心を発揮して、経営者の主張を批判的に検討する意識が不足している。このため、当監査法人の社員においては、監査調書の査閲や監査業務に係る審査等に際し、監査補助者や監査チームが実施した業務内容を批判的に検討することにより監査品質の維持・向上を図るという姿勢が不足している。

こうしたことから、下記イ.に記載するとおり、品質管理態勢において、特に、検査対応、監査調書の管理に関し、重要な不備が認められるほか、これ以外にも相当数の不備が認められている。

また、下記ウ.に記載するとおり、審査会検査で検証対象とした全ての個別監査業務において、業務執行社員及び監査補助者に監査の基準に対する理解が不足している状況及び職業的懐疑心が不足している状況が確認され、それらに起因する重要な不備を含む広範かつ多数の不備が認められている。

イ.品質管理態勢

(不適切な検査対応)

当監査法人は、検査実施通知日以降、審査会検査で検証対象とした全ての個別監査業務について、当該監査業務に係る業務執行社員又は監査補助者が事後的に作成した監査調書を監査ファイルに差し込むなどした上で、その旨を秘したまま、検査官に当該監査ファイルを提出した。

(監査調書の管理)

 当監査法人は、監査ファイルの最終的な整理後における監査調書の差替えなど、当監査法人の方針及び手続に従わない監査調書の変更を防止するための実効性のある措置を講じていない。

 このほか、情報管理態勢、品質管理レビューでの指摘事項の改善状況、監査補助者に対する指示・監督及び監査調書の査閲、監査業務に係る審査に不備が認められる。

 このように、当監査法人の品質管理態勢については、特に、検査対応、監査調書の管理に関し、重要な不備が認められるほか、これ以外にも相当数の不備が認められており、著しく不適切かつ不十分である。

ウ.個別監査業務

 業務執行社員及び監査補助者は、監査の基準や、現行の監査の基準が求める手続の水準の理解が不足している。特に、不正による重要な虚偽表示リスクや会計上の見積りの監査に係る手続についての理解が不足している。
 また、業務執行社員及び監査補助者は、被監査会社の会計方針及び会計上の見積りに関する経営者の主張並びに財務諸表の表示について批判的に検討していないなど、職業的懐疑心が不足している。
 さらに、業務執行社員は、長く監査業務に従事している監査補助者に過度な信頼を置いていたことから、監査補助者に対する適切な指示・監督及び監査調書の深度ある査閲を実施していない。

これらのことから、非支配持分の検証が不適切、構成単位の固定資産の減損、企業結合取引における無形資産の評価と開示及び収益認識に関する誤謬リスク対応に係る監査手続が不十分といった重要な不備が認められる。

上記のほか、収益認識に関する会計方針及び工事損失引当金の計上方針に係る検討が不十分、さらに、収益認識に関する不正リスクの識別と評価、収益認識に関する不正リスク対応、仕訳テスト、企業結合取引における取得原価の配分、のれんの減損テスト、棚卸資産の評価、退職給付債務、株式報酬に係る負債、売上原価、買掛金の残高確認、分析的実証手続、注記及び内部統制の運用評価に係る監査手続が不十分、くわえて、グループ監査に関する監査役等とのコミュニケーション、個人情報の取扱い、虚偽表示の評価、専門的な見解の問合せの取扱い及び監査概要書の記載内容が不十分といった広範かつ多数の不備が認められる。

このように、個別監査業務において、重要な不備を含む広範かつ多数の不備が認められており、当監査法人の個別監査業務の実施は著しく不適切かつ不十分なものとなっている。

3.業務改善命令の内容

(1)法人代表者は、職業倫理の遵守を重視する組織風土の醸成に主体的に取り組み、社員及び職員に職業的専門家としての誠実性・信用保持の重要性を十分に認識させ、法令等を遵守して業務を遂行させる態勢を整えること。併せて、組織的に監査の品質を確保する必要性を十分に認識し、現行の監査の基準や、監査の基準が求める手続の水準に対する理解を法人内部に浸透させるなど、十分かつ適切な監査業務を実施するための環境整備に向け、当監査法人の業務管理体制の改善に主体的に取り組むこと。

(2)法人代表者は、審査会の検査及び日本公認会計士協会の品質管理レビューにおいて指摘された不備の根本原因を十分に分析したうえで改善策を策定及び実施するとともに、改善状況の適切な検証ができる態勢を整備すること。併せて、監査ファイルの最終的な整理や、その後の監査調書の管理が着実に行われるよう実効性のある措置を講じるなど、当監査法人の品質管理態勢の整備に責任を持って取り組むこと。

(3)現行の監査の基準に準拠した監査手続を実施するための態勢を強化すること(非支配持分の検証、構成単位の固定資産の減損、企業結合取引における無形資産の評価と開示及び収益認識に関する誤謬リスク対応に係る監査手続など、審査会の検査において指摘された事項の改善を含む。)。

(4)上記(1)から(3)までに関する業務の改善計画を含む、登録上場会社等監査人が整備すべき組織体制、評価・監督機能及び監査業務遂行体制等の整備に係る計画について、令和5年4月28日までに提出し、直ちに実行すること。

(5)上記(4)の報告後、当該計画の実施完了までの間、令和5年6月末日を第1回目とし、以後、3か月ごとに計画の進捗・実施及び改善状況を取りまとめ、翌月15日までに報告すること。

お問い合わせ先

金融庁企画市場局企業開示課

03-3506-6000(代表)(内線3662、2766)

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