令和6年12月26日
金融庁
イオン銀行に対する行政処分について
金融庁は、本日、株式会社イオン銀行(以下、「当行」という。法人番号 1010601032497。)に対し、銀行法(昭和56年法律第59号。以下「法」という。)第26条第1項の規定に基づき、下記のとおり業務改善命令を発出した。
Ⅰ.業務改善命令の内容
- マネー・ローンダリング及びテロ資金供与(以下、「マネロン・テロ資金供与」という。)対策を重視する健全なリスクカルチャーを醸成し、実効性あるマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢を構築するとともに、疑わしい取引の届出に関する適切な業務運営を確保するため、以下を実行すること。
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(1)疑わしい取引の届出業務を適時・適切に行うための態勢を速やかに構築すること
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(2)取引モニタリングシステムで検知したにもかかわらず、疑わしい取引に該当するか否かの判断を行わず放置した取引について、疑わしい取引の届出を行う必要があるか否かを判断し、速やかに届出を実施すること
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(3)「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(平成30年2月に金融庁が公表。以下、「ガイドライン」という。)において対応が求められる事項のうち、対応未了となっている事項について、必要な措置を講じること
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(4)今回の処分を踏まえた責任の所在の明確化を図るとともに、上記を確実に実行し定着を図るために、マネロン・テロ資金供与リスク管理態勢について、内部監査の活用を前提としつつ、取締役会及び経営陣による積極的な実態把握や必要な指示等の主導的な関与をはじめとするガバナンスを抜本的に強化すること
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- 上記1.に係る業務の改善計画について、令和7年1月31日(金曜)までに提出し、直ちに実行すること。
- 上記2.の改善計画について、当該計画の実施完了までの間、3か月毎の進捗及び改善状況を翌月15日までに報告すること(初回提出基準日を令和7年2月末とする。)。
Ⅱ.処分の理由
当庁検査の結果及び法第24条第1項の規定に基づき求めた報告を検証したところ、以下のとおり、マネロン・テロ資金供与対策に係る不適切な業務運営やその背景にある経営姿勢及び態勢上の問題が認められた。
- マネロン・テロ資金供与対策に係る不適切な業務運営
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(1)疑わしい取引の届出に係る不適切な取扱い
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① 取引モニタリングシステムで検知した取引の放置
当行は、令和5年6月から同年11月及び令和6年7月から同年9月にかけて、取引モニタリングシステムで検知した取引のうち、少なくとも14,639件について、疑わしい取引に該当するか否かの判定を行わないまま放置しており、本来届出を行うべき取引の届出がなされていないことが懸念され、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)に違反する可能性のある取扱いが認められた。
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② 疑わしい取引の届出の滞留・長期化
当行においては、令和5年5月以降、疑わしい取引の検知から届出までに要した日数の月平均が長期間(最長で、令和6年2月に152日間)に及ぶ状態が継続している実態が認められた。
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(2)態勢整備期限におけるガイドライン対応の未完了
当行は、ガイドラインで対応を求めている態勢の整備に必要となるシステム対応を行っていないほか、規程等の整備を完了していない等、前回検査で当庁より指摘を受けた様々な事項について、前回検査から十分な期間があったにもかかわらず、検査実施時点においても改善しておらず、ガイドラインで対応を求めている事項について、当庁が要請した期限(令和6年3月末)までに態勢整備を完了していない実態が認められた。
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- 経営姿勢及び態勢上の問題
マネロン・テロ資金供与対策は、国際的な要請の高まりや足元で特殊詐欺等の被害が拡大している状況を踏まえると、金融業界において最も重要な経営課題の一つと位置付けられるべきものであり、これまでにも当庁から、ガイドラインに基づくマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の整備を期限までに確実に実施するよう要請するとともに、再三にわたって周知を行ってきた。
こうした状況下にあってなお、当行では、1.に記載した不適切な業務運営やその直接的な原因である以下(1)(2)のような態勢上の問題点が認められており、それらについては、疑わしい取引の届出に係る業務滞留・長期化の発生や、前回検査の指摘事項に対する改善対応状況の報告、内部監査による指摘などを通じて、これまでに幾度となく把握する機会があったにもかかわらず、取締役会及び経営陣は、実態把握を自ら積極的に行うことなく、態勢整備に向けて必要な指示も行わず、主導的に関与してこなかった。
こうした取締役会及び経営陣の姿勢が、当行の組織内においてマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の構築を軽視したリスクカルチャーを助長し、自主的な改善を阻害してきたものと認められる。-
(1)疑わしい取引の届出に係る態勢上の問題点
疑わしい取引の届出に係る業務について、必要な人員を配置してこなかったことから、上記1.(1)①のとおり、疑わしい取引に該当するか否かの判定を行わないまま放置し、かつ、その状況を適時・適切に把握していない。
くわえて、届出業務の滞留・長期化が発生した際においても、その原因を調査せず、同業務を適時・適切に実施するために必要な態勢整備を行っていない。 -
(2)態勢整備期限までにガイドライン対応が完了しなかった態勢上の問題点
前回検査の指摘事項に対する改善対応について、システム対応は、態勢整備期限までに計画を立案しさえすれば実際にシステムを導入していなくとも問題ないと誤認し、システム導入が遅れることによって生じうる業務量の増大等の弊害を想定することなく、未だもってシステムの導入を行っていない。
くわえて、主管部署において改善対応の進捗状況や内容に対する十分性・妥当性のチェック態勢が機能していない実態を看過し、その是正を図っていないほか、前回検査以降に実施した外部コンサルティング会社の利用を含む態勢強化策の実効性を確認していない。
また、内部監査が指摘した改善対応に係る不備事項について、その対応を主管部署任せとし、態勢整備期限までにフォローアップを行っていない。
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